元神院長執筆 専門医と学ぶ美容医療ブログ

自慰のしすぎでニキビが増える?DHTとの関係を医師が科学的に検証

更新日:2026/08/13

公開日:2026/08/13

思春期にきびとオナニー

「自慰行為(オナニー)をするとニキビが増える」

「思春期にオナニーをしすぎると、男性ホルモンが増えて肌が荒れる」

このような話は昔からあります。最近では、国内で人気のある医師YouTuberが、動画の中で「思春期にオナニーをしすぎるとDHTが増え、それがニキビを増やす要因になる」という趣旨の説明をしていました。

結論から言います。この説明は、現在の医学的エビデンスに照らすと正しくありません。

DHTが思春期のニキビに関係すること自体は事実です。しかし、「オナニーの回数が多いとDHTが持続的に増える」「その結果としてニキビが増える」という因果関係は証明されていません。

正しい知識を部分的につなぎ合わせ、その途中に証明されていない因果関係を挟んでしまった説明です。

今回は、オナニー、DHT、思春期ニキビの関係を、それぞれ切り分けて解説します。

 

そもそも、思春期にニキビが増えるのはなぜか

ニキビは、正式には「尋常性痤瘡」と呼ばれる毛包脂腺系の慢性炎症性疾患です。

日本皮膚科学会のガイドラインでは、皮脂代謝に関わる内分泌因子、毛穴の角化異常、細菌の増殖などが複雑に関与すると説明されています。つまり、ニキビは単純に「男性ホルモンが多いからできる病気」ではありません。

思春期になると、男女ともにアンドロゲンと呼ばれる男性ホルモン系の作用が強くなります。これにより皮脂腺が発達し、皮脂の分泌量が増えます。

そこに毛穴の出口が詰まりやすくなる角化異常が重なると、まず面皰、いわゆる白ニキビや黒ニキビができます。さらに毛包内でアクネ菌(Cutibacterium acnes)と呼ばれる最近が増殖し、免疫反応が起こると、赤ニキビや膿をもつニキビへ進みます。

したがって、アンドロゲンは重要な要因ですが、あくまで複数ある要因の一つです。

皮脂の量だけでなく、毛穴の詰まりやすさ、皮膚局所のホルモン代謝、アンドロゲン受容体の感受性、アクネ菌に対する炎症反応などが組み合わさって、ニキビの有無や重症度が決まります。

 

参照元:尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023

 

DHTは思春期ニキビに関係するのか

DHTとは、ジヒドロテストステロンの略です。

テストステロンが「還元酵素」という酵素によって変換されて作られ、アンドロゲン受容体に強く作用します。

皮膚、とくに皮脂腺や毛包には還元酵素が存在し、皮膚の中でもテストステロンからDHTが作られます。DHTを含むアンドロゲンの作用が強まると、皮脂腺の活動や皮脂分泌が促され、ニキビができやすい環境につながると考えられています。

ここで重要なのは、血液中のDHTだけでなく、皮膚での局所的なDHT産生や、アンドロゲン受容体の反応性も関係するという点です。

2025年には、5.623.4歳の1,609人を対象にニキビの有無を調べ、そのうち1,009人でテストステロンとDHTを測定した研究が発表されました。

この研究では、ニキビがある男子・女子は、ニキビがない男子・女子よりも血中DHTが有意に高いという結果でした。DHTと思春期ニキビの関連を支持する新しいデータです。

ただし、これは「ニキビのある人ではDHTが高かった」という関連を示した研究であって、DHTの上昇だけがニキビを引き起こしたと証明した研究ではありません。

また、この研究はオナニーの回数を調べていません。したがって、この研究を根拠に、

オナニーによってDHTが増え、ニキビができた

と説明することはできません。

実際、重症ニキビの男性と健康な男性を比較し、血中のテストステロン、遊離テストステロン、DHTなどに有意差がなかったとする研究もあります。血中DHTが高いか低いかだけでは、ニキビを説明し切れないのです。

 

参照元:Adolescent acne: association to sex, puberty, testosterone and dihydrotestosterone

参照元:Serum hormone levels in men with severe acne

 

オナニーをするとDHTは増えるのか

ここが最も誤解されやすい部分です。

1976年に、健康な若年男性でオナニーの前後に血中ホルモンを測定した研究があります。

この研究では、オナニー後にDHTを含む複数のステロイドホルモンが上昇しました。ただし、採血は行為の直前と直後であり、その変化が何時間続いたのかは分かりません。

さらに、増えたのはDHTだけではなく、テストステロン、DHEA、コルチゾールなど、多くのステロイドホルモンでした。

この研究から言えるのは、

性的興奮、身体活動、オーガズム、射精を含む一連の行為の直後に、血中ホルモンが一時的に変動する可能性がある

ということまでです。

この研究は、毎日あるいは1日に何度もオナニーをする人で、平常時のDHTが慢性的に高くなることを調べたものではありません。

皮脂腺内のDHTも測定していません。ましてや、ニキビが増えたかどうかは一切調べていません。

 

参照元:Endocrine effects of masturbation in men

 

DHTが高い男性ほどオーガズムの回数が多いという研究

若年男性92人を調べた1995年の横断研究では、DHTが高い人ほど、自己申告による1週間のオーガズム回数が多いという関連が報告されました。

この研究は「オナニーによってDHTが上昇した証拠」として紹介されることがありますが、その解釈は正しくありません。

この研究からは、

  • オーガズムの回数が多かったためDHTが高くなった
  • もともとDHTが高いため性欲や性活動が活発だった
  • 別の要因がDHTと性活動の両方に影響した

という可能性を区別できません。

また、性交によるオーガズムとオナニーによるオーガズムも明確に分けられていません。

むしろ、DHTを含むアンドロゲンが性欲や性行動に影響し、その結果としてオーガズムの回数が増えたという逆方向の因果関係も十分に考えられます。

一方、4079歳の男性2,838人を対象とした大規模研究では、オナニーの頻度と関連したのは遊離テストステロンであり、DHTとの有意な関連は認められませんでした。

対象が中高年であるため思春期へそのまま当てはめることはできませんが、「オナニーの回数が多いほどDHTが高くなる」という単純な関係を支持する結果ではありません。

現時点では、オナニーの頻度を記録し、平常時のDHTや皮膚内DHTの変化を長期間追い、さらにニキビの発症や悪化まで検討した信頼性の高いヒト研究は見当たりません。

 

参照元:Contribution of dihydrotestosterone to male sexual behaviour.

参照元:The relationships between sex hormones and sexual function in middle-aged and older European men

 

医師YouTuberの説明は、どこが間違っているのか

DHTは皮脂腺に作用し、ニキビに関係する」

ここまでは間違いではありません。

しかし、そこから、

オナニーをしすぎるとDHTが増え続け、そのDHTによってニキビが増える

と結論づけるには、少なくとも次の事実が必要です。

第一に、オナニーの回数が多い人ほど、平常時のDHTが持続的に高くなること。

第二に、そのDHT上昇が血液中だけでなく、ニキビができる皮脂腺内でも起こること。

第三に、オナニーの回数を減らすことでDHTが下がり、実際にニキビも減ることです。

ところが、これらはいずれも証明されていません。

つまり、「DHTとニキビには関係がある」という事実と、「オナニー直後にDHTを含むホルモンが変動した古い研究」を直線で結び、「オナニーのしすぎがニキビの原因になる」としてしまったわけです。

これは医学的には因果関係の飛躍です。

発信者が医師であっても、知名度が高くても、この論理の穴は埋まりません。個人を批判することが目的ではありませんが、医学情報としては訂正されるべき内容です。

もちろん、「十分な研究がない」ことは、「影響が絶対にゼロだと証明された」という意味ではありません。

しかし、だからといって、まだ証明されていない仮説を「ニキビを増やす要因の一つ」と断定してよいわけではありません。医学では、因果関係を主張する側に、その根拠が必要です。

とくに思春期の若者へこのような説明をすると、ニキビに悩んでいるだけでなく、

自分がオナニーをしたせいだ

という不要な罪悪感まで持たせる可能性があります。

 

オナニーの後にニキビが増えたように感じるのはなぜか

思春期は、オナニーを始めたり回数が増えたりする時期と、ニキビが増える時期が重なります。

そのため、時間的に同時に起きた二つの現象を、原因と結果だと思い込みやすくなります。

また、「昨日オナニーをしたら今日ニキビができた」と感じても、そのニキビが一晩でゼロから作られたとは限りません。

目に見える前から、毛穴の中では微小面皰や炎症が進んでいます。直前に行った行為を原因と考えてしまうのは、人間にありがちな認知の偏りです。

もちろん、夜更かしをする、洗顔せずに寝る、生活が大きく乱れるなどの習慣が同時にあるなら、生活全体を見直す意味はあります。

しかし、それは「射精によってDHTが蓄積してニキビが増える」という話とは別です。

▶️ にきび治療のポイントについてはこちら

 

ニキビを治すためにオナニーを我慢する必要はない

現在のエビデンスに基づけば、ニキビ治療のためにオナニーの回数を減らしたり、禁欲したりする必要はありません。

禁欲によってニキビが改善するという治療効果も証明されていません。

見直すべきなのは、オナニーの回数ではなく、ニキビそのものに対する適切な治療です。

日本皮膚科学会のガイドラインでは、面皰や炎症性皮疹に対して、アダパレン、過酸化ベンゾイル、両者の配合剤など推奨されています。また、当院では外用薬で改善しないニキビには「アグネス」を推奨します。アグネスを月1回受けることで、ニキビが減ることが身に見えて実感できます。

ニキビは軽く見られがちですが、炎症が続くと陥凹性瘢痕や肥厚性瘢痕、色素沈着が残ることがあります。

「思春期だから自然に治るだろう」と放置する、あるいはオナニーを控えて様子を見る、という対応はおすすめできません。早めに正しい治療を始めることが重要です。

 

▶️ 高周波治療アグネスについてはこちら

まとめ

DHTを含むアンドロゲンが皮脂腺に作用し、思春期ニキビの病態に関与することは医学的に妥当です。実際に、ニキビのある思春期の男女で血中DHTが高かったという研究もあります。

しかし、それは、

自慰行為(オナニー)をしすぎるとDHTが慢性的に増え、そのせいでニキビが増える

という証明にはなりません。

オナニー直後にDHTを含む複数のホルモンが一時的に変動する可能性はありますが、頻回のオナニーが平常時や皮膚内のDHTを持続的に上昇させるというエビデンスはありません。

オナニーの回数とニキビの発症・悪化を直接結びつけた、信頼性の高い研究もありません。

したがって、現時点での医学的な結論は明確です。

「オナニーのしすぎがDHTを増やし、思春期ニキビを悪化させる」という説には、科学的根拠がありません。

オナニーを悪者にしても、ニキビは治りません。

治療すべきなのは毛包脂腺系の炎症であって、本人の性行動や罪悪感ではないのです。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。
1999年慶応義塾大学医学部卒。
外科専門医(日本外科学会認定)。
美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。
美容外科医師会理事。
美容外科医として20年以上のキャリアがあり、アンチエイジング治療、リフトアップ治療を得意としている。第109回日本美容外科学会で「スプリングスレッドを併用したフェイスリフト手術」で学会発表し、好評を得た。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。

 

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