カテゴリー:にきび・ケミカルピーリング
2024/03/19
院長ブログトップ > 【白ニキビの原因と治し方】即効で治す方法とは?
【白ニキビの原因と治し方】即効で治す方法とは?
ニキビが初期段階で現れる白ニキビは、見た目の印象を大きく左右するし、「おでこに白ニキビが突然に大量発生した」や「生理前に顎に白ニキビが繰り返す」など症状が現れることもあるため、特に女性にとって深刻な悩みの一つです。一般的に白ニキビは、おでこ、鼻、鼻下、顎といった部位によく現れます。この記事では、そうした白ニキビが発生するメカニズムからその対処方法に至るまで、様々な側面から徹底解説していきます。
参照元:
What Is a Comedo? Understanding Blackheads and Whiteheads
白にきびとは
白ニキビ、医学用語では閉鎖型面皰(コメド)とも称されます。見た目は小さな白い点や盛り上がりとして現れます。触感は硬めであるものの、炎症を伴わないため、赤みは見られません。白ニキビという用語は炎症性の黄ニキビと混同されることがありますが、これらは全く異なる症状です。黄ニキビの特徴は、潰すと白っぽい膿が出ることであり、これが白ニキビとは異なる点の一つです。白ニキビは潰すべき対象ではなく、正しい理解と適切なケアが必要です。
↑白にきびと混同されやすい黄ニキビ
白にきびができるメカニズム
白にきびはニキビの初期段階の一つです。白ニキビは毛穴が皮脂や角質で詰まることから始まります。通常、皮脂腺は皮膚を潤すために皮脂を分泌しますが、過剰な分泌や角質の蓄積により毛穴が塞がれると、白ニキビが形成されます。この白ニキビの状態から細菌の増殖が始まると、白ニキビから赤ニキビと言われる炎症性ニキビに移行します。詰まった毛穴は細菌の増殖に適した環境を作り出し、これが炎症や赤ニキビへと進行する原因になるのです。
白にきびができやすい部位
白ニキビは、特に顔のTゾーンとして知られる領域 — おでこ、鼻、鼻下、あご — に頻繁に発生します。これは、これらの部位には皮脂腺が豊富にあり、その結果として皮脂の分泌が活発であるためです。さらに、白ニキビは背中や胸部といった他の部位にも現れることがあり、これらの領域でも皮脂腺の活動が盛んな場所に白ニキビが形成される傾向があります。特に成人女性に多く見られる、おでこのニキビ、鼻ニキビ、顎ニキビは、これらの部位の皮脂腺の活動性が高いことが原因です。
白にきびの予防
白ニキビの予防には、日常のスキンケアと生活習慣の改善が重要です。以下に具体的な予防方法について詳しく述べます。
■洗顔
優しい洗顔:洗顔料は肌に優しいものを選び、強くこすらずに優しく洗います。過剰な洗顔は皮脂を取り過ぎ、逆に皮脂の過剰分泌を引き起こす可能性があります。
適切な回数:1日に2回(朝と夜)が理想的です。特に夜の洗顔は一日の汚れやメイクをしっかり落とすことが大切です。
■角質ケア
穏やかなピーリング:定期的に角質除去を行い、毛穴の詰まりを予防します。ただし、肌に刺激を与え過ぎないように注意し、使用頻度を守りましょう。
■保湿
保湿の重要性:皮脂が多いからといって保湿を怠ると、肌が乾燥して皮脂の過剰分泌を招きます。適切な保湿は皮脂のバランスを整えるのに役立ちます。
適切な保湿剤の選択:肌質に合った、ノンコメドジェニック(毛穴を詰まらせない)の保湿剤を選びます。特に、オイルフリーや低刺激の製品がおすすめです。
■生活習慣の見直し
バランスの良い食事:健康的な食生活を心がけ、特に高GI(グリセミック指数)食品の摂取を控えます。
十分な水分摂取:水分不足は肌の乾燥につながるため、適量の水分を摂ることが重要です。
ストレスの管理:ストレスはホルモンバランスに影響し、ニキビを悪化させることがあります。リラクゼーションや趣味などでストレスを管理しましょう。
十分な睡眠:質の良い睡眠を取ることで、肌の修復・再生を助けます。
■日焼け止めの使用
紫外線対策:紫外線は皮膚のダメージを引き起こし、ニキビの悪化を招く可能性があります。日中は日焼け止めを使用し、適切な紫外線対策を行います。
■化粧品の選び方
肌に優しい化粧品:肌に刺激を与えない、ノンコメドジェニックの化粧品を選びます。
白ニキビの治療方法【塗り薬について】
日本皮膚科学会より発行されている「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」において面皰(白ニキビ)に対して推奨されている治療薬は塗り薬の過酸化ベンゾイルとアダパレンのみです。それぞれベピオゲル、ディフェリンゲルという商品名で多くの場合は処方されています。
■過酸化ベンゾイルとは
過酸化ベンゾイルを主成分とする塗り薬ではベピオゲルが先発医薬品で、2015年に発売された比較的新しい処方薬です。塗った過酸化ベンゾイルは皮脂腺内で分解され、強い酸化剤として作用し、アクネ菌の細胞壁を破壊することで、強力な抗菌効果を発揮します。また過酸化ベンゾイルは角質層を軟化させ、古い角質を除去する効果があります。これにより、毛穴の詰まりを防ぎ、ニキビの形成を予防すると同時に、既存のニキビを治療します。さらに、過酸化ベンゾイルには炎症を軽減する作用があり、ニキビに伴う赤みや腫れを減少させます。使用上の注意点としては、過酸化ベンゾイルは布などを漂白する性質があるため、使用時には衣類やタオルなどに注意が必要です。
■アダパレンとは
アダパレンを主成分とする塗り薬ではディフェリンゲルが先発医薬品で、2008年に日本国内では発売されました。アダパレンは合成レチノイドであり、ビタミンAの誘導体です。アダパレンは皮膚の角質層の正常化を促進し、毛穴の詰まり(コメド)の形成を防ぎます。また、アダパレンには、ニキビの炎症を減少させる抗炎症作用があります。これは、炎症を引き起こす細胞因子の活動を抑制することによるものです。さらに、 いくつかの研究では、アダパレンが皮脂腺の活動を調節し、皮脂の過剰な分泌を抑える可能性が示唆されています。使用上の注意として、アダパレンは光に敏感なので、使用中は日焼けを避けるか、日焼け止めを使用することが推奨されます。また、妊娠中や授乳中の女性には使用できません。
参照元:
白ニキビの治療方法【飲み薬について】
白ニキビの治療に関して、一般的な抗生剤の内服は推奨されていません。これは、白ニキビに対してこれらの薬剤が効果的ではないという医学的見解に基づいています。一方で、漢方薬は皮膚科での処方が一般的ですが、これらの薬剤の使用は特定の条件下でのみ推奨されます。具体的には、日本皮膚科学会のガイドラインでは、「面皰に,他の治療が無効,あるいは他の治療が実施でき ない状況では,荊芥連翹湯を選択肢の一つとして推奨する。黄連解毒湯,十味敗毒湯,桂枝茯苓丸については, 行ってもよいが推奨はしない」との立場を取っています。これらの情報から、白ニキビ治療における飲み薬は非常に限定的な選択肢であることが理解されます。
白ニキビの治療方法【薬以外の手段について】
■ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは「効果の確実性がない」、効果が現れるまで回数を重ねる必要があある」、「再発する」というデメリットが多いことが私はケミカルピーリングはすすめません。ニキビのガイドラインでは「面皰に,標準治療が無効あるいは実施できない場合にグ リコール酸あるいはサリチル酸マクロゴールによるケ ミカルピーリングを選択肢の一つとして推奨する」とあります。
ケミカルピーリングは、白ニキビ治療の選択肢の一つとして知られていますが、私の考えではケミカルピーリングはあまりおすすめしません。ケミカルピーリングには確実な効果を期待するのが難しく、目に見える改善を得るためには何度も施術を繰り返す必要があり、さらに治療後の再発の可能性もあります。日本皮膚科学会ののガイドラインでは「面皰に,標準治療が無効あるいは実施できない場合にグ リコール酸あるいはサリチル酸マクロゴールによるケ ミカルピーリングを選択肢の一つとして推奨する」とあります。
■アグネス
白ニキビ治療において、私は特にアグネス治療法の適用を推奨します。白ニキビが多数発生した場合や、迅速な治療を希望する場合、また従来の薬物療法で十分な効果が得られない場合には、アグネスが特に有効です。アグネス治療法は、白ニキビを一つ一つ熱分解し、根本的に破壊する方法です。これにより、治療部位からのニキビの再発を防ぎます。通常の白ニキビ治療では、外用薬などの保険診療が主に行われますが、これらの薬物療法が1ヶ月経っても改善が見られない場合、アグネス治療への移行を検討することを推奨します。白ニキビが進行し、赤ニキビや黄ニキビといった炎症性の病変に変化すると、ニキビ跡が残りやすくなります。これらは治癒後も長期間影響を及ぼす可能性があります。薬物療法と比較して侵襲性が高いとはいえ、アグネス治療は初期段階から効果的であるため、その選択が望ましいと考えます。特に、塗り薬による治療中に炎症を伴うニキビが悪化するリスクや、瘢痕(キズ跡)を残す危険性を考慮すると、早期のアグネス治療の検討が重要です。効果的な治療を求めるならば、アグネス治療の早期導入を考えるべきでしょう。
白ニキビについてよくあるご質問
Q:白ニキビはどうしたら治りますか?
A:塗り薬で治療するのが一般的です。塗り薬でも治らない場合や、すぐに治したい場合はアグネスをおすすめします。
Q:白ニキビは自然に消えますか?
A:洗顔を心掛け、ストレスをためない規則正しい生活と良い食生活を心掛ければ、自然に治ることもあります。
Q:白ニキビを一晩で治す方法はありますか?
A:アグネスは1回の治療治ります。アグネス治療法は、白ニキビを一つ一つ熱分解し、根本的に破壊する方法です。これにより、治療部位からのニキビの再発を防ぎます。
Q:白ニキビが治らない時はどうすればいいですか
A:アグネスを推奨します。アグネス治療法は、白ニキビを一つ一つ熱分解し、根本的に破壊する方法です。これにより、治療部位からのニキビの再発を防ぎます。
Q:白ニキビは潰した方がいいですか?
A:白ニキビは潰すべきではありません。潰すことで炎症が起こり、跡を残す可能性があるからです。
Q:白ニキビはホルモンバランスと関係がありますか?
A:すべてのニキビはホルモンバランスと関係することがあります。女性の多くはこのため月経前にニキビの悪化を感じます。
Q:白ニキビは何日で治りますか?
A:白ニキビの治癒期間は、その大きさ、重症度、および治療方法によって異なります。通常、適切なスキンケアと治療を行った場合、白ニキビは数日から1週間程度で改善することが多いです。しかし、ニキビの状態や個人の肌質、生活習慣などによって治癒にかかる時間は異なります。なかなか治らない場合は塗り薬やアグネスによる治療をお勧めします。
Q:ニキビを潰した時に出てくる白い芯は何ですか?
A:ニキビを潰したときに出てくる白い芯には、皮脂、死んだ皮膚細胞(角質)、細菌(アクネ菌)、白血球の残骸(膿)が含まれます。これらの混合物が圧力によって外部に押し出されるとき、一般的に見られる白い芯となります。
Q:白ニキビは保湿しない方がいいですか?
A:白ニキビがあっても保湿は重要です。保湿を怠ると肌が乾燥し、皮脂の過剰な分泌や肌トラブルを引き起こす原因となることがあります。
Q:白ニキビを潰さないとどうなる?
A:ニキビを無理に潰すと、炎症を引き起こし、ニキビ跡が残る可能性があります。また、感染のリスクも高まります。白ニキビは早期に塗り薬またはアグネスを受けるべきです。
Q:白ニキビを放置するとどうなる?
A:軽度の白ニキビは適切なスキンケアを続けることで、自然と治ることがあります。しかし、スキンケアが不適切だったり、他の刺激に晒されたりすると、白ニキビが赤ニキビなどに悪化することもあります。
Q:潰したほうが良いニキビは?
A:黄ニキビと言われる、白い頭(膿)が表面に近くにある場合で、簡単に排出できそうな状態の場合のみ潰したほうがいいです。
Q:白ニキビは皮膚科に行くべきですか?
A:数個の白ニキビで、重度の炎症や痛みを伴わない場合はホームケアでも自然に治ることもあるためすぐに皮膚科に行く必要がないですが、白ニキビが多数ある、または繰り返し出現する場合、皮膚科またはニキビ治療を専門とする美容外科を受診すべきです。
Q:白ニキビはどの順番で悪化しますか?
A:赤ニキビ→黄ニキビ→紫ニキビの順に悪化するのが典型的ですが、必ずしもこの順番で悪化するとは限りません。
Q:白ニキビを潰すとはどういうことですか?
A:白ニキビを潰すというのは、文字通りにはニキビの頭を圧迫して、中に蓄積された内容物(皮脂、古い角質、細菌など)を外に出す行為を指します。白ニキビは毛穴が詰まって形成されるため、中には白い膿のようなものが溜まっていることがあります。ただし、白ニキビを潰すことは跡になってしまう可能性があるため推奨されません。
Q:白ニキビは取るべきですか?
A:白ニキビを「取る」、つまり自分で潰す行為はやめるべきです。
Q:白ニキビは膿が溜まる?
A:白ニキビは膿が溜まるものでは通常はありません。白ニキビ(閉鎖型コメド)は、毛穴が皮脂や角質で詰まってできるニキビの初期形態です。これらの白ニキビは、表皮の下に閉じ込められた皮脂や角質の塊が白く見えることからその名がついています。
Q:白ニキビができる理由は何ですか?
A:白ニキビの発生には複数の原因が関わっています。主な理由としては、皮脂の過剰分泌、毛穴の詰まりです。これはホルモンの変化、不適切なスキンケア、栄養バランス、ストレスなどにより誘発されたりします。
まとめ
白ニキビは、生活習慣の改善と適切なスキンケアを通じてその発生を抑えることが可能です。一見、軽微な肌トラブルに見える白ニキビも、放置することで赤ニキビや炎症を伴うニキビへと進行する可能性があります。このため、白ニキビの早期発見と迅速な対処は肌の健康を守る上で非常に重要です。特に、アグネス治療は白ニキビに対する効果的な手段として推奨されます。この記事が白ニキビに悩む方々にとって、一助となることを心より願っています。白ニキビに関する正しい理解と適切な治療選択が、美しい肌への第一歩となるでしょう。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
【アグネスに効果がない!】科学的検証に基づくアグネスの真の効果
2024/03/16
院長ブログトップ > 【おでこと顎ニキビ】大人ニキビの特徴と治療
【おでこと顎ニキビ】大人ニキビの特徴と治療
美容と精神的なストレスを左右する重要な問題であるニキビは、単に思春期の象徴としてだけではなく、大人においても深刻な悩みの種となっています。顔面や頚部、そして体幹にまで及ぶ面皰(白ニキビ等)や炎症性病変(赤ニキビ等)が、ニキビ特有の症状として現れます。ニキビは思春期に限定された皮膚疾患であると考えられがちですが、実際には多くの大人、特に女性においては思春期を過ぎても悩まされる「大人にきび」が存在します。この記事では、おでこや顎によくできる大人ニキビがなぜ発生するのか、その特徴は何か、そして最適な治療法について、深く掘り下げて考察していきたいと思います。
大人ニキビとは
大人ニキビは、学術用語では「Postadolescent acne」と称され、思春期を過ぎた後も続くニキビのことを指します。この用語を日本語に訳せば「思春期以降のニキビ」となりますが、専門的な日本語の医学用語は存在しません。医学界においては、Postadolescent acne(大人にきび)を25歳以上の人々に発生する尋常性痤瘡(ニキビ)と定義しています。統計的には、男性よりも女性の方が大人にきびに悩まされるケースが多いことが知られています。これはホルモンバランスの変化、生活習慣、ストレスレベルなど、様々な要因が複合的に作用していると考えられています。また、おでこや顎が大人ニキビの好発部位とされています。これについては後に詳細に解説します。
参照元:
Adult Acne Versus Adolescent Acne: A Retrospective Study of 1,167 Patients
女性の大人にきびの実態
女性のにきびは、年齢によってその発症傾向に顕著な差異が見られます。女性のニキビは、年齢が上がるにつれてにきびの有病率が減少する傾向が明確に確認されています。統計によると、16歳の時点で被験者の約70%がにきびを経験しており、これは思春期の特徴とも言えます。しかし、18歳を過ぎると、にきびの有病率は徐々に減少し、20代女性では約半数、30代では4分の1、そして40代では10%以上の女性が依然として臨床的に重大なにきび(顔の片側に4個以上の炎症性病変または面ぽうが存在する状態)に悩まされていることが分かっています。一方で、閉経を迎えるとにきびの発生頻度は大幅に減少し、51歳以上の女性では臨床的に有意なにきびの発生率は5%未満にまで下がることが観察されています。
参照元:
Acne vulgaris in women: prevalence across the life span
女性の大人ニキビのメカニズム
女性の大人ニキビは、その発生メカニズムにおいて他のニキビと共通する要因が複数存在します。ニキビ病変の形成には、皮膚の局所的な変化が大きく関与しており、その主要な要因として毛包の角化異常、過剰な皮脂分泌、アクネ菌の増殖、そして炎症の4つが挙げられます。これらのプロセスが複雑に絡み合い、大人ニキビの形成に至ります。特に、過剰な皮脂分泌と毛包の異常な角化は、白ニキビや黒ニキビと呼ばれる面皰(コメド)の形成に直接的に寄与しています。面皰はニキビの最も初期的な病変であり、その形成過程はニキビの発展に重要な役割を果たします。さらに、この面皰(コメド)が破裂したり、過剰な皮脂によりアクネ菌が増殖したりすると、結果として炎症性病変として知られる赤ニキビや黄ニキビが発生します
大人ニキビの原因
大人ニキビの発症要因に関しては、現在も完全な解明には至っていませんが、複数の要素がその原因として考えられています。特に女性における大人ニキビの発症には、アンドロゲン(男性ホルモンの一種)の増加、月経周期の変動、喫煙、そして化粧品の使用が密接に関連している可能性が指摘されています。
■アンドロゲン
アンドロゲンは、皮脂の産生を促進し、皮膚の皮脂腺の成長を刺激する役割を担っています。一般に男性ホルモンとして知られるアンドロゲンですが、女性の体内にも存在し、そのバランスが重要です。近年の研究では、大人ニキビを持つ女性の中でアンドロゲンレベルが顕著に上昇しているケースは比較的少ないものの、アンドロゲンの増加が引き起こす他の症状、特に脱毛症が注目されています。高アンドロゲン血症という状態は、女性における内因性の疾患や、外因性の要因によって引き起こされることがあります。内因性高アンドロゲン血症の最も一般的な原因は多嚢胞性卵巣症候群ですが、遅発性副腎過形成、卵巣の肥大症、卵巣腫瘍や副腎腫瘍なども原因となり得ます。一方で、外因性高アンドロゲン血症は、ステロイドの投与やテストステロンの補充によって起こり得ます。また、黄体ホルモンのみの避妊薬(抗アンドロゲン作用を持つエストロゲンを含まないもの)がニキビの発生に寄与する可能性も研究によって示されています。内因性高アンドロゲン血症は比較的な珍しい疾患ですが、ストロイド内服やピルは日常において使用している可能性がありますので注意が必要です。
■生理周期(月経周期)
大人ニキビと生理(月経周期)の関係性については、多くの女性がその相関を経験的に認識していますが、実際に統計的な裏付けが存在します。様々な研究がこの関係性を明らかにしており、大人ニキビを持つ女性の中には最大83%が生理前にニキビの再燃を経験していることが分かっています。さらに別の研究では、18歳から44歳の大人ニキビを有する女性41人のうち、63%が生理前に炎症性病変の数の増加を示し、存在する炎症性病変の数は25%増加していたと報告されています。生理前の肌の変化におけるメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、一つの仮説として、生理前の期間中に毛穴の毛乳頭開口部のサイズが小さくなり、皮脂腺内での皮脂の蓄積が増加することが、生理前(月経前)の炎症の原因となっている可能性が指摘されています。
参照元:
Quantitative documentation of a premenstrual flare of facial acne in adult women
■喫煙
近年、女性における大人ニキビと喫煙との関連性についての研究が積極的に行われています。これらの研究によると、特にニコチンが大人ニキビの発生要因である皮脂の過剰産生や角化異常に対して影響を及ぼす可能性があると指摘されています。また、喫煙によるストレスの増加や体内の抗酸化物質の減少も、皮膚の炎症やニキビの悪化に関与しているとされています。このように、喫煙は女性の大人ニキビの発症や悪化に影響を与える重要な要因の一つとして認識されています。
参照元:
■化粧品
化粧ニキビ、すなわち「acne cosmetica」とは、化粧品や毛髪製品の使用に起因するニキビの形成を指す医学用語です。化粧ニキビは、化粧品に含まれる特定の成分が毛穴を塞ぐことにより生じると考えられています。この結果、皮脂や汚れが毛穴内に蓄積し、炎症を引き起こすことがあります。特に、油性や重いテクスチャの化粧品がこの種のニキビの形成に寄与することが一般的です。
■ストレス等、その他の要因
大人ニキビに影響を与える可能性のある要因は多岐にわたります。特にストレス、食生活、遺伝的な背景などは、大人ニキビの発症に関与しているとされています。女性の大人ニキビに関する一つの症例対照研究では、ニキビを有する女性248人と対照群270人を対象に分析を行いました。この研究では、思春期ニキビの既往歴、家族歴、妊娠歴の有無、多毛症、オフィスワークに従事していること、心理的ストレスの高さ、さらには果物、野菜、魚の食品の1週間の摂取量の少なさなどが、大人ニキビと関連していることが示唆されました。また、ある調査では顎ニキビのある女性は会社員として就業していることが多く、日々のストレスレベルが高いこと、仕事自体が心理的ストレスになっていることが高いことも明らかになっています。しかしながら、これらの結果を裏付けるためには、さらに多くの研究が必要とされます。
参照元:
Adult female acne and associated risk factors: Results of a multicenter case-control study in Italy
大人ニキビの特徴
■発症時期
大人ニキビ、特に成人女性におけるその発症時期は、二つの主要なパターンに分類されます。第一に、最も一般的なのは思春期ニキビの持続型、すなわち「持続性ニキビ」です。このケースでは、思春期に始まったニキビが成人期に入っても引き続き続いている状態を指します。これに対して、第二のパターンとしては、「遅発性ニキビ」と呼ばれる、大人になってから新たにニキビが発症するケースがあります。現在のところ、持続性ニキビは遅発性ニキビよりもはるかに一般的です。研究データによれば、成人になってから初めてニキビが発症するケース、すなわち遅発性ニキビは全体の約10~20%程度に過ぎないとされています。
■ニキビの種類
女性の大人ニキビは、その種類において思春期のニキビと多くの共通点を持っています。一般的に、これらのニキビは面皰(白ニキビ)と炎症性にきび(赤ニキビ、黄ニキビ、紫ニキビ)の両方を呈することが多いです。面皰のみ、あるいは炎炎症性にきびのみが発生するパターンは比較的珍しいとされています。大人ニキビの発生部位としては、顔が最も一般的ですが、頸部や体幹にもしばしば病変が見られます。実際に、大人ニキビを持つ女性の約50%には体幹にも病変が確認されているという研究結果もあります。また、一般に女性の大人ニキビの重症度は軽度から中等度の範囲に収まることが多く、炎症性ニキビ(赤ニキビ、黄ニキビ、紫ニキビ)の数が多い場合は稀であるとされています。
■大人ニキビの分布
女性の大人ニキビには、その分布によって2つの主要なタイプが存在します。
白ニキビ多数タイプ:このタイプでは、特に顔の上部やさまざまな部位に白ニキビ(面皰)が多く見られます。このタイプの特徴としては、炎症性のニキビ(赤ニキビ)が比較的少ないことが挙げられます。白ニキビの分布パターンは、顔全体ですが、特におでこなどの顔上部に顕著に見られることが多いです。大人にニキビとして「おでこのニキビ」を悩む女性が多いですが、これはこの「白にきび多数たイプ」に分類されます。
↑白ニキビ
顎ニキビタイプ:こちらのタイプは、顎周りや口の周辺、フェイスラインなど、顔の下半分に炎症性病変(赤ニキビ、黄ニキビ、紫ニキビ)が現れることが特徴です。この分布がどのようにしてこのように生じるのかは、現時点では明確には解明されていません。ある研究では、顎ニキビのある女性は、会社勤務している率が高く、日々のストレスレベルが高いと報告し、仕事の心理的ストレスが大人の顎ニキビの要因になっている可能性が高いとあります。従来、女性の大人ニキビは顔の下部、特に顎に集中する傾向があると考えられていました。しかし、最近の研究によると、顎に限局したニキビを持つ女性は全体のわずか11%に過ぎないことが明らかにされています。
赤ニキビ
大人ニキビの診断
大人ニキビの診断は、主に患者の肌の状態を視診することによって行われます。ただ、稀ですが、アンドロゲン亢進症の可能性が示唆される身体的な徴候が見られる場合には、追加の検査が推奨されます。アンドロゲン亢進症は、女性において過剰なアンドロゲン(男性ホルモン)の影響が見られる状態を指します。この状態が疑われる場合、特徴的な徴候として以下のような症状が挙げられます。
・毛深さが増す
・男性型脱毛症(AGA)の兆候、例えば前頭部や頭頂部の薄毛
・クリトリスの異常な肥大
・月経周期の不規則性や月経不頻度
・不妊
・多嚢胞性卵巣症候群
これらの症状が見られる場合、血液検査を含むより詳細な検査を行い、適切な診断と治療方針を立てることが重要です。アンドロゲンレベルの異常は、大人ニキビの根本的な原因である可能性があり、それに応じた治療が必要となります。
大人ニキビの鑑別診断:類似疾患との区別
大人ニキビの診断においては、顔に発生する他の疾患との区別が非常に重要です。特に成人女性の場合、以下の疾患がニキビと似た臨床的特徴を示すことがあり、慎重な鑑別診断が求められます。
■酒さ
この一般的な炎症性疾患は、顔面中央部の炎症性丘疹、膿疱、毛細血管拡張、または紅斑を特徴とします。面皰がないことが多く、顔面中央部に特に現れることからニキビと区別できます。
■口囲皮膚炎
若年女性に好発するこの疾患は、口周囲に小丘疹の集簇を形成します。特徴的なのは、口唇の朱縁に隣接する皮膚が通常は影響を受けない点です。眼周囲皮膚炎としても現れることがあります。多くの場合、慢性的なステロイドの外用で発症します。
■その他
須毛部仮性毛包炎、薬剤性ざ瘡、痤瘡摘出(行動障害の一種)、細菌性毛包炎、フルンケル症(せつ)、好酸球性毛包炎、摩擦性ざ瘡、顔面播種状粟粒性狼瘡なども鑑別診断において考慮すべき疾患ですが、これらは比較的稀であるため、ここでは詳細には触れません。
大人ニキビの治療
大人ニキビの治療では、保険診療の範囲内で主に内服薬や外用薬を用いた薬物療法が行われます。この治療は思春期のニキビ治療と基本的には同様です。しかし、大人ニキビの特徴の一つとして、その悪化のスピードが早いことが挙げられます。したがって、初期段階での積極的な治療が推奨されます。私は初期段階からアグネスをおすすめします。アグネスは1回の治療でニキビを治す治療で、治療部位からはニキビの再発も起こりません。早い段階での積極的な治療が炎症による色素沈着や瘢痕形成を防ぐ鍵となります。具体的には、皮膚科で処方された薬による治療が1ヶ月経っても改善が見られない場合、次の治療ステップ、すなわちアグネス治療に進むことが重要です。大人ニキビは、炎症が進行すると跡が残りやすく、それらはニキビが治癒した後も長く影響を与えることがあります。そのため、薬物療法に比べて侵襲性が高くとも、初期から効果的な治療法を選択することが望ましいと考えます。これは、炎症を伴うニキビが、マイルドな治療中に悪化する可能性があり、瘢痕を残すリスクがあるためです。手遅れにならないためにも、治療は最初から最も効果的なアグネス治療を検討すべきだと思います。
大人にきびの後遺症
大人ニキビの後遺症として、炎症性ニキビの治療が成功しても、炎症後色素沈着や瘢痕形成といった問題が長期間にわたって患者を悩ませることがあります。特に、クレーター状やアイスピック状のニキビ跡、また皮膚の陥没を引き起こしたニキビ跡は、見た目にも非常に目立ち、患者の日常生活や心理的な健康に影響を与えることがあります。これらのニキビ跡の治療においては、「サブシジョン」という手法が推奨されます。サブシジョンは、皮膚下の繊維組織を切断することでニキビ跡を目立たなくする治療法で、特に深いクレーターや陥没を起こしたニキビ跡に対して有効です。
大人にきびのスキンケア
大人ニキビに悩む女性たちから頻繁に寄せられる質問の一つが、適切なスキンケア方法についてです。重要なのは、ニキビの病変部を摘んだり潰したりする行為を避けることです。これは瘢痕形成のリスクを高める可能性があります。代わりに、肌に優しい洗顔方法の選択が推奨されます。また、日々の保湿剤の使用により、皮膚の乾燥を防ぎ、炎症を抑制する効果が期待できます。スキンケア製品や化粧品に関しては、一般的にニキビ治療の専門医の多くは、ニキビ患者に「非面皰誘発性」および「非アクネジェニック」と表示された製品(保湿剤、クレンジング剤、化粧品など)の使用を推奨しています。これは毛穴を塞ぐ成分を含む製品の使用を避けることを意味します。さらに、メイクアップの一環としてファンデーションを使用する場合、油分を含む製品よりも「オイルフリー」の製品の選択が好ましいとされています。
大人にきびの予後
大人にきびは、年齢とともにその有病率が徐々に減少する傾向にあり、これは自然治癒の可能性があることを示唆しています。しかしながら、特に女性の場合は、長年にわたってにきびに悩まされることがあります。成人女性を対象に行われた調査研究によれば、にきびの平均発症年齢は16歳であり、患者は平均して約20年間にきびの症状に苦しんでいることが報告されています。また、妊娠が大人にきびに及ぼす影響については個人差があります。にきびは妊娠中に改善することもあれば、変化がないこともありますし、場合によっては悪化することも報告されています。これらの変動は、妊娠中のホルモンバランスの変化や体のストレスレベルなどの要因によって引き起こされる可能性があります。このように大人にきびの予後は様々であり、長期にわたるケースも少なくありません。
大人ニキビのよくあるご質問
Q:ストレスでおでこがブツブツするのはなぜ?
A:そのブツブツは白ニキビである可能性が高いです。大人ニキビはストレスで発症することが多く、おでこは大人の白ニキビの好発部位となるからです。
Q:彼氏にニキビはうつりますか?
A:ニキビは人に移りません。ニキビの原因となるアクネ菌はそもそも皮膚の常在菌であり、すでにすべての人に皮膚に存在する菌だからです。
Q:ストレスによるニキビの位置はどこですか?
A:ストレスによる大人ニキビは顔のどこにでもできる可能性はありますが、特におでこに白ニキビが多発しやすく、また、顎に赤ニキビができやすいとされています。この理由は不明です。
まとめ
この記事では、しばしば顎ニキビやおでニキビとして発生する大人ニキビの原因と治療方法について詳細に解説しました。大人ニキビの具体的な原因は現在も完全には解明されていないものの、月経周期、喫煙、ストレスが発症や悪化の要因として考えられています。治療方法としては、迅速かつ再発の少ない「アグネス」と呼ばれるニキビ治療が特に注目を集めています。アグネスによる早期治療開始は、ニキビによるストレスの軽減に寄与し、炎症後の色素沈着や瘢痕の形成を防ぐ上で最良の選択です。本記事が大人ニキビに悩む多くの方々にとって有益な情報源となり、悩みの解消に役立てばと考えています。大人ニキビという一見難治性の問題にも、適切な知識と治療法の選択により、効果的な対策が可能であることをお伝えしたいです。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
【アグネスに効果がない!】科学的検証に基づくアグネスの真の効果
ストレスとニキビ, 顎にきび, おでこニキビ, にきび, アグネス
2024/03/15
院長ブログトップ > 【ケミカルピーリングに効果がない?】医療の変遷と最新のニキビ治療
【ケミカルピーリングに効果がない?】医療の変遷と最新のニキビ治療
かつて、ケミカルピーリングは美容皮膚科の中でも特に注目され、多くの患者さんがその効果を求めて訪れました。しかし、ニキビ治療において最近の傾向として、ケミカルピーリングが徐々に他の新しい方法に取って代わられつつあります。特に、インターネット上では「ケミカルピーリングに効果がない」という声も散見され、この治療法に対する見方が変わりつつあるようです。本記事では、そんなケミカルピーリングの現状と、ニキビ治療としての有効性について、最新の医療情報をもとに詳しく解説していきたいと思います。
そもそもケミカルピーリングとは
ケミカルピーリングとは、ニキビ治療と肌質改善のために利用されるスキンケアの施術です。この施術では、サリチル酸やグリコール酸などの特別な化学薬剤を肌に塗布し、皮膚の表面層をゆるめて古い皮膚細胞を除去することで行われます。その主な目的は、皮膚の最外層である古い角質層を取り除き、新しい皮膚細胞を露出させることです。角質層が除去されることにより皮膚の自然な再生能力が促進され、肌の外観と質感が改善されます。また、ニキビは毛穴の詰まりによって発生するため、ケミカルピーリングはこの毛穴の詰まりを解消し、クリアな毛穴を維持することでニキビの出現を減らすのに効果的と言われてきました。
【ニキビ治療とケミカルピーリングの現実】効果と限界
かつてのニキビ治療では、飲み薬や塗り薬による改善が見られない場合、ケミカルピーリングが一つの有効な選択肢とされていました。私自身も、かつて多くの患者さんに対してこの治療法を推奨してきました。そして実際に多くの患者さんがこの方法で改善を見せてくれたことは事実です。当時、他に優れた治療法がなかったため、ニキビ治療においては、ケミカルピーリングが推奨されることが多かったのです。しかしながら下記の点がケミカルピーリングのデメリットでした。
■確実性がない
ケミカルピーリングの一つの大きなデメリットは、その効果の「確実性」の欠如です。一部の患者さんには顕著な改善が見られる一方で、別の患者さんにはほとんど効果が現れないこともありました。治療前には効果の有無を正確に予測することは難しく、結果は実際に治療を行ってみないとわからないというのが現実でした。
■時間がかかる
ケミカルピーリングは、一般的には2~3週間に1回のペースで施術を受けることが推奨されています。特にニキビ治療においては、明確な効果を実感するためには少なくとも5回程度の施術が必要とされることが多いです。これは、ケミカルピーリングが即効性を持つ治療法ではなく、時間をかけて徐々にその効果を発揮することを意味します。従って、患者さんにとっては、ケミカルピーリングを選択することが、一定の労力と時間を必要とする決断となります。これがケミカルピーリングの大きな難点です。
■再発する
ケミカルピーリング治療を繰り返し行ったとしても、その効果が顕著に現れたとしても、ケミカルピーリングの中止によってニキビが再発することは珍しくありません。この再発は、治療を受けた後も継続する皮脂の過剰分泌が原因の一つと考えられます。ニキビ治療においては、ニキビの根本的な原因に対処しなければ、一時的な改善に留まり、治療の中止後に症状が戻る可能性が高いのです。ケミカルピーリングでは皮脂分泌の改善といった根本的な解決には至らない場合が多いため、治療効果が一時的なものになります。
出典元:
ニキビのケミカルピーリングは時代遅れ
ケミカルピーリングがニキビ治療においてもはや時代遅れの方法であるとの見方が高まっています。その理由は以下の点に集約されます。
■治療の不確実性と時間的制約
ケミカルピーリングは効果の現れるまでに時間がかかり、患者様はその間、継続して治療を受ける必要があります。しかし、その効果は患者によって異なり、治療後の再発のリスクも存在します。
■より効果的な治療法の登場
現代医療には、より進んだニキビ治療法が登場しています。例えば、「アグネス」という治療法は、特に難治性のニキビに対して有効であり、1回の治療で顕著な改善が見られるとされています。さらに、アグネスは治療部位の再発リスクがほとんどないという利点も持っています。
■皮膚科学会の推奨ランクも高くない
最新の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」によれば、日本皮膚科学会はニキビ治療におけるケミカルピーリングの推奨度をC1と評価しています。このランクは、ケミカルピーリングを「標準治療が無効あるいは実施できない場合に選択肢の一つとして推奨する」という立場を示しています。簡単に言えば、ケミカルピーリングは「おこなってもいいけど、そんなに効果ができないかもしれない」という位置づけになっています。ちなみにガイドラインにおける各治療の推奨度は下記のようにランク付けされています。
A :行うよう強く推奨する
B :行うよう推奨する
C1 :選択肢の一つとして推奨する
C2:十分な根拠がないので推奨しない
D: 行わないよう推奨する
(尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドラインによる治療の推奨度分類)
出典元:
■皮膚科学会も時代遅れの治療と認識?
ケミカルピーリングは2000年代初頭に確立された技術であり、当時はこの分野における研究が活発に行われていました。実際、日本皮膚科学会からは2001年に初のガイドラインが発表され、2004年、2008年と改訂が進められていました。しかし、2014年にはグリコール酸ピーリングの有効性に関する限定的な研究(たった26人を対象とした研究)が発表されて以降、この治療法に関する主要な研究はほとんど見られません。この論文の数の減少は、ケミカルピーリングの治療効果に対する不確実性や限定的な効果を示唆しています。さらに、日本皮膚科学会のガイドライン自体が2008年以降改訂されていない点や、ケミカルピーリングについて世界的にも主だった研究論文が発表されていない点も、ケミカルピーリングの医療技術としての停滞を示唆しています。このことは、、ケミカルピーリングがニキビ治療においては、もはや時代遅れの治療ということを物語っています。
出典元:
日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第 3 版)
にきび跡にケミカルピーリングは無効
現在、一部の医療機関ではクレーター状のニキビ跡(萎縮性瘢痕)へのケミカルピーリング治療が行われていますが、これには十分な医学的根拠がないことをここで指摘します。最新のニキビのガイドラインによると、クレーター状のニキビ跡に対するケミカルピーリングの推奨度はC2であり、これは「十分な根拠がないので推奨しない」という意味を持っています。クレーター他場のニキビ跡の治療においては、サブシジョンという方法が現在最も効果的な治療法とされています。サブシジョンは、特殊な針を使用して皮膚の下の瘢痕組織を切断し、皮膚の凹凸を治す方法です。
【ケミカルピーリングの推奨】背景とクリニックの実態
ニキビ治療に関するインターネット検索で頻繁に目にするのが、ケミカルピーリングを推奨する美容皮膚科の存在です。では、多くのクリニックがケミカルピーリングを推奨する理由は何なのでしょうか?ここには、患者さんの最善の利益というよりは、クリニック側の実務的な理由が大きく関わっています。
■経営上のリスクの低さ
ケミカルピーリングは、高価な機器が必要な他の先進的な治療法とは異なり、クリニック側にとって低コストで実施できる治療です。数千円で揃えられる基本的な薬品で治療を開始できるため、経営上のリスクが比較的低いとされます。
■治療リスクの低さ
ケミカルピーリングはニキビを悪化させる可能性がほとんどなく、副作用も少ないため、治療としてのリスクが低いとされています。この安全性が高い側面が、患者への推奨につながる要因となっています。
■医師の負担の少なさ
ケミカルピーリングは多くの場合、看護師が行うため、医師の時間的な拘束が少ないのも特徴です。これにより、クリニック側の労力が軽減され、他の治療法よりも実施しやすい環境が整います。
これらの点を踏まえると、ケミカルピーリングが広く推奨される背後には、クリニックの経営や運営の実態が大きく影響していることが理解できます。しかし、医療の専門家として、常に患者の最善の利益を考え、進化する治療法から最良の治療方法を選択し提供する責任があります。この観点から、私はニキビ治療においてはケミカルピーリングを推奨することなく、まず「アグネス」という最先端の治療を優先して提案しています。アグネスは一回の施術で高い効果を発揮し、ニキビの再発リスクほとんどないことから、現代医療の進歩を体現する治療法の一つと考えています。
にきびのケミカルピーリングについてよくあるご質問
Q:ケミカルピーリングでニキビが増えたのはなぜですか?
A: ニキビ治療においてケミカルピーリングの効果が追い付かない場合があります。ニキビが悪化している段階では、その進行が急激なことが多く、ケミカルピーリングの効果が即座には現れないことがあります。その結果、ニキビが増えているように感じられることがありますが、これは実際にケミカルピーリングがニキビを悪化させているわけではありません。ケミカルピーリングは肌のターンオーバーを促進し、古い角質層を除去する効果がありますが、ニキビの進行速度に対応しきれない場合があるのです。このため、ニキビの状態が急激に悪化している場合には、ケミカルピーリングの効果が追い付かず、ニキビが増えているように感じられることがあります。
Q:ケミカルピーリングでニキビ跡を治すには何回くらい通う?
A: ニキビ跡の治療におけるケミカルピーリングの効果は、ニキビ跡のタイプに大きく依存します。例えば、色素沈着を伴うニキビ跡(シミのような跡)の場合、5~10回のケミカルピーリングで効果を実感することが可能です。一方で、クレーター状のニキビ跡に対するケミカルピーリングの効果は限定的です。日本皮膚科学会が発表しているガイドラインによれば、萎縮性瘢痕(クレーター状のニキビ跡)に対しては「十分な根拠がないので推奨しない」と明記されています。このため、クレーター状のニキビ跡には、ケミカルピーリングではなく、サブシジョンを検討することが推奨されます。
Q:ケミカルピーリングは1回で効果を実感できますか?
A: ケミカルピーリングによる即時の効果は一般的には期待しづらいです。ニキビ治療において、その効果を実感するには通常5回程度の施術が必要な場合が多いです。1回の治療ですぐ効果を求める場合は、アグネスをおすすめします。
Q:ケミカルピーリングでニキビ跡は消えますか?
A: ニキビ跡を完全に消すことは、どんな治療を行っても困難です。ケミカルピーリングの効果は、ニキビ跡の種類によって異なります。色素沈着として現れるニキビ跡の場合、5~10回程度のケミカルピーリングによって、シミのような跡は薄くなる可能性があります。しかし、クレーター状のニキビ跡に対しては、ケミカルピーリングはほとんど効果がないとされています。
Q:ケミカルピーリングはよくない理由やデメリットは?
A: ケミカルピーリングのよくない理由とデメリットには、その効果を実感するまでに必要な時間、個々の患者への効果の差異、そして治療後にニキビが再発する可能性があることが含まれます。ケミカルピーリングは、肌のターンオーバーを促進し、古い角質層を取り除く効果がありますが、これらの改善が顕著になるまでには数回の治療が必要なことが多く、効果が感じられるまでには時間と忍耐が必要です。さらに、患者ごとに肌の質や状態が異なるため、効果の出方に個人差があります。これに加え、治療が完了した後でもニキビが再発するリスクがあることは、患者さんにとって大きな懸念事項となり得ます。
まとめ
医療界は絶え間なく進化しており、最新の医学的知見に基づく治療法の探求が不可欠です。かつての主流であったケミカルピーリングは、ニキビ治療において、より確実で迅速な結果を提供する新しい治療法「アグネス」により、今や時代遅れの方法とみなされています。医療の進化に伴い、医師には最適な治療選択を提供する責任があります。この記事が、ニキビ治療を検討している方々にとって有益な情報源となることを心から願っています。常に最新の医療情報を追求し、患者さん一人一人に最適な情報を提供することが、医師としての私の使命です。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
【アグネスに効果がない!】科学的検証に基づくアグネスの真の効果
2024/03/14
院長ブログトップ > 【化粧品によるニキビ】化粧が原因のニキビについて
【化粧品によるニキビ】化粧が原因のニキビについて
化粧品に起因するニキビ、一般に「化粧ニキビ(acne cosmetica)」と呼ばれるこの状態は、化粧品が直接的な原因で新たに発生するニキビです。一方で、既存のニキビが化粧品の使用によって悪化することもしばしば見受けられます。これら二つは、化粧品がニキビの状態に影響を与えるという点で共通していますが、その性質は異なります。本記事では、これらの違いを明確にし、適切な化粧品の選び方と使用法を通じて、ニキビのない健やかな肌を目指すための知識を提供します。
化粧ニキビ(acne cosmetica)とは
化粧ニキビ(acne cosmetica)とは、化粧品が原因で発生するニキビのことを指します。特に、毛穴を詰まらせる傾向がある「コメドジェニック(comedogenic;ニキビを発生させる)」な化粧品によって引き起こされます。過去には、多くの化粧品がこのような性質を持っていたため、化粧ニキビの発生が一般的でした。これらの製品は、毛穴を詰まらせることでニキビを引き起こしやすい環境を作り出しました。当時は、ニキビを隠すためにさらに化粧を施すことで、問題が長引いたり、悪化したりするケースが頻繁にありました。しかし、最近の化粧品は「ノンコメドジェニック(noncomedogenic;ニキビを発生させない)」製品として、より肌に優しい方法で作られています。これにより、高品質の商品を正しく使用することで、化粧ニキビの発症は大幅に減少しました。。しかし、特に昔の化粧品のイメージを持っている人々の間では、今の化粧もニキビの初期発生に関係するという認識をもっているかたが多いのです。確かに、化粧によってニキビが発生することはありますが、その主な原因は化粧の過剰使用や不適切な使用方法にあります。
コメドジェニックな化粧品とは
コメドジェニックな化粧品とは、毛穴を詰まらせやすい成分を含んでいる製品のことを指します。これらの製品には、ポマードやヘアオイル、重い保湿剤、アイクリームなどが含まれます。特に注意すべき成分にはイソプロピルミリスチン酸、ラノリン、ステアリン酸ブチル、ステアリルアルコール、オレイン酸などがあります。また、藻類抽出物やココナッツオイル、アマニ油などもコメドジェニック性が高いとされています。これらの成分は肌に過剰な油分を与え、毛穴を塞ぎ、ニキビを誘発するリスクがあります。そのため、ニキビを予防するためには、これらの成分を避けることが重要です。
出典元:
Acne Cosmetica: Causes, Treatment, and Prevention
【化粧品とニキビ】悪化と発症の違いを理解する
化粧品が直接的な原因となって発生する「化粧ニキビ(acne cosmetica)」と、既存のニキビが化粧品の使用によって悪化するケースは、根本的に異なる問題です。化粧品によって新たに発生する化粧ニキビは、特定の成分が毛穴を詰まらせることで起こります。一方で、既に存在するニキビが化粧品の使用、特に過剰な使用によって悪化することはよくある現象ですが、これは主に思春期の人々に多く見られます。現代の化粧品は肌に優しい成分が使用されているため、適切な使用をすれば、化粧品がニキビの直接的な原因となることは非常にまれです。
ニキビを悪化させる化粧方法
化粧品の使用にはニキビへの悪影響があることが知られています。特に、複数の製品を使用する場合や、ダブルクレンジングのように肌に負担をかける洗顔方法を取り入れることで、ニキビが悪化するリスクが高まります。研究によれば、リキッドタイプのファンデーションやコンシーラーの使用も、ニキビの増悪につながるとされています。一般的には化粧品の使用がニキビを悪化させるメカニズムは以下のようになります。
■毛穴の詰まり
一部の化粧品には毛穴を詰まらせる成分が含まれています。これにより、皮膚が古い角質を排出し、過剰な皮脂を取り除くことが妨げられ、ニキビの発生に適した環境が作られます。
■肌の刺激
化粧品に含まれる刺激物質やアレルゲンが肌を炎症させ、ニキビの悪化させることがあります。
■細菌の閉じ込め
化粧品が肌に細菌を閉じ込めることで、炎症や感染を増大させ、ニキビを悪化させることがあります。
■肌のバリア機能の影響
強いメイク落としや製品によっては自然な肌のバリアを乱し、環境ストレスや細菌からの保護機能に影響を与えることがあります。
これらのリスクを最小限に抑えるためには、ノンオイルで、毛穴を詰まらせないノンコメドジェニック(noncomedogenic;ニキビを発生させない)製品の選択が重要です。また、どんなお化粧でも、毛穴を塞ぐ可能性があり、にきびを悪化させる要因となり得るため、すでに炎症があるニキビをもっている人は可能な限り化粧を控えたよいとされています。
参照元:
【化粧ニキビ発生の背景】原因とメカニズム
化粧ニキビの主な原因は、化粧品が肌の皮脂腺を詰まらせて発生することにあります。これは、皮脂が角質層の下で溜まり毛穴を塞ぐ一般的なニキビの発生とは異なり、化粧品成分が直接毛穴を塞ぐことで生じます。化粧品によるこの「化粧ニキビ」は、数十年前に比べればはるかに少なくなっています。それでも、「化粧ニキビ」は発生しています。一般的には、低水準で製造された安価な化粧品ブランドは、よりテストされたブランドよりも「化粧ニキビ」のトラブルを引き起こしやすいと言われています。良いブランドであればあるほど、「化粧ニキビ」が誘発される可能性は低くなります。さらに、肌によって敏感さが異なるため、ある安価なブランドではまったく問題がなくても、別のブランドではアレルギーに近い症状が出ることもあります。このように、化粧ニキビは化粧品に含まれる個々の成分に起因することもあります。
化粧ニキビの特徴的な症状
化粧ニキビは、特に化粧品を塗布した皮膚領域に生じる、比較的小さく均一な大きさの閉鎖性面皰(白ニキビ)が特徴です。これらのニキビは密集して出現することもありますが、すぐには現れず、発症まで数日から最大6週間かかることがあります。化粧ニキビは、月経前の増加といったストレス性ニキビの典型的な症状パターンを示さないことが多く、一般的には炎症を伴わない(赤ニキビや黄ニキビにならない)こともその特徴の一つです。
【化粧ニキビ診断過程】判断の基準
化粧ニキビの診断は、特定の化粧品の使用開始とニキビの出現の間の関連に基づいて行われます。もし新たに使用した化粧品の使用開始後にニキビが現れた場合、その製品が原因である可能性が考えられます。この場合、まずはその化粧品の使用を中止し、ニキビの変化を観察することが推奨されます。もし症状が改善しない場合は、専門の医師による適切なニキビ治療を受けることが重要です。
化粧ニキビの対策と治療
化粧ニキビの治療は、まず原因となっている化粧品の使用を停止することから始まります。同時に正しい化粧習慣の習得やノンコメドジェニックな化粧品の選択が重要です。化粧ニキビに対しては一般的なニキビ治療法を適用することも効果的です。さらに進行した場合には、ニキビの確実な治療法であるアグネス治療を受けるのがよいでしょう。
参照元:
【化粧ニキビの予防】日常のスキンケアでのポイント
化粧ニキビの予防には、毛穴を詰まらせる原因に注意し、日々のスキンケアを見直すことが効果的です。ノンコメドジェニック製品の選択は肌への負担を減らし、ポリエチレングリコール、グリセリン、アロエベラなどの成分は、低リスクです。オイルフリーの保湿剤の使用、ヘアワックスやヘアオイルを肌に触れないように適切に使うことも大切です。また、一日の終わりにはメイクをしっかりと落とし、メイクブラシも細菌や油分を取り除くために定期的に清潔に保つことが重要です。
にきびとお化粧についてよくあるご質問
Q: ニキビは化粧したほうがいいですか?ニキビに化粧はだめですか?
A: ニキビがある場合、化粧は避けることをお勧めします。どんな化粧品でも毛穴を詰まらせ、ニキビの状態を悪化させる可能性があるためです。
Q: ニキビができてしまった時の化粧方法は?
A: ニキビがある部分は避け、ニキビがない部分のみメイクアップすることが望ましいです。
Q: 肌荒れしているときは化粧しないほうがいいですか?
A: 肌荒れ時には化粧品の使用を控えることをお勧めします。化粧品が毛穴を詰まらせ、肌の状態を悪化させることがあります。
Q: ニキビには何も塗らない方がいいですか?
A: はい、ニキビの上にはできるだけ化粧を避けることが望ましいです。これによりニキビの悪化を防ぐことができます。
まとめ
この記事を通して、化粧ニキビとはコメドジェニック(毛穴を詰まらせる)成分を含む化粧品によって発生するニキビのことであることを説明しました。また、過度な化粧や不適切な化粧方法は既存のニキビを悪化させる可能性があることについても解説しました。ニキビ予防には、ノンコメドジェニック製品の選択が重要です。さらに、ニキビの悪化予防には適切なスキンケアや正しい化粧品の使用方法が不可欠です。ただ、すでにニキビが発症している場合は早期に適切な治療を受けることがニキビ跡を作らないために重要です。ニキビで悩んでいる場合は早めにニキビ治療を専門としている医師の診察を受けることをおすすめします。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
【アグネスに効果がない!】科学的検証に基づくアグネスの真の効果
2024/03/13
院長ブログトップ > 【ニキビとストレスの関係】科学的根拠に基づいた解説
【ニキビとストレスの関係】科学的根拠に基づいた解説
日常生活の中で、ストレスが皮膚トラブルの原因になっていることは皆さんが経験したことがあるかもしれません。実際、ストレスがニキビの大きな要因の一つであるということは、多くの方々が何となく感じています。しかし、一体どのようにしてストレスがニキビを引き起こすのでしょうか?このブログでは、最新の医学研究に基づいた証拠を元に、ニキビとストレスの密接な関係について、詳しく深堀りしていきます。
ストレスが体に及ぼす影響:HPA軸の活性化
ストレスを感じた際、人間の体は精緻なホルモンシステムである「視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸とも呼びます)」を通じてストレスホルモンのコルチゾールを分泌します。この過程は次のように進行します。
1.視床下部の反応(hypothalamic)
ストレスを感じると、脳の視床下部(hypothalamic)はコルチコトロピン放出ホルモン(副腎皮質放出ホルモンとも言う)(CRH)を分泌します。これはストレス応答の最初の段階です。
2.下垂体の活動(pituitary)
CRHは下垂体にシグナルを送り、下垂体(pituitary)はこれに反応して副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌します。下垂体は脳の基部に位置する小さな腺で、体の様々なホルモンシステムを制御します。
3.副腎の反応(adrenal)
ACTHは血流を通じて副腎(adrenal)に到達します。副腎は腎臓の上に位置する小さな器官で、ACTHの到達によってコルチゾールの生産を開始します。
4.コルチゾールの分泌:
副腎皮質から分泌されたコルチゾールは、体のさまざまな部分に影響を与え、ストレス応答に関連するさまざまな反応を引き起こします。これには、血糖値の上昇、免疫系の抑制、代謝の調整などが含まれます。
このHPA軸は、体がストレスに反応して適応するための基本的なメカニズムです。
出典元:
ストレスがニキビを引きおこすメカニズム
ストレスがニキビを引き起こすまたは悪化させるメカニズムは、主に2つの経路を通じて発生します。
1.CRH(コルチコトロピン放出ホルモン)経路:
視床下部より分泌されるCRH(コルチコトロピン放出ホルモン)は皮脂腺の脂質産生とステロイド生成を促進し、にきびの一因となります。研究によると、にきびを発症した皮膚の皮脂腺におけるCRH発現の増加が示されており、一方正常皮膚ではCRHの発現が低いことが分かっています。このことからCRHはニキビの炎症過程に関与していると考えられています。また、CRHは、皮膚表面の角化細胞(ケラチノサイト)におけるサイトカインIL-6およびIL-11の産生を誘導し、ニキビの病因における重要な要素であると考えられている炎症に寄与しているとされています。
参照元:
Involvement of the corticotropin‐releasing hormone system in the pathogenesis of acne vulgaris
2.末梢神経からの神経伝達物質
ストレスに反応して、末梢神経はサブスタンスPや血管腸管ペプチドと呼ばれる神経伝達物質を放出します。サブスタンスPは、皮脂腺の増殖と分化を促進し、脂質合成を増加させることでニキビを悪化させる可能性があります。
出典元:
The Role of Inflammation in the Development of Acne
このように中枢神経系と末梢神経系の2つの経路でストレスはニキビにおける脂質合成を増加させ、ニキビを悪化させます。
ストレスとニキビ発生の謎
ストレスの影響により、視床下部から分泌されるCRH(コルチコトロピン放出ホルモン)は、ニキビがある皮脂腺で増加する傾向にありますが、同一人物のニキビがない正常な皮脂腺では、CRHの増加は見られません。これは、CRHがニキビの悪化に一定の役割を果たしている一方で、CRHが正常な皮膚におけるニキビの初期発生に直接関与していない可能性を示唆しています。ストレスとニキビの初期発生の関係性については現在の研究では明確には解明されていません。ストレスとニキビの発生の関係については、さらなる研究と解析が必要です。
出典元:
Involvement of the corticotropin‐releasing hormone system in the pathogenesis of acne vulgaris
ストレスは精神的なものだけない
これまで話してきたニキビを悪化させるストレスですが、これは精神的なストレスだけがニキビを悪化させるわけではありません。皮膚や体への直接的な物理的なストレスもニキビを悪化させるのです。環境的な要因、例えば気温、大気、日差しなどが皮膚にストレスを与え、それによって末梢神経が刺激され、ストレスホルモンの分泌が引き起こされる可能性があります。これらのストレスホルモンはニキビの悪化に寄与することがあります。また、ストレスが交感神経系を優位にし、それによって腸内環境や腸管の蠕動運動に影響を及ぼすこともあります。その結果、便秘などの問題が生じ、ニキビの状態を悪化させる可能性があるのです。このように、ニキビの悪化には、精神的、物理的、環境的ストレスが影響していることがわかります。
出典元:
Oxidative stress and skin diseases: possible role of physical activity
ニキビを予防するためのストレスの解消法
ニキビの予防に役立つストレス解消法を紹介しましょう。日々の忙しさの中で、ストレスを管理し解消することは、心の安定と肌の健康を保つために不可欠です。簡単に取り入れられる次の方法を試してみてください。
■運動
日常の運動はストレス解消に大いに役立ちます。散歩やジョギングなど、体を動かすことでストレス緩和につながり、幸福感を高めるホルモンの分泌が促されます。
■健康的な食生活
果物や野菜、全粒穀物を含むバランスの取れた食事は、身体と心の両方を労わることに繋がります。栄養価の高い食事は消化時の身体的なストレスを軽減する助けとなります。
■ 不健康な習慣からの脱却
ストレスに対抗するためには、カフェインやアルコールの過剰摂取、喫煙、過食、違法薬物の使用など、健康を損なう習慣を避けることが重要です。これらの習慣は、長期的にストレスレベルを上昇させることがあります。
■ ヨガと瞑想で心を静める
心の平穏を取り戻すためにヨガや瞑想を取り入れると効果的です。瞑想は精神的な安らぎをもたらし、ヨガは心身のリラクゼーションを促進します。深呼吸を行うことも、瞑想効果を得るための簡単な手段です。
■ 笑いでストレスを軽減
笑うことで心の負担を軽減し、気分を向上させることができます。ユーモアを日常生活に取り入れ、積極的に笑うことで、ストレスによる心身の影響を和らげましょう。
■ 人間関係の強化
ストレスが高まる時、孤独に陥りがちですが、家族や友人との繋がりを保つことで、心の安定と支えを見つけることができます。人との交流はストレスの解消に役立ちます。
■ 自己主張の重要性
すべてを一人でこなそうとすると、ストレスが増大します。適切な境界を設け、「ノー」と言う勇気や、他人への委任の重要性を学びましょう。
■ 睡眠の質の向上
ストレスは睡眠の質に影響を及ぼすことがあります。安定した睡眠パターンを確立し、毎晩7~9時間の睡眠を確保することで、心身のリフレッシュと回復を図りましょう。
■ 音楽と趣味で心を癒す
音楽を聴いたり演奏したりすることは、心をリフレッシュし、ストレスを軽減する効果的な手段です。また、ガーデニングや読書などの趣味に没頭することも、心の落ち着きを取り戻し、日々のストレスから解放される良い方法です。
■ カウンセリングの活用
ストレスが深刻で、自己管理が困難な場合は、専門家によるカウンセリングを受けることも効果的です。専門家は、ストレスの根本原因を理解し、それに対処する新たな手段を提供してくれます。
にきびとストレスについてよくあるご質問
Q:ストレスによるニキビの特徴は?
A:ストレスによるニキビは「大人にきび」と言われるニキビで、働き盛りの女性によくみられ、長く続くニキビであることが特徴です。ニキビの種類は主に炎症性ニキビ(白赤ニキビ)です。月経前に再燃するのが典型的な特徴です。
Q:ストレスでニキビが出来る場所は?
A:口のまわりや顎に多いのが特徴です。
Q:腕にニキビができる原因はストレスですか?
A:腕にできるニキビはマラセチア毛包炎というニキビの可能性が高く、ストレスよりも真菌の増殖による可能性が高いです。
Q:ニキビを気にしすぎるとストレスになりますか?
A:ニキビが多い人はストレスを大きく感じているという研究データは多数あります。このためニキビはストレスの要因になることが一般的です。
Q:ストレスでニキビが治らないのはなぜ?
A:ストレスを感じた時に分泌されるホルモンが皮脂腺から皮脂を増加させるという科学的な研究があります。皮脂腺の増加はニキビが治らない要因となります。
Q:ストレスでニキビは悪化しますか?
A:ストレスがニキビを悪化させるということは科学的な研究からも明らかになっています。
Q:急な肌荒れはストレスが原因ですか?
A:ストレスは肌荒れの要因となります。ストレスを感じたときに分泌されるコルチゾールというホルモンは皮膚の炎症を引き起こしやすくなりますので、急な肌荒れはストレスが原因になっていることもあり得ます。
Q:赤ニキビの原因はストレスですか?
A:赤ニキビは炎症性にきびであり、面皰(白にきびや黒ニキビ)が悪化した結果です。にきびの悪化にストレスが要因になっていることもあります。
Q:ストレスニキビの対策は?
A:まずはニキビの治療を優先すべきです。ニキビの治療ではアグネスを最も推奨します。アグネスによるニキビ治療でば再発しないからです。治療と同時にストレスが解消されるに日々の生活改善に取り組むべきです。
Q:ほっぺ、眉間、おでこにできるニキビはストレスが原因ですか?
A:あらゆるニキビがストレスが原因で発生する可能性があります。ただし、ニキビの要因はストレスだけでありません。ホルモンの変化や家族歴、食生活などがニキビの要因となり得ます。一般的には大人になってからのストレスによるニキビは顎や口の周りに出来やすいと言われています。
まとめ
この記事では、ストレスがニキビの発生や悪化に与える影響について、最新の医学論文をもとに詳細かつ分かりやすく解説してきました。内容は複雑かもしれませんが、これらは最新かつ正確な情報に基づいています。また、日常生活で実践可能なストレス解消法もご紹介しました。これらの知識を活用し、ニキビ予防に役立てることで、ストレスを上手にコントロールし、皮膚の健康を守りましょう。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
2024/03/12
院長ブログトップ > 【アグネスに効果がない!】科学的検証に基づくアグネスの真の効果
【アグネスに効果がない!】科学的検証に基づくアグネスの真の効果
最近のインターネット上では、「アグネス 効果がない」や「アグネス ニキビ悪化」といった検索ワードが多く見られます。これらのワードが示すように、アグネスのニキビに対する効果に関しては、様々な疑問や不安が持ち上がっているようです。実際、私のブログでも過去にアグネスの症例写真と共にその効能をご紹介して参りました。しかしながら、今回は私の個人的な経験に加え、アグネスの効果に関する医学的な根拠に焦点を当て、その客観的な効果を詳細に解析し、これらの検索ワードに見られる不安や疑問を明らかにし、より一層の理解を深めていきたいと思います。
「革新を生んだアグネス治療の確立」— 小林敏男氏による先駆的研究
アグネス治療法の画期的な進展は、2003年、小林敏男氏による「選択的電気焼却術(小林メソッド)によるニキビ治療」という革新的な医学論文にその起源を持ちます。この研究は、アグネス治療における根幹となる「選択的な電気焼却術(Selective sebaceous gland electrothermolysis)」を初めて体系的に提唱しました。論文では、極細の絶縁針を用いた電気焼灼法が詳細に解説されており、特に大きなニキビに対しては「4~6か所に均等に絶縁針を刺入し、通電し、皮脂腺を電気焼灼する」と記載しております。これが現在のアグネス治療の基本的な治療方法となっています。さらに、この独自の治療方法は小林氏自ら「小林メソッド」と名付け、その有効性を詳細に論じています。具体的には、小林メソッドを実施した16名の患者が1年以上の経過観察を経て、全員が治療結果に満足しているとの報告が含まれています。この論文は、アグネス治療の科学的基盤を築き、今日のアグネス治療へとつながる重要な一歩を示しています。
↑論文に記載されていた小林メソッドによるニキビ治療のイラスト
出典元:
「アグネスによる画期的な3回治療法の提案」— 2012年の重要論文
2012年に発表された注目すべき論文において、アグネスを用いたニキビ治療の現在のゴールドスタンダードとなる「1か月ごとの3回の治療」が初めて提案され、その有効性が科学的に報告されました。この研究では、顔面のニキビに悩む12人の患者が、この新しい治療法に参加しました。参加者はそれぞれ1か月おきに3回のアグネス治療を受け、その効果は最終治療の1ヵ月後と12ヵ月後に評価されました。参加したすべての患者が研究を完遂し、治療結果に対する満足度を表明しました。特に注目すべきは、3回の治療後に炎症性(赤ニキビや黄ニキビ)および非炎症性(白ニキビや黒ニキビ)の病変が著しく減少したことです。3回目の治療後1ヵ月時点での平均病変減少率は、炎症性病変で98.14%、非炎症性病変で83.09%に達しました。また、最終治療から1年後の時点で、わずか2名(全体の16.7%)の患者にのみ再発が確認されました。この論文は、選択的皮脂腺電気焼却術(アグネス)がニキビ治療において安全かつ効果的な手法であり、一貫した寛解を達成すると結論付けています。この論文により、「1か月ごとの3回のアグネス治療」というの新たな基準が確立されたのです。
↑左が治療前。右がアグネス3回治療後1か月の状態(論文より転載)
↑左が治療前。右がアグネス3回治療後1か月の状態(論文より転載)
出典元:
アグネスによる皮脂腺破壊の効果を確認する動物実験
2016年に行われた一つの研究は、動物実験を通じてアグネス治療法のメカニズムを明らかにしました。この実験では、ウサギの耳に人工的に作成されたニキビモデルを使用し、アグネスによる治療後の組織学的変化を詳細に分析しました。特に注目されたのは、アグネスと同様の皮脂腺電気熱分解を施した結果、対象となった皮脂腺の選択的破壊と、TNFαの放出減少が確認されたことです。TNFαは、皮脂腺の活動を促進し、ニキビの発生に影響を与えることが知られているサイトカイン(生理活性物質)です。この研究により、アグネスによる治療がコメド形成の抑制、創傷治癒過程の促進、さらには皮脂腺や炎症性ニキビの破壊に寄与している可能性が示唆されました。これは、アグネスがニキビ治療においていかに効果的な手段であるかを示す重要な証拠となり、この治療法の科学的根拠を一層強化する結果となりました。
出典元:
63人が治療効果を証明した大規模な研究
2019年に発表された研究では、アグネス治療の効果を測定するために大規模な患者群を対象にしたものでした。この無作為化比較試験では、参加者がランダムに分類され、一部の患者にはアグネスを用いた治療が、他の患者にはコントロール群としてプラセボ治療が施されました。こうした無作為化比較試験は、新しい治療法の効果を評価する際の信頼性の高い方法とされています。この研究において、4週間の間隔をあけて3回のアグネス治療を受けた63人で構成されるグループは、2人の別々の医師による評価に基づき、12週目において炎症性のニキビ病変が有意に減少したと報告されました。これは、アグネス治療の効果が、科学的かつ厳密な研究調査においても明らかにされたことを意味します。無作為化比較試験という方法論の信頼性を踏まえれば、この研究の結果はアグネス治療の有効性を裏付ける重要な決定的な証拠となります。この大規模研究は、アグネスがニキビ治療における確実な治療方法であることを証明しました。
出典元:
アグネスの効果は確実!
これまでに紹介した4つの医学研究だけでなく、他の医学論文でもアグネスのニキビに対する治療効果の有効性を強調しています。私が2016年にいち早くアグネスを日本に導入してから既に長い年月が経過しますが、初期段階からアグネスの顕著な治療効果に目を見張ることが多かったのです。アグネスは、炎症性ニキビ(赤ニキビ、黄ニキビ、紫ニキビ)はもちろんのこと、コメド(面皰)や非炎症性ニキビ(白ニキビ、黒ニキビ)に対しても、幅広い効果を発揮します。ニキビの部位による分類においても、顔の顎、額、頬、こめかみ、口周り、鼻といったニキビの好発部位に関わらず、アグネスは一貫して有効です。さらに、顔以外のニキビが頻発する胸や背中にも、同じくアグネスの効果は及びます。特筆すべきは、胸や背中のニキビが、従来のアクネ菌ではなく、マラセチアという真菌(カビ)によって引き起こされることが多いにもかかわらず、アグネスはこれらのニキビにも効果的である点です。一般的なニキビの塗り薬や飲み薬が効かない場合でも、アグネスは治療効果を発揮します。
アグネスに効果ない時は何が原因か?
アグネス治療で期待される効果がないと感じた場合、手技の問題が原因である可能性が考えられます。小林先生が初期の論文で強調しているように、特に大きなニキビには「4~6か所に均等に絶縁針を刺入し、通電し、皮脂腺を電気焼灼する」という技術的な手順が不可欠です。基本的な手技の不備があると、アグネスの本来の効果は十分に発揮されません。美容外科においては、どのような施術であっても、丁寧かつ正確に行われることが満足した成果を得るためのポイントです。そのため、治療を受ける際は、料金のみを基準に医療機関を選ぶのではなく、その医療機関が信頼できるかどうかを重要な判断基準として考えるべきです。患者さんが治療において最高の結果を得るためには、技術的な正確さと信頼性のある医師及びクリニックの選択が不可欠です。
まとめ
このブログでは、ニキビ治療におけるアグネスの有効性を、複数の医学論文に基づいて詳細に解説してきました。アグネスは、ニキビ治療において最善の治療方法と言えます。ニキビは急速に悪化する可能性があるため、早期の積極的な治療が重要です。皮膚科で処方されたニキビ治療薬が1か月経過しても改善の兆しを見せない場合、次の治療ステップに進むべきです。というのも、炎症を伴うニキビは色素沈着や瘢痕を残しやすく、それらは治癒後も長期にわたって影響を与えるからです。私自身は美容整形を含む外科手術においては、まずは軽微なマイルドな手術から開始し、それで満足できない場合に限り、切開を伴うようなより侵襲の高い手術に移行することを推奨します。なぜなら、侵襲の高い手術を先に行うと、後戻りが難しい状況に陥りがちだからです。しかし、ニキビのような炎症性の皮膚疾患の場合は、異なるアプローチが必要です。薬物療法に比べて侵襲が高くとも、最初から最も効果的な治療を選択するべきです。炎症性の皮膚疾患は、軽微な治療を行っている間に状態が悪化し、最終的に瘢痕が残るリスクがあるからです。そのため、手遅れにならないように、最も効果的な治療を最初から選択することが賢明です。これこそがニキビに対するアグネスという治療方法です。本記事が皆様のニキビ治療の選択に役立つことを願っています。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
2024/03/09
院長ブログトップ > ニキビ治療「アグネス」の効果とデメリット
ニキビ治療「アグネス」の効果とデメリット
ニキビ治療に革命をもたらしている「アグネス」について、その科学的根拠と共に詳しく掘り下げます。この記事では、アグネスがニキビにどのように作用するのか、そのメカニズムを解説し、アグネスを国内でいち早く導入した美容外科専門医としての観点から見た利点を深く分析します。また、実際の治療過程やその後のケアについても、専門的な知見を交えながらご紹介し、アグネス治療に関するあらゆる疑問に対して、詳細かつ具体的にお答えします。
アグネスとは
アグネスとは、ニキビの根本原因である皮脂腺を破壊する施術です。アグネスでは、ニキビが生じる皮脂腺を永続的に破壊することにより、同じ部位よりニキビが再発することを防ぎます。従来のニキビ治療で利用されているケミカルピーリングやIPLを用いた光治療は炎症を抑えることに重点を置いており、ニキビの根本原因である皮脂腺や毛穴はそのまま残っていました。これが同じ部位よりニキビがまた再発する要因でした。アグネスでは、ニキビの要因となっている皮脂腺と毛穴自体を1回の治療で完全に破壊するために、同じ部位に再びニキビが発生するリスクを抑えることができます。
アグネスの歴史
ニキビ治療において最も効果がある施術として確固たる地位が確立されているアグネスですが、 この画期的な治療法は、「小林メソッド」にその起源を持ちます。「小林メソッド」とは東京の「青山・小林クリニック」で皮膚科医として活躍されていた小林医師が考案したにきび治療方法です。「小林メソッド」では、にきび(痤瘡)の皮脂腺に針を使用し、電気を通電して皮脂腺を焼灼します。小林医師がこの方法を最初に論文で発表したのは2003年でした。小林医師のこの斬新な治療法は非常に高い評価を受け、彼の青山のクリニックは繁盛していたと言われています。しかしながら、残念なことに小林医師は亡くなられました。その小林医師が開発した小林メソッドを利用した治療機器がアグネスなのです。
アグネスのメカニズム
アグネス治療では、非常に細かい針(マイクロニードル)を毛穴及びニキビに刺します。そして針の先端部分だけから発する高熱により皮脂腺及びニキビ自体を破壊します。アグネスの最大の特徴は、皮膚と密着する部分が絶縁されたように設計されているマイクロニードルを使用することです。これにより、皮膚表面に熱傷を起こさせることなく、針に電流を流すことで真皮にある皮脂腺のみを破壊します。アグネスは特に、反復するニキビや頑固なニキビに対して効果的です。これは、選択的に皮脂腺やニキビのみをターゲットにして、これを完全破壊することにより、ニキビの再発を防ぐためです。また、ダウンタイムが短く、痛みも少ないのが特長です。
ニキビのアグネス治療のよくあるご質問【効果編】
Q:アグネスは1回で効果を実感できますか?またニキビを完全に治すためには何回くらいかかりますか?
A:ニキビに対するアグネス治療は1回でも治療効果が実感できます。これは治療箇所については1回の治療でニキビが破壊され、再発しないからです。ただ、時間差で治療箇所以外の部分からはニキビは変わらずに発生するため、治療も時間差数回行うと、治療部位全体のニキビが発生しなくなります。通常1か月1回程度の治療を3回受けると、治療部位のニキビの発生は劇的に改善します。
Q:治療は1回で終了しますか?
A:アグネスは基本的に1回の治療で終了します。一度治療した部位から再発することはありませんが、他の毛穴からできることが あるため数回の高周波照射が必要な場合もあります。通常3回のコースをおすすめしております。また、より効果を得るために、治療翌日または翌々日にご来院いただき、 皮脂腺内の残渣物(ざんさぶつ)の圧出と肌のケアを行う「メルティングケア」を おすすめします。
Q:アグネスの効果は治療後何日で分かりますか?いつ頃効果を実感できますか?
A:アグネスは治療直後より数日は赤みが出るため、治療効果がすぐに現れません。通常は赤みが引いた1週間後より治療効果が分かるようになります。その後、時間の経過とともに治療効果の高まりを実感します。
Q:皮脂腺を破壊するとニキビにどのような効果があるのでしょうか?
A:アグネスによる皮脂腺の破壊は、ニキビ治療において重要な役割を果たします。ニキビは、皮脂腺から分泌される皮脂が毛穴を詰まらせることで発生するため、アグネスはこれらの皮脂腺を直接破壊することにより、ニキビの根本的な原因を取り除きます。その結果、ニキビの治癒や再発防止に効果的です。
Q:アグネスでニキビができないのはなぜですか?
A:アグネス治療によりニキビの原因となっている皮脂腺自体を高熱により完全破壊するからです。また、高熱によりニキビの要因になっているアクネ菌も殺菌されてしまうからです。
Q:破壊された皮脂腺は再生しますか?元に戻りますか?
A:アグネス治療で皮破壊された皮脂腺は再生したり、元に戻ることはありません。ニキビは皮脂腺から作られる皮脂があることで発生します。アグネスはこの皮脂腺自体を破壊するのでニキビも再発こともありません。
Q:アグネスで皮脂腺を取り除くと、肌が乾燥しませんか?
A:顔には約2~5万個の毛穴があると言われています。このため、アグネスの治療で数百程度の皮脂腺を取り除いても肌が乾燥することはありません。むしろ皮脂腺に高周波を照射することで、毛穴が収縮しコラーゲンが再生されることによってニキビ跡の改善とともに、肌のハリを感じることができます。
参照元:
Pores 101: What You Need to Know
Q:アグネスは、すべてのニキビに適用できますか
A:はい、すべてのニキビに適用が可能です。
思春期にきび、大人のニキビはもちろん、慢性的にくり返す 炎症性にきびにも効果的です。顔だけではなく、胸や背中、お尻など全身のニキビに効果的です。
Q:いままでのニキビ治療と異なる点は何ですか?
A:にきびの状態を一時的に好転させる治療法と異なり、アグネスはニキビの原因となる異状な皮脂腺を根本的に取り除きます。そのため一度治療した部位から再発することはほとんどありません。
ニキビのアグネス治療のよくあるご質問【デメリット編】
Q:アグネスでニキビを治すデメリットや副作用は?
A:アグネスのデメリット・副作用として治療後2,3日間は治療部位に赤みが強く出ることがあります。これは通常1週間程度で治まります。アグネスのデメリット・副作用はこの治療後の赤みだけです。
Q:アグネスでニキビが悪化する副作用は?
A:アグネスでニキビは悪化することはありません。ニキビが悪化している段階ではアグネス治療を行っていない皮脂腺から次から次へとニキビが発生することがあり、一見アグネスによりニキビが悪化していると誤解するかもしれませんが、このような場合でもアグネス治療の回数を重ねることで必ずニキビはよくなります。
ニキビのアグネス治療のよくあるご質問【治療中と治療後編】
Q:ニキビのアグネス治療の流れは?
A:ニキビのアグネス治療では、まず麻酔クリームを治療部位に塗ります。20~30分後に麻酔クリームを除去して、治療を開始します。治療時間はアグネスの治療部位によって異なります。治療の翌日または翌々日に再来院していただきメルティングを受けることをおすすめしています。これはアグネス治療により炎症性の浸出液がニキビがあった空洞内に溜まることがあり、この浸出液を抜く処置です。メルティングは必ず必要な処置ではありませんが、浸出液を抜いたほうがニキビの腫れが早く治まります。
Q:アグネスは痛いですか?
A:治療前には麻酔クリームを塗布して痛みが最小限になるように工夫しております。通常治療は多少のチクチクとした痛みを感じることはありますが、それほど強い痛みではありません。
Q:アグネス治療のダウンタイムはどのくらいですか?
A:アグネスのダウンタイムは治療後2,3日間治療部位に赤みが強く出ることがありますが、通常は1週間程度で治まります。
Q:アグネスの施術後に気をつけることは?
A:アグネス施術後に気を付けることは特にありません。施術日当日はアルコールと入浴を控えたほうが治療後の赤みが抑えられます。
Q:アグネスの治療後すぐに日常生活を送れますか?
A:アグネスの治療後は、日常生活にほとんど影響はありません。治療部位が少しふくらむ、赤みが出る、熱感が出ることがありますが、 すぐに改善されます。治療後にリンパ液などの浸出物が出る場合は、軽くガーゼでふき取ってください。
Q:アグネスの当日は化粧してもいいですか?
A:アグネス当日は施術部位に関してはお化粧を控えたほうがよいです。お化粧の粒子がアグネスに治療部位より混入する可能性があり、これにより赤みが余計に長く出ることがあり得るからです。
Q:アグネスの施術当日はお風呂に入れますか?
A:お風呂に入れますが、施術日当日は入浴を控えたほうが治療後の赤みが抑えられます。
Q:アグネス後のお化粧いつからいいですか?
A:アグネス後は通常翌日より治療部位のお化粧が可能です。
Q:アグネスの後、ピーリングはできますか?
A:アグネスの後、約1週間後よりピーリングは可能です。ただ、アグネスの治療効果が大きいため、ニキビ治療目的のピーリングは今後不要になります。
Q:アグネスはかさぶたができますか?
A:アグネス治療後数日後にカサブタができることはあります。ただ、カサブタでできることと治療効果は関係ありません。
Q:アグネスでニキビが腫れることはありますか?
A:ニキビに対してアグネスの治療後に一時的に治療部位が腫れることがあります。これは治療により炎症性の浸出液がニキビがあった空洞内に溜まることがあるからです。この浸出液を治療翌日または翌々日に抜いたほうがニキビの腫れが早く治まります。この浸出液を抜く処置をメルティングと言います。
まとめ
この記事では、アグネスによるニキビ治療のメカニズムや、治療に関する様々な疑問に詳しく解説しました。皮脂腺を狙い撃ちで破壊するアグネスの革新的なアプローチが、ニキビ治療にどのように応用されるのかを明確にし、さまざまな視点からの解析を行いました。この情報が、アグネス治療を検討している方々にとって有用であり、ニキビという肌の悩みに対する新たな視点を提供できたことを願います。ニキビ治療におけるアグネスの役割を理解することで、より効果的な治療法の選択が可能になるでしょう。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
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2024/03/08
院長ブログトップ > 【便秘・腸内細菌叢とニキビの関係性】ニキビによい食事とは?
【便秘・腸内細菌叢とニキビの関係性】ニキビによい食事とは?
皆さんは、「便秘になるとニキビができる」「チョコレートを食べ過ぎるとニキビが増える」というような言い伝えを聞いたことはありませんか?昔からのこのような民間伝承は、実は科学的根拠に基づいていることが、近年の研究により明らかになっています。特に、腸内環境と皮膚の健康の間には深い関連があることが指摘されており、便秘や食事がニキビの発生に直接的な影響を与えている可能性が高いのです。近年の研究では、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の不均衡が、炎症や皮膚トラブル、特にニキビの発生に密接に関係していることが明らかにされています。便秘が長引くと、腸内の有害な細菌が増え、これが全身の炎症を引き起こし、結果として皮膚にも悪影響を与えるのです。一方で、食生活も皮膚の健康に大きな影響を及ぼします。例えば、高脂肪や高糖質の食事は腸内細菌叢のバランスを崩し、炎症を引き起こす可能性があります。また、特定の食品、例えばチョコレートや乳製品は、ホルモンバランスに影響を与え、皮脂の過剰な分泌やニキビの発生を促進することが知られています。この記事では、最新の科学的見解と共に、腸内環境と食事がニキビに与える影響について、より詳しく解説していきたいと思います。腸内の健康が皮膚に与える影響についての理解を深めることで、ニキビの予防や改善に役立つ知識を提供できればと思います。
腸脳皮膚相関(gut-brain-skin axis)とは
80年以上前、皮膚科医のJohn H. StokesとDonald M. Pillsburyが提唱した「腸脳皮膚相関(Gut-Brain-Skin Axis)」理論は、消化器系のメカニズムがにきびを含む皮膚疾患に影響を及ぼす可能性があるという革新的な考え方でした。彼らは、精神的ストレス、うつ病や不安症などの心の健康が、腸内細菌叢(腸内の微生物群)のバランスを崩し、腸の透過性を高め、結果として全身の炎症を引き起こすという仮説を立てました。これにより、腸の状態が直接的に皮膚の健康に影響を及ぼすという考えが生まれました。さらに、StokesとPillsburyは、腸内細菌叢のバランスを改善するためにプロバイオティクス(善玉菌)の使用を提唱し、この分野のパイオニアとなりました。最近の研究では、この理論がさらに科学的な支持を受けています。腸内の健康は、プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など)の摂取によって大きく改善されることが明らかになっており、これは全身の炎症や酸化ストレス、血糖コントロール、組織内の脂質量に影響を与えることが分かっています。これらの変化は、ニキビの発症や重症度とも深く関連しており、心と腸、そして皮膚の健康が密接に結びついていることを示しています。
参照元:
Acne vulgaris, probiotics and the gut-brain-skin axis: from anecdote to translational medicine
ニキビと便秘:腸の健康と皮膚の相互作用
ニキビと便秘、そして腸の健康と皮膚の問題との関連性は、近年の医学研究により確実に示されています。13,000人以上の青少年を対象にした大規模な研究では、ニキビ患者が便秘、口臭、胃液逆流などの消化器系の問題を抱えることが一般的であることが明らかにされています。中でも、腹部の膨満感はニキビや脂漏性皮膚病との関連性が37%も高く、これは消化器系の不調が直接的に皮膚の問題に影響を及ぼす可能性を示唆しています。
さらに、別の研究では、にきびを抱える患者グループの約40%が便秘を経験しており、これは健康な人々と比べて顕著に高い割合です。このことから、便秘がニキビの発生や悪化に関係していることが推測されます。また、重度のニキビ患者においては、過敏性腸症候群(IBS)が健康な対照群よりも有意に多く発生しているという報告もあります。IBSを持つ患者では、ニキビの重症度も高い傾向にあることが示されており、これは腸の健康が皮膚の状態に密接に関わっていることを物語っています。
これらの研究結果は、腸内環境と皮膚の健康が相互に影響し合っていることを強く示唆しており、ニキビの治療においては、腸の健康を考慮に入れることが重要であることを教えてくれます。
出典元:
Acne vulgaris, probiotics and the gut-brain-skin axis – back to the future?
The relationship between acne vulgaris and irritable bowel syndrome: A preliminary study
ニキビと腸内細菌叢
ニキビの発生には、腸内細菌叢(腸の中の細菌の集まり)が大きく関与しています。腸内細菌叢と皮膚の健康状態は相互に作用しあっており、免疫系の調整を通じて腸と皮膚がコミュニケーションを取っているとされています。にきび患者の場合、乳酸菌やビフィズス菌のような主要な「善玉」菌がニキビ患者には不足していることや腸内細菌の多様性も低いことが明らかになっており、実に半数以上が腸内細菌叢の異常を持っていることがわかっています。善玉菌は短鎖脂肪酸(SCFA)と呼ばれる物質を産生し、健康的な腸管バリアを維持するのに役立つ一方、ニキビ患者のように善玉菌やSCFAが十分でない場合、腸管透過性が亢進すると言われています。その結果、腸内細菌やその副産物が血流に乗り、皮膚の健康に影響を与え、ニキビの原因となる炎症を引き起こす可能性があります。このように、私たちの肌の健康、特にニキビの発生には、腸内細菌叢の状態が深く関連しています。
出典元:
The increasing importance of the gut microbiome in acne vulgaris
にきびを悪化させる可能性がある食事
食事の内容によっては、腸内細菌のバランスが崩れ、腸内環境が悪化することがあります。これは、ニキビの状態を悪化させる原因となることがあります。特に以下のような食事スタイルは、ニキビを悪化させる可能性が高いとされています。
■欧米型の食生活
加工食品、飽和脂肪、精製糖を多く含む欧米の食生活は、にきびを悪化させる要因です。研究では、糖質が高い食品、乳製品、脂肪が多い食品、ミルクチョコレートなどがにきびを促進する可能性があるとされています。
■高脂肪食
高脂肪食は、腸内の細菌の多様性を減少させ、腸の健康を害し、炎症を引き起こす可能性があります。にきびは炎症と関連しているので、これが影響すると考えられます。
■高GI食品
高GI食品は、IGF-1とインスリンのレベルを上げ、にきびの発生に関連する特定の因子(FoxO1、SREBP-1)に影響を及ぼすことがあり、その結果、にきびのリスクが高まると考えられています。高GI食品とは摂取後にすぐに血糖値を上昇させてしまう白米や白パンなどの炭水化物のことです。
■肉や乳製品が多い食事
肉や乳製品が多い食事がmTOR経路という特定の経路を活性化し、にきびを悪化させる成分を多く含みます。mTOR(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質)経路は、細胞の成長、代謝、老化プロセスに重要な役割を果たす経路です。特に、ロイシンというアミノ酸が多く含まれる肉や乳製品は、このmTOR経路を活性化させます。mTOR経路が活性化されると、皮脂腺の活動が増加し、皮脂の生成が促進されるため、にきびが悪化することがあります。したがって、肉や乳製品が多い食事が、このmTOR経路を通じてにきびのリスクを高める可能性があるのです。一方、肉や乳製品を減らしたり避けたりするベジタリアンとビーガンの食事では、にきびに関係する炎症を減少させる可能性があります。
ニキビや肌荒れを改善させる食事
ニキビや肌荒れは、不均衡な食生活が原因の一つとされています。健康な肌を維持するためには、栄養バランスの取れた食事が重要です。以下のような食事を心掛けることで、肌の調子を整えることが期待できます。
■ 多種多様な野菜と果物
腸内細菌の多様性を促進し、健康な腸を維持するためには、様々な種類の植物性食品の摂取が推奨されます。週に30種類の野菜、果物、香辛料、ハーブ、豆類、ナッツ類、種子類を取り入れることが理想です。これらは、肌の健康をサポートするビタミンやミネラル、抗酸化物質を豊富に含んでいます。
■ カラフルな植物
ポリフェノールは、色鮮やかな植物に豊富に含まれる化合物で、善玉腸内細菌の栄養源となります。赤、黄、緑、紫など、色々な色の野菜や果物を日常の食事に取り入れることで、腸内環境の改善につながります。
■ 豆類
ひよこ豆やレンズ豆などの豆類に含まれる特別なプレバイオティクス食物繊維は、善玉腸内細菌の燃料として役立ちます。これらの食品は、腸内環境を整えるとともに、肌の健康にも良い影響を与えます。
■ 発酵食品
ヨーグルト、キムチ、ミソ、納豆などの発酵食品には生きた細菌が含まれており、腸内細菌叢の多様性を高めます。これらの食品を日々の食事に取り入れることで、腸内環境の健康をサポートし、結果として肌の健康にも寄与します。
■ 食物繊維が多い食べ物
便秘はニキビの一因となることがあります。便秘を防ぎ、腸の健康を維持するためには、食物繊維を豊富に含む食品の摂取が重要です。食物繊維は便通を促進し、腸内環境を整えることで、間接的にニキビや肌の状態を改善する効果が期待できます。全粒穀物(玄米、全粒粉のパン) 豆類、野菜(ブロッコリー、キャベツ、にんじん)、果物(リンゴ、バナナ、オレンジ)、ナッツ類などが食物繊維を豊富に含む食です。
腸内細菌叢とニキビについてよくあるご質問
Q: 抗生物質は腸内環境に悪影響を及ぼしますか?
A: 抗生物質は細菌を殺すため、健康な腸内細菌も影響を受けることがあります。これにより、腸内細菌の多様性が低下し、腸の健康に悪影響を及ぼすことがあります。ニキビ治療の一環として抗生物質を使用する場合でも、医師の指導の下で適切に使用し、必要以上の長期間の使用は避けるべきです。
Q: ストレスは腸内環境を悪化させますか?
A: はい、ストレスは腸内細菌に影響を及ぼし、特に乳酸菌やビフィズス菌の数を減少させる可能性があります。ストレスが続くと、腸のバリア機能が弱まり、腸内環境が悪化することがあります。また、ストレスが高い状態では交感神経が優位になり、腸管運動が低下し、便秘になりやすく、腸内環境を悪化させる要因にもなります。
Q: 腸内環境を改善するための生活習慣は何ですか?
A: 腸の健康を促進するためには、質の良い睡眠、定期的な運動、ストレス管理、禁煙が重要です。これらはすべて、腸内細菌のバランスを保つのに役立ちます。特に運動は便通をよくし、腸内環境の健康に重要です。
Q: 腸内環境に良い食事とはどのようなものですか?
A: 腸内環境を改善するためには、多種多様な植物性食品を取り入れることが重要です。野菜、果物、豆類、全粒穀物、ナッツ、種子などをバランス良く摂取し、超加工食品の摂取を控えることで、腸内の微生物の多様性をサポートし、腸の健康を促進することができます。
まとめ
この記事ではニキビと腸内環境、特に腸内細菌叢との重要な関係性について詳説しました。私たちの食生活、特に糖質や脂肪が豊富な食品や乳製品の摂取が腸内細菌叢に与える影響は、ニキビの発生や悪化に関連している可能性が高いのです。これに対して、果物や野菜、豆類などの栄養価の高い食品を積極的に摂ることは、腸内細菌叢を健康に保ち、ニキビのリスクを軽減します。また、健康な腸のためには、良好な便通も重要です。ストレスの軽減、日々の適度な運動、良質な睡眠は、腸の動きを促進し、健康な消化機能を維持するのに役立ちます。この記事が皆さんの健康的な生活習慣やニキビケアに役立つことを願います。腸の健康と肌の状態は密接に連携しており、食生活や生活習慣の見直しは全身の健康へと繋がります。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
2024/03/07
院長ブログトップ > 【ニキビの原因と予防】食事と生活習慣の見直し
【ニキビの原因と予防】食事と生活習慣の見直し
美しい肌を目指す私たちの日常生活において、ニキビは避けて通れない悩みのひとつです。特に顔のニキビは、頬やあご、額など、目立つ部位に現れるため、その存在は特に気になるものです。時には一時的に改善されるものの、またすぐに悪化してしまうこともあり、私たちの自信や外見に影響を及ぼすことが少なくありません。この記事では、顔にできるニキビについて、その発生の背景にある要因やメカニズムを詳しく掘り下げ、日常生活で取り入れられる効果的な予防方法をご紹介します。あなたのニキビに対する理解を深め、クリアな肌への第一歩を踏み出しましょう。
ニキビとは
誰しも人生で一度は経験する最も一般的に遭遇する皮膚トラブルの一つが「ニキビ」です。医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と称され、この症状は、毛包が皮脂や古い角質で詰まることにより発生します。一般的に、ニキビはその成り立ちにより「白ニキビ」、「黒ニキビ」、「赤ニキビ」といった様々な形態を示し、炎症の進行に応じて状態が変化します。多くの人々が思春期にニキビの問題に直面しますが、実際にはどの年齢層でもニキビが発生する可能性があります。これは単なる皮膚の問題ではなく、場合によっては深刻な精神的ストレスや自己意識の問題を引き起こすことがあります。特に重症化したニキビは、皮膚に永続的な傷跡を残すことも少なくありません。そのため、初期段階での適切な治療が、これらのリスクを最小限に抑える鍵となります。効果的なニキビ治療法が存在しますが、治療の途中で新たなニキビが発生することも珍しくありません。ニキビの治療には忍耐が必要であり、根気強く続けることが重要です。早期に効果的な治療を開始することで、ニキビが及ぼす肌へのダメージや精神的な影響を大幅に軽減することが可能です。
参照元:
ニキビができる原因
ニキビの発生には、複数の要因が絡み合っています。これらを理解することは、ニキビ予防と治療において極めて重要です。以下に、主要な原因を詳しく解説いたします。
1.毛穴の詰まり
皮膚表面の細胞が正常に生まれ変わるプロセス、すなわち「ターンオーバー」(新陳代謝)が乱れると、角質が肥厚し、毛穴が塞がれます。このターンオーバーの乱れは、日常生活のストレスや不規則な生活習慣によって引き起こされることがあります。
2.皮脂の過剰分泌
毛穴内の皮脂腺が過剰に働くと、皮脂が多量に分泌され、これがニキビの直接的な原因となります。思春期にはホルモンバランスの変化により、特に顔、額、胸、背中上部、肩など、皮脂腺が集中している部位でニキビが発生しやすくなります。
3.アクネ菌の増殖と炎症
毛穴内部でアクネ菌(ニキビ菌)が増えると、これが炎症反応を誘発し、炎症性ニキビが形成されます。皮脂がアクネ菌の栄養源となるため、皮脂の過剰な分泌はアクネ菌の増殖を助長し、結果的にニキビの悪化につながります。
ニキビが発生して悪化していくメカニズム
ニキビの発生と悪化の過程は、にきびの原因と重複する説明となりますが、以下のメカニズムで進みます。
1.毛穴の詰まり
皮膚の表面では、角質層の細胞が定期的に新しく生まれ変わります。しかし、このプロセスに異常が生じると、角化異常が起こり、毛穴の出口が塞がれてしまいます。
2.皮脂の蓄積
毛穴が詰まると、皮脂腺からの皮脂は肌の表面に排出されず、毛穴内に蓄積します。この蓄積した皮脂は、ニキビの原因となるトリガーの一つです。
3.アクネ菌の増殖と炎症の発生
蓄積した皮脂は、アクネ菌の増殖に最適な環境を提供します。アクネ菌は皮脂を分解し、炎症を引き起こす物質を産生します。これが皮膚に赤みや腫れをもたらし、ニキビの炎症を引き起こします。
4.炎症の悪化
炎症がさらに進行すると、毛穴内に膿が溜まり、ニキビはさらに重症化します。この段階では、皮膚の深層まで影響が及ぶことがあり、しばしば痛みを伴います。
にきびの種類
ニキビの理解には、まずその多様な形態を把握することが不可欠です。ここでは、ニキビが取りうるさまざまな形態を、その特徴とともに解説いたします。
■白ニキビ
閉鎖型コメド、閉鎖型面皰とも呼びます。毛穴の詰まりが原因で発生します。毛穴の出口が閉じている状態で、内部に皮脂や角質が溜まり、白い突起として見えるのが特徴です。
■黒ニキビ
開放型コメド、開放型面皰とも呼びます。毛穴の詰まりが部分的に開いており、皮脂や角質が酸化して黒くなっています。空気に触れると、酸化により黒く変色するため、このような名前がついています。
■赤ニキビ
炎症性ニキビとも呼びます。白ニキビや黒ニキビがさらに進行し、周囲の組織が炎症を起こした状態です。この段階では、ニキビが赤く腫れ上がり、触れると痛みを感じることが多くなります。
■黄ニキビ
膿疱型ニキビとも呼びます。赤ニキビがさらに進行し、膿を含む炎症を起こしている状態です。中心部に黄色い膿(または白い膿)が見えることが、このニキビの顕著な特徴です。
■紫ニキビ
結節性にきび、嚢胞性ニキビとも呼びます。 最も重症なニキビで、深部に強い炎症を起こしています。皮膚が硬くなり、紫色に変色することがあります。
ニキビは一般的には、白ニキビから黒ニキビ、赤ニキビ、黄ニキビ、紫ニキビへと悪化していくと考えられています。しかし、個人の肌質やケア方法によっては、必ずしもこの順序通りに進行するわけではありません。
にきびを悪化させる可能性がある要因
日常生活において、私たちが無意識のうちに行っている行動や環境要因が、ニキビの発生や悪化に影響を及ぼすことがあります。以下に、ニキビの誘発または悪化に関連する主な要因を挙げ、それぞれについて詳しく解説します。
■ホルモンの変化
思春期に増加するアンドロゲンホルモンは、皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を促進します。これにより毛穴が詰まりやすくなり、ニキビが形成される可能性が高まります。女性においては、中年期に見られるホルモンの変化もニキビの原因になり得ます。
■食事の影響
高炭水化物食品(パン、ポテトチップスなど)の摂取は、ニキビの悪化と関連があります。これらの食品は血糖値の急激な上昇を引き起こし、結果的に皮脂分泌を促進することが知られています。また、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が豊富な高脂肪食、乳製品の摂取もニキビのリスクを高めることが指摘されています。しかし、にきびのある人が特定の食事制限に従うことが有益かどうかについては、さらなる研究が必要です。
■ストレスの影響
ストレス自体が直接的にニキビを引き起こすわけではありませんが、既存のニキビを悪化させるトリガーとなることがあります。ストレスは皮膚の免疫機能に影響を与え、炎症反応を強めることがあります。
■家族歴の影響
ニキビの発生には遺伝的要素が強く関連しています。両親が過去に重度のニキビを経験している場合、子どもにも同様の皮膚トラブルが生じやすいことがあります。
■脂性または油性物質への接触
皮膚が油性のローションやクリームに頻繁に触れると、毛穴が詰まり、ニキビの原因となることがあります。
■物理的な刺激や圧迫
電話機や携帯電話、ヘルメット、きつい衣服の襟、リュックサックなどによる摩擦や圧力が、皮膚の刺激となり、ニキビの発生を促すことがあります。
実はニキビの悪化とはあまり関係ないもの
一般的にニキビの悪化と関連づけられがちなものの中には、実際にはニキビにほとんど影響を与えないものがあります。
■肌の衛生状態
ニキビが単に「肌が汚れているから」というわけで発生するわけではありません。実は、肌を強くこすったり、刺激の強い洗浄剤を使用することが、皮膚を刺激し、ニキビの状態を悪化させることがあります。
■化粧品の使用
適切に使用すれば、化粧品が必ずしもニキビを悪化させるわけではありません。毛穴を詰まらせない、オイルフリーの製品を選び、毎日きちんと化粧を落とすことで、肌の健康を保つことができます。特に、油分を含まない化粧品は、ニキビ治療薬の効果を妨げることもありません。
ニキビの予防
ニキビは多くの人々が経験する肌の問題ですが、日常のケアによってその発生を軽減することが可能です。以下に、ニキビ予防のための効果的な日々のルーチンをご紹介します。
■ぬるま湯での毎日の洗顔
熱すぎる水は皮膚を刺激し、乾燥を引き起こす可能性があります。毎日ぬるま湯で洗顔することは、皮膚を穏やかに洗浄し、自然な油分を保ちながら不要な汚れや皮脂を取り除きます。
■適切なスキンケア製品の選択
オイルフリーの保湿剤を使用し、肌の水分バランスを保ちましょう。また、コメドジェニックでないメイク用品(オイルフリーで軽い質感のもの)を選び、毎晩メイクをしっかりと落としましょう。
■顔の肌への接触を避ける
手が顔に触れることは、アクネ菌の増殖や感染の原因となりますので、できるだけ控えましょう。
■髪型の工夫
髪の毛が顔に触れないようなスタイルを心がけることで、アクネ菌の伝播を防ぐことができます。
■マスクの使用を控える
髪型と同様にマスクはアクネ菌の伝播・増殖させる要因となり得ますので、できるだけマスクの使用は避けましょう。
■バランスの良い食事
動物性脂肪や高カロリー食品の摂取を控え、緑黄色野菜やビタミン、食物繊維を豊富に含む食事を心がけましょう。便秘がニキビを悪化させるという学説もあります。
■十分な睡眠とストレス管理
質の良い睡眠を確保し、ストレスを減らすことで、全体的な健康状態を改善し、ニキビ予防につながります。
医師の診察を受けるべきタイミング
ニキビの治療においては、自宅でのセルフケアだけでは改善が見られない場合、早めに医師に診察してもらうべきです。ニキビは悪化するスピードが早いためにより早い段階での積極的な治療をおすすめします。また、処方された薬を使用しても1か月経過してもニキビの改善が見られない場合は、治療方法を見直すべきです。一つの選択肢として、アグネス治療が挙げられます。これは、超極細の針を使用して直接皮脂腺を破壊し、ニキビを根本から治療する方法です。1回の治療で効果を実感できることが多く、重症化する前の早い段階での治療に特に効果的です。
まとめ
この記事を通じて、ニキビの多様なタイプとそれらが発生する機序について詳細に解説しました。ニキビの発生原因を深く理解し、それに基づいた予防策を日々の生活に取り入れることで、にきびの発生や悪化を防ぎ、きれいな肌を取り戻せる可能性はあります。ただ、自宅でのケアだけでは改善が見られない場合、ニキビの進行は想像以上に速いです。そうした悪化している状況では、早期にニキビ治療に精通した医師の診察を受け、専門的な治療を開始することを強く推奨します。正しい知識と適切な治療が、ニキビと上手に向き合うための最良の方法です。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
2024/03/06
院長ブログトップ > ニキビ薬のイソトレチノイン(アキュテイン)の怖い副作用
ニキビ薬のイソトレチノイン(アキュテイン)の怖い副作用
ニキビの治療薬として重篤な副作用を引き起こす可能性があるイソトレチノインは、アメリカにおいて1982年にFDA(日本の厚生労働省に相当する政府機関)の承認を受け、全世界で広く使用されてきました。しかし、日本国内では、現在に至るまでその使用が認められていないのです(国内未承認薬)。この記事では、イソトレチノインの危険性と副作用について深く掘り下げて解説します。特に、なぜ日本で未承認の状態が続いているのか、そしてその副作用がどのような影響を及ぼす可能性があるのかについて、詳細に説明します。
イソトレチノインとは
イソトレチノイン(一般名:Isotretinoin)は、アキュテイン(Accutane)、ロアキュテイン(Roaccutane)、ソトレット(Sotret)、アムネスティーム(Amnesteem)、クララビス(Claravis)、イソトロイン(Isotroin)、アクノティン(Acnotin)など、様々な商標名で知られる、難治性ニキビ治療用の医薬品です。この薬は、ビタミンAの誘導体であり、皮脂腺の活動を減少させることで、毛穴の詰まりやニキビの炎症を抑制する効果を持ちます。イソトレチノインの主要な作用は、皮膚内での角質細胞の分化と剥離を促進することにあります。これにより、ニキビの主な原因である毛穴の閉塞を減らし、皮脂の過剰な蓄積を抑える効果があります。さらに、イソトレチノインには炎症を抑制する作用もあるため、炎症を伴う重症なニキビの治療には特に有効です。これらの効果により、イソトレチノインは重度のニキビ治療において治療効果を発揮すると認められています。
危険すぎるニキビ治療薬と言われた訳
イソトレチノインは発売当初では、その副作用の多さと深刻さから危険すぎるニキビ治療薬と言われました。以下の副作用は全てイソトレチノインの発売元から発表されている主な副作用です。
■精神障害
イソトレチノインは、作用機序が不明ですが、うつ病、精神病、、自殺企図、自殺、攻撃的または暴力的行動を引き起こすことがあります。そのため、イソトレチノイン治療を開始する前に、患者とその家族に精神疾患の既往歴について質問し、治療中の診察のたびに、うつ病、気分障害、精神病、攻撃性の症状がないか評価し、さらなる評価が必要かどうかを判断すべきであるとされています。
■脂質代謝異常
イソトレチノインを投与された患者約25%もが中性脂肪の顕著な上昇が報告されています。具体的には800mg/dLを超える血清トリグリセリド(中性脂肪)の上昇がイソトレチノインを投与された患者で報告されています。さらに、約15%にHDL(高比重リポタンパク質:善玉コレステロール)の減少がみられ、約7%にコレステロール値の上昇がみられたとあります。従って、血液検査による血中脂質の測定は、イソトレチノイン投与前に行うべきであり、その後、イソトレチノイン開始後4週間以内に再検査を行うべきであるとされています。
■肝機能障害
イソトレチノイン治療に関連している可能性がある肝炎が報告されています。さらに、軽度から中等度の肝酵素上昇、すなわち軽度の肝機能障害が、臨床試験中に治療を受けた人の約15%にも観察されました。
■膵炎
イソトレチノイン治療に関連している可能性がある急性膵炎が報告されています。まれですが、、致命的な出血性膵炎も報告されています。
■炎症性腸疾患
イソトレチノインは、、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)の発症に関連しています。場合によっては、イソトレチノイン治療を中止した後も症状が持続することが報告されています。腹痛、直腸出血または重度の下痢を経験した患者は、直ちにイソトレチノインを中止すべきであるとされています。
■頭蓋内圧亢進症
イソトレチノインの使用は、頭蓋内圧亢進症の多くの症例と関連しており、そのうちのいくつかはテトラサイクリン系薬剤(ミノペンなど)との併用が関与していると言われています。したがって、テトラサイクリン系薬剤との併用は避けるべきです。頭蓋内圧亢進症の初期の徴候や症状には、眼圧上昇、頭痛、悪心・嘔吐、視覚障害などがあります。
■聴力障害
イソトレチノインを服用している患者で聴力障害が報告されてます。場合によっては、治療中止後も聴力障害が持続することが報告されています。このメカニズムは不明です。
■骨への影響
イソトレチノインは、発育中の筋骨格系への影響は及ぼす可能性がありますが、これについては現在に調査中です。骨端早期閉鎖、骨粗鬆症への影響がある可能性があるとも示唆されています。
■視力障害
角膜混濁や夜間視力低下などの視力障害がイソトレチノイン治療中に報告されております。治療中止後も夜間視力低下が持続した例もあるとされています。
参照元:
Accutane Prescribing Information
イソトレチノインの性機能への影響
イソトレチノイン、一般にアキュテインとしても知られるこの薬剤は、男女双方の性機能に影響を与えることが知られています。
■イソトレチノインの女性の性機能への影響
イソトレチノイン服用により女性の月経周期に影響が出る可能性があります。特に、15歳から45歳の女性において、規則的な月経周期を持つ女性の約10.4%が、イソトレチノインの服用開始後に月経不順を経験するという研究結果があります。これらの月経不順の中で最も一般的なのは、無月経の症状です。
参照元:
The Effects of Isotretinoin on The Menstrual Cycle: A Cross-Sectional Study
■イソトレチノインの男性の性機能への影響
男性の場合、イソトレチノインの服用により性欲減退やED(勃起不全)などの問題が報告されています。これらの症状は、イソトレチノインの使用中に特に顕著になることがあります。
出典元:
Erectile dysfunction during isotretinoin therapy
イソトレチノインの最も危険な副作用
イソトレチノイン、または一般にアキュテインとして知られるこの薬剤は、重症のニキビ治療に用いられることが多いですが、その副作用の中でも特に重大なものは催奇形性です。催奇形性とは、薬剤が胎児に影響を与えて、先天的な奇形を引き起こす可能性のある性質を指します。妊娠中または妊娠を計画している女性がイソトレチノインを服用すると、胎児の正常な発達に重大な影響を与えるリスクがあり、先天性の欠陥を引き起こす可能性が高まります。さらに、男性の精子にも影響を及ぼすことから、男性も同様に注意が必要です。多くの研究により、イソトレチノインの催奇形性についてのリスクが確認されています。研究によると、胎児がイソトレチノインに曝露されると、20-35%の高いリスクで多くの先天性奇形が生じる可能性があるとされています。これには頭蓋顔面の欠損や心血管系、神経系の奇形が含まれます。イソトレチノインは皮脂腺細胞において細胞死(アポトーシス)や細胞周期の停止を引き起こし、これが催奇形作用に関連していると考えられています。このため、イソトレチノインを服用中および服用終了後の女性は少なくとも6ヶ月間、男性は2ヶ月間は避妊することが強く推奨されます。これは、薬剤の体内からの完全な排除と、催奇形性リスクの回避を確実にするためです。
参照元:
Isotretinoin: Still the cause of anxiety for teratogenicity
イソトレチノインを進めない理由
イソトレチノイン(アキュテイン)は、重症のニキビ治療において一定の効果を発揮しますが、その使用には特に慎重な検討が必要です。この薬の内服期間は通常最長6か月とされ、その後最低2か月の休薬期間が必要となります。しかし、休薬期間中にニキビが再発することがしばしばあり、長期間にわたる治療が必要になる可能性があります。イソトレチノインを服用することによる副作用のリスクもまた、その使用を控えるべき理由の一つです。イソトレチノインの副作用として、脂質代謝異常が約25%、肝機能障害が約15%、月経異常が約10%の確率で発生することが報告されています。これらの高い副作用の発生率は、特に健康に影響を及ぼす可能性があることから、ニキビ治療のためにイソトレチノインを選択する際には特に十分な検討が必要です。日本の厚生労働省がイソトレチノインの使用を認可していないのも、これらの副作用のリスクを考慮した結果です。重症のニキビに対する効果が海外では認められている一方で、副作用のリスクも高いイソトレチノインの使用には、慎重な判断が求められます。
イソトレチノインについてよくあるご質問
Q:イソトレチノインはなぜ未承認なのでしょうか?
A:イソトレチノインの使用に関連する副作用の発生率が比較的高いことが、日本の厚生労働省による未承認の主要な理由と考えられます。具体的には、催奇形性が20-35%、脂質代謝異常が25%、肝機能障害が15%、月経異常が10%の割合で発生すると報告されています。これらの副作用のリスクが、ニキビ治療薬としての利用を見合わせる理由となっています。
Q:イソトレチノインは妊娠中も服用できますか?
A:妊娠中のイソトレチノインの使用はできません。イソトレチノインは催奇形性を持ち、妊娠中の女性が服用することで胎児に重大な影響を及ぼし、生まれてくる赤ちゃんに先天的な奇形を引き起こす可能性が高いためです。
Q:イソトロインは避妊が必要ですか?
A:はい、イソトレチノイン(イソトロイン)を使用中は避妊が必要です。イソトレチノインには催奇形性のリスクがあるため、女性だけでなく、男性も使用中は避妊をすることが求められます。
Q:イソトレチノインの避妊いつまで必要ですか?
A:イソトレチノインを服用した後の避妊は、女性の場合は6ヶ月間、男性の場合は2ヶ月間が必要です。この期間は、イソトレチノインの催奇形性リスクを考慮して設定されており、避妊を行うことで不必要なリスクを防ぐことができます。
Q: イソトレチノインで生理不順になりますか?
A:イソトレチノインを服用する女性の約10%が生理不順を経験することが報告されています。この副作用は、個人差がありますが、イソトレチノインの使用によって生じる可能性があります。
Q:イソトレチノインは危険ですか?
A:イソトレチノインは、その副作用の発生率が高いため、一部では危険な薬とされています。これが日本国内での未承認の理由の一つです。
Q:イソトレチノインの服用をやめた後はどうなりますか?
A:イソトレチノインを服用を停止すると、多くの場合、ニキビが再発することがあります。イソトレチノインはニキビの発生を抑制する効果があるため、その効果がなくなると、症状が再発しやすい傾向にあります。
Q:イソトレチノインのデメリットは?
A:イソトレチノインのデメリットは高い確率で起こる副作用と、使用を中止した場合に起こる再発です。具体的には、副作用は催奇形性が20-35%、脂質代謝異常が25%、肝機能障害が15%、月経異常が10%の割合で発生すると報告されています。また、イソトレチノインの使用を中止した場合は、高い確率で再発すると言われいます。
Q:アキュテイン(イソトレチノイン)中止後、 皮脂は戻りますか?
A:アキュテイン(イソトレチノイン)は、皮脂腺の活動を抑制する作用があります。そのため、薬を中止した場合、皮脂の産生は従来の状態に戻る可能性があります。このことは、イソトレチノインの効果が一時的であることを示しており、アキュテイン(イソトレチノイン)が根本的なニキビ改善にはあまり役立たないことを意味しています。
Q:イソトレチノイン、アキュテインでハゲますか?
A:イソトレチノイン(アキュテインとも呼ばれます)は、一部の患者において髪の薄毛や脱毛を引き起こす可能性があります。これは主に、イソトレチノインによるビタミンAレベルの過剰摂取や、頭皮の皮脂生産の抑制に関連しているとされています。イソトレチノインによる脱毛の発生率は約3-6%であり、治療期間が長いほど脱毛のリスクが高まります。しかし、多くの場合、治療終了後には髪の毛が再生することが報告されています。
Q:イソトレチノインの副作用で死亡例の報告はありますか?
A:イソトレチノインの副作用による死亡例については、稀なケースではあるものの、一部の情報源で言及されています。特に注目されているのは、脳圧の増加に関連する副作用です。これにより、重篤な頭痛、視力問題、永続的な視力喪失、そして極めて稀ではありますが、死亡に至るケースが報告されています。このような重篤な副作用のリスクは、イソトレチノインの使用を慎重に検討する際の重要な要因となります。
重症なニキビにアグネスがおすすめ
重症なニキビに対するアグネス治療は、特に反復するニキビのケースにおいて高い効果を発揮します。イソトレチノインのような重症ニキビ治療薬の使用が考慮される場合でも、アグネス治療は優れた代替手段となることが多いです。この治療法は、超極細の針を用いて皮脂腺を直接破壊することにより、ニキビを治療し、再発の可能性を大幅に減少させます。即効性があり、一度治療した部位のニキビが再発することはほとんどありません。外用薬や内服薬では改善が見られなかったニキビも、アグネス治療によって解決する可能性があります。副作用が懸念されるイソトレチノインの使用を検討する前に、アグネス治療の選択肢を考慮することをお勧めします。
まとめ
この記事では、重症なニキビ治療薬であるイソトレチノイン(アキュテイン)の潜在的な危険性とその副作用について詳細に検討しました。イソトレチノインは効果的な治療薬であるものの、その使用には慎重な判断が求められます。副作用のリスクが高いこと、特に催奇形性や他の健康上の問題が懸念されるため、患者様や医師はこの薬剤の使用を検討する際に十分な情報を持つことが重要です。また、イソトレチノインの代わりに、アグネス治療を選択肢として考えることも一つの方法です。アグネスは、特に繰り返すニキビに効果的で、副作用のリスクがなく、治療部位のニキビが再発しないため最善のニキビ治療地と言えます。この記事が、ニキビ治療の選択肢を検討する際の知識を深め、より安全な治療法の選択に役立つことを願っています。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
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2024/03/03
院長ブログトップ > 【ニキビに処方される薬】おすすめの薬とその効果について
【ニキビに処方される薬】おすすめの薬とその効果について
2023年に日本皮膚科学会よりニキビ治療の最新のガイドラインが発表されました。ガイドラインには、日本国内で保険診療において推奨される効果的なニキビ治療薬が詳細に掲載されています。この記事では、このガイドラインに基づいて、ニキビ治療において使うべきおすすめの薬についてその効果やメカニズムなどに詳細に解説します。
そもそもガイドラインとは
日本で様々な疾患に対してそれを専門とする学会があり、ガイドラインはこれらの学会が発表されています。ガイドラインは、医療の質を高め、患者さんに最適な治療を提供するために非常に重要な役割を果たしています。ガイドラインは、最新のエビデンス(研究や論文による科学的根拠)に基づいて作成され、医師や医療関係者に最新の医学知識と治療方法を提供します。これにより、保健診療において全国の異なる医療機関でも一定の質の高い治療が提供され、治療の標準化が図られます。また、ガイドラインは、治療成果や患者様の満足度などを考慮して定期的に見直され、これにより、医療の質が常に最新の科学的根拠に基づいて向上し続けることが期待されています。このように、専門学会のガイドラインは、患者さんにとって最良の治療方法を保証するための重要な手引きとして機能しています。
ニキビの最新のガイドラインとは
ニキビ(医学用語では尋常性痤瘡と言います)の最新のガイドラインは2023年に日本皮膚科学会より発表され、「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」としてネット上でも閲覧可能です。このガイドラインの中ではさまざま治療方法に対して、推奨度を決めており、その根拠になっているエビデンスに対してもエビデンスレベルを決めております。
エビデンスレベルと推奨度の分類は下記のようになっています。
■エビデンスレベルの分類
数字が小さいほど、科学的なエビデンスの信用度が高いことを意味します。
I: システマティックレビュー,メタアナリシス
II :1つ以上のランダム化比較試験
III:非ランダム化比較試験(統計処理のある前後比較 試験を含む)
IV:分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究)
V: 記述研究(症例報告や症例集積研究)
VI: 専門委員会や専門家個人の意見
■推奨度の分類
A :行うよう強く推奨する(少なくとも 1 つの有効性 を示すレベル I もしくは良質のレベル II のエビデンスがある).
A*:行うよう推奨する(A に相当する有効性のエビデンスがあるが,副作用などを考慮すると推奨度が 劣る).
B :行うよう推奨する(少なくとも 1 つ以上の有効性 を示す質の劣るレベル II か良質のレベル III ある いは非常に良質の IV のエビデンスがある).
C1 :選択肢の一つとして推奨する(質の劣る III~IV, 良質な複数の V,あるいは委員会が認める VI のエビデンスがある).
C2:十分な根拠がないので(現時点では)推奨しない (有効のエビデンスがない,あるいは無効であるエビデンスがある).
D: 行わないよう推奨する(無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)
出典元:
ニキビのガイドラインで推奨度Aの塗り薬
「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」においてすべてのニキビ(炎症性皮疹と面皰)に対して推奨度Aの塗り薬は主成分が過酸化ベンゾイルとアダパレンの2つのみです。この2つが塗り薬ではおすすめの処方薬となります。
■過酸化ベンゾイルとは
過酸化ベンゾイルを主成分とする塗り薬ではベピオゲルが先発医薬品で、2015年に発売された比較的新しい処方薬です。過酸化ベンゾイルはニキビ治療に広く用いられる外用薬で、以下に、その主な特徴を詳しく説明します。
抗菌作用: ベピオゲルはニキビの主要な原因菌でアクネ菌に対して強力な抗菌効果を発揮します。この薬剤は皮脂腺内で分解され、強い酸化剤として作用し、バクテリアの細胞壁を破壊します。
角質層の軟化と剥離: 過酸化ベンゾイルは角質層を軟化させ、古い角質を除去する効果があります。これにより、毛穴の詰まりを防ぎ、ニキビの形成を予防すると同時に、既存のニキビの治療を促進します。
抗炎症作用: 過酸化ベンゾイルには炎症を軽減する作用があります。これは、炎症を引き起こす因子の生成を抑制することにより、ニキビに伴う赤みや腫れを減少させます。
皮脂生成の抑制: 一部の研究では、ベピオゲルが皮脂腺の活動を抑制し、皮脂の過剰な生成を減らす可能性が示唆されています。
使用上の注意点としては、過酸化ベンゾイルは肌に対して刺激が強いため、使用初期には乾燥、赤み、はがれ、痒みなどの副作用が発生することがあります。これらの症状は通常、使用を続けることで徐々に軽減されますが、重度の刺激やアレルギー反応が現れた場合には使用を中止し、医師の診察を受けることが重要です。また、過酸化ベンゾイルは布などを漂白する性質があるため、使用時には衣類やタオルなどに注意が必要です。以上のように、ベピオゲルはその抗菌作用、角質層の軟化・剥離効果、抗炎症作用、および皮脂生成の抑制効果により、ニキビ治療において重要な役割を果たします。
■アダパレンとは
アダパレンを主成分とする塗り薬ではディフェリンゲルが先発医薬品で、2008年に日本国内では発売されました。ディフェリンゲルは、ニキビ治療に用いられる外用薬の一種で、エビデンスに基づいたそのメカニズムや効能について、以下のように説明します。
レチノイド作用: アダパレンは合成レチノイドであり、ビタミンAの誘導体です。この薬は、細胞の成長と分化に関わるレチノイド受容体に作用します。特に、ディフェリンゲルは特定のレチノイド受容体に選択的に結合することで、皮膚の角質層の正常化を促進し、毛穴の詰まり(コメド)の形成を防ぎます。
抗炎症効果: アダパレンには、ニキビの炎症を減少させる効果があります。これは、炎症を引き起こす細胞因子の活動を抑制することによるものです。これにより、ニキビによる赤みや腫れを軽減します。
角質層の正常化: ディフェリンゲルは、皮膚の角質層の剥離を促進し、毛穴の詰まりを解消します。これにより、コメドの形成を防ぎ、既存のコメドを除去する助けとなります。
皮脂腺活動の調節: いくつかの研究では、アダパレンが皮脂腺の活動を調節し、皮脂の過剰な分泌を抑える可能性が示唆されています。
使用上の注意として、アダパレンの初期使用では、皮膚の乾燥、赤み、痒み、刺激感などが起こることがありますが、これらは通常、使用を続けることで時間と共に減少します。また、アダパレンは光に敏感なので、使用中は日焼けを避けるか、日焼け止めを使用することが推奨されます。また、妊娠中や授乳中の女性には使用を避けるか、医師の指導の下で使用することが重要です。以上のようにディフェリンゲルは、その角質層の正常化作用、抗炎症効果、および皮脂腺活動の調節により、ニキビ治療において効果的な薬剤とされています。
ニキビのガイドラインで推奨度Aの飲み薬
「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」において飲み薬が推奨度Aを得ているのはニキビが炎症性皮疹(赤ニキビと黄ニキビ)の場合のみで、その薬もドキシサイクリン、ミノサイクリンのみです。この2つが飲み繰りではおすすめの処方薬となります。
■ドキシサイクリンとは
ドキシサイクリンは、ニキビ治療に使用されるテトラサイクリン系の抗生物質の一つです。ドキシサイクリンは、ニキビの主要な原因菌であるアクネ菌に対して強力な抗菌効果を示します。この薬は細菌のタンパク質合成を阻害し、その増殖を抑制します。これにより、アクネ菌の数を減少させ、ニキビの発生を抑制します。ドキシサイクリンには、ニキビの炎症を抑制する効果があります。炎症はニキビの赤みや腫れの原因であり、この炎症を抑えることで、ニキビの症状を軽減することができます。一部の研究では、ドキシサイクリンがコメドの形成を抑制する可能性が示唆されています。コメドはニキビの初期段階であり、これを抑制することでニキビの進行を防ぐ効果が期待されます。使用上の注意点として、ドキシサイクリンは光線過敏症(日光に対する過敏反応)を引き起こす可能性があるため、日焼けを避けることが推奨されます。また、胃腸障害やめまいなどの副作用が起こることがあるため、医師の指示に従って使用することが重要です。
■ミノサイクリン(ミノペン🄬)とは
ミノサイクリン(商品名:ミノペン)もドキシサイクリンと同様に、ニキビ治療に使用されるテトラサイクリン系の抗生物質です。ミノペンは、ニキビの原因となるアクネ菌(に対して強力な抗菌効果を持っています。この薬は、細菌のタンパク質合成を阻害し、その増殖を抑制することで、ニキビの原因菌の数を減らします。この薬は、ニキビに伴う炎症反応を抑える効果も持っています。炎症はニキビの赤みや腫れを引き起こす主要な因子であるため、この作用はニキビの症状を軽減します。ミノサイクリンによるアクネ菌の増殖抑制と炎症抑制により、ニキビの進行を防ぐ効果があります。特に、毛穴に詰まった皮脂が悪化して感染を引き起こす中等症から重症のニキビに有効です。使用上の注意点として、ミノペンは、副作用として光線過敏症(日光に敏感になること)、胃腸障害、めまいなどが報告され
その他のニキビの塗り薬と飲み薬について
推奨度Aの薬はこれまで紹介した4つ(塗り薬2つ、内服薬2つ)のみです。ただ、ニキビの薬はその他にもたくさんあります。それぞれの推奨度と合わせて簡単に解説します。
■ニキビの塗り薬
・外用抗菌薬(クリンダマイシン,ナジフ ロキサシン,オゼノキサシン)は炎症性皮疹(赤ニキビと黄ニキビ)に対しては推奨度A、面皰(白ニキビ、黒ニキビ)に対しては推奨度C2で推奨しないとされています。
・非ステロイド系抗炎症外用薬(イブプロフェンピコ ノールクリーム)は炎症性皮疹(軽症から中等症)に対しては推奨度C1で、選択肢の一つとして推奨される場合があります。
・ステロイド外用薬は推奨度C2であり、炎症性皮疹に対してはステロイド外用を推奨しないとされています。
・アゼライン酸外用は保険適用外の外用剤ですが、推奨度C1 で、選択肢の一つとして推奨される場合があります。
・ビタミン C 外用(テトラヘキシルデカン酸 アスコルビルと L-アスコルビン酸-2-リン酸ナトリウム の外用)は炎症性皮疹、炎症後の紅斑に使用されますが、保険適用外のためC2という判断です。
・イオウ製剤外用はC1で、選択肢の一つとして推奨される場合があります。
■ニキビの飲み薬
・ドキシサイクリン/ミノサ イクリン以外の抗生剤についてですが、炎症性皮疹に対してロキシスロマイシン/ファロペネムは推奨度B、テトラサイクリン/エリスロマイシン/クラリスロマイシン/レボフロキサシン/トスフロキサシン /シプロフロキサシン/ロメフロキサシン/ セフロキシムアキセチルは推奨度C1です。(抗生剤は面皰に対しては適用がありません)
・漢方薬については荊芥連翹湯,清上防風湯,十味敗毒湯は炎症性皮疹に対しては推奨度C1で、黄連解毒湯,温清飲,温経湯,桂枝茯苓丸は炎症性皮疹に対してはC2です。面皰(白ニキビ、黒ニキビ)に対してC1は荊芥連翹湯のみで、その他すべての漢方薬はC2で推奨しないとされています。
・ステロイド内服、DDS(diaminodiphenyl sulfone、dapsone)内服、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)内服はC2で推奨しないとされています。
・経口避妊薬(いわゆるピル)はC2で推奨しないとされています。
・スピロノラクトンはC2で推奨しないとされています。
・ビタミン薬内服はC2で推奨しないとされています。
まとめ
本記事では、日本国内で保険診療におけるニキビ治療に用いられる薬剤について、最新の使用法と正しい知識を総合的にご紹介しました。特に、過酸化ベンゾイルとアダパレンという二種類の塗り薬、ドキシサイクリンとミノサイクリンという二種類の飲み薬は、その効果と安全性に基づき、特に推奨されており、おすすめの処方薬です。一方で、漢方薬を含む他の薬剤については、現時点ではエビデンス(科学的根拠)が不十分であり、一概に推奨することは難しいと言えます。しかし、これらの薬剤がニキビ治療に無効であるわけではなく、患者様個々の状態に応じて、医師の判断で効果的に用いられる場合もあります。この記事が、ニキビ治療薬に関する皆様の理解を深め、適切な治療選択の一助となれば幸いです。ニキビ治療における薬剤選択に際しては、その薬がガイドラインにおいてどのような位置づけであるかを理解することが非常に重要です。皆様のニキビ治療への知識が一層深まることを願っています。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
2024/03/02
院長ブログトップ > 【プロアクティブにあまり効果がない理由】商品は悪質?
【プロアクティブにあまり効果がない理由】商品は悪質?
ニキビのホームケア商品としてプロアクティブが有名です。プロアクティブは、その宣伝において著名人を起用し、特に旧ジャニーズ事務所の村上信五さんのような人気タレントの効果的な使用例を前面に出しています。彼の肌の顕著な改善は、多くの注目を集め、製品の魅力を伝える強力なメッセージとなりました。しかし、インターネット上でのユーザーレビューを見ると、この製品に対する満足度は必ずしも一様ではないようです。本稿では、プロアクティブの成分と効果に焦点を当て、ニキビケアにおけるその実効性について詳しく探求します。また、なぜこの製品が一部のユーザーにとって効果的でない可能性があるのかについても考察を加えます。
プロアクティブの歴史
プロアクティブ(Proactiv)は、アメリカの皮膚科医Katie RodanとKathy A. Fieldsにより開発されたスキンケアブランドで、1995年にダイレクトマーケティング会社Guthy-Renkerによって発売されました。プロアクティブ(Proactiv)は日本で言うテレビショッピングであるインフォマーシャルという形式で販売を開始し、インフォマーシャルを通じて広く知られるようになりました。また、米国内で多くの著名人を宣伝に起用し、世界中の消費者から注目を集めました。その成功の要因は、医薬品を混合するという革新的な製品開発と著名人を利用したマーケティング戦略にあります。また、洗顔料、トナー、ローションを組み合わせた3ステップケアが特徴で、これにより本来原価が安い洗顔料だけで十分な商品にさらに商品を2つ上乗せして付加価値をあるように見せて、高い値段設定にしました。これが大きな利益を生みました。日本市場では2003年からの展開が始まり、日本の薬事法に合わせた製品開発が行われています。プロアクティブは、その発売以来、その巧みな宣伝戦略により、ニキビケア製品の中でも特に認知度が高いブランドとしての地位を確立しています。
↑ジャスティンビーバーを宣伝に使っているプロアクティブの過去ホームページ
アメリカ版プロアクティブの成分とその効能
アメリカ版プロアクティブには「過酸化ベンゾイル(BPO)」が有効成分として使用されています。「過酸化ベンゾイル(BPO)」は、ニキビ治療において一定の効果を発揮する成分です。この成分は、日本国内では医薬品に分類されており、ニキビ治療用の外用薬「ベピオゲル」にも含まれています。ベピオゲルは、2015年より尋常性ざ瘡(一般的にニキビと呼ばれる状態)の治療薬として、保険適用の下で処方されるようになりました。過酸化ベンゾイルの特長は、顔のニキビを引き起こす主要因であるアクネ菌に対し、抗菌作用を発揮することにあり、その結果、多くのニキビ治療において効果を見せています。さらに、2017年にはプロアクティブMD(ProactivMD)という商品ががアダパレンを配合して発売されました。アダパレンも過酸化ベンゾイルと同様に日本では医薬品で、ディフェリンゲルという商品名で処方されています。
アメリカ版プロアクティブの有効成分の過酸化ベンゾイルやアダパレンとは
アメリカ版プロアクティブに含まれる過酸化ベンゾイルやアダパレンは、ともに尋常性痤瘡(一般的にニキビと呼ばれる状態)治療において、日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」で高い推奨度を得ている成分です。このガイドラインにおいて、過酸化ベンゾイルとアダパレンはともに「行うよう強く推奨する」カテゴリーのAランクに位置付けられています。私自身、日々の臨床でニキビ患者に対して直接ベピオゲル(過酸化ベンゾイル)やディフェリンゲル(アダパレン)を処方することもありますが、その効果は診察の中で明らかに見て取れます。日本では医療用薬品として扱われるこの成分が、アメリカ版プロアクティブに含まれていることは大きな驚きです。過酸化ベンゾイルの効能は、発売当初のアメリカ版プロアクティブの売れ行きにも大きく寄与しており、プロアクティブの人気は日本市場にも波及し、こちらでも発売されるに至りました(ただし、違う日本版は違う成分)。
日本版プロアクティブはサリチル酸
日本版プロアクティブとアメリカ版プロアクティブの間で最も顕著な差異は、それぞれの製品に含まれる主要な有効成分にあります。アメリカ版には過酸化ベンゾイル(BPO)が含まれていますが、日本版プロアクティブではその成分を使用しておらず、代わりにサリチル酸が主要成分として採用されています。サリチル酸は皮膚ケア製品において広く使用される成分で、特にピーリング石鹸などの製品で見られます。この成分は、古い角質層や余分な皮脂を取り除くことによって、新しい肌細胞の生成を促します。その結果、肌のトーンを明るくし、ニキビや黒ずみなどの皮膚トラブルの改善に効果を発揮すると言われています。
↑日本のプロアクティブホームページに掲載されている3ステップの商品
出典元:
日本版プロアクティブに含まれるサリチル酸の特徴とその効果
日本版プロアクティブに配合されているサリチル酸は、医療機関や美容皮膚科においてニキビ治療に広く用いられている成分です。特に、ケミカルピーリングの主要成分としての役割を担っています。ただし、ケミカルピーリングに使用されるサリチル酸は、石鹸などの日常的な皮膚ケア製品に配合されるものと比較して、はるかに高濃度です。この濃度の差が、その効果に大きな影響を与えます。さらに、サリチル酸の効果は個人差が非常に大きいという点が特筆すべきです。ある人には顕著な効果がある一方で、別の人にはほとんど効果がない場合もあります。このため、日本皮膚科学会が発表している「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」では、サリチル酸を使用したケミカルピーリングの推奨度はC1(治療の選択肢として考慮されるレベル)とされています。一般に市販されているピーリング石鹸に含まれるサリチル酸の濃度は、医療用のケミカルピーリングに比べて格段に低いです。市場には「スキンピールバー ハイドロキノール(サンソリット)」や「フォトホワイトC ホワイトソープ(ドクターシーラボ)」など、多くのピーリング石鹸が存在しますが、これらの製品もまた、効果を実感する人とそうでない人の間で大きな差があるのが現実です。
日本版プロアクティブの効果
日本市場において販売されている日本版プロアクティブは、その主成分としてサリチル酸を含んでいます。この点において、市場に存在する他のサリチル酸を含むピーリング石鹸製品との間に顕著な効果の差異は認められません。つまり、日本版プロアクティブの効果を実感する人がいる一方で、全く効果を感じられないという声も少なくないのです。特に、アメリカ版プロアクティブの大きな成功とその反響を背景に、多くの消費者が日本版に対して高い期待を抱いていました。しかし、肝心の効果に関しては、これらの期待とは異なる結果となることがあります。この違いの根底には、アメリカ版と日本版プロアクティブの成分の相違があります。アメリカ版の主成分である過酸化ベンゾイル(またはアダパレン)と、日本版のサリチル酸では、その作用機序や効果に大きな違いがあるため、同等の結果を期待することは難しいのです。この事実は、消費者にとって大きな落胆の原因となり得ますが、それは製品の成分の違いに基づくものであり、その効果の範囲や限界を理解することが重要です。したがって、日本版プロアクティブを使用する際には、これらの点を踏まえた上で、現実的な期待を持つことが肝要と言えるでしょう。
プロアクティブは悪質?
プロアクティブに関して、市場で見られるその価格設定には一定の疑問が持たれています。この製品の主要成分であるサリチル酸は、原価が比較的安価なピーリング石鹸に含まれる成分です。プロアクティブは、この一つの成分を含む製品を3つの異なる商品(洗顔料、化粧水、クリーム)に分割し、それぞれに特別な効果があるかのように宣伝しています。この戦略により、本来安価な成分を使用しながら、製品全体としては高価な価格設定をしているという点が指摘されています。しかし、化粧品市場においては、ブランド価値やマーケティング戦略が製品価格に大きな影響を与えることは一般的です。そのため、プロアクティブの価格が高いからといって、直ちに製品が悪質であると断じることはできません。消費者には、製品の価値が価格に見合っているかどうかを自身で判断し、購入の決断を下す権利があります。
まとめ
この記事を通じて、日本市場におけるプロアクティブの特徴と効果について詳細に解説しました。プロアクティブに含まれるサリチル酸は、一定の効果を持つことは間違いありません。この点を踏まえ、プロアクティブ製品自体を全面的に否定する意図はありません。しかしながら、多くの著名人がメディアやCMを通じて「プロアクティブだけでニキビが劇的に改善した」というメッセージを発信することについては、専門家の立場から見過ごすことはできません。プロアクティブが一部の人にとって効果的である可能性はありますが、それが万人に当てはまるわけではありません。この記事を読むことで、プロアクティブに関する正確な情報と、現実的な期待を持つことができたのであれば、これ以上の幸せはありません。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
2024/02/25
院長ブログトップ > 【背中のニキビの原因と治し方】ブツブツは普通のニキビではない
【背中のニキビの原因と治し方】ブツブツは普通のニキビではない
多くのかたが背中のニキビやブツブツに悩まされています。「長年皮膚科に通っても改善されない」と感じておられることは、私も診療を通じてしばしば耳にします。しかし、背中のニキビやブツブツは普通のニキビと異なることが多く、正しい診断とケアが必要とされます。それ故に、普通のニキビ治療法ではなかなか改善しないのです。本稿では、背中のニキビやブツブツがなかなか治らない原因と、それに対応する効果的な治療法を、美容専門医の視点から詳細にご紹介します。適切なケアと治療を行うことで、皆様が抱える皮膚の問題を解決に導く一助となれば幸いです。
背中のニキビは普通のニキビじゃないかも?
顔にできる一般的なニキビは医学用語では尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)と呼びます。「尋常性」とは普通という意味です。言わば、顔にできるニキビは「普通のニキビ」ということです。これに対して、背中にできるニキビやブツブツは多くの場合は「普通のニキビ」ではありません。顔と同じニキビとして治療すると、治りません。多くの皮膚科では背中も普通のニキビとして治療されています。これが背中のニキビがなかなか治らないと言われる原因なのです。
背中のニキビの原因とは
顔にできるいわゆる普通のニキビは、主に皮脂の過剰産生が毛穴を詰まらせ、その結果アクネ菌(にきび菌)の異常増殖が炎症を引き起こすことが主な原因です。しかし、背中のニキビやブツブツの多くは、アクネ菌よりもマラセチアという真菌(カビの一種)の異常増殖によるものです。この真菌(カビ)によって毛穴が塞がれ、炎症が生じた状態を「マラセチア毛包炎」と称します。この状態は、一般的な尋常性痤瘡(または細菌性痤瘡)とは異なり、「真菌性痤瘡」または「真菌性ニキビ」とも呼ばれます。注意点としては、マラセチア毛包炎と尋常性痤瘡が併発している場合もあり得ます。
マラセチア毛包炎とは
皮膚表面には、通常、様々な微生物が共存しており、これをフローラ(微生物叢または細菌叢)と呼びます。この微生物のコミュニティの中には、マラセチアという種類の真菌(カビ)も含まれています。通常、このマラセチアは皮膚上で穏やかに共生しており、皮膚の組織に害を及ぼしません。ただ、特定の条件下でマラセチアが異常増殖したり、毛穴が傷ついた状態になったりすると、マラセチアは毛穴を通じて毛包に侵入して、毛包がマラセチアに感染して炎症を引き起こします。これがマラセチア毛包炎です。この炎症により、背中はもちろん、顔、肩、胸といった主に上半身の皮膚に、かゆみを伴う吹き出物やニキビ様のブツブツの症状が現れます。マラセチア毛包炎は、普通のニキビとは異なる特性を持っており、マラセチア毛包炎に合った適切な治療が必要です。
↑背中のブツブツ(にきび)のマラセチア毛包炎
マラセチア毛包炎になりやすい人の特徴
マラセチア毛包炎は、多くの場合、思春期の男女が罹患しやすいです。また、発汗量が多い人 (多汗症) や、高温多湿の地域に住んでいる人も罹患する可能性が高くなります。また、皮膚の表面のダメージで毛穴が損傷すると、罹患しやすくなります。次のような場合にもリスクが高まる可能性があります。
特定の条件や状態にある人はマラセチア毛包炎に罹患しやすいこと判明しています。具体的には、思春期の男女や若い男性は皮脂腺からの分泌が多く、マラセチア毛包炎にかかりやすいとされています。また、汗を多くかく人(多汗症)や、高温多湿の環境に生活している人も、マラセチア毛包炎のリスクが高まります。皮膚表面の摩擦で毛穴が損傷すると、マラセチア毛包炎の発生を促す要因となり得ます。以下のような状態や条件がある場合、マラセチア毛包炎に罹患するリスクが高まると考えられています。
■糖尿病
一般には末梢血管の循環が低下しており、皮膚の防御機能に影響を与えることがあります。
■脂性肌
皮脂の過剰分泌がマラセチアの増殖を促します。
■免疫系の疾患
免疫機能の低下はあらゆる感染症のリスクを高めます。
■脂漏性皮膚炎やフケ
脂漏性皮膚炎やフケがある場合はすでにマラセチアが増殖している環境を提供しています。
■過度の発汗
高温多湿の環境下でマラセチアは増殖します。
■抗生物質やステロイドの使用
抗生物質やステロイドは皮膚のフローラ(微生物叢)を変化させ、マラセチア毛包炎のリスクを高める可能性があります。
出典元:
Malassezia (Pityrosporum) Folliculitis (by Cleveland Clinc)
抗生物質や免疫抑制剤の使用時は特に注意
抗生物質や免疫抑制剤の使用は、真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)の発生リスクを特に高める可能性があります。これは、抗生物質が皮膚の自然なフローラ(微生物叢)のバランスを変え、善玉菌の量を減少させることにより、真菌の過剰な増殖を引き起こすためです。細菌と真菌は皮膚上で共存していますが、このバランスが崩れると真菌性座瘡のリスクが増加します。免疫抑制剤を使用している場合も同様で、体の自然な防御力が低下することで真菌の増殖を抑える能力が弱まります。これらの要因により、抗生物質や免疫抑制剤を使用している人は、特に真菌性ニキビに対して注意が必要です。真菌性ニキビのリスクを抑えるためには、皮膚の清潔を保つことや、適切なスキンケアを行うことが重要です。
マラセチア毛包炎の発生しやすい部位
マラセチア毛包炎、一般に「真菌性ニキビ」として知られるこの状態は、皮膚のどの部分にも発生する可能性がありますが、特に発汗が多い部位や衣服の摩擦が多い部位での発生が顕著です。以下のエリアは、マラセチア毛包炎が特に発生しやすい部位とされています。
■胸・デコルテ
バストの間などは発汗が多く、湿度が高まりやすいため、マラセチア毛包炎が形成されやすい環境となります。
■生え際・額・あご
額や生え際は顔の中でも特に汗をかきやすい部分です。また、男性の顎は髭剃りによる刺激で毛穴が傷つき、真菌の侵入がしやすくなります。
■首
首は頭部からの汗が流れやすく、襟元の摩擦も頻繁に生じるため、マラセチア毛包炎が発生しやすい部位です。
■二の腕・肩
二の腕や肩は服の密着による摩擦が多く、皮膚表面の微細な損傷がマラセチアの増殖に適した環境を提供します。
■背中上部
背中は体の中でも最も発汗が多い部位であり、かつか背中上部は常に衣類が密着しているため、高温多湿の状態になりやすく、真菌性ニキビの発生に最も適したエリアと言えます。
※これらの部位では、特に注意深いケアと適切な衣類選びが必要となります。また、真菌性ニキビの発生しやすい部位を理解することは、予防策を講じる上で非常に重要です。
真菌性ニキビに特徴的な症状と普通のニキビとの違い
真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)は、普通のニキビ(尋常性ざ層)とは異なる独特な特徴を持つ皮膚の炎症です。真菌性ニキビでは、皮膚上に突然発生する発疹のような隆起(ブツブツ)が特徴的であり、これらは毛穴周辺に現れます。これに対して、普通のニキビは毛穴ではなく皮脂腺に形成されることが多いです。
真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)による隆起は、通常、房状(クラスター上)に集まり、サイズや形が均一なブツブツとして現れます。また、1つ1つのブツブツの周囲には、しばしば赤みを帯びた境界線や輪が確認されることがあります。対照的に、普通のニキビ(尋常性ざ層)は大きさや形が不均一であることが多いのが特徴です。
さらに、真菌性ニキビは以下のような特有の症状を伴うことがあり、これらは普通のニキビには一般的ではありません:
・強いかゆみ:皮膚の刺激感が伴い、かゆみを引き起こします。
・皮膚の灼熱感:感染部位が熱を持ち、灼熱感を感じることがあります。
・疼痛:炎症により痛みを伴うことがあります。
背中のブツブツ、ニキビ治療
背中のニキビやブツブツの治療では、特に多くの場合、真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)が原因となっているため、薬物療法では真菌に対する治療が優先されます。さらに積極的な治療として、アグネスという方法が推奨されています。アグネス治療は、背中のニキビが真菌性であろうと普通のニキビであろうと、どちらにも効果的に対応できます。以下に、これらの治療方法について詳しく説明します。
■ 抗真菌薬による飲み薬と塗り薬
真菌性ニキビに対しては、経口の抗真菌薬や局所用の抗真菌クリームが用いられます。主に使用される経口抗真菌薬には、フルコナゾールやイトラコナゾールなどがあります。経口抗真菌薬には下痢、吐き気、胃痛、肝機能障害などの副作用が生じることがあります。局所治療としては、エコナゾールやケトコナゾール、二硫化セレンを含むシャンプー(フケの予防と治療にも用いられる)などの抗真菌クリーム(塗り薬)やシャンプーが利用されます。
■ アグネス治療
アグネス治療は、細菌や真菌による毛穴や皮脂腺の炎症に対し、効果を発揮する治療方法です。高周波を利用した熱で、感染している毛穴や皮脂腺を個々に治療し、治癒を促します。背中のニキビに対して、普通のニキビでも真菌性ニキビでも、アグネス治療は有効です。内服薬や外用薬では再発しやすい真菌性ニキビに対して、アグネス治療は再発のリスクがほとんどありません。したがって、背中のニキビ治療においては、アグネス治療の後に抗真菌薬を併用することが望ましいとされています。
背中のニキビ、真菌性ニキビの効果的な予防策
背中や胸に発生する真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)の予防は、日々の生活習慣の見直しで可能です。以下に、効果的な予防策を詳しくご紹介します。
■運動後の適切なケア
運動後はすぐにシャワーを浴び、汗を洗い流しましょう。汗や皮脂が毛穴を塞ぐと、真菌の増殖に適した環境が形成されるため、清潔な状態を保つことが重要です。少なくとも1日1回は肌をよく洗いましょう。
■毛の処理方法
剃毛や毛抜きなどの毛の処理を行う際は、皮膚を傷つけないように注意しましょう。損傷した皮膚は真菌の侵入口となり得ます。毛の処理が不要になるレーザー脱毛もおすすめです。
■スキンケア製品の選び方
脂分を多く含むスキンケア製品や日焼け止めは避けましょう。マラセチアは脂分で繁殖を促進されるためです。また、体を洗う際は、肌を優しく洗うことが大切です。強い摩擦は微細な傷を生じさせ、マラセチアの繁殖を助けることになります。
■水着の適切な扱い
水着は使用後、必ず洗濯し十分に乾燥させることが肝心です。湿った状態は真菌の繁殖に適した環境を作り出します。
■衣服の選択
特に暑い環境や運動時は、通気性の良いゆったりした服を選ぶことが望ましいです。タイトな服は肌を圧迫し、汗や熱がこもりやすくなるためです。
※これらの予防策を日々の生活に取り入れることで、真菌性ニキビの発生リスクを減らすことができます。
マラセチア毛包炎のよくあるご質問
Q:背中のニキビは人にうつりますか?
A:背中のニキビの主要な原因はマラセチア真菌の異常増殖ですが、マラセチアは常在菌であり、誰の皮膚にも存在します。したがって、ニキビ自体が他人に感染することはありません。
Q:背中のニキビは再発する可能性がありますか?
A:背中のニキビは再発の可能性を秘めています。局所的な抗真菌クリームや経口抗真菌薬の使用によって一度改善されたとしても、真菌性ニキビは再発することがあります。
Q:背中のニキビがひどくなった場合、どのような経過をたどるのが一般的ですか?
A:背中のニキビが悪化した場合の一般的な経過については、薬物治療を開始してから数週間以内に症状の改善が見込まれます。しかし、一時的に症状が改善された後でも、マラセチア毛包炎は何年にもわたって継続する可能性があります。加えて、多くの場合、薬の使用を中止すると再発することが一般的です。そのため、症状の再発を防ぐためには、抗真菌クリームや薬の継続的な使用が必要になります。これらのことを踏まえると、再発のリスクがほぼないとされるアグネス治療が、背中のニキビに対して最も効果的な治療法であると考えられます。アグネス治療は、感染した毛穴や皮脂腺を的確に治療し、長期的な改善を目指すものです。
Q:背中にニキビ(ブツブツ)ができる体質は?
A:男性や思春期の男女は脂性肌の場合が多く、脂性肌の体質の場合は、背中の皮膚にマラセチアが増殖しやすい環境になります。すなわち脂性肌の場合は、ニキビができやすい体質と言えます。
Q:胸と背中にニキビができやすいのはなぜですか?
A: 胸と背中はともに発汗が多い部位であるため、高温多湿となりすく、マラセチアという真菌(カビ)が増殖しやすい環境だからです。
Q:背中のぶつぶつはどうやって洗えばいいですか?
A:背中のブツブツの要因は多くの場合、マラセチア毛包炎です。ボディソープをよく泡立てて、優しく背中を洗ってください。決して、ゴシゴシ洗ってはいけません。逆効果で余計にニキビやブツブツができることになります。
Q:背中のニキビは触らない方がいいですか?
A: ニキビを洗うことは大切ですので、シャワー時には優しく洗ってください。ただ、ボディソープやシャンプーが残ることも毛穴が詰まってマラセチア毛包炎を悪化させる要因になりますので、注意が必要です。
まとめ
背中のニキビ、特に真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)は、毛包の感染症であり、しばしば普通のニキビと誤解されがちです。この記事では背中ニキビやブツブツに対しての正しい対処方法について解説しました。マラセチア毛包炎では、皮膚に小さなかゆみを伴う赤い発疹が集団で現れることが特徴です。もし背中にかゆみを伴う吹き出物が改善されない場合は、専門クリニックでの早急な診察を推奨します。この記事が、皆様の皮膚トラブル解決のための有用な情報源となることを願っています。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
2024/02/24
院長ブログトップ > 【胸やデコルテのニキビ】原因と効果的な治療法の全貌
【胸やデコルテのニキビ】原因と効果的な治療法の全貌
私たちの皮膚は、体の各部位で異なる特性を持っています。特に胸やデコルテのバスト周囲のエリアでは、赤みを帯びたブツブツが見られることがあり、これらは一般的に胸ニキビとして認識されます。しかしながら、胸のニキビは、顔にできるものとは病態が異なることが多いのです。顔のニキビと同じ治療法を適用したとしても、なかなか改善しないことが一般的です。そこで、この記事では、多くの方々が直面する胸やデコルテの赤いブツブツの要因となっているニキビに関して、正確な知識と効果的な治療法を深掘りしてご紹介いたします。
胸のブツブツはニキビ?
胸やデコルテなどのバスト周囲に見られるブツブツは、様々な要因により発生する可能性があります。当記事の主題であるニキビ以外にも、血管腫やあせもなど、異なる皮膚の状態が原因であることがあります。多くの場合、胸のニキビでも顔のニキビと似た外見をしているため、一見してニキビと見分けることが可能です。しかしながら、外見が似ていても、胸やデコルテのニキビが顔のニキビとは異なる原因によるものであることが多く、その治療や経過にも違いがあります。したがって、胸のニキビは見た目だけでなく、発生原因や特徴を正確に理解し、適切なケアを行うことが重要です。
胸のニキビは実はニキビじゃない??
一般的にニキビとされる病態は、医学用語で尋常性痤瘡と呼ばれ、アクネ菌(ニキビ菌)という皮膚の常在菌が毛穴や皮脂腺で異常に増殖し、炎症を引き起こすことによって発生します。しかし、胸やデコルテに現れるニキビと見られる症状は、実は異なる原因による場合が多いのです。特に、胸やデコルテの部位に現れるニキビ様の症状は、従来のアクネ菌が原因ではなく、マラセチアという真菌、つまりカビの一種が原因で発生することが多いのです。この真菌によって引き起こされる炎症は、医学的にはマラセチア毛包炎、または真菌性ニキビ(真菌性座瘡)と呼ばれています。この事実は、胸やデコルテのニキビ治療において重要な意味を持ちます。一般的なニキビ治療法が効果を発揮しない場合、その原因は真菌性である可能性があり、適切な診断と治療法の選択が必要になります。
真菌性ニキビ:マラセチア毛包炎とは
マラセチア毛包炎は、マラセチアという特定の真菌(カビ)が毛穴(毛包)に感染することで生じる皮膚の炎症状態です。この状態は、一般的なニキビ(座瘡)と見た目が似ており、しばしば混同されることがあります。マラセチア毛包炎、別名「真菌性ニキビ」とも呼ばれ、肌に小さな赤い隆起(丘疹)やかゆみを引き起こす特徴があります。この疾患は時に、膿を含んだ白ニキビのような状態(膿疱)へと進行することもあります。
出典元:
What leads to Breast Acne? Check Out the 8 Most Prominent Factors
胸の真菌性ニキビと通常のニキビの違い
胸やバスト、デコルテに発生する真菌性ニキビ(別名:真菌性座瘡、マラセチア毛包炎)は、見た目では通常のニキビ(別名:尋常性座瘡)と非常に似ており、容易に混同されがちです。「尋常性」という言葉は「普通」を意味し、この用語は一般的なニキビを指します。通常のニキビは、毛穴(毛包)が皮脂や古い角質(垢)で詰まり、その中でアクネ菌(ニキビ菌)が増殖することにより発生します。一方で、真菌性ニキビは毛穴内の真菌(カビ)の増殖によって発生する感染症です。この二つのニキビの最大の違いは、真菌性ニキビにはかゆみを伴う場合があるのに対し、通常のニキビ(尋常性座瘡)にはかゆみがないという点にあります。また、真菌性ニキビでは一般的なニキビではあまり起こらない、皮膚の灼熱感や疼痛も感じることがあります。
胸のニキビケアの鍵:正しい識別と対処法
胸・デコルテのニキビケアにおいて最も重要なのは、一般的なニキビと真菌性ニキビを正確に区別することです。この2つのニキビは薬が異なるため、適切な診断は治療の鍵となります。また特に重要なのは、胸のニキビにおいては、両方のタイプが同時に発生する可能性もあります。真菌性ニキビと一般的なニキビが同時に存在する場合、それぞれに効果的な薬と治療法を組み合わせることが必要になります。
胸の真菌性ニキビによるブツブツが発生しやすい人は?
真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)は、特定の条件や生活習慣を持つ人々において発生しやすい傾向があります。特に、脂性肌の人や思春期から青年期の男女に多く見られます。真菌(カビ)は、特に暖かく湿った環境や汗をかいた皮膚で急速に増殖することが知られています。胸の真菌性ニキビの発生のリスクファクターは以下の通りです。これらの要素は、真菌の増殖に最適な条件を作り出すため、真菌性ニキビのリスクを高める可能性があります。
・高温多湿な気候に住んでいる人
・免疫力が低下している人
・抗生物質や免疫抑制剤の使用者
・脂漏性皮膚炎や癜風など他の真菌感染症を持っている人
・過度に汗をかく傾向がある人(多汗症の人)
・オイルベースの保湿剤や日焼け止めを頻繁に使用する人
出典元:
Fungal Acne ( Cleveland Clinic)
真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)の発症メカニズム
マラセチア毛包炎、いわゆる真菌性ニキビは、私たちの皮膚に常在するマラセチアという真菌(カビ)によって引き起こされます。すべての人の皮膚に存在するこの真菌は、通常は無害ですが、特定の条件下で毛包(毛穴)に侵入すると、問題を引き起こすことがあります。毛包の損傷や閉塞は、以下のような状況により引き起こされ、その結果、真菌性ニキビが発症するリスクが高まります。
■皮膚の摩擦
過度の摩擦や圧迫によって、皮膚が刺激され、毛穴が損傷することがあります。
■湿度の高い環境
暑さや湿度によって皮膚が常に湿った状態になると、真菌の増殖に適した環境が形成されます。
■毛の処理
剃毛や毛抜きなどによる毛の処理は、毛穴の損傷や刺激を引き起こし得ます。
■皮膚への摩擦
手や物による頻繁な皮膚への接触や摩擦も、毛穴の損傷に繋がります。
■長時間の暑いお風呂
熱いお風呂に長時間浸かることも、皮膚のバリア機能を弱め、真菌の増殖を促進します。
■締め付ける衣服
タイトな服は皮膚の摩擦や圧迫を引き起こし、毛穴の閉塞や損傷を招きます。
※これらの要因が組み合わさることで、マラセチア毛包炎のリスクが高まります。したがって、真菌性ニキビの予防には、これらの要因を最小限に抑えることが重要です。
胸のブツブツ「真菌性にきび」の包括的な治療
胸部の真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)の治療には、薬物療法と革新的なアグネス治療があります。以下に、これらの治療方法について詳しく解説します。
■抗真菌薬による飲み薬と塗り薬
真菌性ニキビの標準的な治療法として、経口または局所の抗真菌薬が用いられます。一般的に使用される経口抗真菌薬には、フルコナゾールやイトラコナゾールなどがあります。経口抗真菌薬には下痢、吐き気、胃痛、肝機能障害などの副作用が生じることがあります。局所治療としては、エコナゾールやケトコナゾール、二硫化セレンを含むシャンプー(フケの予防と治療にも用いられる)などの抗真菌クリーム(塗り薬)やシャンプーが利用されます。
■ アグネス治療
アグネス治療は、過剰な皮脂腺、細菌や真菌、過度な炎症など、ニキビの根本原因に対処する非侵襲的な施術です。高周波を利用して、感染している毛穴を一つ一つ治療して治癒させます。胸やデコルテ、バスト周囲のニキビに対して、一般的なニキビであれ真菌性ニキビであれ、アグネス治療は効果的です。内服薬や外用薬では真菌性ニキビが再発することが多い一方で、アグネス治療では再発のリスクがほとんどありません。筆者は胸のニキビが跡を残さないためにアグネスによる早めの積極的な治癒をおすすめします。胸・デコルテのニキビに対しては、アグネス治療の後に抗真菌薬を併用することが最善の治療方法となります。
出典元:
胸のニキビのよくあるご質問
Q:胸にニキビができる原因は何ですか?
A:主な原因は毛穴にマラセチアという真菌(カビ)の一種が増殖して、炎症を起こすことです。
Q:胸のニキビはどうやったら治りますか?
A:抗真菌薬による治療やアグネス治療で治ります。アグネス治療は高周波を利用して、感染している毛穴を一つ一つ治す治療です。
Q:胸ニキビの原因はストレスですか?
A:ストレスは体の免疫を低下させるため、ストレスによりニキビはできやすい状況になりますが、直接的な原因ではありません。根本的な原因は肌や毛穴がダメージを受けているところに真菌が増殖することです。
Q:胸のニキビは洗ってもいいですか?
A:洗うことが大切ですが、肌の表皮をダメージしないように優しく洗うことが大事です。過度な洗浄はかえって、摩擦で皮膚にダメージを与え、胸のニキビを悪化させる要因となります。
Q:胸のニキビはうつりますか?
A:胸のニキビは主にマラセチアという真菌(カビ)の異常増殖が要因ですが、マラセチアは常在菌であり、元々誰の皮膚にも存在するため、ニキビの発症が人に移ることはありません。
Q:胸に白いニキビのようなものが出来るのはなぜですか?
A:おそらくニキビが進行して、膿を貯めた嚢胞の状態になっています。マラセチア毛包炎では珍しい症状ではありません。
Q:胸はニキビができやすい部位ですか?
A:胸は汗腺が多い部位であり、かつ下着などにより通気性が悪い部位でもあるため、マラセチア毛包炎によるニキビができやすい環境になります。
Q:胸のニキビの洗い方は?
A:石鹸やボディソープをよく泡立てて、優しく手で洗ってください。決してスポンジなどで摩擦を作ってゴシゴシ洗ってはいけません。
Q:胸のニキビを予防するにはどうしたらいいですか?
A:汗をかいた際には速やかに柔らかい素材のタオルなどで拭くがよいです。また、体を清潔に保ち、汗を吸収した衣服は着用しないでください。
Q:胸ニキビはホルモンバランスが関係しますか?
A:ホルモンのバランスが崩れると、免疫機能が低下することもあるため、胸のニキビの遠因にはなり得ますが、直接的な原因にはなりません。胸ニキビの根本的な原因は肌や毛穴がダメージを受けているところにマラセチアという真菌(カビ)が増殖することです。
Q:胸にニキビができる原因は睡眠不足ですか?
A:睡眠が不足すると、疲労が蓄積し、免疫機能が低下することもあるため、胸のニキビの遠因にはなり得ますが、直接的な原因にはなりません。胸ニキビの根本的な原因は肌や毛穴がダメージを受けているところにマラセチアという真菌(カビ)が増殖することです。
Q:胸にできるニキビの病名は何ですか?
A:胸にできるニキビの病名はマラセチア毛包炎です。
まとめ
この記事を通して、胸やデコルテに現れるニキビが真菌(カビ)によるものである可能性が高いこと、そして顔のニキビとは異なる薬が必要であることを詳しく説明しました。特に、アグネス治療は真菌性であれ、細菌性であれ、あらゆるタイプのニキビに対して有効であり、特に胸やデコルテのニキビの瘢痕が目立ちやすいため、早期のアグネス治療を推奨します。胸やデコルテのニキビは、その発生原因が顔のニキビとは大きく異なるため、正しい知識と適切なケアが不可欠です。この記事が、多くの方々が直面する胸やデコルテのブツブツの要因であるニキビに関する悩みに対する解決策となることを願っています。正しい情報と治療法の理解により、皆さんが健やかで美しい肌を取り戻すお手伝いができれば幸いです。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
【関連項目】
【背中のニキビの原因と治し方】ブツブツは普通のニキビではない
胸元の赤いブツブツは何?それは血管腫かも。原因と治療方法について
アグネス, 胸のブツブツ, 胸のニキビ, デコルテのニキビ, マラセチア毛包炎
2024/01/06
院長ブログトップ > サブシジョンは効果なし?失敗する?
サブシジョンは効果なし?失敗する?
サブシジョンはクレーター状のニキビ跡に対する美容外科治療です。インターネット上では、多くの方が「サブシジョンに効果なし」や「サブシジョンの失敗」といった言葉に不安を感じ、治療に躊躇していることが見受けられます。このような懸念に対して、エビデンス(医学的根拠)に基づいた確かな情報を提供し、誤解を解き、にきび跡に対する真実のサブシジョン治療の可能性と効果に光を当てたいと考えています。この記事では、クレーター状のニキビ跡のサブシジョン治療の科学的なエビデンスを分かりやすく解説し、「サブシジョンに効果なし」や「サブシジョンの失敗」といった否定的な意見がどこから来るのか、そしてそれがどれほどの真実を含んでいるのかについて、丁寧に考察します。サブシジョン治療に対する不安を感じている方々へ、この記事が正確な情報の提供と、ニキビ跡治療への一歩を踏み出す勇気を与える手助けとなれば幸いです。
サブシジョンの歴史
サブシジョンは1995年にOrentreich らにより『 Subcutaneous incisionless (subcision) surgery for the correction of depressed scars and wrinkles』という医学論文で最初に発表されたことが始まりだとされています。しかしながら、日本国内において普及し始めたのはここ最近で、筆者がブログ記事に最初にしたのも2022年でした。現在でも日本国内ではそれほど活発に行われているニキビ跡治療ではありません。ちなみに日本人によるサブシジョンの医学論文は調べた限り全くありませんでした。一方、海外の英語文献は1995年以降たくさんありますが、集中しているのは2010年代後半からです。やはり海外でも普及しているのはこの時期からです。おそらくニキビ跡の瘢痕を美容外科や美容皮膚科できれいにしようと思う人たちが増え、その要望に真剣に取り組むドクターが増えたことで、サブシジョンも普及したのだと推測しています。シンプルに言うと、サブシジョン治療が今さら流行り出しているのはニキビ跡治療の社会的需要が増えたからだと言えます。
エビデンスが示すサブシジョンの効果
英語の医学論文ですが、サブシジョンの効果を示すエビデンス(医学的根拠)がたくさんあります。下記にいくつか紹介します。
■ヒアルロン酸との組み合わせで94%に明らかな効果あり
Ebrahim HMらによる2022年の『 A combined approach of subcision with either cross-linked hyaluronic acid or threads in the treatment of atrophic acne scars.』の医学論文では対象患者40人に対してヒアルロン酸注入とサブシジョンの両方の施術を同時に受けたグループと、サブシジョン単独のグループに分けて施術を行いました。ヒアルロン酸とサブシジョンを組み合わせた治療では94.1%の患者が明らかにニキビ跡の改善が認められたと記述しています。一方、ヒアルロン酸を注入せずにサブシジョン単独の場合、67.3%しか効果がなかったとも報告しています。やはりヒアルロン酸注入との組み合わせがサブシジョン治療では重要と言えます。
■鈍針の使用で85%に効果あり
Nilforoushzadehらによる2019年の『Comparing cannula-based subcision with the common needle method: A clinical trial』の医学論文では、施術の針の種類による効果の違いを報告してます。対象患者は100人でニキビ跡に対してサブシジョンを行っています。筆者も使用している針の先端が丸い『鈍針(どんしん)』の場合のニキビ跡のサブシジョン治療の効果は85%記述している一方で、通常の先端が尖った針である『鋭針(えいしん)』を使用した場合の治療効果はわずか39%と報告しています。針の違いでこれだけ効果が違うのは筆者も驚きです。また、血種、腫れ、痛みの持続などの合併症、副作用も鈍針のほうが遥かに少ないと報告されています。対象患者が100人と非常に多いので、信頼性が高いエビデンスと言えます。
参照元:
Comparing cannula-based subcision with the common needle method: A clinical trial
■ダーマローラー併用では100%の効果
Hassan による2015年の『Comparison of efficacy of micro needling for the treatment of acne scars in Asian skin with and without subcision』の医学論文では対象患者25人に対してマイクロニードル(ダーマペンローラー)を併用したサブシジョンではニキビ跡の100%の改善効果があったと記述しています。一方、サブシジョンを行わずに、ダーマローラーのみ行った対象患者25人のニキビ跡は77.1%の改善にとどまったと報告してます。
出典元:
「サブシジョンに効果なし、失敗する」と言われる理由
前述のエビデンスが示すとおり、サブシジョンに効果があるのは明らかです。ではどうして「サブシジョンに効果なし」や「サブシジョンの失敗」について懸念の声があるのでしょうか。それは筆者が推測するに、技術を伴わない医師による施術だからです。サブシジョン治療を施す際、皮膚の表面を皮下組織から鈍針を使って剥がします。この技術は外科手術時の組織の剥離と非常に似ているため、医師にとって外科の経験はこの治療の成否を分ける重要な要素となります。一方、サブシジョン治療を提供している多くの美容皮膚科は日本では外科の経験が少ないまたは全くない医師が担当していることもよくあります。その結果、サブシジョンの最も重要な剥離操作が不十分の結果、効果がないサブシジョンの結果となってしまうのです。「サブシジョンの失敗」はドクター選びの失敗からくるものだとお考えください。
サブシジョン成功のポイント
サブシジョンが成功するポイントは以下の2つです。
■瘢痕組織の十分な剥離
クレーター状のニキビ跡はその皮下の瘢痕組織が非常に硬いのが特徴です。サブシジョン治療は局所麻酔と専用の針(カッター付鈍針)を使うだけの治療で、一見外科手術には見えないですが、クレーター状の瘢痕部において表面の皮膚を皮下の組織から剥離する操作がまさに外科手術時にメッツェン剪刃で組織を剥離する操作と同じです。この瘢痕組織を十分に剥離することがサブシジョン治療のポイントです。サブシジョン治療の成否はこの剥離作業をいかに丁寧に根気よく行うかに依ります。瘢痕組織は非常に強固のため技術も非常に要します。
■ヒアルロン酸注入(またはPRP)
瘢痕部を十分に剥離したあとのヒアルロン酸注入も重要なポイントです。剥離しただけですと、剥離された皮膚がすぐに下部の組織に癒着し、再び瘢痕を形成することもあります。瘢痕が再形成されないために剥離部にヒアルロン酸を注入します。これにより直後から凹型に窪んでいたニキビ跡が補正されます。ヒアルロン酸自体は6~12か月かけて少しずつ吸収されますが、その間に周囲の結合組織の生成によりヒアルロン酸注入が消失した後も窪みが改善された状態が保たれます。ヒアルロン酸注入において重要なことはヒアルロン酸を十分に注入することですが、最初の剥離自体がしっかり行われていないと、そもそもヒアルロン酸が注入できない状態となります。この説明は少し専門的になりますが、硬い瘢痕組織にヒアルロン酸は注入できません。通常の柔らかい皮下組織にヒアルロン酸を注入した場合、注入されたヒアルロン酸のボリュームの分だけ、皮膚や周囲組織が盛り上がります。一方、瘢痕組織は通常の皮下組織と違って、伸展性がなく、非常に硬いためにヒアルロン酸が注入されると、圧力で注入した針穴よりヒアルロン酸が漏れてしまいます。瘢痕組織が非常に硬い場合はほとんど注入することができず、すべて針穴からヒアルロン酸が漏れることもあります。一昔前にニキビ跡の瘢痕にヒアルロン酸注入だけ行う治療もありましたが、こういう理由でほとんど効果がないためにヒアルロン酸注入だけによるニキビ跡治療が行われないようになった歴史があります。また、最近ではヒアルロン酸のかわりにPRP(多血小板血漿)を使用することで、非常によい治療成果がでています。
まとめ
この記事を通じて、インターネット上で頻繁に検索され、多くの方々の関心事となっている「サブシジョンに効果なし」や「サブシジョンの失敗」というフレーズに対し、エビデンス(医学的根拠)に基づき、サブシジョンの実際の効果と可能性について深く掘り下げて解説しました。しかし、サブシジョンの成功は、適切な医師選びに大きく左右されます。治療の成果を最大限に引き出すためには、十分な剥離と適切なヒアルロン酸注入(またはPRP)を確実に行える技術と経験を持った医師を選ぶことが不可欠です。患者様一人ひとりの状況とニーズに合わせた治療を提供できる、信頼できる医師の下で、サブシジョン治療を検討することで、「サブシジョンに効果なし」や「サブシジョンの失敗」という懸念を乗り越え、望む結果へと導かれる可能性が高まります。この情報が正しい医師選びへの一歩として、ニキビ跡で悩んでいる皆様に役立つことを願っております。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。また、にきびのアグネス、ニキビ跡のサブシジョンを国内ではいち早く治療導入した実績がある。
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ニキビ跡を見事に治療!サブシジョン治療のクリニック選びの秘訣
2023/10/23
院長ブログトップ > にきびのアグネス治療の写真
にきびのアグネス治療の写真
ニキビ治療においてアグネスが絶対的に良い治療であることは前回のブログで紹介しました。今回の実際に船橋中央クリニック及び青山セレスクリニックでにきび治療のアグネスを受けた患者を写真で経時的に追います。
アグネス治療前と3回治療した結果
上記写真:アグネス治療前(2022年3月27日)
上記写真:アグネス治療1回後(2022年4月24日)
上記写真:アグネス治療2回後(2022年7月13日)
上記写真:アグネス治療3回後(2022年12月25日)
上記写真:アグネス治療終了後(2023年3月12日)
このようにアグネス回数を重ねるたびに改善します。
アグネスの効果
アグネスはラジオ波の高熱でニキビにある皮脂腺を熱破壊することで、ニキビの炎症を抑え、ニキビの主な原因である過剰な皮脂の生成を減少させます。治療を重ねることで、ニキビの要因となっている細菌も除去され、ニキビが再発しにくくなります。また、皮膚の深層に微細な損傷を与えることでコラーゲンの生成を刺激し、ニキビ跡の平滑化も促進されます。
アクネスを受けた感想
先ほどの症例写真の患者のニキビのアグネス治療を受けた実際の患者のです感想です。
アグネス施術を受けたキッカケ、 施術前のお悩みについて詳しく教えてください。
➡急に肌あれ、ニキビ、赤み、どの化粧水を使っても薬をつかってもよくならない。
このクリニックを選んだ理由は何ですか?
➡アグネスでニキビを根本から解決できるものがあったから
カウンセリング・アグネス施術前の説明の内容、説明を受けた感想を教えてください。
➡ とてもていねいに説明頂き、質問や不安にもよりそっていただきました。
アグネス施術の内容・痛み・かかった時間などを教えてください。
➡最初から効果はあり、施術中一番初めはいたかったですが、がまんできるくらいで休み休みして頂けたのでよかったです。
施術を受けた当日の、来院から施術後までの様子を教えて下さい。
➡カウンセリング後、先生に見てもらいその後、説明をよりていねいにして頂き、施術後赤みはありましたが、どのように過ごしたらいいか教えて頂きその通りにしました。
施術後、どのような経過を辿りましたか?
➡一番最初はほれいざいで少し冷しました。次の日には少しずつ赤みがなくなりました。
アグネスのアフターケアの内容とその感想について教えて下さい。
➡イオン導入はきもちよかったです。また保湿をすることの大切さを学びました。
アグネス施術結果に対する感想 (満足度、良かった点など) を教えてください。
➡とても満足です!6回コースをえらびましたが、3回で全然きれいに なりました。すっぴんでもあるけるようになりました。
クリニック・スタッフやレポートの読者に向けたメッセージをご自由にどうぞ。
➡
私も長年ニキビに悩んでいたので、少し高いなと思うかもしれませんがそれ以上の価値があると思います!早ければ早いほどいいです! 本当に先生、スタッフさんたちは優しくてていねいでした。
本当にありがとうございました!
まとめ
ニキビは薬だけで治療すると、なかなか治り切らないことが多く、ニキビ跡が目立つ要因となります。ニキビは早期治療が一番大事です。早めにアグネス治療を受けられることをおすすめします。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
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2023/10/22
院長ブログトップ > ベストのニキビ治療、それはアグネス!
ベストのニキビ治療、それはアグネス!
アグネスは、にきびの治療において現在最も人気を集めている皮膚医療治療法です。アグネスは、過剰な皮脂腺と細菌、過度な炎症等にきびの要因になっている根本的な原因を治す非侵襲的な施術です。アグネスが小林メソッドを応用したものであることは前回のブログで紹介しました。アグネスはニキビだけではなく、汗管種などの顔のさまざまなブツブツに対して非常に有効ですが、今回はニキビに対してのアグネス治療にクローズアップして詳細を説明します。
アグネス治療の原理
アグネス治療は、RF(ラジオ波)を用いた治療法で、毛穴の中の皮脂腺や炎症おを起こした組織をターゲットにします。具体的な原理は以下の通りです。
RFエネルギーの利用:アグネスはRFエネルギーを使用し、にきびの原因となる過剰な皮脂腺を選択的に破壊します。RFエネルギーは専用のハンドピースを通じて供給されます。
微細断熱針:アグネスのハンドピースの先端には微細な断熱針があります。断熱針には周囲の正常な組織を保護する絶縁部がある特長があり、この特殊な針により周囲の組織をダメージすることなく、選択的にRFエネルギーを皮脂腺に通電し、破壊することができます。
熱破壊と凝固: RFエネルギーはニキビにある皮脂腺を熱破壊し、凝固させます。これによりニキビの炎症を抑え、ニキビ跡の改善も促進します。また、同時にニキビの主な原因である過剰な皮脂の生成を減少させます。
細菌の除去:アグネスはニキビに関連する細菌を除去するのにも役立ちます。RFエネルギーは細菌にとって適さない環境を作り出し、皮膚上のニキビ菌の数を減少させます。
コラーゲン生成: アグネス治療は熱を使って皮膚の深層に微細な損傷を与えることでコラーゲンの生成を刺激します。これにより、肌の弾力性やハリが改善され、ニキビ跡の平滑化が期待できます。
治療頻度
アグネス治療の頻度は、患者のニキビの状態によって異なります。通常、数週間から数か月ごとに行われます。一般的には、1か月の1回の治療を3回程度受けることでニキビが再発しない肌質に変化します。
治療の流れ
麻酔:治療前にクリーム塗布による表面麻酔を行い、患者が快適に治療を受けられるようにします。
アグネスデバイスの使用: 医師の指示を受けた看護師がアグネスを使用して治療を開始します。
治療完了:治療範囲によりますが、30分程度でアグネスが終了します。
メルティング:アグネス治療3日以内に再診し、アグネス治療により生じた滲出液や皮脂を除去します。
アグネス治療のダウンタイムと副作用
最小のダウンタイム:アグネスは一般的に最小侵襲の施術であり、通常、治療後にほとんどダウンタイムがありません。治療後すぐに通常の日常活動を再開できます。
副作用の可能性:アグネスはほどんど大きな副作用はありませんが、一過性の赤み、腫れ、または治療部位での軽度な不快感を現れることがあります。このような場合でm通常、数日で収まります。
アグネス治療の利点と結果
にきびの軽減:アグネスは、炎症性にきび、粉瘤性にきび、嚢胞性にきびなど、さまざまな種類のニキビを軽減するのに効果的です。にきびの根本的な原因を治すことで持続的な結果をもたらします。
皮脂の調整:過剰な皮脂腺を破壊することで、アグネスは皮脂の生成を調整し、将来のニキビの発生を予防します。
ニキビのアグネス治療の症例写真
上記アグネス治療前
上記アグネス治療3回受けた後
まとめ
アグネス治療は、にきび治療において革命的な進歩をもたらす方法として注目されています。この治療法は、過剰な皮脂腺、細菌、そして炎症といったにきびの主要な原因に対処し、非侵襲的な施術で長期的な結果を提供します。
アグネス治療はにきびに苦しむ多くの人々にとって、自信を取り戻す手助けとなる可能性があります。しかし、アグネス治療に精通している医師に相談し、治療計画を立てることが大切です。アグネス治療はにきびの治療において革命をもたらす革新的な方法であり、にきびに悩む人々に希望をもたらすことが期待されます。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。
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2023/10/21
院長ブログトップ > 小林敏男医師の「小林メソッド」
小林敏男医師の「小林メソッド」
小林敏男医師へ捧げる言葉
小林敏男医師への敬意を捧げます。小林医師は東京の「青山・小林クリニック」で皮膚科医として活躍し、特に小林医師が考案した「小林メソッド」は、にきび治療の分野で注目されてきました。最近ではその名前も少しずつ忘れ去られつつありますが、私は小林医師の遺産を称え、小林メソッドについて詳しく語りたいと思います。なお、小林敏男医師は既にご逝去されています。
「小林メソッド」とは何か
「小林メソッド」とは、にきび(痤瘡)の皮脂腺に針を使用し、電気を通電して皮脂腺を焼灼する治療法です。小林医師がこの方法を最初に論文で発表したのは2003年でした。小林医師のこの斬新な治療法は非常に高い評価を受け、彼の青山のクリニックは繁盛していたと言われています。私自身も、小林メソッドの論文や治療方法に強い興味を持ち、この方法を習得したいと考えました。小林医師に直接指導を受けられる機会を探していましたが、残念ながら小林医師は亡くなられ、その機会を逸してしまいました。
上記画像は小林先生が書いた小林メソッドの紹介
なぜ「小林メソッド」は普及しなかったのか
「小林メソッド」は、にきびの症状を劇的に改善するという評判が広がり、美容外科や美容皮膚科の専門家たちには一定の知名度がありました。しかし、小林医師の斬新な治療法が広まる前に彼が亡くなってしまったことが、一般の人々にはほとんど知られなかった理由の一つと考えられます。また、小林メソッドを実践できる医師がほとんどおらず、年月が経つにつれてその名前も薄れていきました。
そして、突如として
小林メソッドを学ぶ機会を失い、他の美容外科手術に追われる日々を過ごしていたとき、私には驚くべき機会が巡ってきました。それが「アグネス」という機器でした。私の信頼のおける業者から、韓国で評判の高いニキビ治療機器「アグネス」が紹介されました。その機器の説明を聞いて、すぐにそれが「小林メソッド」の応用版であることが分かりました。話を聞いているうちに、アグネスが小林メソッドをより効果的に実践できるように設計されたことが明らかになりました。私は迷うことなくアグネスを購入しました。それから早7年。
(上記は実際のアグネスの機器です。)
アグネスを使用して
アグネスを使用してから7年が経ちました。この驚くべき機器を使用すると、にきびの症状が劇的に改善することがあります。私は特に炎症性にきびの患者に対して、アグネスを第一選択としてお勧めしています。しかし、この素晴らしい治療法が、小林敏男医師のおかげだと知る人は多くはありません。アグネスの公式ウェブサイトにも、小林先生に関する言及は見当たりません。私はどうしても小林医師の偉業を讃えたく、今回「小林メソッド」とアグネスの関係について記事にしました。小林敏男医師への敬意を捧げて。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)
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2023/10/10
院長ブログトップ > サブシジョン治療で傷跡と深いシワにアプローチ!
サブシジョン治療で傷跡と深いシワにアプローチ!
誰もが持っている過去の傷や深いシワ。これらは自信を失わせることもあるでしょう。でも、最新の治療法でこれらの悩みを解決することが可能です!
ニキビ跡の解決策としてのサブシジョン
以前の記事サブシジョンによるニキビの瘢痕治療【概要編】」で、クレーター状のニキビ跡に対するサブシジョン治療の有効性を触れました。この治療法は、皮膚の下層に発生した瘢痕組織を緩和するもので、ニキビ跡だけでなく、傷跡の瘢痕やシワの治療にも非常に効果的です。
なぜ傷跡は目立つのか?
傷跡が目立つ背後には、傷跡の皮膚表面下の瘢痕組織が存在しており、これが表面を内側に引っ張ることで凹みが生じます。このような傷跡は、ニキビ跡のクレーター瘢痕と似た状態となります。
サブシジョンとヒアルロン酸のダブル効果
青山セレスクリニック/船橋中央クリニックでは、サブシジョンとヒアルロン酸注入の組み合わせ治療を採用しています。この組み合わせにより、傷跡の瘢痕治療に非常に良好な結果を得ているのです。
深いシワへの対応
眉間や額のシワは、表情によるものですが、長い間同じ表情を繰り返すことで、皮膚下の組織が癒着し、瘢痕のように深くなります。浅いシワなら、ボトックスやヒアルロン酸注入で対応できますが、深いシワ、特に男性の眉間や額のシワには、サブシジョンが有効です。
上記写真のような深いシワは従来の方法ではきれいになりません。
青山セレスクリニック/船橋中央クリニックの取り組み
当クリニックでは、豊富な経験と最先端の技術を活かし、サブシジョンの治療法をさらに進化させ、これまで難しかった傷跡やシワ治療に効果的な治療を提供しています。
まとめ
青山セレスクリニック/船橋中央クリニックのサブシジョン治療は、傷跡やシワに悩むすべての方への希望の光となります。最先端の治療で、再び美しい肌を手に入れましょう。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)
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ニキビ跡を見事に治療!サブシジョン治療のクリニック選びの秘訣
眉間 しわ, 額 しわ, にきび跡, 傷跡修正治療, サブシジョン
2023/10/09
院長ブログトップ > ニキビ跡を見事に治療!サブシジョン治療のクリニック選びの秘訣
ニキビ跡を見事に治療!サブシジョン治療のクリニック選びの秘訣
ニキビの後に残る痕跡や凹みは、多くの人々の心の中に大きな悩みとして存在しています。特にクレーター状瘢痕やアイスピック型瘢痕は、皮膚の表面の美しさを損ねる主な原因となっています。そんなニキビ跡を綺麗にするための魔法のような治療、それが「サブシジョン治療」です。
過去の記事「サブシジョンによるニキビの瘢痕治療【概要編】」では、サブシジョン治療のご紹介、「サブシジョン治療にヒアルロン酸を追加するメリット」では、ヒアルロン酸注入との組み合わせが非常に有効であることをご紹介しました。この記事では、サブシジョン治療で最も適切なクリニックを選ぶためのポイントを詳しく解説します。
サブシジョン治療とその効果
サブシジョン治療は、これらのニキビの瘢痕に対して驚くほどの効果を持つことが最近の研究で明らかになってきました。しかし、残念ながら日本国内の美容皮膚学界では、この治療方法に関する情報がまだまだ少ないのが現状です。その背景には、この治療が一般的な美容治療とは異なり、外科的要素を強く含むからです。そして、外科的手技を要するこの治療を正確に、そして安全に実施するためには医師の外科的な経験が不可欠となるのです。
外科的要素とは?
治療を施す際、皮膚の表面を皮下組織から特殊な針を使って剥がします。この技術は外科手術時の組織の剥離と非常に似ているため、医師にとって外科の経験はこの治療の成否を分ける重要な要素となります。(ちなみに筆者の元神は外科専門医であります)
ヒアルロン酸の魔法
瘢痕部を丁寧に剥離した後、ヒアルロン酸の注入が行われます。ヒアルロン酸は、瘢痕が再び形成されないようにする役割を持ち、さらに、凹んでしまった部分を綺麗に補正します。このヒアルロン酸は、6~12ヶ月の間に少しずつ体内で吸収されていきますが、その期間中に皮膚の周囲の結合組織が生成されることで、治療後も美しい状態が維持されます。
ただし、ヒアルロン酸注入には注意点があります。最初の剥離作業が不十分だと、ヒアルロン酸の注入は難しくなります。なぜなら、硬くなった瘢痕組織は、通常の柔らかい皮下組織とは異なり、ヒアルロン酸を受け入れにくいからです。瘢痕組織が非常に硬いと、ヒアルロン酸が注入できず、すぐに針の穴から漏れてしまうことがあります。
実は、昔はニキビ跡の瘢痕に対してヒアルロン酸の注入だけを試みる治療も行われていました。しかし、上記のような問題点から効果が期待できず、現在ではサブシジョン治療とヒアルロン酸注入のコンビネーションが主流となっています。
クリニック選びのポイント
治療の成功を左右するのは、技術だけでなく使用するヒアルロン酸の量や品質も非常に重要です。それゆえ、クリニック選びは非常に重要となります。サブシジョン治療の経験が豊富で、かつ外科的な背景を持つ医師がいるクリニックを選ぶことで、最も効果的な治療を受けることができます。
まとめ
ニキビ跡の治療は、ただの美容治療以上の専門的な技術や知識を要します。サブシジョン治療とヒアルロン酸注入の組み合わせは、その最先端と言えるでしょう。クリニック選びには十分な注意を払い、最適な治療を受けて、再び美しい肌を手に入れましょう。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)
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