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「美容外科トラブル」についての記事まとめ

2024/01/17

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失敗しない美容外科医の選び方

失敗しない美容外科医の選び方

独立行政法人国民生活センターの統計では毎年右肩上がりに美容外科治療や契約に関するトラブルが増えていることについては以前のブログ記事で書きました。同様に、政府広報オンラインの「美容医療サービスの消費者トラブル サービスを受ける前に確認したいポイント※」の記事でも同様に、毎年美容外科のトラブルが増えています(下記図表)

※https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201307/1.html

美容医療サービスに関する年度別相談件数

美容外科の需要が増え、施術件数も増えているので、当然トラブル件数が増えるのは当然です。しかしながら、美容外科でのトラブルが増えている要因は一番の要因は金儲け主義に走っている医師と医療機関が急増し、下手な美容外科医が増えているのが一番の理由です。以前の記事では美容外科のクリニック選びの基準について解説しましたが、今回の記事では美容外科の医師選びに失敗しないためのチェック項目を中心書きます。

信頼できる美容外科医を見つける方法

■美容外科専門医は最低限必要

下手な美容外科医か、そうじゃないか、治療を受ける前の判断として日本美容外科学会が認定している美容外科専門医の資格を取得しているかどうかが一つの判断材料になります。現在美容外科学会が定める規定で、美容外科専門医の取得には下記の条件が必要です(美容外科学会ホームページより抜粋)。

専門医の認定を新規申請するものは、次の各項目の資格の全てを満たすことが必要である。
1. 日本国医師免許証を有し、倫理観、道徳性が当学会の認定する専門医として相応しいこと。
2. 申請時において5年以上連続して当学会の正会員であり、かつ会費を完納していること。
3. 日本先進医療医師会の正会員であること。
4. 申請に際しての生涯教育基準、学術集会での出席、発表、論文による点数が別表に従い、
 加算して60点以上あること*(別表1を参照のこと)。
5. 当学会の専門医が1名以上常勤する施設を研修施設とし、所属長が承認していること。
(形成外科専門医を有する者は2年以上美容外科の診療に従事していること)。

以上、この美容外科専門医の取得条件を解釈すると、美容外科専門医は美容外科専門医のもとで最低限美容外科の修練を5年行ったことになります。従って、美容外科専門医は明らかに経験不足で開業した(下手な)ドクターとは一線を画します。

上手な美容外科医を見分ける方法

患者様はだれもが施術が上手な美容外科医の治療を受けたいと思うでしょう。では上手な美容外科医を見つけるにはどうすればいいのでしょうか。前述の美容外科専門医の取得は最低限必要な資格であって、技術を保証するものではありません。以下に上手な美容外科医かどうかの判断材料をあげます。

■美容外科の経験年数をチェック

美容外科の経験年数は必ずチェックすべき事項です。決して見た目で経験の多さを判断してはいけませんし、医師の年齢や医師の経験年数からも判断してはいけません。最近は多浪して医学部に入る人も多く、卒業時には40歳近い医師もいます。そこから2年の研修を経て美容外科医になった場合、見た目は立派な中年で経験豊富に見えて、実はほとんど何もできないこともあり得ます。また、最近は長年内科などの手術経験を行っていない診療科に従事していた医師が美容外科に移るケースも少なくありません。この場合も見た目中年の新米医師と同様に美容外科の施術は全くできません。美容外科の経験年数が多い場合は、必ずホームページの医師プロフィール欄を見れば分かります。逆にプロフィール欄に美容外科の経験年数の記載がなかったり、経験が多いどうか判断できないような書き方をしている場合は、美容外科の経験年数が少ないと判断して間違いありません。

■外科系診療科の経験の有無

手術時の思わぬ出血への対応や稀に起こり得る術後の合併症の管理など、外科医師として必要な能力を身に付けるには、残念ながら現在の美容外科専門医の取得基準の過程で身に付けることができません。豊胸やフェイスリフトなど美容外科でも本格的な手術については、美容外科専門医の取得だけではなく、より多くの外科系手術を経験する必要があります。そのため豊胸やフェイスリフトなどの手術を受ける場合は担当の医師が外科系診療科の専門医(外科専門医、形成外科専門医など)を取得している確認し、その取得の有無を判断材料とするのもよいと考えます。

実は最近はあまり参考にならないので注意

美容外科の口コミ

■ビフォーアフター写真

ホームページに掲載されている施術のビフォーアフター写真医師の技術を判断するためにはかつては非常に重要な判断材料でした。現在でもある程度は参考にすべきだと思います。ただ、これらの写真だけで判断するのは危険です。最近の写真加工技術の進歩は凄まじいので、いくらでも施術後のアフター写真や動画を加工して、手術結果を誤魔化すことできます。10年以上前から掲載されているような写真であれば加工はされていないでしょうけど、最近の写真ばかり掲載されているようなホームページは常にはある程度疑いの目を持つことが重要です。

■口コミの星の数

グーグルなどの口コミの星の数は最近ではあまり信用できません。星を増やす専門の外注業者があるくらいです。もし口コミを参考にするなら、口コミの内容をしっかり読んだうえで判断すべきでしょう。ただ、星1個で悪口みたいな内容になっている口コミは逆にあまり参考にすべきではないでしょう。感情論であったり、同業他社の嫌がらせということも十分あり得ます。

■ユーチューブのトークも

話しが上手だからと言って、当然ですが、手術がうまいとは限りません。手術は結局職人芸の世界です。日本の伝統工芸を仕事している職人をイメージしてください。そんな口がうまい職人とか見たことありますか?技術を伴った職人は寡黙に仕事をしているイメージはありませんか。 口がうまい職人はいるかもしれませんが、口がうまいからと言って手術の技術とは全く関係ありませんので、注意すべきです。同様にSNSを通じて情報発信が得意で、集客に成功しているからと言って、それと手術の技術は全く関係ありません。

まとめ

美容外科の選択は、単に魅力的な広告やコストだけに基づくべきではありません。重要なのは、医師の専門性、経験、そして患者との信頼関係の構築です。手術の結果は、大きく医師の技術に左右されるため、広告の華やかな写真や魅力的な言葉に惑わされることなく、担当する医師の経歴、資格、以前の患者の体験談などを徹底的にリサーチすることが不可欠です。また、医師やクリニックからの説明に疑問を感じたり、不安が残る場合には、複数のクリニックでの意見を聞くことも重要です。さらに、クリニックの雰囲気やスタッフの対応、施設の清潔さなども重要な判断材料です。安全で快適な手術環境は、患者の不安を和らげ、満足のいく結果につながります。医師の手術後のケアやフォローアップの質についても、事前に確認することをお勧めします。美容外科手術は、自己表現と自信の向上の一歩となり得ます。そのためには、十分な情報収集を行い、信頼できる医師とのパートナーシップを築くことが不可欠です。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがあり、アンチエイジング治療、リフトアップ治療を得意としている。ウルセラは日本国内に導入直後から取り入れており、日本美容外科学会でもウルセラの学会発表を行っている。

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2024/01/15

院長ブログトップ > 美容外科治療を受ける場合の問題と注意点

美容外科治療を受ける場合の問題と注意点

自由診療の落とし穴

美容医療サービスに関して、独立行政法人国民生活センターが集計したデータによると、全国各地の消費生活センターなどへの相談件数が増加していること、民事訴訟による裁判の増加が明らかになりました。2022年度には3,000件を超える相談が寄せられ、過去5年間で最も多くの声が聞かれています(下記表参照)。これらの相談の中で、特に目立つのは、美容外科を訪れた際に受けるプレッシャーです。カウンセリングを求めて来院した患者に対し、「今すぐに施術を受けなければならない」といった強い勧誘が行われるケースが少なくありません。更に、割引価格のモニター契約を勧めることで、消費者を誘惑し、本来の予算や広告に掲載されている金額よりも高額な契約に結びつける手法も見受けられます。美容目的の施術は大抵の場合、緊急を要するものではないにもかかわらず、カウンセラーらは消費者に不安を煽り、急かすことで即日施術を強いています。この結果、施術を受けた後に後悔するケースが多発しています。本稿では、これらの消費生活センターでの実際の相談事例を詳しく紹介し、美容外科治療を考える皆さまへの注意喚起を行うことにします。

美容治療のトラブル

【相談事例1】

■カウンセリングのみのつもりが、鼻尖形成手術を受けて後悔している20代女性会社員

彼女は、鼻先を尖らせるためにインターネットで美容外科を検索し、無料のメッセージアプリでカウンセリングを予約しました。来院の目的はカウンセリングだけでしたが、個室でのカウンセリング中に「メッシュを入れると鼻筋が通る」という提案を受け、「モニター価格での施術が可能」、「マスクを外す生活が始まると手術の痕が目立つため、今施術を受けることが望ましい」と、約1時間半にわたる熱心な勧誘を受けました。彼女は当初「考える」と返答しましたが、カウンセラーからの「私も施術を受けた。大丈夫だ」という強い推奨に圧倒され、約100万円の契約に応じることになりました。その日のうちにクレジットカードで支払いを済ませ、施術を受けましたが、その結果鼻が腫れ上がってしまいました。今では、元の状態に戻して欲しいというのが彼女の切実な願いです。

【相談事例2】

■AGAクリニックで不安に煽られて高額な契約をしてしまった30代男性会社員のケース
ある30代男性がインターネットで見つけたAGA治療クリニックにおいて、約190万円のモニター契約を結んだ経緯がありました。当初は「月々1,500円からの発毛治療」と「全額返金保証」の広告を目にし、手頃な価格であればと思い予約をしてクリニックを訪れました。しかし、実際のカウンセリングでは、頭皮と髪の状態をチェックした後、「AGAがさらに進行すると治療が難しくなる。今なら間に合う」という言葉を受け、治療を決断しました。その後、医師からも同様のアドバイスを受け、注射と投薬のプランが提案されました。12回の注射で効果が期待できるとの説明を受け、支払い方法について尋ねると、「多くの患者が60回のローン払いを利用しており、モニターコースであれば約200万円で治療が可能」と説明されました。月々の支払いは4万円となり、初期の予想を超える金額でしたが、「今治療を開始しなければ遅くなる」との迫力ある言葉により契約を結びました。初回の注射を受け、内服薬を持ち帰った後、家で冷静になって考えると、高額な契約を不安を煽られて結んでしまったことに気づき、契約の取り消しを望んでいます。

【相談事例3】

■美肌治療のカウンセリングのつもりが、糸リフトを受けてしまった30代女性会社員

彼女はインターネットの広告を見て、医療機器を使った美肌治療のカウンセリングを予約しました。ホームページには施術費用が約3万円と記載されていたため、手頃な価格に魅力を感じていました。しかし、実際のカウンセリング当日には、予期せぬ展開が待っていました。来院すると、彼女はこめかみに糸を入れて行うリフトアップ施術を勧められました。「一度の施術で完了し、副作用は顔のわずかな腫れのみ。マスクで隠せば問題ない」という説明を受け、モニター契約なら20万円という割安の価格で施術が可能だとされました。クレジットカードの2回払いであれば支払い可能だと判断し、彼女は契約を結びました。施術はその日のうちに始まり、終了後には顔がひどく腫れ上がっていました。苦情を伝えようとしたところ、「トラブル対応の担当者が不在のため帰宅するように」と言われました。翌日、「顔の腫れと痛みで食事が取れない」という事情を伝え返金を求めたところ、「血管が損傷し、回復には約1ヶ月かかる」との返答を受けましたが、「支払いの取消しや値引きは行わない」と言われ、納得がいかない状況に置かれています。

【相談事例4】

■駅前で声をかけられ、脱毛のために高額な医療ローンを組んでしまった20代女性契約社員

彼女は駅前で声をかけられ、3回の無料医療脱毛の勧誘を受け、その場で施術日を予約しました。数日後にクリニックを訪れ、約30分間の無料の両脇脱毛施術を受けた後、医療脱毛とエステ脱毛の違いについて説明を受けました。その際、「通常価格60万円が、本日限りのモニター価格で約46万円になる」とのオファーを受け、この限定価格に引かれて契約を承諾しました。契約に際して、彼女は医療ローンの2回払いを申し込むことになりましたが、その際に不正確な情報を記載するよう指示されました。アルバイトを始めたばかりであるにもかかわらず年収を110万円、貯金がないにもかかわらず貯金額を50万円と偽って記載するよう求められたのです。このような手続きは、与信審査を通過するために必要だと説明され、クレジット会社からの問い合わせがあれば、申請した通りに答えるよう指示されました。しかし、実際には彼女には財政的余裕がなく、この高額な契約を維持することが困難でした。そのため、彼女は現在、契約の無償解除を希望しています。

相談事例に見られる問題点の解説

■即日契約と施術の強制

消費者がカウンセリングのために来院すると、彼らに対して「今すぐ施術を受けた方が良い」「遅れると間に合わない」といった形で、施術の必要性を強調し、不安を煽るような勧誘が頻繁に見られます。これに加えて、モニター契約などによる大幅な割引が提案され、これが消費者に即日契約や施術への圧力となっています。

■施術リスクの軽視

カウンセリングでは、「私も施術を受けました。大丈夫です」「副作用はわずかな腫れだけ」といった安心感を与える説明がなされ、施術の手軽

さが強調されています。その結果、消費者はリスクや副作用を十分に理解しないまま施術に同意することが多くあります。さらに、カウンセリング予約時に希望した施術とは異なるもの、あるいは広告で見たプランとは別の高額なプランを突然勧められる事例も報告されています。

■無理なクレジット契約の勧誘

予算を超える高額な施術に対して、「多くの人がローンを利用している」というような言葉で分割払いを勧めるケースが見られます。これにより、消費者は契約を断ることが困難になります。さらに懸念されるのは、クレジット契約の審査を通過させるために、消費者に虚偽の年収や貯金額の申告を促すような案内が存在している点です。これは消費者に支払い能力を超える契約を結ばせる不適切な行為と言えます。

患者様への重要なアドバイス

美容外科クリニックにおいてトラブルに合わないために下記の点を気を付けましょう。

■安すぎる料金表示には裏がある

市場相場よりも著しく低い価格を提示するクリニックには、しばしば高圧的なアップセールスや隠れた条件が存在します。安さだけに惹かれる前に、希望する施術の標準的な相場を把握し、それを大幅に下回る価格を提示する施設には慎重な姿勢を保ちましょう。また、価格だけでなく、施術内容や追加料金に関する透明性も重要な判断基準となります。

■信頼できる医師・医療機関であるか

クリニックや医師を選ぶ際は、彼らの信頼性を事前に徹底的に調査することが肝要です。クリニックの公式ホームページ、医師の資格や経歴を確認し、信頼できる医療機関であるかを見極めましょう。SNSなどの煌びやかな広告に飛びついて安易に予約をしないことが大切です。

■即時契約・施術の圧力に屈しない

美容施術は一般的に緊急性を伴わないものです。もし「今すぐ施術が必要」という不安を煽るような勧誘や、モニター契約による割引を提案された場合でも、その場での決断を避け、帰宅後に十分に考慮し、周囲の意見を参考にしてください。

■施術のリスクや副作用を事前に確認

自由診療である美容医療サービスでは、事前に施術のリスクや副作用、治療費用、解約条件などの詳細な説明が必要とされます。単に施術の手軽さが強調されている場合でも、ダウンタイムやリスクが存在します。施術のメリットだけでなく、リスクや副作用についても十分に理解し、納得した上で施術を受けるかどうかを決めてください。また、カウンセリング前にはインターネットなどで希望する施術に関する情報を収集し、リスクや副作用について自らも確認しておくと良いでしょう。

■クレジット契約の必要性を冷静に考える

クレジット契約や分割払いを選択する際には、支払いの総額が高くなる可能性を考慮する必要があります。必要と思われる施術でも、分割手数料を含めた総支払額を考え、本当に必要な施術かどうかを落ち着いて判断しましょう。また、クレジット契約を行う際には、年収などの情報を正確に申告してください。契約を断る場合は、「お金がない」という理由ではなく、「契約しない」と明確に伝えることが重要です。

まとめ

美容医療を受ける際には、慎重な検討と事前の準備が不可欠です。緊急性を煽る勧誘やモニター契約などの割引提案に即座に応じるのではなく、家族や友人と相談する時間を持ち、冷静な判断を心がけましょう。また、施術のリスクや副作用、解約条件などについては、十分な説明を受け、理解した上で決定を下すことが重要です。さらに、施術に関する情報を自ら積極的に収集し、信頼できる医師や医療機関を選択することも忘れてはなりません。特に、市場相場より著しく低い価格や、過度に魅力的な広告には警戒が必要です。これらは高圧的なアップセールスや隠れた条件がある可能性を示唆しています。クレジット契約を検討する際には、総額の負担や自身の支払い能力を真剣に考え、虚偽の情報提供は避けるべきです。美容医療を検討する際は、これらのポイントを十分に理解し、自己の健康と財政的な安全を守るために、慎重かつ賢明な選択を行うことが求められます。最終的な目標は、安心して美容医療を受け、望む結果を得ることです。そのためにも、慎重な検討と適切な情報に基づいた判断が、何よりも重要です。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。

【関連項目】

下手な美容外科医とトラブルが多い美容外科クリニックが増えている理由

 

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2024/01/14

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下手な美容外科医とトラブルが多い美容外科クリニックが増えている理由

下手な美容外科医増加のわけ

現在美容外科はかつてないほど人気の医療になっています。その需要が高まるにつれ、トラブルが多い美容外科クリニックが増加しているのが現状です。この問題の根底には、技術的に未熟な美容外科医も増えているという事実があります。この記事では、美容外科における急増するトラブルと、それに寄与している下手な美容外科医の増加の社会的背景に焦点を当て、その原因について詳しく解析していきます。

全国的に急増している美容外科クリニック

美容外科の分野は、近年全国的に驚異的な成長を遂げています。筆者が美容外科医としてのキャリアをスタートさせてから21年が経過した今、その変貌は顕著です。かつて千葉県船橋駅周辺には、筆者が勤務していたクリニックを含めてわずかに1つの美容外科クリニックが存在していたのみでした。しかし現在、湘南美容クリニックや東京中央美容外科などの大手美容外科チェーンを含む10施設以上が存在し、その数は船橋駅周辺だけで5倍以上に増加しています。この急激な増加は全国規模で見ても明らかです。2002年には、厚生労働省の調査による全国の美容外科を標榜するクリニック数(診療所数)は604施設でしたが、令和2(2020)年のデータでは1404施設に増加しています。わずか18年で800のクリニックが新たに開業したことになり、この期間に全診療所数の増加率が94819から102612へとわずかな伸びに留まる中、美容外科クリニックが2倍以上に増えたことは、この分野の顕著な成長を示しています。

全診療所増加数の15%は美容クリニック

厚生労働省は3年おきに公表している「 医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」を公表しています。その中で美容外科診療所数と全診療所数に着目し、表にしました(下記の表)。

美容外科クリニック数 と全診療所

これを分析し、1996年から2020年までの2つの12年間を対象として比較を行いました。結果は驚くべきものでした。1996年から2008年の間、美容外科の診療所は523施設増加しました。これは全診療所の増加数7583のうち5.4%を占めています。しかし、2008年から2020年の期間では、美容外科診療所の増加数は421にもかかわらず、全診療所の増加数3529のうち12%を占めているのです。さらに、過去3年間で見ると、美容外科クリニックは171施設増加し、全診療所増加数に対する割合は15%に達しています。

このデータは、医療業界において美容外科が占める割合が急速に増加していることを明確に示しています。特に近年は美容外科の開業ラッシュが続いており、この分野が医療業界全体における重要な位置を占めるようになっていることが伺えます。

美容外科医も急増している

美容外科クリニックの顕著な増加の背後には、美容外科医の数の急増があります。この現象は、医学部を卒業した若手医師たちのキャリア選択からも明白になっています。医師国家試験に合格し、必要な2年間の研修を終えた後、医師たちは自由に専門分野を選択することができます。その中で、現在、最も人気を集めているのが美容外科です。

かつては内科や外科が医師たちの主流の進路として需要が高く、美容外科や形成外科は全体のわずか5%以下でした。しかし、時代の変遷と共に、この比率は大きく変化しました。現在では、新たにキャリアを開始する医師の20%以上が美容外科・形成外科・美容皮膚科などの美容医療を選択しています。

下手な美容外科外科医も急増

美容外科クリニックに就職することは、そのドクターが即座に美容外科医としての名乗ることを意味します。業界内での動向を見ると、大手美容外科クリニックに就職した後、わずか3ヶ月の経験で独立して開業する医師も少なくありません。この短期間では、技術面の成熟は期待できず、多くは二重埋没法やヒアルロン酸、ボトックス注射の形だけの技術を習得するに留まります。

このように、実際の技術が伴わない状態で開業する美容外科医が増加しています。さらに、技術の不足を補うために、SNSやYouTubeを巧みに活用して技術力があるかのように見せかけ、患者を集客しているクリニックも多いのが現実です。これらの医師やクリニックは、デジタルメディアを利用して、技術以上の評判を構築し、ビジネスを拡大しています。

下手な美容外科医でも集客できるようになった

一昔前の美容外科業界では、技術が未熟な医師が開業しても、効果的な集客方法はほとんどありませんでした。日本国内においては厚生労働省が定めている医療分野における広告規制があり、経歴を偽造して広告媒体に掲載することは、法的にも許されない行為でした。また、技術が発展していなかった写真加工のため、ウェブサイトや紙媒体などに掲載されるビフォーアフター写真も、実際の手術結果をそのまま反映していました。結果として、技術的に未熟な医師は、印象的な手術結果の写真をメディアに公開することもできず、経歴より経験不足が明らかであれば、開業することはほとんどありませんでした。従って、多くの美容外科医は、十分な経験を積んだ後に開業するのが一般的でした。実際、美容外科経験が乏しい医師が開業しても、すぐに閉院するケースも散見されました。しかし、現代においては、この状況は大きく変わりました。特にインスタやティックトックなどのSNSには広告規制がありません。また、写真や動画の加工技術が進歩し、手軽に行えるようになったことで、施術結果の写真や動画を偽装し、SNS上に掲載することが可能になっています。このため、技術や経験が乏しくても、SNSを巧みに活用し、一見魅力的なビジュアルコンテンツを提供することで、美容外科医として患者を集客する道が開かれてしまっています。また、医師ではない経営のプロが経験の浅い医師を雇い、クリニック運営を行うケースも多いのが現実です。これも、経験の浅い美容外科医によるクリニック増加の一因にもなっています。従って、現在は美容外科医に技術や経験がなくても、SNSを巧みに活用すれば、患者を集客し、美容外科クリニックを運営できる時代になってしまったのです。

誤解を招く広告と強引なアップセールス

美容外科業界では、SNS上での虚偽のビフォーアフター写真の掲載に加えて、誤解を招く価格表示を行うクリニックが急増しているという問題が浮き彫りになっています。日本では、低価格を打ち出した広告に対して、消費者が疑いを持たずに魅力を感じる傾向があります。例えば、「二重治療8000円」という広告があると、多くの人が実際にその価格で手術が可能だと信じてしまうようです。しかし、現実には、数千円で提供される美容外科手術は存在しません。

このような低価格の広告に惹かれてクリニックを訪れた患者に対し、実際には「あなたの目には8000円の治療は適していません。より高額な治療が必要です」といった具合に、相場よりもはるかに高額な治療を勧めるケースが増えています。このようにいわゆる「えげつないアップセールス攻撃」を受け、しばしば患者とクリニックの間でトラブルを引き起こしています。実際、消費者センターでも、美容外科における強引なアップセールスから生じるトラブルが急増していると報告されています。

まとめ

本記事では、急増するトラブルが多い美容外科クリニックと同じく増加している技術的に下手な美容外科医の問題を詳細に分析しました。日本人においては、見た目の情報を簡単に信じる傾向があり、特に美容外科に関連する広告やビフォーアフター写真に対しては、より懐疑的な視点を持つことが重要です。美容外科クリニックでのトラブルを避け、技術的に未熟な医師による手術のリスクを減らすためには、初めに見た情報に対して疑問を持つことが必要です。患者は、治療を受ける前に、華やかな広告や写真に惑わされることなく、広く情報を集め、真の信頼できる美容外科を見極めるべきです。治療を急ぐことなく、慎重に考え、十分な検討を経て適切な治療を選択することが、安全で満足のいく結果を得るためのポイントとなります。この過程によって、美容外科のトラブルや失敗のリスクを大幅に減らすことが可能です。患者自身の知識と情報収集が、美容外科選びにおいて重要な役割を果たします。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。

【関連項目】

美容外科治療を受ける場合の問題と注意点

 

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