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「豊胸バッグ除去」についての記事まとめ

2024/04/03

院長ブログトップ > 豊胸手術に悪性リンパ腫のリスク?バッグはトラブルになる?

豊胸手術に悪性リンパ腫のリスク?バッグはトラブルになる?

豊胸バッグが不安な女性

2024年4月3日のヤフーニュースのトップ記事に「豊胸手術には悪性リンパ腫のリスクも」という衝撃的なタイトルで豊胸バッグにより悪性リンパ腫と言われる血液の癌の一種になる危険性があることを思わせるようなタイトルの記事がアップされました。豊胸バッグが多くの女性にとって関心がある美容治療であるだけにこの真偽については大きな関心事となっていることでしょう。私は医師として、この記事の内容を深く掘り下げ、豊胸バッグの発がん性のリスクに関する真実を検証し、読者の皆様にその真意を明らかにしていきたいと考えています。

豊胸手術には悪性リンパ腫のリスク??

【「関心高まる「美容医療」~トラブルから身を守る(2)豊胸手術には悪性リンパ腫のリスクも」というタイトルのヤフーニュース記事は下記のとおりです。

■ヤフーニュースの記事の転載

女性に人気のある美容整形のひとつが「豊胸手術」だ。シリコーンバッグの挿入やヒアルロン酸注入、脂肪注入など、手術法はさまざまだが、例えばシリコーンバッグを挿入した場合、長期の経過観察が大切だという。日本医科大学付属病院美容外科・美容後遺症外来で診察を行う朝日林太郎氏に聞いた。自分の理想的なバストをすぐ手に入れられる「豊胸手術」は、豊胸用のシリコーンバッグ(インプラント)が開発された1960年代から現在に至るまで高い人気を誇る。インプラントはヒアルロン酸注入や脂肪注入に比べて確実なバストアップや持続性の高さがメリットとされている。ただ人工物である以上、体に吸収されることはないため、感染やバッグの破損などのトラブルのリスクを常に抱えることになる。 高齢女性において比較的多く見られる合併症としては、インプラントの破損や感染などのトラブルである。 「ある80代の女性は、20年前にインプラントの挿入による豊胸手術を受けていたといいます。半年前から右胸が腫れてコブのようなしこりが見られ、1週間前に表面の皮膚が張り裂けたと当院を受診。診るとインプラントが破損して肉芽腫と呼ばれる腫瘤が作られ、皮膚潰瘍を起こしていたのです。まずは手術で原因となったインプラントを除去し、肉芽腫の切除を行いました。高齢になると手術の負担も大きいので少しでも違和感があれば早めに受診してください」 一般的に胸にインプラントを挿入すると、インプラントの周りに被膜が形成され、これが年数の経過とともに石灰化や拘縮(ひきつれ)を起こすことがある。他にも、何らかの強い衝撃によってインプラントが破損すると、炎症や感染などを起こす可能性が高くなる。合併症や後遺症を引き起こさないためにも定期的なフォローアップが重要だ。 「非常にまれではありますが、近年、テクスチャータイプと呼ばれる表面がザラザラしたタイプのインプラントを胸に挿入すると、悪性リンパ腫を発症する場合があるとの報告もあります。発見が遅れると最悪のケースでは死に至る危険もあるので、挿入手術を受けた後は治療を行った医師にしっかりとフォローアップしてもらう必要があります」  とりわけ高齢者の場合、施術治療を受けたクリニックが閉業していたり、執刀医が引退しているケースも少なくない。万が一トラブルが生じた際は、美容後遺症外来を受診することだ。 

出典元: ヤフーニュース、 日刊現代ヘルスケア

この記事の問題点

20年以上の美容治療経験を持つ私が指摘する、この記事の主要な問題点は以下の三つです。

①タイトルが今後も豊胸バッグ挿入後に悪性リンパ腫発症のリスクを暗示していることです。

②記事が主に過去のトラブル事例を取り上げているにも関わらず、それらが最新の豊胸バッグにも当てはまる可能性があるかのように記述していることが問題です

③記事がトラブル発生時の対応策として美容後遺症外来の受診を推奨している点です。

これら3つのポイントに関して、以下で詳しく解説していきます。

①豊胸バッグと悪性リンパ腫の関係について

乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫

乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫(Breast Implant-Associated Anaplastic Large Cell Lymphoma;BIA-ALCL)は、豊胸バッグの使用、特に表面がざらざらしたテクスチャードタイプと言われるインプラントバッグに関連して発症する稀な悪性リンパ腫です。悪性リンパ腫は乳腺よりガンが発症する乳がんではなく、血液のガンと言われるガンの一種です。ここで、BIA-ALCLについての重要な要素を深く掘り下げてみましょう。

■ 危険因子

BIA-ALCLのリスクは、表面が滑らかなスムースタイプの豊胸バッグではなく、テクスチャードタイプのバッグを使用した場合に顕著に高まりますが、一般的な発生率は低いとされています。シリコンおよび生理食塩水を充填したインプラントの両方で、このリスクは存在します。ちなみに過去に私はテクスチャードタイプの豊胸バッグを挿入したことはありません。

■症状と診断

BIA-ALCLの症状には、原因不明の乳房の増大、非対称性、体液の蓄積、乳房や脇の下のしこりなどがあります。その他の症状として、皮膚の発疹や乳房の硬化がみられることもあります。BIA-ALCLが疑われる症例に対する診断では、通常、バストの診察、画像診断(超音波検査やMRI検査など)、インプラント周囲に貯留している液体に含まれるCD30などの特異的マーカーの検査が行われます。

■治療

BIA-ALCLと診断された場合、インプラントとその周囲の瘢痕組織を外科的に除去する治療が推奨されます。場合によっては、特に病気が進行している場合には、化学療法、放射線療法、幹細胞移植療法などの追加治療が必要になることもあります。ただ、日本の厚労省にあたる米国のFDAは、無症状の患者におけるインプラントについて定期的な検診は推奨しているものの、除去を推奨していません。

■ 現状の豊胸バッグと日本における使用状況

日本国内では、過去には一部の美容外科でテクスチャードタイプのバッグが使用されていましたが、現在はその使用は見られません。そのため、国内で新たに豊胸手術を行った場合のBIA-ALCL発症のリスクは限りなくゼロに近いと考えられます。

参照元:

Breast implant-associated anaplastic large cell lymphoma: a review

②豊胸バッグのトラブル

このヤフーニュース記事では、特に高齢者における豊胸バッグの破損や感染についてのトラブルが取り上げられています。しかし、これらのトラブル例の大半は、20年以上前に挿入された古いバッグに関連しています。対照的に、現代の豊胸バッグは品質が大幅に向上しており、破損やその他のトラブルの発生確率はかなり低減しています。これは、技術革新と厳格な品質管理によるもので、現在使用されているバッグは過去のものとは大きく異なります。最新の製品では、安全性と信頼性が大きく強化されていることを理解することが重要です。

③トラブルの際は美容後遺症外来?

このヤフーニュース記事ではトラブルの際は美容後遺症外来の受診をすすめていますが、トラブルの際はまずは手術を受けた医療機関の受診をすすめるのが鉄則です。患者の情報が通常残されているからです。手術を受けた医療機関がすでに閉院した場合などのやむを得ない事情で新たな医療機関を受診する場合は致し方ないですが、手術を受けた医療機関では患者の情報が通常残されているため、何かトラブルがあった際もスムーズに診断や治療が可能です。また、後遺症外来を診療科として標榜している保険診療の病院は日本国内では数施設しかありません。また、過去の美容医療による術後のトラブルや合併症については現在では健康保険が使用できません。このため、こういった後遺症外来では高額な治療費になる可能性があるがあるため、おすすめできません。

豊胸治療のケアについて

日本国内において現在行われている豊胸治療は、ヒアルロン酸注入、脂肪注入、インプラントバッグ挿入の3つの方法ですが、どの豊胸治療も一長一短があり、合併症や副作用が全くない豊胸治療はありません。バッグの豊胸治療は、希望の大きさに一度の治療で達成され、大きさも変わらないという大きなメリットがあります。稀な副作用やトラブルとして破裂や拘縮があります。拘縮の予防として私は豊胸後にはご自身による定期的なマッサージを推奨しています。過去のバッグは拘縮が起こる確率も高かったのですが、現在のバッグは拘縮もほとんど起こらないため、多くの美容外科ではマッサージが不要とされています。しかし、それでも私がマッサージを推奨するのは、拘縮までの硬いバストになることはないにしても、やはり数十年かけて挿入されたバッグの空間が狭くなり、バッグの動きに制限が起こり、少し硬くなる可能性があるからです。また、少なくてとも1週間に1回、ご自身マッサージを行うことにより異常を早期に察知することができます。

まとめ

美容外科医専門医元神賢太医師

このヤフーニュース記事は、豊胸バッグに関心を持つ人々やすでに手術を受けた人々の不安を無用に煽るような中途半端な内容であるため、私は憤りを感じます。マスメディアの役割は正しい情報を届けることです。もし、注意喚起をするための記事であれば、最新のバッグ事情や手術まで取材した記事を掲載するべきです。美容外科治療に対する日本のマスコミが流す情報は多くの場合、偏った彎曲した情報になりがちです。豊胸治療についてご心配がある場合は、まず豊胸治療について経験が豊富な美容外科専門医の診察を受けることをお勧めします。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。

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2024/01/21

院長ブログトップ > 豊胸後にうつ病?乳房インプラント病の全貌:病態から原因・治療まで

豊胸後にうつ病?乳房インプラント病の全貌:病態から原因・治療まで

乳房インプラント病について

バッグによるインプラント挿入による豊胸手術後、身体の不調に悩まされる女性が世界中に増えています。これらの症状は、「乳房インプラント病」という名で知られる比較的新しい病態として認識されています。本記事では、この新しい医学問題に焦点を当て、乳房インプラント病の原因、症状、そして治療法について詳細に掘り下げ、理解を深めます。

乳房インプラント病とは

乳房インプラント病(Breast Implant Illness, BII)とは、バッグによる豊胸手術を受けた人々において報告されている、さまざまな症状群を指します。また、乳房インプラント病は2010年代以降に提唱された比較的新しい病態です。ここで重要なのは 乳房インプラント病は正式な医学的診断としてはまだ認められていません。また、本当に存在する病気なのか未確定ということです。そして、乳房インプラント病は、現在医学界で正式な診断基準も確立されていないため、正確な認識や理解が難しいとされています。しかし、この状態の存在を巡る議論は盛んであり、研究が進むにつれて、この病態の特性や影響についての知見が深まりつつあります。この病気は、ASIA症候群(アジュバント誘発性自己免疫炎症性症候群;Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants)やシリコンインプラント病(Silicone implant illness)とも呼ばれることがあり、乳房インプラントに起因すると考えられる免疫応答や炎症反応に関連していると示唆されています。医学界では、これらの症状に対する包括的な理解を深めるための研究が続けられており、患者たちにとっての正確な情報提供と適切な治療法の確立が求められています。

乳房インプラント病の原因

乳房インプラント病の具体的な原因については、現時点で確定的な答えを得ることは難しいですが、複数の研究によっていくつかの有力な仮説が提唱されています。これらの仮説には、シリコンやその他の乳房インプラント素材に対する患者自身の免疫系または炎症反応、インプラントの表面に生じる細菌やカビなどの微生物による感染、さらには乳房インプラントを挿入する手術自体に対する体の反応などが含まれます。特に注目されているのは、これらの反応がシリコン製インプラントだけでなく、生理食塩水製のインプラントを使用した場合にも同様に発生する可能性があるという点です。

乳房インプラント病の症状

乳房インプラント病に関連する症状は非常に多様で、患者によって異なることが多いです。これまでに50種類以上の症状が報告されており、これらは大きく筋骨格系、認知機能、全身の三つのカテゴリーに分けられます。これらの症状は、豊胸手術を受けた直後に現れることもあれば、数年経過してから発現することもあります。また、これらの症状は乳房インプラントによって引き起こされる可能性がありますが、個々の症状は他の原因によるものである場合もあるため、正確な診断を行うことが重要です。

■筋骨格系に関連する症状には、以下のようなものが含まれます。

関節痛

筋肉痛

筋力の低下

■認知機能に関わる症状としては、次のようなものが報告されています。

不安やうつ

集中力の低下

記憶障害

疲労感

■全身的な症状としては以下のようなものがあります。

自己免疫疾患の症状や診断

全身の慢性疼痛

ドライアイや視力の低下

発疹やその他の皮膚症状

脱毛症

豊胸のシリコンバッグ

↑豊胸治療で使用されるシリコンバッグ

乳房インプラント病の診断

乳房インプラント病の診断は、その複雑さと特異性のため、現代医学において特に難しい分野となっています。この病態を明確に特定するための標準化されたテストや基準は今のところ存在しないため、診断は一般的に医師による詳細な臨床評価に依存しています。医師はまず、患者の症状の全容と既往歴を慎重に検討し、これに基づいて関節炎、ライム病など他の可能性のある疾患を排除するための一連の検査を行います。これらの詳細な検査によって、既知の医学的症状の原因をすべて除外した上で、症状が依然として説明されない場合、乳房インプラント病が疑われます。

乳房インプラント病の治療

乳房インプラント病の主な治療法は、豊胸バッグ(乳房インプラント)の除去です。この手術では、乳房の自然な形を保つために乳首の周囲や乳房の下のしわに切開を入れ、慎重にインプラントを取り出します。さらに、最大限の治療効果がもたらされるために、インプラント周囲の瘢痕組織(カプセル)も同時に除去することがあります。インプラントとそのカプセルを一括して取り除く手法は「エンブロックカプセル摘出術」と呼ばれ、一部の医学研究において、乳房インプラント病の症状改善において有効であるとされています。多くの症例において、インプラントを除去した後、患者の症状に即効性の改善または短期間での改善が見られます。しかし、すべての患者において同様の効果が確認されるわけではないことに留意が必要です。多くの場合、症状の改善は手術後の最初の30日間、もしくは3ヶ月以内に観察されることが一般的です。

本当に乳房インプラント病はあるのか?

乳房インプラント病の存在については、医学界で長い間議論されてきたトピックです。この疑問に対する答えを求めるため、一部の研究者は豊胸バッグ手術を受けた女性と手術を受けていない女性の両グループで、乳房インプラント病に関連するとされるさまざまな症状の発症率を比較しました。その結果、両グループ間で症状の発症率に有意な差が認められなかったという報告があります。この研究結果は、乳房インプラントが症状の直接的な原因となるという考えに疑問を投げかけています。

しかし、この問題は複雑であり、乳房インプラント病の存在を否定するには十分ではないという見解も存在します。乳房インプラント病の症状は多様であり、個々の症状の背景には異なる要因が関係している可能性があります。さらに、豊胸バッグに起因する症状が発現するまでの時間差や、個人差による反応の違いも症状の発生に影響を与える可能性があります。したがって、乳房インプラント病の病態に対する深い理解と包括的なアプローチが必要であり、さらなる研究とデータの蓄積が求められています。乳房インプラント病の実在性に関しては、医学界の間での合意には至っていないものの、このトピックに関する議論は、患者の症状に対するより良い理解と適切なケアへと繋がる可能性があります。今後の研究がこの分野の知識を拡充し、乳房インプラント病に苦しむ患者たちにとっての明確な答えを提供することを期待されています。

まとめ

元神写真

乳房インプラント病に関する現在の知識は、この病態の全貌を解明する過程にあります。正確な原因は未だ特定されておらず、症状の多様性や個人差がその理解を複雑にしています。豊胸手術後に発生する可能性のある50種類以上の症状は、筋骨格系、認知機能、全身症状に大別されます。これらの症状に対する治療法としては、乳房インプラントの除去が主流ですが、すべての患者に同様の効果があるわけではありません。医学界では、乳房インプラント病の存在とその影響について議論が続いており、さらなる研究による明確な解答が期待されています。このブログ記事を通じて、乳房インプラント病の複雑さに対する理解を深め、患者や医師がより良い治療選択をするための参考になれば幸いです。今後の研究と臨床経験の蓄積が、この分野の知見をさらに豊かにし、患者の健康と生活の質の向上に寄与することを願っています。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。

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豊胸シリコンバッグ後の拘縮

豊胸バッグ除去手術のすべて:抜去理由・ダウンタイム・痛み等について

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2024/01/20

院長ブログトップ > 豊胸バッグ除去手術のすべて:抜去理由・ダウンタイム・痛み等について

豊胸バッグ除去手術のすべて:抜去理由・ダウンタイム・痛み等について

豊胸バッグを除去すべきか、否か

乳房インプラント手術、一般に「豊胸バッグ手術」と呼ばれるものは、美容手術の分野で広く行われている人気の高い美容治療です。多くの場合、この手術は望ましい結果をもたらしますが、様々な理由から豊胸バッグの除去が必要となることもあります。本記事では、豊胸バッグの除去が求められる状況を深く掘り下げ、その手術の経過、ダウンタイム、患者が経験する痛みや不安など、豊胸バッグの乳房インプラント除去手術に関する重要な側面について詳細に解説します。

豊胸バッグ除去を受ける美容上の理由

カプセル拘縮によるバストのシワ

上記の黄色線内にあるのがカプセル拘縮によるバストのシワです

豊胸バッグを除去する決断には、いくつかの重要な美容上の理由があります。特に以下のような理由から豊胸バッグの除去手術を受ける方が多いです。

■ カプセル拘縮の問題

豊胸バッグを挿入した後、バッグの周囲に繊維質のカプセルが形成されることがあります。このカプセルが硬くなると、バストの形状が明らかに不自然になることがあります。これをカプセル拘縮と呼びます。カプセル拘縮はその程度によりさまざまな状態があります。軽度のカプセル拘縮では、胸を触った時のシワシワした触感程度の違和感ですが、中等度では皮膚表面に筋状にシワが浮き出てくる状態になります。さらに重度の場合には、ガチガチに石のような硬さになることもあり、痛みを伴うこともあります。このような不自然さや不快感を解消するために、多くの方が豊胸バッグ除去手術を選択しています。特に日本では、このカプセル拘縮による美容上の問題が、豊胸バッグ除去手術を受ける最も一般的な理由となっています。

■ 見た目と触感の不自然さ

カプセル拘縮が生じていなくても、経年変化によってバッグが劣化することがあります。特に古い型の低性能シリコンバッグや生理食塩水バッグを使用している場合、時間の経過とともにバッグの形状や質感が変わり、バストの外観が不自然になることがあります。触感に関しても、時間が経つにつれ、昔挿入されたバッグは硬化する傾向があります。これにより、触れた際の感触が不快に感じられることがあります。また、バッグ内に液体が入っていることが明確に感じられるタプタプとした触感も、不自然で不快な体験を引き起こすことがあります。

豊胸バッグ除去を受ける加齢上の理由

加齢上の理由で豊胸バッグを除去したい女性

豊胸バッグを除去する決断には、美容上の見た目だけでなく、健康や将来の事を考えた上での決断が、豊胸バッグ除去手術を受ける動機となることもあります。特に以下のような加齢上の理由から豊胸バッグの除去手術を受ける方が多いです。

■ 年齢不相応のバストの若さ

加齢によって体全体にたるみが生じた際に、豊胸手術を受けたバストだけが不自然に若々しく見えることがあります。このため、年齢に見合った自然な外観を取り戻すために、高齢の方々がバッグの除去を希望するケースがあります。

■ バッグの重さによる体への影響

加齢に伴い、大きな豊胸バッグの重量が肩こりやその他の体の負担の原因となることがあります。このため、健康上の理由からバッグを除去したいと考える方もいます。

■ 死後の扱いに関する懸念

一部の方は、死後の遺体処理において豊胸バッグが気付かれたり、火葬後の遺灰からバッグの残留物が見つかることに関して心配を抱えています。このような理由から、豊胸バッグの除去手術を選択することもあります。

豊胸バッグ除去手術の健康上の理由

豊胸バッグの除去を検討する際、健康上の理由も非常に重要な理由になることがあります。以下のような健康上の理由から豊胸バッグの除去手術を受ける方もいます。

■ カプセル拘縮による身体的不快感

カプセル拘縮は、見た目の不自然さだけでなく、痛みや不快感をもたらすことがあります。この状態は、単に乳房のみに留まらず、時には首や肩、上腕にまで放散痛として影響を及ぼすことがあります。このような痛みや不快感は、日常生活において大きな障害となり得ます。例えば、通常の活動中に突然の痛みが発生したり、睡眠中に不快感によって目覚めるなど、生活の質を著しく低下させる可能性があります。そのため、カプセル拘縮によるこれらの問題を解消するために、豊胸バッグの除去手術が選択されることが多いのです。除去手術により、痛みや不快感の原因となるカプセルを取り除くことが可能となり、より快適な日常生活を取り戻すことが期待できます。

■豊胸バッグの破裂とその影響

稀ではありますが、豊胸バッグ(豊胸インプラント)が外部からの衝撃や経年変化によって破裂することがあります。破裂は通常片側で起こるため、バストに明らかな左右差が生じることがあります。この左右差は、バッグ除去手術を希望する大きな理由となります。しかし、見た目の問題だけでなく、破裂したインプラントから内容物が周囲の組織に漏れ出ることにより、炎症や他の合併症を引き起こすリスクがあります。このような場合、感染や組織の損傷などの重篤な健康問題を避けるために、速やかに除去手術を行うことが推奨されます。

■豊胸バッグの感染

バッグやバッグ周囲に感染が生じた場合、これは単なる局所的な問題に留まらず、全身への影響を及ぼす可能性があります。このため、感染の兆候が見られた場合、迅速かつ適切な治療が必要となります。感染が確認された際には、感染源となっている豊胸バッグの除去が第一選択の治療となります。バッグ除去手術により、感染源を取り除くことで、感染の拡大を防ぎ、患者様の健康を守ることが可能となります。

■ 乳房インプラント病(BII)

乳房インプラント病(Breast Implant Illness, BII)は、豊胸バッグに起因するとされる一連の全身症状を指します。この状態になると、患者は様々な体調不良を経験することがあります。乳房インプラント病に伴う症状は多岐にわたり、それらが日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。症状には、慢性的な疲労感、関節や筋肉の痛み、皮膚の問題、呼吸困難などが含まれることがあります。これらの症状を軽減するため、豊胸バッグを除去する治療が選択されることがあります。バッグ除去手術により、乳房インプラント病に関連する症状が改善されることが期待されます。

豊胸バッグ除去手術とは

豊胸バッグ除去手術、すなわち乳房インプラントの抜去手術では通常、乳房下縁に約4センチメートルの切開を入れることで行われ、この切開を通じてバッグ(インプラント)が慎重に取り除かれます。患者の体型や豊胸バッグの位置、さらには美容的な配慮に基づき、時には脇下や乳輪周辺への切開が選択されることもあります。

豊胸バッグ除去手術は一般的に約30分程度で完了し、患者様の術中疼痛除去のために静脈麻酔が併用されることが一般的です。豊胸バッグを取り巻くカプセルの取り扱いについては、手術の目的に応じて異なります。多くの場合、カプセルはそのまま残されますが、特定の状況下ではその除去が望ましいとされることもあります。カプセルの除去については、その意義や必要性、手術への影響に関して後述します。

豊胸バッグ除去手術の痛みについて

豊胸バッグを除去すべきか、否か

豊胸バッグ除去手術に伴う痛みは、患者さんが気になる一つの重要な側面です。この手術後の痛みは一般的に軽度であり、多くの場合、バッグの挿入時の痛みと比べてかなり少ないと言われています。実際、この痛みを挿入時の痛みの約1/10程度と言われています。なぜなら、豊胸バッグの挿入時には、バッグを配置するための広範囲な剥離操作が必要で、これが組織の損傷とそれに伴う痛みの主な原因となります。対照的に、豊胸バッグ除去手術では、特にカプセル拘縮がない場合、剥離操作がほとんど必要なく、その結果、手術後の痛みも大幅に軽減されます。しかしながら、カプセル拘縮がある場合、その除去に必要な追加の剥離操作により、痛みがわずかに増加する可能性があります。このように、手術の複雑さや個々の患者の体の状態によって、痛みの度合いは異なることがありますが、概して豊胸バッグ除去手術後の痛みはそれほど強いものではありません。

豊胸バッグ除去手術後ダウンタイムついて

豊胸バッグ除去手術後のダウンタイムは、豊胸バッグ挿入時に比べて相対的に短く、多くの場合、術後の痛みと同様に非常に管理しやすく、1週間程度です。手術直後から、胸部は約1週間、専用のバンドで圧迫されることが一般的です。これは、豊胸バッグがあったスペースへの体液の貯留を防ぐ予防措置として行われます。入浴時を除いて、この圧迫は1週間継続されます。この期間中、運動や飲酒は控え、体液の貯留を効果的に防ぐことが重要です。術後1週間で抜糸が行われ、この時点で腫れや痛みは大幅に減少していることが一般的です。抜糸後の通院は必要なく、この時点で大部分の患者は日常生活に戻ることができます。このように、豊胸バッグ除去手術後のダウンタイムは、適切なケアと管理により、一般的には約1週間程度と短く抑えられます。患者の体調や回復状況によっては、このダウンタイムが若干前後することもありますが、豊胸バッグ除去手術後は通常スムーズな回復が期待できます。

豊胸バッグ除去手術後ダのアフターケアの必要性

手術後、特に注意を要するのは、豊胸バッグが配置されていたスペースに体液が貯留することがあります。この現象は水腫として知られており、場合によっては皮膚表面からの穿刺による除去が必要になることがあります。水腫が少量の場合、数ヶ月を要することがありますが、通常は特別な処置を必要とせず、体内に自然に吸収されます。体液が貯留した場合は経過が患者ごとに異なるため、適切なアフターケアと定期的な医師のフォローアップが重要です。特に、水腫の量によっては、医師が追加の処置が必要な場合もあります。このように豊胸バッグ除去手術後のアフターケアは、患者の快適性と回復の質を確保するために不可欠な要素となります。

豊胸バッグ除去手術時のカプセル摘出の必要性ついて

カプセル摘出の必要性に関する議論は、豊胸バッグ除去手術の分野で国際的な注目を集めてきました。最新の医学的研究と臨床データに基づいて、特に除去する明確な理由がなければ、カプセルを摘出する必要はないという結論に達しています。この判断に至った背景には、過去のカプセル摘出の推奨が、残存カプセル内の体液の貯留や水腫(Seroma)の形成を防ぐためであったという事実があります。しかし、最新の臨床データでは、カプセルの摘出と水腫形成の関連性は明確ではなく、カプセルを除去しても水腫が形成される可能性があることが示されています。ただ、カプセル拘縮による痛みや乳房インプラント病(BII)のような特定の症状がある場合、患者と医師はカプセル摘出の是非について十分に論議し、個別の判断を下す必要があります。カプセルを完全に除去する手術は、一般的な豊胸バッグ除去手術よりも複雑であり、大きな切開とそれに伴う長期の回復期間を必要とします。このため、カプセル摘出を行う利点が明確でない限り、その実施は通常は行われません。豊胸バッグ除去手術時のカプセル摘出の決定は、個々の患者の症状、手術後の期待される結果、および起こり得るリスクを総合的に評価した上で慎重に行うべきです。

まとめ

この記事では、豊胸バッグ除去手術について、患者にとって重要な多くの側面を詳細に検討しました。豊胸バッグの除去の理由は、豊胸バッグに関連する合併症、個人の健康やライフスタイルの変化、あるいは単純に美的な好みの変化など、多岐にわたります。また、豊胸バッグ除去手術におけるカプセル除去の是非についても詳しく解説しました。さらに、豊胸バッグ除去手術後の痛みやダウンタイム、術後のアフターケアの必要性など、患者が知っておくべき重要な情報を詳しく説明しました。この記事が豊胸バッグ除去手術を検討している方々にとって、有益な情報源となり、より知識に基づいた意思決定の手助けになることを願っています。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。

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豊胸シリコンバッグ後の拘縮

豊胸バッグ手術後のカプセル拘縮の予防方法

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2020/06/23

院長ブログトップ > 豊胸シリコンバッグ後の拘縮

豊胸シリコンバッグ後の拘縮

豊胸シリコンバッグ挿入後に拘縮が起こり、胸の外見に変形を起こすことがあります。

上記:右胸内側に拘縮によると考えられるいびつなシワがあります。

拘縮とは豊胸バッグ挿入手術後に数ヶ月~数年かけてバッグ周囲に硬いカプセルができた状態です。
拘縮は過剰な免疫反応の結果発生します。
拘縮が起こる要因は下記のようなことが考えられています。

①手術後の出血、腫れ
②手術時の剥離不十分
③術後のマッサージ不足
④古いタイプのバッグ
⑤不明

豊胸バッグ挿入手術を得意とする私は手術時には常に① 、②が起こらないように心がけています。
これにより拘縮が発生する可能性はかなり低くすることができます。
実際私の経験上もそれは断言できます。
ただ、完璧な手術を行った後も拘縮が発生することもありますので、上記要因⑤の不明ということもあります。

上記のモニター患者さまはおそらく④の古いバッグだったからではないかと考えています。
最新のバッグは昔と比べてずいぶん拘縮が発生する確率も小さくなったと言えます。
ですので、豊胸バッグ手術を検討されるかたは安心してください。
豊胸バッグ手術後のトラブルも昔と違って今はほとんどありません。

上記写真モニター患者さまはこの拘縮といびつな形のために豊胸バッグの抜去と再治療を希望されました。

上記:両側の豊胸バッグ抜去後

やはり抜去後のバストにはボリュームがなく、皮膚にも張りがない状態でした。

このあとこのモニター患者様には脂肪注入による豊胸を行いました。それについてはまたの機会に書きますね。

豊胸バッグ抜去については
船橋中央クリニック、青山セレスクリニック「バッグの入れかえ・抜去専門ページ」もご参照ください。
また拘縮についてもっと詳しく知りたいかたは「豊胸バッグの拘縮ページ」もご覧ください。 

美容整形外科・美容皮膚科
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