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「手汗」についての記事まとめ

2024/03/01

院長ブログトップ > 【代償性発汗だけではない後遺症】ETS手術で後悔しないために

【代償性発汗だけではない後遺症】ETS手術で後悔しないために

代償性発汗の実態

手汗や脇汗の過度な発汗に苦しむ方々にとって、ETS手術はしばしば最終的な救済手段として考えられがちです。しかし、この手術がもたらす危険な副作用や後遺症には、広く知られる代償性発汗のみならず、他にも多数のリスクが存在します。特に、ETS手術後に代償性発汗という後遺症に悩まされて手術を後悔される患者さんは少なくありません。代償性発汗はしばしば手術前に感じていた多汗症の苦しみを上回ることさえあるのです。さらに、ETS手術には代償性発汗以外にも、様々な深刻な副作用・後遺症が報告されています。このようなリスクが存在するにも関わらず、日本国内でのETS手術の実施件数は年々増加傾向にあります。本記事では、危険とも言えるこのETS手術がもたらす様々な副作用・後遺症やそれに伴う苦悩を、客観的な視点から詳細に解説し、これからETS手術を検討されている方々への注意喚起となることを目指しています。私たちの健康は何よりも大切です。したがって、どのような治療を選択するにしても、そのリスクと利点を十分に理解し、慎重な判断が求められます。

ETS手術とは

1ETS手術、すなわちEndoscopic Thoracic Sympathectomyは、医学用語で胸腔鏡下胸部交感神経遮断術と呼ばれます。この手術は原発性局所多汗症、特に手のひらや脇の下など特定部位の重度な発汗をコントロールするための外科的治療法として知られています。日本では1996年4月に健康保険の適用範囲となり、それ以降、国内での実施件数が急増しました。ETS手術は、発汗をコントロールする役割を持つ交感神経を特定の部位で遮断することにより、過度の発汗を抑制するという治療原理に基づいています。この手術方法は長い歴史を持ち、多くの患者にとって一定の効果をもたらしてきました。しかし、手術によって遮断された神経経路は元に戻すことができないため、この手術の効果も副作用も恒久的です。

そんな大事な神経を切るETS手術は危険ではないのか?

ETS手術の過程で、交感神経幹という生命維持に重要な自律神経の一部が切断されます。この手術で選択的に遮断される交感神経は、木の枝のように本幹から伸び、私たちの体が自動的に機能するために不可欠な役割を果たしています。自律神経系は交感神経と副交感神経の二つから構成され、これらは常に互いにバランスを取り合いながら無意識のうちに働いています。このバランスによって、私たちの身体は機能的に生きることが可能です。交感神経は、ストレスや危険に直面した際に体を活発化させる役割を担います。活動時には心臓の鼓動が速くなり、血圧が上昇し、筋肉への酸素と栄養の供給を増やすために血流が増加します。また、交感神経は発汗を促進し、体温の調節にも寄与しています。一方で、副交感神経は「休息と消化」に関連があります。この神経は体をリラックスさせ、心臓の拍動を遅くし、消化を助けるなど、体を落ち着かせる役割を果たします。食事をした後に眠くなるのは、副交感神経が活動して体をリラックスさせているからです。ETS手術では、このように体の自動制御にとって非常に重要な片方の自律神経の一部を遮断して、発汗機能をコントロールする手術です。しかし、ここで重要な疑問が生じます。「そんな大事な神経を切るETS手術は危険でないのか?」という疑問です。発汗機能の制御以外にも多くの生理的役割を担う交感神経を切断することは本当に安全なのでしょうか?後遺症は起きないのか?特に発汗の抑制のみを目的に、このように重要な神経を切断することについては、私はこれまで常に疑問が感じていました。

代償性発汗という苦しみ

代償性発汗の実態

↑代償性発汗により衣服が常にびしょびしょになっている状態

胸腔下交感神経遮断術(ETS手術)の潜在的な副作用・後遺症として、代償性発汗、味覚性発汗、ホルネル症候群などがありますが、中でも代償性発汗はその深刻さと発生率の高さから特に注目される後遺症です。代償性発汗は、手術によって発汗が抑制された部位以外の場所、例えば背中、腹部、足などで、異常な発汗が生じる現象を指します。代償性発汗の発症率は症状の強弱を除けば、ほぼ100%と言われており、症状の強弱もETS手術前にその程度を予測することは困難です。特に、重症の代償性発汗に悩まされる患者は10%以上にのぼるという報告もあります。重症の代償性発汗では、胸部以下の皮膚からの汗が止まらず、服が常に湿っている状態が続きます。このような状況では、発汗による脱水症状が頻繁に生じ、日常生活に甚大な影響を及ぼします。

代償性発汗は100%

↑字幕注視。ETS手術を多く行うクリニックの動画内でも代償性発汗は100%起こることを断定しています(youtubeより抜粋)

ETS手術ではこの代償性発汗という副作用・後遺症が発生する可能性がほぼ100%である点、そしてその重症度が予測不可能という点から、ETS手術を受けるかどうかを慎重に考える必要があります。重度の代償性発汗は単なる汗の問題ではなく、患者の生活の質を大きく低下させる深刻な副作用です。私はこのような重度の副作用が起こり得ることが予測不能なETS手術な危険手術と言えます。私は断固としてETS手術は受けるべきではないと考えます。

交感神経切断後の深刻な影響:多岐にわたる後遺症

交感神経は、単に発汗を制御するだけでなく、私たちの身体の多様な機能に影響を与える重要な神経です。ETS手術によるこの神経の切断は、発汗を止める目的だけではなく、体の自律的な制御に深刻な影響を及ぼす可能性があります。この重要な事実を踏まえると、その安全性に関しては医学的な知識を有する者であれば、誰もが疑問を抱くでしょう。ETS手術の副作用・後遺症としてよく知られる代償性発汗、味覚性発汗、ホルネル症候群は、手術施設で説明される一般的な副作用ですが、実際にはこれら以外にも多くの後遺症が発生する可能性があります。これらは交感神経という体の重要な神経を切断することに起因する副作用で、自律神経失調症とも言える状態になります。以下は、台湾の林口長庚病院 が公表した、ETS手術後に起こり得る様々な自律神経失調症とも言える後遺症の一部です。

髪:髪の乾燥、抜け毛

皮膚:皮膚のかゆみ、皮膚炎、顔の赤み、手足の赤み

目:眼精疲労、目やに、ドライアイ、羞明、夜盲症

耳:耳鳴り、耳閉感

喉:口の乾き、味覚障害、口腔潰瘍、のどの痛み

体温調節機能:冷たい手足

熱感覚:顔や首、胸、上下肢の熱さ

汗の問題:顔、首、胸、腹部、臀部、大腿、ふくらはぎ、足の発汗、ドライハンド(両手)

感覚異常:手足の感覚異常

精神障害:注意散漫、記憶障害、現実感の喪失、やる気の喪失、不安、憂鬱、不眠、疲労、頭痛、めまい

消化器系:胃痙攣、胸の灼熱感、食欲不振、下痢、腹鳴、満腹感、吐き気、消化不良

呼吸器系:呼吸困難、胸苦しさ、胸骨圧迫感

心血管系:動悸

筋骨格系:筋力低下、関節痛、ヒリヒリ感、骨粗鬆症、関節炎

泌尿生殖器系:頻尿、排尿障害、会陰部のかゆみ、腎尿管膀胱結石、男性の勃起不全、遅漏、インポテンツ、女性の月経困難症

これらの多岐にわたる後遺症は、ETS手術の重要なリスク要因として理解されるべきです。交感神経切断後の影響は単に発汗の問題に留まらず、身体のさまざまな機能に及ぶことが明らかです。

出典元:

長期的な視点から見たETS手術の隠された副作用・後遺症

ETS手術の副作用・後遺症に関するデータは、多くの医療機関や医学論文によって公表されていますが、これらの情報は主に術後2年間の短期的な追跡調査に基づいています。しかし、交感神経を切断するETS手術による副作用・後遺症は、術後数年、場合によっては10年後といった長期間経過した後に初めて顕著に現れることがあります。術後の短期間には患者の満足度が高いことも多いですが、時間が経過し、新たな健康問題が発生しても、これを手術との関連性を否定する医療機関が存在する場合、公表されるデータは実際のリスクを反映していない可能性があります。このような現状は、ETS手術の長期的な副作用・後遺症の実態を見落とす原因となり、医療機関からの報告によって手術の成功率や満足度が誤って高く評価されることにつながりかねません。

ETS手術の決断に伴う後悔の実態

病院外の独立した調査によると、SNSを通じて行われた患者自身の声から明らかになるETS手術に関する後悔率は、驚くべきことに約90%にも上ります。これは、ETS手術後に満足している患者がわずか10%未満であることを示唆しています。多くの国では、ETS手術に伴う予測不能な副作用・後遺症のリスクが高すぎると判断され、危険な手術として禁止または制限が行われています。ETS手術の発祥地であるスウェーデンでは、2003年に数多くの患者からの苦情を受けて法的に禁止されました。台湾では2004年以降、20歳未満の患者への施術が厳しく制限され、実質的には行われていません。日本国内でも、ETS手術を受けた多くの人々が、その後遺症により学業や職業を断念し、障害年金や生活保護の申請に至るケースが増えています。過去には、ETS手術に関連した医療訴訟が少なくとも十数件発生しており、訴訟の対象となった医療機関の多くは手術の実施を中止しています。

ETS手術以外のよい治療法

精神性発汗に悩む女性

原発性局所多汗症、例えば頭汗、手汗、足汗の過度な発汗に対処するための効果的かつ安全な治療法として、ボトックス注射が広く推奨されています。ボトックス注射は、ETS手術のように治らないような代償性発汗のリスクは全くなく、手軽かつ効果的な選択肢です。施術時の痛みがボトックスの一般的な懸念事項ですが、私のクリニックでは、10分間の全身麻酔によるマスク麻酔法を用いることで、患者様が痛みを感じることなくボトックス注射を受けられるよう配慮しています。ボトックス注射の効果は通常、約6ヶ月間続きますが、定期的な治療を受けることでその効果期間が延長する可能性があります。ボトックスは神経伝達を一時的にブロックし、注入部位の発汗を完全に抑制することで、日常生活における不快感や社会的な影響を軽減します。

それでもETSを受ける決断した場合

代償性発汗やその他の副作用のリスクを考慮して、それでも危険なETS手術の選択を検討する際は、最新の医療情報に注意することも重要です。近年、代償性発汗の発生率を低減するために、一部の医療機関では片側のみのETS手術を推奨しています。これらの施設では、片側手術における重症代償性発汗の発生率が非常に低いとの見解を示しています。また、この手法を支持する医学論文も出版されており、同様の理由から片側のみのETS手術が提唱されています。私自身はETS手術の実施に反対する立場を取っていますが、万が一ETS手術を受けると決断された場合は、利き手側のみの手術を選択することを考慮することをお勧めします。片側のETS手術は、重度の代償性発汗のリスクを低く抑える可能性があります。それでもなお、ETS手術はリスクが伴うことを十分に理解し、全ての可能性を慎重に検討した上で、最終的な判断を下すことが重要です。

【代償性発汗への対応】2つの有効な治療方法

ETS手術後に代償性発汗に悩まされている方にとって、以下の2つの治療法が最も効果的です。

1.ボトックス注射

ボトックス注射は、その効果が多くの医学論文によって確認されています。代償性発汗に苦しむ患者に対して、この治療法は最も効果的な解決策として認められています。治療を受けた患者のほぼ100%がボトックス治療に満足しているとの報告があり、その信頼性と手軽さから、私自身も代償性発汗の治療においてボトックス注射を第一選択肢として推奨しています。

出典元:

Compensatory Hyperhidrosis After Non-Surgical Treatment of Primary Focal Hyperhidrosis: Two-Year Single-Centered Prospective Study From Jordan. Jihan Muhaidat, Firas Al-qarqaz, and Diala Alshiyab 

2.リバーサル手術

リバーサル手術は、切断された交感神経を代替の神経で再接続し、機能を復活させる治療法です。この手術は日本国内ではおそらく行っている施設はなく、主にフィンランドと台湾で実施されています。台湾の桃園市にある林口長庚病院では、使用される神経の移植元としては、ふくらはぎの腓腹神経や人工神経が選ばれています。この手術では、切断された交感神経にこれらの神経を接続し、交感神経の機能をバイパスすることで、代償性発汗の症状を緩和します。

出典元:

台湾の代償性発汗に対するリハーサル手術youtube動画

まとめ

最近、アベマTVで取り上げられたこともあり、手掌多汗症に対するETS手術が注目を集めていますが、このブログを通じて、代償性発汗だけでなく、ETS手術に伴う多くの危険なリスクが存在することを広く理解していただければと思います。重症の代償性発汗やその他の副作用・後遺症により、日常生活が根底から覆されるような事態に陥る可能性もあるため、ETS手術には慎重な検討が必要です。XやFacebook等の各SNSで「ETS手術後遺症」などを検索すると実際にETS手術の後遺症に苦しむ患者様の生の声が聞こえますので、是非参考にしてください。このような日常を破綻させてしまうような合併症を引き起こす可能性があるETS手術は受けるべきでないですし、医療機関は行うべきではないと私は考えます。代わりに、ボトックス注射やビューホット治療等を考慮することで、ETS手術のリスクを避け、多汗症の症状を安全に管理することが可能です。このブログが、多汗症に悩む方々にとって有益な情報となり、より安全で効果的な治療選択につながることを願っています。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

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2024/02/18

院長ブログトップ > 精神性発汗の特徴、原因、対処方法、治し方などについて

精神性発汗の特徴、原因、対処方法、治し方などについて

精神性発汗に悩む女性

私たちの中には、日々の生活において、手のひら、足の裏、顔からの過剰な発汗に苦しんでいる方がたくさんいます。このような発汗は、些細な緊張やストレスがかかった際に頻繁に見られる現象です。例えば、テスト中に手の汗で答案用紙が濡れてしまったり、プレゼンテーションで顔から汗が流れるなど、日常生活において大きな支障をきたすことがあります。このような精神的ストレスへの反応による大量の発汗は、精神性発汗の過剰反応と言えます。このブログでは、過剰な精神性発汗に悩む多くの方々に向けて、その原因や特徴を詳しく解説し、日常生活での対処法の有無や治療方法についてもご紹介いたします。

精神性発汗とは

精神性発汗は、英語ではPsychogenic sweatingと言いますが、ストレスや感情的な動揺が引き金となって生じる生理的な発汗現象です。私たちの体が本能的に反応して起こすこの反射的な発汗は、日常の体温調節の一環としての発汗とは根本的に異なります。通常量の精神性発汗は人間の誰しにも備わっている生理的な反応であり、ごく普通のことです。

精神性発汗の起こる機序

人間の自律神経は、体の無意識の活動を制御する神経系で、交感神経系副交感神経の二つの部分から成り立っています。交感神経系は「戦うか逃げるか」の反応を担当し、ストレスや危険があるときに活動します。心拍数を速め、血圧を上げ、筋肉に血液を送ることで、身体を危険に対処する準備状態にします。これに対し、副交感神経は「休息と消化」の反応を担当し、リラックスしているときに活動します。心拍数や呼吸を落ち着かせ、消化を促進し、体のエネルギーを保存する活動を支援します。自律神経は、このように心拍、呼吸、消化、発汗など、意識的にコントロールできない多くの重要な体の機能を自動的に調節します。精神性発汗は、この自律神経系の中でも特に交感神経の刺激に応じて起こり、ストレスや感情的な影響を受けた際にエクリン汗腺からの発汗を引き起こします。

精神性発汗が起こる主な部位

顔汗・頭の汗がすごいので悩んでいる女性

精神性発汗は、手のひら足の裏、脇の下、頭部、顔といった特定の部位に顕著に現れます。これらの部位は、感情やストレスに敏感に反応して発汗するという特性を持っております。一見、無意味に思えるこの精神性発汗は、実は人間の生理機能の一環であり、動物界全体に見られる反応の一部です。次の記事からは、これら各部位の精神性発汗がどのような生物学的な、生理的的な役割や意義があるのかを解説していきます。

手足の精神性発汗は肉球の名残

人間の手足における精神性発汗は、進化の過程で獲得された、動物の足裏にある肉球の機能を反映しています。犬や猫などの動物が、交感神経の刺激に応じて足裏で発汗する機序と同様のものと考えられています。これらの動物では、足裏の発汗が滑り止めとしての役割を果たし、逃走時や飛び移る際の安全性を高める効果があるとされています。

冷や汗は脳の防御機構としての役割

私たちの体において、脳は極めて重要かつ熱に敏感な器官です。緊張やストレスの瞬間に頭部や顔からの発汗が見られるのは、これが実は「脳冷却」の役割を果たしているからです。緊張時の脳の活動は熱を生み出すことがあり、この熱を効果的に放散するため、特に頭部や顔での発汗が起こります。このプロセスは、脳の温度を適切に保つために非常に重要であり、体温が上昇していない状況でも発生するため「冷や汗」として知られています。このように、冷や汗は脳を保護するための生理的な反応であり、私たちの体の賢い防御メカニズムの一つなのです。

脇汗が多い理由

脇下(腋窩)は全身の中で最も低い体温で発汗が始まる部位です。これは、脇に近い体表に大きな血管が存在し、発汗によって体表を冷却するのに特に効果的だからです。脳冷却が脳を優先的に守るために低体温でも顔や頭から発汗しやすく設計されているように、脇汗も体全体の冷却を最も効率的に行うために発汗しやすくなっています。ストレスや精神的負荷による精神性発汗が手のひら、足の裏、頭部・顔面に現れるように、脇からも発汗が起こります。脇のこの精神性発汗は、体温の上昇を未然に防ぎ、早期に体を冷却するための生理的な現象であり、大きな意義があるのです。

精神性発汗は生体の自然な反応

このように精神性発汗は、手のひら、足の裏、頭・顔、脇といった部位に見られる、生体が持つ自然な生理的な現象です。この現象は、ストレスや感情的な反応に応じた身体の自然な対応であり、正常範囲内であれば日常生活には影響を与えません。しかしながら、この発汗が過剰になると、日常の活動に支障をきたすことがあり、その場合は原発性局所多汗症と診断されることもあります。

原発性局所多汗症の診断

足汗がひどいことに悩む女性

異常な精神性発汗による原発性局所多汗症には明確な診断基準があります。原発性局所多汗症は過剰な発汗が明らかな原因がないまま 6 カ月以上認められ,、以下の6症状のうち2項目以上当てはまる場合に診断されます。

1)最初に症状がでるのが 25 歳以下であること

2)対称性に発汗がみられること

3)睡眠中は発汗が止まっていること

4)1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること

5)家族歴がみられること

6)それらによって日常生活に支障をきたすこと

出典元:

Hornberger J, Grimes K, Naumann M. et al: Recognition, diagnosis and treatment of primary focal hyperhidrosis, J Am Acad Dermatol, 2004; 51: 274―286

精神性発汗の誤った対策

インターネット上では、精神性発汗に関するさまざまな情報が氾濫しています。これには、医療機関から発信される情報でさえ、時には誤ったものや古くなってしまった内容が含まれることがあります。医学の世界は絶えず進歩しており、過去の情報が現代では不適切であることも少なくありません。特に、過剰な精神性発汗に対する対策に関しては、誤ったアプローチや真偽の不確かな情報が数多く存在します。下記から具体的にはどの点が誤っているのか指摘しましょう。

■「食生活の改善」という間違った対策

多くの情報源が、辛味や酸味、カフェインが交感神経を刺激し、結果として発汗を促進するため、精神性発汗の抑制のためにこれらを控えることを推奨しています。しかし、これらの食品や飲料を制限することが原発性局所多汗症の改善に直接効果があるかどうかについては、医学的な証拠は全くありません。また、一部の情報源では大豆製品やハーブ類、野菜などが発汗を抑制すると主張していますが、これらの主張に対する科学的根拠は現在のところ全く確立されていません。

■「生活習慣の改善」という間違った対策

精神性発汗に対する生活習慣の改善という対策に関する情報は多くありますが、生活習慣の改善が多汗症に直接的な影響を与えるという明確な医学的証拠も全くありません。アルコールやニコチンが原発性局所多汗症の増悪因子となる可能性についても、直接的な言及がある医学論文は見つかっていません。確かに、アルコールやタバコは自律神経に影響を及ぼし、発汗に影響を与える可能性がありますが、これらの摂取を控えることが多汗症の改善に直接的につながるという医学的な根拠も全くありません。また、規則正しい生活や十分な睡眠が多汗症を改善するという研究結果も現時点ではありません。

■「ストレスを軽減させるべき」という間違った対策

ストレスが交感神経を活性化させ、発汗を促すという考えは広く受け入れられていますが、リラクゼーションが原発性局所多汗症の改善に直接的に寄与するという明確な医学的証拠は全くありません。一般的なリラックス方法、例えばゆっくりとしたお風呂の時間やアロマセラピーなどは、一時的なストレス軽減には有効かもしれませんが、過剰な精神性発汗の根本的な改善につながるという科学的な裏付けは全く確立されていないため、注意が必要です。

精神性発汗に対する誤った対策が誤解を拡大させるリスク

手のひらの汗が多くて悩む女性

インターネット上には、ホルモンの不均衡や過剰なストレスが過剰な精神性発汗を引き起こすとする記述が散見されますが、これらは多汗症で悩んでいるかたに対する誤った前提に基づいています。このような記述は、過剰な精神性発汗による多汗症が生活習慣や社会生活の乱れが原因であるという誤った認識を広め、多汗症で悩んでいるかたにをさらに苦しめる可能性があります。実際には、過剰な精神性発汗を引き起こす過剰な交感神経の活動の原因は未だ明確にはされておらず、原発性局所多汗症への理解と配慮が求められます。例えば、花粉症に苦しむ人に対して「生活習慣の乱れが原因」と言うのは適切ではないのと同じように、過剰な精神性発汗で悩んでいる人に対する適切な理解とサポートが必要です。

精神性発汗のよくあるご質問

Q:精神性発汗の特徴は?

A:精神性発汗は、英ストレスや感情的な動揺が引き金となって生じる生理的な発汗現象です。通常量の精神性発汗は人間の誰しにも備わっている生理的な反応であり、ごく普通のことです。過剰な精神性発汗は原発性局所多汗症と診断されます。

Q:精神的ストレスで汗をかくのはなぜ?

A:汗をかくという生理的な現象は交感神経により制御されており、ストレスを感じると自然な生体反応の結果、交感神経の活動が高まるからです。交感神経の活動が高まると、それに連動して発汗も増えてしまうのです。

Q:精神性発汗を止める方法はありますか?

A:精神性発汗が生じている部位によってそれぞれ推奨される治療方法は異なりますが、すべての精神性発汗を止める方法として有効なのはボトックス注射です。

Q:精神性発汗は体温に影響しますか?

A:精神性発汗は体温に影響しません。精神性発汗の特徴が体温と関係なく発汗する点です。また、発汗量が増えても体温はほとんど下がることはありません。

異常な精神性発汗に対する治療方法

脇汗の多汗症に悩む女性

原発性局所多汗症と診断された場合、その部位に応じた最適な治療法を選択することが重要です。一つの有効な治療方法として、ボトックス注射が広く用いられています。ボトックスは多汗症の各種症状に対して効果を示し、特に手術によく見られる代償性発汗のリスクは全くないとされています。また、ボトックス治療は副作用が少ないという利点もあり、多汗症治療において推奨されています。

まとめ

この記事では、精神性発汗の生理的な機序とその意義を中心に解説し、それが原発性局所多汗症の要因となることを詳しく説明しました。読者の皆様に正しい知識を提供し、過剰な精神性発汗に苦しむ方々に少しでも役立てば幸いです。もし、この症状が日常生活に影響を及ぼしている場合は、医師に相談することを強くお勧めします。多汗症治療において経験豊富な皮膚科医や美容外科医なら、症状に合わせた適切なアドバイスや治療法を提供できるでしょう。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

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手汗が多い原因は遺伝?最新の治療方法は?

手のひらの汗が多くて悩む女性

日々の生活において、手のひらからの過度な発汗は様々な不便さを引き起こし、多くの人々にとって深刻な悩みの種となっています。この症状は「手掌多汗症」と呼ばれ、「手汗が止まらない」など社会生活や日常活動に支障をきたすことがあります。この記事では、手汗の多汗症がどのようにして発生するのか、また遺伝的な原因がどの程度影響しているのかについて探求します。さらに、最新の手汗を止める方法についても詳しく解説し、手汗に悩む多くの方々に役立つ情報を提供します。手掌多汗症に対する理解を深め、より快適な日常生活を送るための手助けをすることが、この記事の目的です。

手掌多汗症の原因:手汗をかく原因とは

手掌多汗症の原因に関して、最新の医学研究は興味深い発見を提供しています。この症状は、汗腺の異常な活動に起因しており、汗腺自体の物理的な異常(例えば腺の数や大きさの増加)ではなく、その機能的な過剰活動が原因です。特に、自律神経の一つである交感神経系の過敏な反応が、過剰な汗腺活動を引き起こし、手汗の原因とされています。さらに、手掌多汗症患者は、感情的または物理的な刺激に対して、通常よりも強い反応を示すことが確認されています。つまり、感情的な刺激に対する低い閾値と過剰な交感神経の反応が手掌多汗症の特徴であり、体温調節や薬物による発汗は正常な範囲にあるとされています。

手掌多汗症は何人に一人くらいか?

多くのネット上では、手掌多汗症の割合は20人に1人とされていますが、これは2013年の5807人を対象とした調査でした。2020 年の最新の調査では、本邦において 60,969 人 を対象としたアンケート調査では、原発性手掌多汗症の有病率手掌 2.9%でした。このため手掌多汗症は100人に3人程度と考えるべきです。

出典元:

Fujimoto T, Kawahara K, Yokozeki H: Epidemiological study and considerations of primary focal hyperhidrosis in Japan: from questionnaire analysis, J Dermatol, 2013; 40: 886―890

Fujimoto T, Inose Y, Nakamura H, et al: Questionnaire based epidemiological survey of primary focal hyperhidrosis and survey on current medical management of primary axillary hyperhidrosis in Japan, Arch Dermatol Res, 2022.

手掌多汗症は自然に治るのか?

前述の2020 年の調査では年代別の有病率は、手掌では15~29歳にピークがみられました。これは、手掌多汗症になっても、医療機関への受診率が10%程度という低い事実(2020年の調査より)から、治療で治ったというよりも加齢に応じて症状が軽快したためと考えれられます。このため手掌多汗症は人によっては自然に治ることもあると言えます。

手汗が多いのは遺伝!

わきがの遺伝子

手汗が多いという症状が遺伝的な要因による可能性が高いことが明らかにされており、それは主に常染色体優性遺伝の形式を取っています。この傾向は性別に依存しないことが特徴的です。さらに、遺伝的な多様性が存在し、そのためにより個々の患者によって症状の現れ方が異なる可能性があります。つまり遺伝することにより、手掌多汗症が家族内で発生するリスクは、一般人口と比較して明らかに高いとされてます、症状の現れ方には個人差が大きいということです。

出典元:

Analysis of family history of palmoplantar hyperhidrosis in Japan

手掌多汗症の診断

手の多汗症症状が6か月以上続き、以下の6症状のうち2項目以上当てはまる場合は、原発性手掌多汗症と診断されます。
1.最初に手の多汗症の症状が現れたのが25歳以下。

2.左右の手のひらに汗をかく。

3.睡眠中は発汗が止まっている。

4.1週間に1回以上、手の多汗症がみられる。

5.家族に同じ症状の方がいる。

6.手汗のために日常生活に支障をきたしている。

※つまり加齢に応じて肥満になったり、更年期により寝汗が出るようになったりした場合は、原発性多汗症とは言えないということです。

手掌多汗症の重症度を知る方法

手掌多汗症の重症度を把握するために、国際的な基準であるHDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale、多汗症疾患重症度評価度)が用いられます。HDSSは、原発性局所多汗症の重症度を、患者自身の自覚症状に基づいて4段階で分類する指標です。このスケールは、原発性局所多汗症の診療ガイドラインにも記載されており、手掌多汗症の重症度を客観的に評価するための重要なツールとなっています。HDSSのスコア3および4は、重症の手掌多汗症と分類される基準となります。このスケールを活用することで、患者ごとの適切な治療計画を立てる手助けになります。HDSSは下記の表のとおりです。

HDSS

スコア

自覚症状

1

発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない

2

発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある

3

発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある

4

発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある

出典元:

原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版

手汗の多汗症の治療方法

手掌多汗症の治療方法には以下のようなものがあります

■アポハイドローション20%(外用剤)

アポハイドローション20%は2023年に保険診療に承認され、手掌多汗症の治療において新たな選択肢となっています。アポハイドローション20%は、1日1回、就寝前に塗布し、翌朝に洗い流すことで効果を発揮します。臨床試験では、4週間連続で使用した患者の60%がHDSSスコアで1グレード以上の改善を経験したと報告されています。しかし、副作用も報告されています。これには皮膚の刺激や乾燥、かぶれなどが含まれる可能性があります。【保険適用】

■局所制汗剤(塩化アルミニウム製剤)

塩化アルミニウム製剤は、手掌多汗症の治療に一般的に用いられる選択肢の一つです。これらの制汗剤は、汗腺を一時的に塞ぐことにより、汗の分泌を減少させる効果があります。塩化アルミニウムサリチル酸ゲル(30~40%濃度)の使用により、患者の60%が症状の改善を経験したとの報告があります。ただし、最も一般的な副作用は、外用液による刺激性接触皮膚炎です。また、注意点としてこの治療方法は一部保険適用外の場合があります。【保険適用外】

■イオントフォレーシス

イオントフォレーシスは、手掌多汗症治療の有効な選択肢の一つです。この方法では、低強度の電流を水を介して皮膚に適用し、汗腺を一時的に閉塞させます。治療は通常、専用の装置を使用し、定期的に行う必要があります。イオントフォレーシスの治療頻度は、一般的に患者の症状と反応に応じて異なりますが、初期治療としては週に数回から始めることが多いです。その後、症状の改善に応じて治療頻度を減らし、維持治療として週に1回または2週間に1回のセッションが行われることが一般的です。治療中、患者は手を水に浸し、装置からの電流が汗腺に作用します。イオントフォレーシスは比較的安全で、副作用が少ないとされていますが、皮膚の軽度の刺激や乾燥を引き起こすことがあります。イオントフォレーシスは保険適用となっております。【保険適用】

■ボトックス注射

ボトックス注射は、手掌多汗症の治療に使用される方法の一つです。この治療では、ボツリヌス毒素を使用して汗腺を支配する神経を一時的に麻痺させ、発汗を減少させます。治療効果は約6ヶ月間持続し、症状の重症度に応じて繰り返し治療を行うことが一般的です。副作用としては、手指の筋力低下が挙げられますが、これは投与量に比例し、通常は一過性で、経過観察のみで改善することが多いです。【保険適用外】

■ビューホット治療

筆者は手汗に対してビューホット治療も行っています。改善程度は30~50%程度の改善があります。副作用として点状のカサブタができます。完全に跡が取れるまで1~3か月程度と時間がかかります。一度改善した効果が半永久的に持続するところがビューホットのよいです。

■内服薬

内服薬による手掌多汗症治療は、特に他の治療法が効果を示さない場合に適用されることがあります。主に使用されるのは抗コリン薬で、抗コリン薬は神経伝達物質を抑制し、発汗を減らす薬が使用されます。.米国の多汗症センターから発表された多汗症の非外科的治療の医学論文では,外用療法,イオントフォレーシス,ボトッ クスが無効の症例にのみ,抗コリン薬を勧めるとしています。また、ドイツの臨床試験では methanthelinium bromideは腋窩多汗症に対して有効としてますが,手掌多汗症に対しては効果がないとされました。なお,抗コリン薬は前立腺肥大や閉塞隅角 緑内障には禁忌です。副作用 として口渇,かすみ目,ドライアイ,高体温,起立性 低血圧,胃腸不良,尿閉,頻脈,眠気,めまい,混迷 があります。また、若年者に対する認知機能の影響は不明であるため、多汗症に対して若年から長期服薬することは推奨できないとされています。【保険適用】

■交感神経遮断術

交感神経遮断術は、手掌多汗症の最終手段としての治療方法です。交感神経遮断術は、汗の分泌に関わる交感神経を遮断することによって行われます。しかし、この手術には代償性発汗という大きな合併症のリスクがあります。代償性発汗は、手術によって汗の分泌が減少した部分以外の身体の部位で過剰な発汗を引き起こす現象です。代償性発汗は、手術後の生活に大きな影響を与える可能性があり、そのため交感神経遮断術は他の治療法が効果を示さない場合に限られています。この手術は保険適用の対象となっておりますが、患者はリスクと利点を十分に理解し、医師と綿密な相談を行うことが重要です。【保険適用】

手汗をなくす方法としてはボトックスがおすすめ!

ボトックス注射は手掌多汗症治療において高い効果を示す選択肢の一つです。この方法は、外用剤、アルミニウム塩を含む制汗剤、イオントフォレーシスと比較して、治療後の改善が顕著で、手間が少ないとされています。実際にボトックスを受けた感想では、汗がピタッと止まり、手のひらがカサカサの状態にになるほど手汗がなくなることもあります。ボツリヌス毒素(ボトックス)を使用することで、直接汗腺を制御し、過剰な発汗を減少させます。治療効果は数ヶ月間持続し、症状の重度に応じて繰り返し行うことが可能です。他の方法に比べ、ボトックスは手軽さと効果のバランスが良く、多くの患者にとって有効な選択肢となっています

まとめ

騙されるな、ワキガ手術の保険適用

この記事では手汗が多い原因として遺伝の可能性を含め、最新の治療方法、手汗を止める方法について解説しました。外用剤やイオントフォレーシスは一定の効果がありますが、完全な解決には至りません。一方、ボトックス注射は効果的で手軽な方法として多汗症の治療として普遍的な地位を確立しています。しかし、手掌多汗症は患者の状況や症状の程度によって異なるため、どの治療法も経験豊富な専門医との相談が不可欠です。患者一人ひとりに合った最適な治療方法を選択することが重要です。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

【関連項目】

手汗、足汗のボトックス相談はこちら

アベマTVで手掌多汗症を特集!なぜボトックスが紹介されないのか?

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2024/02/05

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アベマTVで手掌多汗症を特集!なぜボトックスが紹介されないのか?

手掌多汗症の状態

先日ネットの動画配信情報番組のアベマタイムズは「手からの大量の汗による携帯水没?日々の生活に困難をもたらす手掌多汗症とは、その治療のリスクも含めて」という興味深いテーマで手掌多汗症にスポットを当てました。この特集は、このあまり知られていない症状に苦しむ人々の日常と、彼らをサポートする専門家たちの努力に焦点を当てています。私はこの番組の内容を深く考察し、その上で私自身の専門的視点から、考察を深めたいと思います。手掌多汗症はただの不便ではなく、患者の心身に深刻な影響を及ぼすことがあります。このブログを通じて、その症状と治療オプションについての知識を共有し、さらなる理解を深める機会を提供したいと考えています。

アイドル舞咲ゆめさんとnaoさんの悩み

手掌多汗症に悩む「なないろ∞ミルキーウェイ」舞咲ゆめ

アベマTVの特集で、名古屋を拠点に活動するアイドルグループ「なないろ∞ミルキーウェイ」のメンバー、舞咲ゆめさんが自身の手掌多汗症について心を開きました。彼女は、アイドル活動中のダンスやファンとの握手会でグループの仲間と手を握ることやファンとのハイタッチが困難であると語り、この症状がプロとしてのパフォーマンスにどのように影響を及ぼしているかを率直に明かしました。手掌多汗症は、全国で推定400万人以上の人々が抱える悩みであることも番組で紹介されました。

番組のメインゲストとして、同じく手掌多汗症を公表しているマルチアーティストのnaoさんが出演しました。彼女は、症状の不規則さやコントロールの難しさを説明し、その影響の大きさを示すエピソードを共有しました。なんと、自分の手汗が原因で携帯電話(ガラケー5台)を水没させたこともあるというのです。また、彼女は幼少期の思い出として、鉄棒での運動中に手の汗で滑り落ちたこと、そしてその後の周囲の反応や、学校生活での苦労を綴りました。これらの体験は、彼女がどれほど手掌多汗症に苦しめられてきたかを物語っています。舞咲ゆめさんとnaoさんの共有した経験は、手掌多汗症が個人の日常生活や社会生活に与える影響の大きさを浮き彫りにしました。彼女たちの声を通じて、この症状に対する理解と共感が深まることを願っています。

手掌多汗症の医師による解説

この番組で、2万人以上の患者と向き合ってきた多汗症治療の医師が、手掌多汗症の複雑な医学的側面について深く解説しました。医師は、一卵性双生児が同じように手掌多汗症の症状が現れることから手掌多汗症原因が遺伝的な背景に深く根ざしていることを指摘し、この症状が遺伝による異常な交感神経活動と密接に関連していることを示唆しました。さらに、この症状の特徴についても詳細に説明しました。手掌多汗症の患者は常に過剰な発汗をしているわけではなく、発汗のパターンは非常に断続的であると指摘されました。症状が発現する際は、まるでスイッチが入ったかのように突然大量の汗が出る一方で、発汗していない時は手が完全に乾燥している状態になることがあります。これにより、手掌多汗症は「オン」と「オフ」の状態が非常にはっきりしているという独特の特徴を持っていることが強調されました。

ヒロユキ氏とケンコバさんの視点

ひろゆき、けんこば

番組では、2チャンネルの創設者であり知識豊富なひろゆき氏と、人気芸人のケンコバさんがコメンテーターとして登場しました。ひろゆき氏は、子供時代の手掌多汗症による苦労を認めつつも、成人になるとその困難さは花粉症程度に大差ないでないかという見解を示しました。一方、ケンコバさんは、自身の手掌多汗症がいつの間にか治まったことを明かしました。加えて、彼は独特なユーモアを交えて、暑い夏の日に手の汗を利用して自分の体を冷やすという、真偽の程が不明ながらも楽しいエピソードを披露しました。番組でのケンコバさんの話を聞いて、彼の手掌多汗症が比較的軽度であった可能性が高いと感じました。彼の経験は、手掌多汗症が症状の範囲が広いことを示していますし、それを視聴者に広めたという点では意味があるコメントだったと思います。一方で、ヒロユキ氏のコメントは、手掌多汗症に関する番組の深い意図を十分に理解していないように思われました。この番組の主な目的は、手掌多汗症という状態を広く一般に知らせ、悩んでいる人々に治療方法が存在することを伝えることです。多くの人がこの症状について知らずに苦しんでいます。ヒロユキ氏も、自身が番組内で告白している重度の花粉症について誰からも理解されず、治療法が分からない状態だったら、同様に苦しんだことでしょう。手掌多汗症が花粉症と同じくらい広く知られるようになれば、多くの人々が救われる可能性があります。この番組を通じて、手掌多汗症の認識が広がり、それによって多くの患者が適切な治療や理解を得られるようになることが期待されます。

手掌多汗症の4つの治療方法を紹介

手掌多汗症の治療方法

この番組では、医師により手掌多汗症の治療における4つの主要な方法が詳細に紹介されました。まず、汗腺の活動を抑制する「塗り薬」について説明されました。これは、皮膚に直接適用され、汗の出口を塞ぐことで発汗をブロックする効果があります。次に、発汗を誘発する神経の信号を遮断する「飲み薬」が紹介されました。この薬は体内で作用し、発汗をコントロールします。さらに、イオンが汗腺を塞ぎ発汗を抑制する「イオントフォレーシス」という治療法が説明されました。この方法では、電流を用いて皮膚に微量のイオンを導入し、汗の出口を狭めることで発汗を減らす効果があります。これらの非手術的治療法にはそれぞれ副作用が存在することも、専門家によって詳しく説明されました。最後に、汗の原因となる交感神経を切断する「交感神経切断手術」という最終的な治療方法が紹介されました。手術は、他の治療法で改善が見られない場合に検討されることが説明されました。しかし、手術には「9割の確率で代償性発汗が起こる」という重要なリスクが伴い、胸、背中、腰、大腿など、体の他の部分で過剰な発汗が発生する可能性があることが強調されました。

なぜボトックスを紹介しないという謎

手掌多汗症の治療に関する専門家としての立場から、番組で紹介された4つの治療法に加えて、なぜボトックスによる治療が取り上げられなかったのかは疑問です。番組を通じて提供された情報は有益である一方で、私はボトックス注射が最適な治療法だと考えます。この観点から見ると、番組での説明はやや不十分で、視聴者が「最良の治療法は何か」という重要な疑問に直面することになります。ボトックス注射は手掌多汗症治療の選択肢の中で特に効果的であると私は考えています。その理由は、手術によく見られる代償性発汗のリスクがなく、イオントフォレーシス治療時に起こり得る皮膚の荒れといった副作用もほとんどないためです。さらに、ボトックスは他の治療法と比べて副作用が少なく、症状の軽減において高い効果を発揮します。これらの理由から、ボトックスが番組で取り上げられなかったことは、多くの手掌多汗症患者にとって重要な情報の欠如となっていると言えるでしょう。

この番組を機に、手掌多汗症に関する一般的な理解が深まることは望ましいですが、治療法の選択に関しては、ボトックス治療のような有効な選択肢も含めて、より包括的な情報提供が必要であると感じました。

naoさんへのボトックス治療の提案

手掌多汗症のnaoさん

番組の最終部では、手掌多汗症に苦しむnaoさんが、これまでの治療経験について「どれもかなり副作用が強かった。汗が出ないことの方が、逆にストレスというか、気持ち悪い感覚が強かったこともあり、難しかった。現在は治療しない選択をし、一緒に付き合っていくものとして捉えている。」と語りました。しかし、彼女がボトックス注射を試したことがあるかどうかは番組からは明らかではありませんでした。naoさんが手掌多汗症に悩む人々をサポートするNPO法人を立ち上げていることを考えると、彼女自身がボトックス治療を試し、その効果と経験を共有することは、多くの患者にとって非常に有益な情報となる可能性があります。ボトックス注射は、他の治療法で経験されたような副作用が少ないことが知られており、手掌多汗症の症状を効果的に抑制することができます。naoさんがこの治療を体験し、その結果を公開することで、手掌多汗症に悩む多くの人々に新たな治療の選択肢を提示し、彼らの生活の質の向上に貢献することができるでしょう。そのため、私はnaoさんにボトックス注射を試して、その体験を共有することを強く推奨します。

まとめ

アベマTVによる手掌多汗症特集は、この症状に苦しむ多くの人々への理解を深める貴重な機会を提供しました。しかし、特集内でボトックス治療の言及がなかったことは疑問を残します。手掌多汗症は生活の質に深刻な影響を及ぼす症状であり、効果的な治療法の選択肢を患者に提供することが重要です。この特集で紹介された治療法は有効であるものの、ボトックス治療もまた、副作用が少なく症状を抑制する効果の高い方法として知られています。専門家として、私は手掌多汗症に悩む人々に対し、ボトックス治療を含む幅広い治療選択肢についての情報を提供することが重要だと考えています。最終的には、患者一人ひとりが自身に最適な治療法を見つけ、より良い生活を送ることができるよう、正確かつ包括的な情報提供が求められます。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、スソワキガに対するビューホット治療を日本で最初に行った。ワキガ、スソワキガの治療例はこれまで延べ1万人を超える。

【関連項目】

手汗、足汗のボトックス相談はこちら

手の平、足の裏のビューホット治療も始めました

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