「腋臭症」についての記事まとめ
2024/02/04
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ワキガはどのくらい遺伝する?ワキガの遺伝子や遺伝の確率について
ワキガはどのくらい遺伝するのか?この疑問に対し、ワキガの遺伝子とその遺伝の確率に焦点を当ててみましょう。ワキガ症の遺伝については、科学的な研究により、その傾向が明らかにされています。本記事では、ワキガに関する最新の研究成果を、一般の方々にも理解しやすい形でご紹介します。また、ワキガが感染症であるという誤解や、社会的な偏見に基づくいじめなどの問題を避けるために、ワキガ症に対する正しい知識が広がることで、偏見のない社会が築かれる一助となれば幸いです。
耳垢と腋臭症の関係性の発見
↑医師足立文太郎
1937年、日本の医師足立文太郎によって、医学の歴史において重要な発見がなされました。彼は、湿潤型の耳垢とワキガ症の間に深い関連性があることを世界で初めて明らかにし、その成果を発表しました。この発見により、湿潤型の耳垢を持つ人々がワキガ症を遺伝的に有している可能性が高いことが示唆されました。さらに、1962年には国立遺伝子研究所の松永英氏が、湿潤型耳垢の優性遺伝に関する研究成果を発表しました。これらの研究は、耳垢とワキガ症の関連性を深く理解する上での大きな一歩であり、日本人研究者によるこのような大発見がなされたことは、医学史においても非常に興味深い事実です。これらの研究成果は、現代医学におけるワキガ症の理解と治療法の進展に大きく貢献しています。
↑松永英氏
出典元:
Matsunaga, E. The dimorphism in human normal cerumen. Ann. Hum. Genet. 25, 273–286 (1962).
ワキガの遺伝子とは
ワキガの遺伝子とは、人間の16番染色体にあるABCC11遺伝子とされています。足立文太郎氏や松永英氏による画期的な研究、さらにはワキガに関連する数々の遺伝学的研究により、この遺伝子の特性が徐々に明らかにされてきました。ABCC11遺伝子には、特定のSNP(シングルニュクレオチドポリモルフィズム)が存在します。SNPとは、遺伝子の一つ一つのバリエーションのことを指し、このバリエーションによって個人の耳垢のタイプ(乾燥型か湿潤型か)や腋臭症のリスクが決定されます。具体的には、湿潤型の耳垢を生じるGGまたはGAの遺伝子型は、腋臭症と強い関連性があることが知られており、これは優性遺伝の特徴を示しています。対照的に、AA遺伝子型は乾燥型耳垢を生じ、腋臭のリスクが相対的に低いとされています。このように、ABCC11遺伝子の特定のバリエーションは、腋臭症の発症リスクに直接関連しております。
突然変異でワキガがなくなったという事実
人間のワキガ症は、アポクリン汗腺から分泌される特有の物質、N-アセチル-5-メチルオルニチンが重要な役割を果たしています。しかし、人類の進化の過程で、ABCC11遺伝子における特定の突然変異が、この物質の生成を抑制することが明らかになっています。具体的には、ABCC11遺伝子の538番目のヌクレオチドがグアニン(G)からアデニン(A)へと変化する538G→538Aという突然変異です。この突然変異は、人類史上において重要な意味を持っています。かつて全ての人間はGG遺伝型(湿潤型耳垢)を持っていたとされていますが、ある時点で起こった538G→538Aの突然変異が、乾燥型耳垢のAA遺伝型を持つ個体の出現を促したと考えられています。これにより、N-アセチル-5-メチルオルニチンの分泌が抑制され、ワキガ症の特徴が顕著でない個体が生まれるようになりました。この遺伝子の変異は、人類の遺伝学的多様性を示す興味深い事例の一つであり、ワキガ症の発生に関する基本的な理解を深める上で重要な役割を果たしています。538G→538Aの変異が、どのようにしてヒトの集団に広がっていったのか、その過程は現代の遺伝学における興味深い研究課題の一つです。
ワキガ症は遺伝するという揺るぎない事実
ワキガ症の発症が優性遺伝によるものであることは、この症状が完全に遺伝的な影響を受けることを示しています。優性遺伝とは、一方の親が特定の遺伝子を持っている場合、その特徴が子に50%以上の確率で遺伝することを意味します。例えば、血液型の遺伝については、多くの方がある程度の知識をお持ちでしょう。A型血液型は、AA型とAO型の二つが存在し、AがOに対して優性であるために、A型の血液型が現れます。ワキガ症の場合も同様に、遺伝の基本原理であるメンデルの法則が働きます。耳垢のタイプには湿潤型のGG型、乾燥型のAA型、そして両者が混合したGA型が存在します。しかし、GA型は血液型のAO型に相当し、優性遺伝の原理により、表現型(遺伝的特徴が現れる形)はGG型(湿潤型)と同じになります。つまり、GA型を持つ個体はワキガ症の特徴を示すことになります。このように、ワキガ症の遺伝的メカニズムを理解することは、症状の予測や治療を検討する場合において重要な意味を持ちます。
両親がワキガ症の場合、子供の遺伝率
両親がともにワキガ症である場合、子供にワキガ症が遺伝する確率は高まりますが、必ずしも100%とは限りません。遺伝のメカニズムを理解することが重要です。例えば、両親がGA型の遺伝型を持つワキガ症の場合、子供がAA型の遺伝型を持つ確率は25%です。AA型の遺伝型を持つ子供はワキガ症にならないため、両親がワキガ症であっても、子供が必ずしもワキガ症になるわけではないのです。このように、ワキガ症の遺伝には一定の確率が関わっており、単純に「両親がともにワキガ症だと子は100%ワキガ症」という考え方は誤りです。ワキガ症の遺伝に関する正確な情報や中学校の理科で学習するメンデルの法則を理解することは、ワキガが遺伝する可能性を知り、適切な対応を考える上で非常に重要です。
ワキガ遺伝子はどのくらいの割合いるか?
日本人におけるワキガ症の遺伝子が果たしてどのくらいの割合なのかを考察する上で、GG型とGA型の遺伝子型が重要な要素となります。ただし、これらの遺伝子型を持つからといって、必ずしもワキガ症の症状が顕著に表れるわけではありません。過去の調査によると、日本人の中で湿潤型(wet type)の耳垢を持つ割合は比較的少ないことが明らかにされています。具体的には、檜学編の『現代の耳鼻咽喉科学』(第2版, 1983年、金原出版)によると、「耳垢には軟性耳垢wet typeと硬性耳垢dry typeとがあり人種差が著しく、日本人では18~19%に、白人では97%以上にwet typeが見られる」と報告されています。さらに、浅井得一氏の『わが国における耳垢型の地域的分布について』(1988年、『新地理』)によると、日本人の乾燥型耳垢は70.3%としており、このことから湿潤型耳垢の割合は約30%弱となります。これらの研究結果から、日本人におけるワキガ症の潜在的な割合は約20~30%と推定されます。このデータは、日本人の遺伝的特性や耳垢のタイプとワキガ症の関係性を理解する上で非常に重要な情報と言えるでしょう。
出典元:
ワキガ症の多い地域は沖縄
日本において、ワキガ症の発生頻度が高い地域と低い地域には顕著な違いが存在します。最もワキガ症が多い地域は沖縄県であり、一方で最も少ない地域は京都府と岐阜県です。また、近畿地方全体もワキガ症の発生率が比較的低いことが知られています。この地域差は、1963人の日本全都道府県の住民を対象にした爪のDNA検査に基づく調査結果から明らかになりました。特に、耳垢の乾燥型を示す遺伝子型Aの割合に注目したこの研究は、信頼度が高いと評価されています。論文に掲載された下記図表では、色の濃さが乾燥型の遺伝子型Aの割合の少なさ、すなわち湿潤型の遺伝子型Gの多さを示しています。これにより、色が濃い都道府県ほど潜在的なワキガ症の発生率が高いことが分かります。
出典元:
世界におけるワキガ症の地域差とその特徴
世界各地におけるワキガ症の発生率は地域によって大きく異なり、特にアフリカとヨーロッパの人々の間で高い割合が見られます。最近の研究によると、これらの地域の人々における乾燥型耳垢の割合はわずか3%未満に過ぎず、その結果、人口のほとんどが潜在的にワキガ症を有していると考えられています。これに対して、最もワキガ症が少ない地域は、乾燥型耳垢の割合が高い中国の山西省と韓国の大邱市であり、これらの地域では湿潤型遺伝子Gの存在が全く確認されていません。このような地域差は、北東アジアを中心に、日本や南アジアに向かって乾燥型遺伝子の割合が下降していることを示唆しています。この地域的な特徴は、1960年に『基礎人類遺伝学』(田中克己著、裳華房)に記された古いデータとも一致しています。同書では、「耳垢の湿潤型は日本人で20%にすぎず,、中国人4%、朝鮮人8%、琉球人40%、台湾高砂族70%、ミクロネシア人60%、アイヌ人100%、ドイツ人90%以上である」と報告されています。これらのデータは、ワキガ症の発生率に影響を与える遺伝的要因が、地域によって大きく異なることを示しており、人類の遺伝的多様性を理解する上で重要な示唆を提供しています。
未来ではもっとワキガの人が増える?
腋臭症が優性遺伝であることは、将来的に遺伝子型GGやGAの人口が増加すれば、腋臭症の頻度も増加する可能性を理論的には示唆しています。しかしながら、遺伝子の分布は人口動態や進化的要因によって変化し得るため、ワキガ症が優性遺伝であるからと言って、必ずしも腋臭症の増加を意味するわけではありません。遺伝学は非常に複雑な分野であり、さまざまな要因が相互作用しています。また、遺伝的要因が腋臭症発症の要因であることは確かですが、症状の発現やその強弱には環境や生活習慣、ホルモンの変動など、遺伝以外の要因も大きく関わっています。
まとめ
このブログ記事では、ワキガ症が遺伝する理由とその確率について詳しく解説しました。特に思春期の子供にとって、ワキガ症は繊細かつ重要な問題です。親がワキガ症の遺伝に関する知識を持つことで、子供のワキガ症に早期から適切に対応することが可能になります。子供自身も、家族内でワキガ症がある場合、日常生活における対策を早期から学び、実践することができます。ワキガ症に対する日常的な対策は、症状の軽減に有効ですが、症状が深刻な場合は専門的な医師の診察を受けることをお勧めします。経験豊富な医師からの的確なアドバイスは、ワキガ症の適切な対応方法を理解し、実践するための大きな助けとなるでしょう。ワキガ症は多くの人々に影響を与える問題ですが、適切な知識と対策により、その影響を最小限に抑えることが可能です。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。ビューホットを日本にいち早く導入し、スソワキガに対するビューホット治療を日本で最初に行った。ワキガ、スソワキガの治療例はこれまで延べ1万人を超える。
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2023/10/26
院長ブログトップ > ワキガの臭いを強くする要因とその日常対策
ワキガの臭いを強くする要因とその日常対策
ワキガの臭いが強くなる要因としていくつかのポイントが挙げられます。それを理解することで、日常生活の中で臭いを抑える方法も見えてきます。以下に、臭いの強まる要因と対処法を詳しく解説します。
ワキガの臭いを強くする主な要因
1 交感神経の活動が活発
ワキガの根本的な要因はアポクリン汗腺にあることは過去のブログ等で紹介しました。このアポクリン汗腺は、交感神経という自律神経によって制御されています。従って交感神経の活動が活発または交感神経とバランスを取っている副交感神経より交感神経の活動が優位になっている時にアポクリン汗腺からの汗(アポクリン汗と言います)が多くなり、ワキガ臭が強くなります。
2 常在菌の増殖
アポクリン汗に含まれる物質(N-アセチル-5-メチルオルニチン)がジェイケイ菌など皮膚の常在菌により分解されることで3-メチル-2-ヘキセン酸という化合物を生成し、これが山羊臭と同じワキガ臭の主な原因となります(以前のブログ参照)。常在菌は皮脂の増加している条件で増殖が強くなり、ワキガ臭が強くなる要因となります
3 体温の上昇
体温が上がると、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方が活動的になり、結果として臭いが増強します。
4 衣服の問題
ポリエステルなどの合成繊維は、その特性上、臭いの原因となる微生物(常在菌)の繁殖を助けることが知られています。また、通気性の悪い衣服や合成繊維の衣服は、汗の蒸発を阻害し、皮膚上の湿度、温度も上げることがあります。これにより、皮膚上の細菌が繁殖しやすくなり、ワキガ臭が強くなることがあります。
日常生活でのワキガ対策
1 交感神経優位にしない
人間はストレス、疲労、睡眠不足の状況下では交感神経優位となります。リラックスする方法を見つけ、適切な休息をとることで、交感神経の過度な活動を防ぎ、ワキガ臭を軽減できます。また、緊張時には交感神経がかなり優位に働いているのでワキガ臭が現れることは避けられません。ただ、緊張後にすぐに脇をウェイトティッシュ等で拭き取ればワキガ臭が強くなるのは抑えられます。
2 皮脂が増える時期を知る
女性は、月経前と月経時に体内エストロゲン濃度が低下し、皮脂の増加を招きます。この時期にニキビに悩まされる女性も多いですが、脇の皮脂を増えることで常在菌が増殖しやすい環境となっており、わきが臭も強くなります。また、この時期は体温の上昇もあり、アポクリン汗腺自体の活動がそもそも活発になりやすくなります。
この時期は特に小まめに脇を拭き取ることでにわきが臭を抑えるとよいです。
3 衣服選び
ポリエステルなどの合成繊維は、その表面構造が天然繊維とは異なり、汗や皮脂を吸収しにくい性質があります。一方、綿 (100% Cotton)は天然繊維であり、吸湿性が高く、汗を素早く吸収し、蒸発させる能力があるため、臭いの蓄積を減少させます。ウールも天然の繊維で、特にメリノウールは臭いを抑える性質があると言われています。竹 (Bamboo)も抗菌性と吸湿性があり、臭いを抑えるのに役立ちます。腋臭症の臭いを抑えるための衣服の素材選びは、重要です。総じて、腋臭症を抑えるためには、天然繊維の衣服や抗菌性を持つ衣服を選ぶと良いでしょう。
まとめ
ワキガの臭いの原因を正確に理解し、それに対する適切な日常生活の対策を行うことで、その不快な臭いを軽減することが可能です。ただし、これらの対策だけで効果が見られない場合は、専門の医療機関ではボトックス治療、ビューホット、手術などで治療が可能ですので、相談することをおすすめします。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。腋臭多汗症治療はこれまで延べ1万人を超える。
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2023/10/25
院長ブログトップ > ワキガ発症の理由にJK
ワキガ発症の理由にJK
JK(ジェイケイ)ときくと「女子高生?」と思うかもしれませんが、決してそうではありません。ジェイケイ菌です。正確にはCorynebacterium jeikeium、コリネバクテリウムジェイケイ菌と書きますが、略してジェイケイ(JK)です。この皮膚の常在菌がワキガの独特な臭い、俗に言う「ワキガ臭」を発生させる一番大きな要因です。
ワキガ臭のメカニズム
そもそもどうして腋臭症と言われる独特の臭いを発生するのでしょうか?詳しいメカニズムを説明します。
1.交感神経が刺激されて汗が分泌された時、脇などにあるアポクリン汗腺から汗が分泌されます。このアポクリン汗腺をアポクリン汗と言います。人間には2種類の汗腺があり、アポクリン汗腺のほかに、全身の皮膚にあり、体温の調整などを主な役割をするエクリン汗腺というものがあります。エクリン汗腺はわきが臭の発症には直接は関与しません。
2.腋臭症のかたはこのアポクリン汗にN-アセチル-5-メチルオルニチン(またはそれに類似する化合物)が多く含まれます。
3.N-アセチル-5-メチルオルニチンは、前述したジェイケイ菌等の皮膚上の細菌によって分解されることで3-メチル-2-ヘキセン酸(以後、TMHA)という化合物を生成し、これがワキガ臭の主な原因となります。
3-メチル-2-ヘキセン酸とは
3-メチル-2-ヘキセン酸は英語表記3-methyl-2-hexenoic acidでしばしばTMHA略されます。TMHAの化学式はC7H12O2で、不飽和短鎖脂肪酸です。私たちの生活の中でTMHAが唯一登場するのは山羊の臭いです。言い換えると、山羊の臭いとわきが臭は同じです。わきが臭は腐ったチーズのような臭いとしばしば例えられますが、これは誤った表現です。腐ったチーズのような臭いはイソ吉草酸の臭いで、別の化学物質です。
JKをなくせば治るのか?
皮膚の表在菌であるJK(ジェイケイ菌)がワキガ臭に深く関与しますが、ジェイケイ菌は常在菌であるためになくすことはできません。入浴やシャワーで皮膚上の細菌を一時的に減少させることは可能ですが、細菌は皮膚の奥深くや毛穴内に生息しているため、入浴後も生き残り、環境が適してくると急速に増殖を開始します。
ジェイケイ菌は洗ってもなくならない
元々人類は皆ワキガ症
アポクリン汗のN-アセチル-5-メチルオルニチンという物質がワキガ発症のポイントです。人類学上ではヒトのABCC11遺伝子の538G→538Aの突然変異によって、N-アセチル-5-メチルオルニチンという物質が発生しなくなりました。ワキガ症の遺伝について詳細は以前のブログ「親がワキガだと子もワキガ?」もご参照ください。
歴史的には、全ての人間がGGジェノタイプ(湿った耳垢)を持っていたと考えられています。しかし、ある時点で538G→538Aの変異が登場し、これが乾燥型の耳垢を持つAAジェノタイプを持つ個体を生み出したと推測されています。この変異は、時間とともに特定の地域や東アジアの人々で拡大しました。この変異の出現と拡散の具体的な時期や理由については完全には解明されていませんが、一部の説では、寒冷な気候や特定の生態系における適応としてこの変異が有利であった可能性が指摘されています。
※538G→538AとはABCC11遺伝子の538番目の位置におけるヌクレオチド(DNAの鎖)の変化を示しており、ここでは、グアニン(G)がアデニン(A)に変わる変異を指しています。
まとめ
わきが臭の関与には皮膚の常在菌であるJK(ジェイケイ菌)が深く関与しますが、ジェイケイ菌をなくすことはできません。ワキガの発症には遺伝的要因が大きいので、ご自身が腋臭症なのか、ご心配な場合は、美容外科などの専門医に相談されることをおすすめします。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。腋臭多汗症治療はこれまで延べ1万人を超える。
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2023/10/24
院長ブログトップ > 親がワキガだと子もワキガ?
親がワキガだと子もワキガ?
腋臭、一般的にワキガとして知られるものは一般的な悩みの一つですが、この臭いの強さやリスクはどの程度が遺伝に起因するのでしょうか?
遺伝子の役割
ワキガと遺伝の関係を語るうえで欠かせないのが、ABCC11という遺伝子です。この遺伝子は、アポクリン汗腺から分泌される特定の化合物「N-アセチル-5-メチルオルニチン」という物質の生成に関連しています。この化合物が皮膚上の特定の細菌、特にコリネバクテリウム属の細菌によって分解されると、3-メチル-2-ヘキセン酸(イソ吉草酸)というワキガの主要な原因となる化合物が生成されます。
ABCC11遺伝子のバリエーションとワキガ
私たちの体は、遺伝子と呼ばれる情報の塊で動かされています。これらの遺伝子は、特定の特性や性質を持つための「設計図」のようなものです。この設計図には、小さな変更やバリエーションが存在します。これらのバリエーションはSNPと呼ばれます。
ABCC11という遺伝子には、ワキガと関連した特定のSNP(バリエーション)が存在します。このバリエーションによって、人々は「乾燥型」または「湿潤型」の耳垢を持つことが判明しており、それぞれのタイプは腋臭のリスクとも関連しています。バリエーションには次の3つの型があります。
■乾燥型(AA 型): 腋臭のリスクが低い。
■湿潤型(GG 型): 腋臭のリスクが高い。
■中間型(GA型): 腋臭のリスクが中程度。
※耳垢のタイプと腋臭にリスクの関係性について多くの研究で証明されています。
自分は何タイプか?
血液型と同じように考えてください。ABO血液型の組み合わせはAA、AO、BB、BO、AB、OOとありますが、この際、AA、BB、ABの3つだけで考えてください。
親がAA型であれば、メンデルの法則に従って、子は必ずAA型となります。
ワキガと関係があるABCC11遺伝子についても両親がGG型(湿潤型)だと、子は必ずGG型となります。一方、両親がAA型(乾燥型)だと、子はワキガ症にはならないです。
ワキガの発生とリスク
GA型を持つ人々は、腋臭のリスクがAA型に比べて高く、GG型に比べれば低いと考えられます。ですので、GA型を持つ人がGG型とAA型の間の半分程度の腋臭を持つと意味ではありません。あくまでもGA型は、二つの異なるバリエーションを持つ状態を指し、腋臭症が発症するリスクの目安と考えてください。しかし、発症率や臭いの強さは遺伝的要因だけでなく、環境、食生活、生活習慣、ホルモンの変動、皮膚上の細菌のバランスなど、多くの要因によって影響を受けます。
ワキガの地域差
遺伝的研究によれば、AA 型(AA genotype)は特に東アジア地域で一般的です。AA 型は北から南、東から西へと徐々に減少する地理的な勾配を持ち、具体的には、中国人や韓国人においてAA 型(耳垢が乾燥型)の頻度が非常に高いことが示されています。これらの事実から、AA 型は北東アジアで生まれ、その後世界中に広がったと考えられ、中国人や韓国人が腋臭のリスクが低い可能性が高いことを意味します。中国人は日本人と同じくらい臭いに過敏ということはよくききますが、これは中国人に非常に腋臭症の人が少ないということと関係がありそうです。
まとめ
両親がワキガ症の場合は、やはり子には高い確率でワキガ症が遺伝します。ただ、臭いの強さは遺伝的要因だけでなく、環境、食生活、生活習慣、ホルモンの変動、皮膚上の細菌のバランスなど、多くの要因によって影響を受けます。ご自身が腋臭症なのか、ご心配な場合は、美容外科などの専門医に相談されることをおすすめします。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。腋臭多汗症治療はこれまで延べ1万人を超える。
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