投稿日:2024/07/31
(最終更新日:2024/07/31)
ワキガの重症度と推奨されるワキガ治療方法について
ワキガ治療の選択肢は多岐にわたり、手術から非侵襲的な方法まで幅広く存在します。しかし、どの治療法を選ぶべきかを決める前に、ご自身のワキガの重症度を正確に理解することが重要です。ワキガの重症度によって、最も効果的な治療方法が異なるためです。このブログ記事では、ワキガの重症度を評価する方法と、それぞれの重症度に応じた最適な治療法をご紹介します。各治療法の詳細や利点、潜在的なリスクについても詳述しますので、ご自身に最適な選択を行うための参考にしてください。
ワキガの重症度を知る
ワキガの治療や対策を検討する際、最も重要なステップは「ワキガの重症度」を正確に理解することです。同じワキガでも、その重症度によって適切な治療法や対策が大きく異なります。この理解は、効果的な治療計画を立てるための基礎となります。
■ワキガの重症度の評価方法(元神式わきがスコア)
重症(重症度3+): 密室にいると周囲の人が臭いを感じる、または常に自分の体臭としてワキガ臭を感じる場合です。こ
中等症(重症度2+): わきの下をティッシュで拭くとワキガ臭が確認できる場合、または顔をわきに近づけると臭いを感じる場合です。
軽症(重症度1+): 普段は臭いが気にならないが、汗をかいた日の終わりにティッシュなどで拭くと軽いワキガ臭が感じられる場合です。
無臭(重症度0): 大量に発汗した1日の終わりに腋の皮膚を強く擦ってもワキガの臭いを感じない場合です。この場合、ワキガではなく多汗症が原因の可能性があり、別の対策が必要です。
ワキガの重症度を正確に評価することで、最も効果的な治療法を選択することが可能になります。自分の状態を正しく理解し、適切な対策を講じるために、この分類を参考にしてください。
元神ワキガスコアのよる自己評価が大切です。
わきがの重症度分布と誤認の背景
これまでに筆者が診察した10,000人以上のわきが症患者のうち、約60%が軽症、20%が中等症、そして残りの20%が重症です。しかし、実際には軽症であるにもかかわらず、自分を重症だと誤解している患者が多く見受けられます。逆に、重症でありながら自分の状態を軽症と認識していたり、わきがであることに気づいていないケースもあります。
この誤認の背景には「嗅覚の順応」という現象が深く関係しています。人間の嗅覚は、同じ臭いに長時間さらされるとそれに慣れてしまう特性を持っています。この特性は、日常生活での臭いに対するストレスや不快感を軽減する一方で、自分の体臭に気づきにくくなるというデメリットもあります。このため、わきがの重症度を正確に評価することが困難になり、誤った自己認識につながることが多いのです。
わきがの主な要因と
わきが(腋臭症)は、アポクリン汗腺とエクリン汗腺から分泌される汗、および皮膚上の細菌が相互作用することで発生する強い体臭を指します。以下は、わきがの主要な要因についての詳細な説明です。
■アポクリン汗腺の役割
アポクリン汗腺は腋の下、乳輪、陰部など特定の部位に集中して存在する汗腺です。思春期以降に活発になり、粘性のある汗を分泌します。この汗には脂質やタンパク質が多く含まれており、全身に分布するエクリン汗腺から分泌される水分主体の汗とは異なります。
■エクリン汗と細菌との相互作用
アポクリン汗自体は無臭ですが、皮膚表面に存在する細菌がエクリン汗により増殖し、アポクリン汗を分解する過程で臭いの元となる揮発性の脂肪酸やアンモニアなどの化合物が生成されます。特にコリネバクテリウム属の細菌が主要な役割を果たします。
筆者おすすめのワキガ治療法:ビューホット
ビューホットは、皮膚の表面にハンドピースを当て、極細の針から高周波を照射することで、皮下に存在するアポクリン汗腺を破壊します。
ビューホットは、局所麻酔を施した上で行われます。施術は、36本の極細針が付いたハンドピースを皮膚表面に当て、針の先端のみから高周波が照射されることで行われます。この高周波が皮下のアポクリン汗腺に直接作用し、汗腺を破壊することでわきがの症状を軽減します。治療時間は片ワキあたり約15分で、比較的短時間で完了します。
↑ビューホットの原理
■ビューホットのメリット
高い効果: 多くの患者が1回の治療で満足のいく効果を得ています。わきがの臭いが大幅に軽減されるケースが多いです。
低侵襲: 切開を伴わないため、回復も早いです。治療後のダウンタイムが短く、日常生活への制限が全くありません。
即効性: 治療後すぐに効果を実感できることが多いです。
■ビューホットのデメリット
1回で完治するわけではない: 経験豊富な医師による施術でも、1回の治療でアポクリン汗腺の除去率は約70%とされています。そのため、重度のわきがの場合は、複数回の治療が必要となることがあります。
医師の技術による効果の差: ビューホットの効果は、施術を行う医師の経験や技術に大きく依存します。経験の浅い医師による施術では、期待通りの効果が得られない場合があります。
■ビューホットのリスク
治療後には、軽度の腫れや赤み、内出血などの副作用が現れることがありますが、通常は数日から数週間で改善します。また、治療後に点状のシミが残ることがありますが、これも1~3か月かけて徐々に薄くなります。
筆者がおすすめワキガ治療:シェービング法による手術

↑シェービング法で使用する機器
シェービング法は、アポクリン汗腺を外科的に除去する効果的な手術法です。この手術では、ワキの皮膚のしわに沿って皮膚を約3cm切開し、特殊な器具を使用して皮膚下のアポクリン汗腺を削り取ります。
■シェービング法のメリット
ワキガの完治: 経験豊富な医師によるシェービング法では、直視下反転剪除法と同様にアポクリン汗腺を100%除去できるため、1回の手術でワキガが完治します。
比較的小さい傷跡: シェービング法では、直視下反転剪除法のように大きく皮膚を大きく切開する必要がないため、傷跡が比較的目立ちにくいです。切開部位は脇の端から行われ、血流が豊富なため、傷がきれいに治りやすく、瘢痕ができにくいという利点があります。
■シェービング法のデメリット
ダウンタイム: 手術後は脇にガーゼを挟んで圧迫固定しなければならず、1週間程度は腕を肩の高さより上に上げたり、重いものを持ったりすることができません。
医師の技術による差: シェービング法には高度な技術と経験が必要です。未熟な医師が施術を行うと、皮膚を過度に削ってしまい、皮膚の欠損や壊死を引き起こすリスクがあります。そのため、この手術を安全かつ効果的に行える医師は限られています。
■シェービング法のリスク
治療後に稀ですが、血種が発生することがあります。血種が発生すると、傷跡が目立ったり、脇の皮膚にひきつれが生じる可能性があります。血種の予防のためには、術後1週間は脇を安静に保つことが重要です。
ワキガ治療のポイント
ワキガ治療の成功の鍵は、アポクリン汗腺をいかに効果的に破壊し、その数を減らすかにあります。現在、国内の美容外科ではビューホットやシェービング法をはじめ、さまざまな治療法が提供されています。そのため、どの治療法が自分に最適なのか判断に迷うことが多いのが現状です。筆者は、ワキガの重症度に応じて治療方法を選択することが最も良い対策だと考えます。
軽症の場合に最もおすすめの治療
■ビューホット
ビューホットは、軽症のワキガ治療において最も効果的な方法の一つです。治療により7割程度の改善が期待でき、軽度の症状であれば、十分に満足のいく結果が得られます。治療後はワキガの臭いが大幅に軽減され、日常生活で気になることはほとんどなくなるでしょう。また、ビューホットは低侵襲であり、特別な制限がないことも大きなメリットです。
中等症の場合に最もおすすめの治療
■ビューホット
ビューホットは中等症のワキガ治療においても満足できる効果をもたらすことがあります。治療後、約7割のアポクリン汗腺が破壊され、ワキガの臭いが大幅に軽減されます。ただし、残りの3割のアポクリン汗腺によるワキガ臭が気になる可能性があるため、必要に応じて2回目の治療を受けることが推奨されます。筆者のクリニックでは、2回目の治療を希望する場合、1回目から2年以内であれば半額で受けられる特典があります。これにより、継続的なケアがしやすくなっています。
■シェービング法による外科手術
中等症のワキガを1回の治療で完全に解消したい場合には、シェービング法による外科手術が非常に有効です。シェービング法では1回の手術でワキガの臭いから完全に解放されるため、精神的な負担を軽減する点でも、大きなメリットがあります。
重症の場合に最もおすすめの治療
■シェービング法による外科手術
重症のワキガの場合、シェービング法による外科手術が最も効果的な治療法として推奨されます。ビューホットでは約7割のアポクリン汗腺を除去できますが、重症のケースでは残った3割の汗腺が依然として強烈なワキガ臭を発生させる可能性があります。そのため、重症のワキガにはビューホットよりもシェービング法による外科手術を選ぶことをおすすめします。
わきが治療でおすすめしない治療法
■ミラドライ
ミラドライは、ワキの多汗症治療に使用される治療機で、エクリン汗腺の除去を目的としています。厚生労働省が実施した試験においても、ミラドライはワキガに対して無効であるとの結果が出ています。一部のクリニックではミラドライをワキガ治療として勧めていますが、実際には効果が認められていないため、この治療を受けるのは避けるべきです。
■ボトックス注射
ボトックス注射はエクリン汗腺からの発汗を抑える作用がありますが、ワキガの主な原因であるアポクリン汗腺には効果がありません。エクリン汗腺の発汗抑制により、間接的にワキガ臭を軽減することはできますが、その効果は限定的です。ボトックス注射よりも、同じく侵襲が少なく、アポクリン汗腺に直接作用するビューホット治療をおすすめします。
まとめ
ワキガ治療を選ぶ際には、自分の症状に最適な治療法を選択することが重要です。まずはこのブログ記事で紹介した重症度の分類(元神式わきがスコア)を参考にして、自身の重症度を正確に把握することが第一歩となります。
ビューホットは、軽症のワキガに非常に有効な治療法です。簡便で効果的なこの治療法は、軽度のワキガに悩む方にとって理想的な解決策となるでしょう。
一方、重症のワキガにはシェービング法による外科手術が効果的です。この手術はワキガを完治させることができ、ワキガ臭から解放されることで精神的な負担が大幅に軽減されます。
いずれの治療法も、医師の技術と経験によって効果が大きく左右されます。そのため、ワキガ治療に豊富な経験を持つ信頼できる医師を探すことが非常に重要です。
この記事が、ワキガに悩む方々にとって有益な情報源となり、最適な治療法を見つける助けとなれば幸いです。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。腋臭多汗症治療はこれまで延べ1万人を超える。【関連項目】
千葉エリアで治療をご希望の方はこちら

〒273-0005
千葉県船橋市本町6-4-15
グラン大誠ビル 2F
責任者:元神賢太
最終学歴:H11年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H15年船橋中央クリニック開業
東京エリアで治療をご希望の方はこちら

〒107-0061
東京都港区北青山2-7-26
ランドワーク青山ビル7F
(旧ヒューリック外苑前ビル)
責任者:高林洋一
最終学歴:S43年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H28年青山セレスクリニック管理者