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更年期になるとワキガが強くなる?女性ホルモンとわきの臭いの関係を専門医が解説
更新日:2026/08/08
公開日:2026/08/08

「若い頃から多少のワキガはあったけれど、40代後半になって急に臭いが強くなった気がする」
「更年期に入って汗が増え、それと同時にわきの臭いも気になるようになった」
ワキガ・多汗症の診療をしていると、このような相談を受けることがあります。
ご本人にとっては、単なる汗や臭いの問題ではありません。電車や職場で周囲に気づかれていないか、服に臭いが残っていないかと不安になり、人と距離を取りたくなる方もいます。
では、女性ホルモンが減ることで、本当にワキガの臭いは強くなるのでしょうか。
結論から言うと、更年期に入ってからワキガ臭が強く感じられるようになることは、十分にあり得ます。
ただし、「女性ホルモンが減るとアポクリン汗腺が直接活発になり、ワキガ体質そのものが悪化する」とまでは、現在の医学では証明されていません。
最も考えやすいのは、更年期のホットフラッシュや発汗の増加によって、もともとあったワキガ臭が強く表に出るという仕組みです。
このブログでは、更年期とワキガの関係を、できるだけわかりやすく解説します。
そもそもワキガの臭いはどうして発生するのか
わきには、主に「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」という2種類の汗腺があります。
エクリン汗腺は、体温を下げるための水分の多い汗を出します。一般的な「わき汗」や汗ジミの主な原因です。
一方、アポクリン汗腺から出る汗には、脂質やタンパク質などが含まれています。
ここで大事なのは、アポクリン汗そのものが最初から強く臭うわけではないという点です。
アポクリン汗に含まれる臭いのもととなる成分が、わきの皮膚にいる細菌によって分解されることで、ワキガ特有の臭いが生まれます。腋窩の臭いと皮膚細菌との関係は、実際の研究でも確認されています。
つまり、ワキガ臭の強さはアポクリン汗腺だけで決まりません。
わき汗の量、皮膚の湿り気、細菌の種類や量、服の蒸れ、気温、緊張など、複数の条件によって変わります。
わきが汗で湿った状態が長く続けば、臭いの材料が細菌によって分解されやすくなります。服に汗が染み込むと、時間がたってから臭いが強く感じられることもあります。
これが、更年期の発汗増加によってワキガ臭が目立ちやすくなる理由の中心です。

更年期ではなぜ汗が増えるのか
更年期になると、卵巣の働きが低下し、女性ホルモンであるエストロゲンが大きく変動しながら減少します。
この変化の影響を受けるのが、脳にある体温調節の仕組みです。
更年期のホットフラッシュでは、急に体が熱くなり、顔や首、胸、背中などに汗をかくことがあります。夜中に汗びっしょりになって目が覚める「寝汗」も代表的な症状です。
閉経後の女性24人を対象にした研究では、エストロゲンを投与すると、汗をかき始める深部体温の基準が上昇し、ホットフラッシュも減少しました。
この結果は、エストロゲンが低下した状態では、比較的小さな体温変化でも発汗反応が起こりやすくなることを支持しています。
ただし、この研究で調べられたのは体温調節に関わる発汗です。
ワキガの原因となるアポクリン汗腺が、女性ホルモンの低下によって直接活発になったことを示した研究ではありません。
ここを混同してはいけません。
更年期でまず起こりやすいのは、「汗が増えること」です。
その結果、わきが蒸れ、細菌が働きやすい環境になり、もともとのワキガ臭が強く感じられる可能性が高まるのです。
女性ホルモンの低下でアポクリン汗腺が直接活発になるのか
アポクリン汗腺は、思春期になると性ホルモンの影響を受けて発達します。
また、わきのアポクリン汗腺には、男性ホルモンの受容体や女性ホルモンの受容体が存在することも報告されています。
したがって、性ホルモンの変化がアポクリン汗腺に何らかの影響を与える可能性自体はあります。
更年期の移行期にはエストロゲンの低下が大きいため、相対的に男性ホルモンの影響が目立つ時期があります。
これがアポクリン汗腺や臭いの成分に影響するのではないか、という考え方もあります。
しかし、これはまだ仮説の段階です。
閉経前と閉経後の女性を比較し、アポクリン汗の分泌量やワキガ臭の成分を直接測定して、「エストロゲン低下によってワキガ臭が強くなった」と証明した研究は、現時点では十分にありません。
そのため、私は患者様には次のように説明しています。
「更年期によってワキガ体質そのものが急に強くなったとは断定できません。ただし、ホットフラッシュで汗が増えるため、以前からあるワキガ臭が強く出ることはあります」
これが、現在の医学的な説明として最も正確です。
参照元:Localization of steroid hormone receptors in the apocrine sweat glands of the human axilla
更年期になって突然ワキガになることはある?

典型的なワキガ体質には、遺伝的な要素が強く関係しています。
特に「ABCC11」という遺伝子は、湿った耳垢とワキガ体質の両方に深く関係します。
日本人の腋臭症患者を調べた研究でも、湿性耳垢に関連するABCC11の遺伝子型と腋臭症との強い関連が示されています。
そのため、
- 若い頃から湿った耳垢がある
- 白い服のわきが黄ばみやすい
- 家族にもワキガ体質の人がいる
- 思春期頃からわきの臭いを指摘されたことがある
という方は、もともとワキガ体質を持っていた可能性が高いでしょう。
更年期になって汗が増えたことで、それまで目立たなかった臭いが強く表現されるようになったと考えると自然です。
一方、これまでまったくワキガを指摘されたことがなく、更年期になって初めて違う臭いがするようになった場合は、すべてをワキガと決めつけるべきではありません。
26~75歳を調べた研究では、皮脂の酸化により生じる「2-ノネナール」という臭気成分が、その研究集団では40歳以上の人だけに検出されました。
これは脂っぽさや青臭さを伴う、いわゆる加齢に関連した体臭の一つで、典型的なワキガ臭とは別物です。
また、感染症、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、神経疾患、薬剤などが原因で、全身の発汗が増えることもあります。
臭いの「強さ」だけでなく、
- 以前と同じ臭いなのか
- 酸っぱい臭いになったのか
- 脂っぽい臭いになったのか
- アンモニアのような臭いがするのか
など、臭いの質が変わったかどうかも重要です。
自分の臭いが強くなったと感じたときの確認ポイント

更年期による発汗が関係しているかどうかは、臭いが強くなるタイミングを確認するとわかりやすくなります。
ホットフラッシュの直後に臭いが強くなる、寝汗をかいた朝に衣類の臭いが気になる、暑い場所や緊張した場面で汗と臭いが同時に増える場合は、発汗によって臭いが増幅されている可能性があります。
反対に、汗をほとんどかいていないのに一日中強い臭いがする、片側のわきだけ急に臭う、赤み・痛み・しこり・分泌物がある場合は、別の原因も考える必要があります。
また、急に全身の汗が増えたうえに、動悸、手の震え、体重減少、発熱、強いだるさなどがある場合は、更年期だけで片づけず、内科や婦人科を受診してください。
日常生活でできる対策
更年期のわき汗と臭いを抑えるには、まず、わきを長時間湿った状態にしないことが大切です。
汗をかいたら早めに拭く、通気性の良い衣類を選ぶ、汗を吸った肌着を交換する、入浴後はわきをしっかり乾かすといった基本的な対策でも、臭いはある程度軽くできます。
制汗剤を使う場合は、香りで隠すだけの製品より、発汗を抑える成分を含むものの方が理にかなっています。
ただし、洗いすぎや強い摩擦は逆効果です。
臭いが気になるからといって一日に何度も強くこすると、皮膚炎や色素沈着を起こし、かえってケアが難しくなります。
ホットフラッシュや寝汗が強い場合は、婦人科で更年期症状そのものについて相談することも大切です。
更年期ホルモン療法は、適応のある女性のホットフラッシュに対して有効性の高い治療ですが、ワキガだけを治す目的で行う治療ではありません。
更年期のわきの臭いと汗に対する2つの治療

日常的な対策をしても改善せず、生活に支障が出ている場合は、医療による治療を検討できます。
ここで大事なのは、次の二つを分けることです。
「臭いと汗の両方が悩みなのか」
「臭いではなく、ホットフラッシュによるわき汗が悩みなのか」
症状が違えば、提案する治療も変わります。
臭いとわき汗の両方を改善したい方にはビューホット
もともとワキガ体質があり、更年期の発汗増加によって臭いも汗も気になるようになった方には、ビューホットが治療の選択肢になります。
ビューホットは、細い針から高周波を照射し、皮膚の中にある汗腺に熱エネルギーを与える治療器です。
ワキガの原因となるアポクリン汗腺と、多汗症に関係するエクリン汗腺の両方にアプローチするため、「臭いと汗をまとめて改善したい」という方に向いています。
皮膚を大きく切開する手術ではないため、切開手術のような長期間のわきの固定は通常必要ありません。
傷跡をできるだけ避けたい方や、仕事を長く休めない方にも検討しやすい治療です。
ただし、ビューホットを受ければ誰でも完全に無臭になる、と断言することはできません。
汗腺の深さや分布、皮膚の厚さ、臭いの強さには個人差があるためです。
治療後には、一時的な赤み、腫れ、熱感、内出血、点状の針跡や色素沈着などが起こることがあります。また、高周波による熱を利用する治療である以上、まれではありますが熱傷のリスクもあります。
だからこそ、単に機械を当てればよいのではありません。
ワキガの程度と皮膚の状態を診察し、その方に合わせて針の深さや高周波の出力を設定することが重要です。
関連記事:「ビューホットでわきが・多汗症は本当に治る? 後悔しないために」
臭いではなく、ホットフラッシュによるわき汗が主な悩みなら汗腺抑制注射
一方、ワキガ臭はそれほど強くなく、
「更年期になって、ホットフラッシュのたびにわき汗が大量に出る」
「臭いよりも、服にできる汗ジミがつらい」
という方には、わきの汗腺抑制注射治療を検討することがあります。
汗腺抑制注射は、汗を出す神経から放出されるアセチルコリンの働きを抑え、注射した範囲のエクリン汗腺から出る汗を一時的に減らす治療です。
注射のみで行え、効果は通常数か月続きますが、永続的な治療ではないため、効果が切れれば再治療が必要になります。
ここで重要なのは、汗腺抑制注射を「更年期で強くなったワキガ臭を根本的に治す治療」*として提案しているわけではない、ということです。
今回の汗腺抑制注射治療の目的は、あくまでホットフラッシュに伴って増えた「わき汗」と「汗ジミ」を局所的に抑えることです。
アポクリン汗腺そのものを処理する治療ではありません。そのため、強いワキガ臭そのものを治したい方には、基本的に第一の提案にはなりません。
また、わきに汗腺抑制注射を注射しても、ホットフラッシュそのものが治るわけではありません。
顔、首、胸、背中などを含めた全身の発汗を止める治療でもありません。
ホットフラッシュ自体が強い方は、まず婦人科で更年期症状について相談し、そのうえで、特に困っているわき汗に対する局所的な対症療法として考えるべきです。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。
1999年慶応義塾大学医学部卒。
外科専門医(日本外科学会認定)。
美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。
美容外科医師会理事。
美容外科医として20年以上のキャリアがあり、ビューホット治療を日本にいち早く導入。ビューホットにおけるスソワキガ治療は日本で初めて行った。これまでのスソガ、わきが治療例は延べ1万人を超える。
まとめ
更年期に入ってからワキガ臭が強くなったと感じることは、決して不自然ではありません。
ただし、女性ホルモンが減ったことでアポクリン汗腺が直接活性化し、ワキガ体質そのものが悪化することは、現在のところ証明されていません。
最も考えやすいのは、ホットフラッシュや寝汗によって発汗が増え、わきが湿ることで、以前からあったワキガ臭が強く表に出るという仕組みです。
もともとのワキガ臭とわき汗の両方が悩みで、汗腺そのものへの治療を希望する方には、アポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方に対応するビューホットが選択肢になります。
一方、臭いは強くなく、ホットフラッシュに伴うわき汗や汗ジミが主な悩みであれば、汗腺抑制注射による一時的な発汗抑制が向いていることがあります。
ただし、汗腺抑制注射はホットフラッシュやワキガを根本的に治す治療ではありません。
「更年期だから仕方がない」と我慢する必要はありません。
しかし、臭いの原因と汗の原因を分けて考えなければ、治療の選択を誤ります。
まずはワキガが主体なのか、多汗が主体なのか、それとも別の体臭なのかを正しく診断し、その方に合った方法を選ぶことが大切です。
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最終学歴:H11年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H15年船橋中央クリニック開業
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最終学歴:S43年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H28年青山セレスクリニック管理者






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