投稿日:2024/08/10
(最終更新日:2024/08/10)
知っておきたい女性の発毛のメカニズム【女性薄毛解決ブログ第28回】
(第27回「女性の薄毛は「運命」ではない!抜け毛に気づいたら医療機関に!!」からの続き)
人はなぜ薄毛になるのか、男性と異なる女性特有の薄毛とはどのようなものか、なぜ、 そのような症状が引き起こされるのか……。
そこで、知っておきたいのが髪の毛そのものについてです。髪の毛の構造や、髪が生える仕組み、自然な抜け毛の経緯など、髪について詳しい知識を得ることが、薄毛を正しく理解するためのヒントにもなります。そこで、まずは発毛のメカニズムについて学んでいきましょう。
髪の構造
私たちの頭には、いったい何本の髪の毛が生えているのでしょうか?平均すると、約10万本の髪の毛があります。しかし、その数は個人差があり、少ない人で6万本、多い人では15万本に達することもあります。さらに、1つの毛穴からは1本ではなく、通常複数の髪が生えていることがほとんどです。このように、髪の毛は見た目以上に奥深く、複雑な構造を持っています。
まず、頭皮の表面から外に出ている部分を「毛幹」と呼び、これが私たちが日常的に髪の毛として認識している部分です。その下、皮膚に埋まっている部分を「毛根」と言います。毛根は「毛包」と呼ばれる鞘のような構造に包まれており、これが髪の毛を保護しています。毛包の周囲には毛細血管が細かく張り巡らされており、これらの血管を通じて、髪の毛に必要な栄養分や酸素が供給されることで髪は成長します。
毛根の根元には「毛球」があり、これが髪の成長の中心的な役割を果たします。毛球は球状で、その内部には「毛乳頭」が存在します。毛乳頭は、毛包に栄養を供給し、成長を促進する役割を持つ重要な部分です。
さらに、毛包の底部には「毛母細胞」が位置しています。この毛母細胞こそが髪の毛の基盤を形成しており、毛細血管から取り込んだ栄養分や酸素を利用して、盛んに細胞分裂を繰り返します。つまり、毛母細胞は、毛乳頭から送られる細胞成長因子(KGFやIGF-1)のシグナルを受けて活性化し、細胞分裂を行い、毛髪や毛包の組織へと分化します。
この成長過程において、髪の毛は地肌から上へと伸び続け、毛母細胞が角化することによって、強くしなやかな髪の毛が形成されます。角化とは、細胞が硬くなる過程を指し、この現象があるからこそ髪の毛は外部の刺激から守られます。
さらに、KGFやIGF-1といった細胞成長因子の働きにより、毛母細胞は持続的に分裂・増殖し続けることが可能となります。これが髪が伸びて成長するメカニズムであり、髪の健やかな成長を支える鍵となっています。このプロセスを理解することは、髪の健康を維持し、薄毛や脱毛の予防に役立ちます。
このように、髪の成長には多くの要素が関与しており、それぞれが複雑に絡み合っています。
↑毛包に作用する細胞成長因子のイラスト:毛細 胞 成 長 因 子(KGF、IGF-1) からのシグナルにより、毛球において、毛母細胞が毛 髪と毛包の組織に分化する
髪の毛の大部分を構成するのは「ケラチン」と「シスチン」
髪の毛(毛幹)の構造を詳細に見てみると、髪の毛は大きく分けて3つの層で成り立っています。髪の毛を輪切りにしたときに見えるこれらの層は、それぞれ異なる役割を担っています。
最も内側に位置するのが「毛髄質(メデュラ)」です。毛髄質は空洞の多い構造を持っており、軽量化や断熱効果を発揮するとされています。しかし、その具体的な機能については未だ完全には解明されていません。毛髄質は必ずしも全ての髪の毛に存在するわけではなく、細い髪では欠如していることもあります。この層があることで髪の重量が軽減されるという見方もあり、さらなる研究が期待される部分です。
次に、「毛皮質(コルテックス)」が毛髄質の外側に位置します。毛皮質は髪の主成分であり、髪の強度や弾力性を支える部分です。この層は、ケラチンというタンパク質から成り立つ繊維状の束で構成されています。ケラチンはシスチンというアミノ酸によって結びつけられ、髪に強さとしなやかさをもたらしています。シスチンは二硫化結合を形成し、ケラチン繊維の構造を安定化させる役割を果たします。これにより、髪の毛は外的な刺激にも耐える強さを持つことができます。
最も外側にあるのが「毛小皮(キューティクル)」です。キューティクルは非常に薄い鱗状の層が重なり合ったもので、髪の表面を覆っています。この層の主な役割は、内部のケラチンや毛髄質を保護し、髪の水分を保持することです。キューティクルの健康状態は、髪の見た目や質感に大きな影響を与えます。例えば、キューティクルが損傷すると、髪の艶が失われ、触り心地も悪化することがあります。
これらの構造の大部分を構成しているのがケラチンとシスチンです。ケラチンは髪の耐久性を高める重要なタンパク質であり、シスチンの存在によりその構造が強固に保たれています。これが髪の強さを生み出し、しなやかさを提供する基盤となっています。
髪の健康を保つためには、ケラチンの損傷を防ぎ、シスチン結合を維持することが重要です。
生えて伸び、成長して止まり、やがて抜け落ちる「毛周期」
髪の毛は一度生えてきたら永久に成長し続けるわけではなく、一定のサイクルを繰り返しながら生え変わります。この生え変わりのサイクルを「毛周期(ヘアサイクル)」と呼びます。毛周期は、成長期、退行期、休止期という3つの段階に分かれています。
まず、「成長期」は毛が生え始め、毛母細胞が盛んに分化・増殖する時期であり、通常2~6年続きます。この期間において、毛髪は最も活発に成長し、長く太くなります。女性の毛周期は男性よりも長く、4~6年の成長期を経て、一生のうちに15~30回のヘアサイクルを繰り返すとされています。
次に「退行期」は成長期が終わり、毛根の活動が徐々に停止する過程で、1~2週間の短い期間に及びます。この段階では、毛母細胞の分裂が止まり、毛根が収縮し始めます。退行期は髪の寿命が尽きる合図であり、次の休止期に向けた準備段階とも言えます。
「休止期」は毛根が完全に休止し、毛髪が自然に抜け落ちるまでの期間で、通常3~4カ月続きます。休止期に入ると、毛包の長さは成長期の半分から3分の1程度に短縮され、髪の毛は頭皮の表面に押し上げられます。休止期の終わりには、古い髪の毛が抜け、新しい髪が生える準備が整います。
頭全体の毛髪の約85%は成長期にあり、退行期の髪は約1%、休止期の髪は10~15%程度です。成長期の髪は1日に約0.3~0.4mmの速度で伸びますが、この速度は頭の場所によって異なり、頭頂部が側頭部よりも早いことが確認されています。
毛周期の過程において自然に抜ける髪の本数は、1日に平均50~100本程度です。洗髪時やブラッシング時にこの程度の抜け毛が見られるのは通常のことであり、過度に心配する必要はありません。しかし、これを大幅に超える抜け毛が続く場合は、何らかの要因で薄毛が進行している可能性もあります。
↑毛周期
まとめ
特に女性に多い「FAGA(女性型脱毛症)」は、成長期が短縮されることで髪が十分に育たないまま抜けてしまうのが特徴です。この場合、成長期の持続が薄毛解消の鍵となります。最近の研究では、毛母細胞の成長を支える細胞成長因子(KGFやIGF-1)の重要性が明らかになってきています。一方で、成長期を終了させる働きを持つTGF-β1という因子も存在しますが、これらについてはまたの機会に詳しく解説します。
ちなみに、人の毛髪には「うぶ毛」「軟毛」「硬毛」の3種類があります。うぶ毛は色素がなく、数ミリ程度の短い毛で、軟毛は薄い色素を持ち、細く短い毛です。硬毛は色素が濃く、太くて硬い毛であり、通常は頭髪や体毛として認識されています。男性型脱毛症(AGA)では、硬毛が軟毛に変化し、薄毛が進行します。毛周期を理解し、これらの変化に早期に対処することが、健康な髪を保つための重要なステップとなります。
【関連項目】
女性の薄毛は「運命」ではない!抜け毛に気づいたら医療機関に【第27回】
【薄毛は遺伝とは言いきれない。だからあきらめてはいけない【女性薄毛対策第26回】
【白髪の原因と予防】「白髪の人は薄毛にならない」は迷信!【女性薄毛対策第25回】
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