元神院長執筆 専門医と学ぶ美容医療ブログ

トラネキサム酸とは?シミ・肝斑に効く理由や効果を徹底解説

更新日:2026/10/05

公開日:2025/07/25

「トラネキサム酸って止血剤なのに、ホントにシミにも効くの?」

不思議に思っている方もいらっしゃるでしょう。確かに、トラネキサム酸は止血剤として使われている内服薬ですが、肝斑の治療にも用いられます。

とはいえ、シミのなかでも特に肝斑の治療に用いられる理由や期待できる効果などを正しく理解したうえで、ご自身の肌のお悩みが改善できるかを検討すべきです。

本記事では、そんなトラネキサム酸について服用方法や注意点、市販薬との違いに至るまで詳しく解説します。

トラネキサム酸とは?

トラネキサム酸とは、血液の塊を溶かす「プラスミン」という酵素の働きを抑える抗線溶薬(抗プラスミン薬)のことです。このトラネキサム酸には、血栓の分解を抑えて出血を止まりやすくするほか、炎症を抑制する作用もあります。一般に、医療用医薬品として出血傾向や扁桃炎・咽喉頭炎、湿疹・じんましんなど、幅広い症状に用いられる薬です。

実は、トラネキサム酸は日本で開発され、1965年より「トランサミン」などの商品名で長く使用されてきました。その後、1979年に慢性じんましんの治療でこの薬を服用した方の肝斑が次第に薄くなったことから、肝斑治療に応用されるようになったのです。

しかし、日本における医療用トラネキサム酸の位置付けは「抗線溶薬」であり、肝斑治療を目的とする薬として承認を得ていません。一方、医療用医薬品とは別に開発された一般用医薬品「トランシーノEX」は臨床試験などを経て、肝斑に限定したシミへの効能・効果が承認され、市販薬として出回っています。

このように、医療用医薬品と市販薬では位置付けや使用方法が異なるため、効能や用法を十分理解したうえで服用することが重要です。

▶️肝斑(かんぱん)治療の詳細はこちら

トラネキサム酸が肝斑に作用する仕組み

この章では、トラネキサム酸が肝斑に作用する仕組みについて3つの観点から説明します。

メラニン産生を抑える

1つ目は、メラニンの産生を抑える作用です。肝斑は、紫外線と大きく関係しています。また、この紫外線から肌を守る大切な役割を果たすのがメラニンです。

メラニンを作る細胞「メラノサイト」は紫外線の刺激で活性化されます。必要以上にメラニンが作られて皮膚に蓄積すると、色素沈着が進み、肝斑が濃くなるのです。

実は、プラスミンは、血液の塊を溶かすだけではありません。皮膚のメラノサイトの活性化にも関わる酵素のひとつですから、このプラスミンの働きを抑えれば、メラノサイトへの刺激も減ります。これにより、メラニンの過剰な産生を抑える効果が期待できます。

参照:第一三共ヘルスケア「肝斑に効くしくみ」

炎症を鎮める

2つ目は、炎症を鎮める作用です。先述のプラスミンは、血栓の溶解やメラノサイトの活性化のほか、炎症にも関係する酵素です。

プラスミンの働きが活発になると、炎症や痛みに関わる生理活性物質「キニン」や「プロスタグランジン」も作られやすくなります。特に「プロスタグランジン」は、メラノサイトの活性化にも関係する物質です。

トラネキサム酸は、このような複数の働きを持つプラスミンを抑え、炎症反応を鎮める作用を持っており、「メラニンの抑制」と「炎症の鎮静化」の両面から肝斑に働きかけると考えられています。

参照:PMDA「トランサミン錠250mg/500mgほか 添付文書」
参照:PMDA「トランシーノ 審査資料」

血管や細胞に作用する

3つ目は、肝斑の患部にみられる血管や特定の細胞を減少させる作用です。これまでの研究では、肝斑の皮膚で毛細血管が増加しているほか、アレルギー反応や炎症に関わる「肥満細胞(マスト細胞)」が多くみられることが確認されました。

さらに、韓国の研究者Na JIが2013年に発表した研究では、トラネキサム酸の治療を受けた肝斑患者の皮膚に蓄積したメラニンだけでなく、血管やマスト細胞が減少した旨が報告されています。

つまり、トラネキサム酸による肝斑への作用は、色素が増える過程を抑えるだけでなく、肝斑の皮膚自体にみられる血管や細胞の変化にも関係する可能性があるのです。ただし、これらの変化が、どのような仕組みで起こるのかについてはまだ研究段階で十分に解明されていません。

参照:Na JI, Choi SY, Yang SH, Choi HR, Kang HY, Park KC. Effect of tranexamic acid on melasma: a clinical trial with histological evaluation.
J Eur Acad Dermatol Venereol. 2013;27(8):1035-1039. doi:10.1111/j.1468-3083.2012.04464.x

▶️肝斑(かんぱん)治療の詳細はこちら

トラネキサム酸の肝斑への効果

この章では、トラネキサム酸の肝斑への効果についてご紹介します。なお、臨床試験や治療症例は、研究ごとの対象人数・投与量・評価方法・治療期間が異なるため、改善率の数値での比較はできない点に注意しましょう。

臨床試験の報告

トラネキサム酸による肝斑の改善効果は、国内外の複数の臨床研究で報告されています。

国内では、1985年に信州大学などの研究グループによって、肝斑患者40例にトラネキサム酸を1日1~1.5g投与した結果が確認されました。具体的には、著効から有効は33例で全体の82.5%に効果が認められ、この33例では4週間以内に効果が現れています。

また、1988年には、市立堺病院皮膚科の研究で、肝斑患者11例に1日0.75~1.5gを投与し、1~2ヶ月後には全例で色素沈着が薄くなった旨が報告されました。注目すべきは、服用を中止すると、1~2ヶ月後に再び濃くなる傾向がある点です。ちなみに、この研究では副作用は認められていません。

さらに、2016年にシンガポールのNational Skin Centreが、肝斑患者561例に関する過去の診療記録を分析したところ、トラネキサム酸の中央値4ヶ月間の服用により、全体の89.7%となる503例で改善が確認されました。一方、改善した患者のうち27.2%は、再発もみられています。

このほか、2017年には、11の研究・計667例を対象とした研究結果を統合解析したところ、トラネキサム酸単独の治療で肝斑の重症度を示す「MASI」の数値が大きく低下し、ほかの肝斑治療にトラネキサム酸を追加しても改善が認められました。

このような複数の研究では、投与量や期間、評価方法などは異なりますが、トラネキサム酸による肝斑の改善が報告されています。ただし、トラネキサム酸の治療で、必ずしも肝斑が完全に消失するわけではないことに留意しましょう。

参照:1985年:御子柴甫ほか「肝斑に対するトラネキサム酸内服療法」西日本皮膚科.1985;47(6):1101-1104.

参照:1988年:東禹彦「肝斑に対するトラネキサム酸療法」皮膚. 1988;30(5):676-680.

参照:2016年:Lee HC, Thng TGS, Goh CL. Oral tranexamic acid (TA) in the treatment of melasma: A retrospective analysis. J Am Acad Dermatol. 2016;75(2):385-392.

参照:2017年:Kim HJ, Moon SH, Cho SH, Lee JD, Kim HS. Efficacy and Safety of Tranexamic Acid in Melasma: A Meta-analysis and Systematic Review. Acta Derm Venereol. 2017;97(7):776-781.

トラネキサム酸の服用方法と治療期間

この章では、トラネキサム酸の服用方法と治療期間について詳しく説明します。服用を検討していらっしゃる方は、ぜひ参考にしてください。

服用方法

肝斑治療におけるトラネキサム酸の服用方法は、肌の状態に合わせて医師が適切な投与量や期間を判断します。

これまでの臨床研究では、1日500mgを2回に分けて服用する方法をはじめ、1日750~1,500mgを使用した例も報告されています。しかし、これらの研究は、投与量や服用期間が一律ではなく、肝斑治療の標準的な用量は未だ確立されていません。

肝斑の状態だけでなく、既往歴や血栓症のリスクなども確認したうえで服用方法を決定することが重要です。

治療期間

トラネキサム酸による肝斑治療の効果を評価する目安は8~12週間程度です。これまで多くの臨床研究で、この期間での治療効果が評価されてきました。一方、先ほどご紹介した2016年のシンガポールの研究では服用期間の中央値は4ヶ月で、ある程度の幅があります。

トラネキサム酸は、先述の国内の研究でも服用中止後に再び肝斑が濃くなったケースが報告されているように、一定期間の服用で肝斑を完治させる薬ではありません。

だからこそ、8~12週間という期間だけを基準に服用を中止するのではなく、医師とともに肝斑の状態や治療による変化を確認する必要があります。

▶️肝斑(かんぱん)治療の詳細はこちら

トラネキサム酸の副作用と服用する際の注意点

この章では、トラネキサム酸の副作用と服用する際の注意点について説明します。

主な副作用

トラネキサム酸の主な副作用は、吐き気や下痢などの消化器症状、かゆみ・発疹、眠気などです。医療用医薬品の添付文書では、いずれも1%未満の頻度で報告されています。

ただし、注意すべきは血栓症です。2016年のシンガポールの研究でも、トラネキサム酸を服用した561例のうち40例にあたる7.1%に何らかの有害事象がみられました。その多くは一時的なものでしたが、1例で「深部静脈血栓症(DVT)」を発症したため服用を中止し、その後の検査で血栓ができやすい「家族性プロテインS欠乏症」であると判明しました。

また、添付文書には、人工透析を受けている患者の「けいれん」が、重大な副作用として記載されています。副作用の頻度は高くないものの、持病や体質によっては発症しないとも限りません。服用前には既往歴や現在使用中の薬を医師に伝え、異常を感じた場合には速やかに相談しましょう。

注意が必要な方

トラネキサム酸の服用にあたっては、持病や健康状態などによって注意が必要な方がいらっしゃいます。

  • 血栓症がある、または血栓症を起こすおそれがある方
  • 消費性凝固障害のある方
  • 手術後で安静にしている方や圧迫止血の処置を受けている方
  • 腎機能が低下している方、人工透析を受けている方
  • 妊娠中・授乳中の方
  • 高齢の方

なお、医療用トラネキサム酸は、トロンビンとの併用はできません。また、市販の肝斑改善薬「トランシーノEX」の使用上の注意では、経口避妊薬(ピル)やホルモン補充療法を受けている方も、服用前に医師または薬剤師へ相談する対象とされています。

上記に該当しなくても、持病や服用中の薬によっては、トラネキサム酸を使用できない方や慎重な判断が必要な場合もあります。服用の可否や注意点はそれぞれのケースで異なるため、自己判断で服用を開始・継続せず、医師の指示に従ってください。

▶️肝斑(かんぱん)治療の詳細はこちら

市販薬と医療用トラネキサム酸の違い

この章では、市販薬と医療用トラネキサム酸の違いについて説明します。日本では、トラネキサム酸を配合した肝斑の市販薬は、第一三共ヘルスケアの「トランシーノEX」が一般的に知られています。肝斑への効能に限定された市販薬です。

一方、医療用トラネキサム酸は、医師の判断による適応外使用となります。いずれにせよ、服用する前にそれぞれの違いを正しく理解しておくべきです。

用量・用法

市販薬の「トランシーノEX」は、1日量となる4錠中にトラネキサム酸750mgを配合しています。成人(15歳以上)は1回2錠を1日2回、食後に水またはお湯で服用すると定められた用法・用量です。医療機関を受診しなくても購入できますが、薬剤師の説明を受ける必要のある第1類医薬品に分類されています。

一方、医療機関で肝斑治療として処方するトラネキサム酸は、肌の状態や血栓症のリスクなどを確認し、医師が投与量や服用期間を個別に判断するものです。決められた用法・用量で使用する市販薬とは、この点にも違いがあります。

服用期間

トランシーノEXの服用については、2ヶ月(8週間)を超えて継続して服用しないこと、服用を中止した後に肝斑が再発した場合も、再開までに最低2ヶ月あけることが定められています。また、透析療法を受けている方は服用できません。

医療用トラネキサム酸の場合は、市販薬のようにあらかじめ服用期間の上限が定められているわけではなく、医師が経過を確認しながら期間を判断します。

治療方法の違い

市販薬と医療用トラネキサム酸では、肝斑への治療方法そのものに違いがあります。というのは、市販薬は定められた用法・用量・服用期間に従って使用するのに対し、医療機関では肝斑の状態によっては、必要に応じてレーザートーニングなどほかの治療と組み合わせることもあるためです。

市販薬と医療用のどちらにもトラネキサム酸が有効成分として含まれていますが、「医療用トラネキサム酸のほうが必ず高い効果を得られる」というわけではありません。

市販薬を使用しても十分な変化を感じられない方や、肝斑の状態に応じた治療を受けたい方は、医療機関への相談を検討しましょう。

▶️レーザートーニングの詳細はこちら

まとめ

トラネキサム酸は、本来、止血や炎症を抑える目的で使われてきた薬ですが、現在では肝斑治療にも活用され、市販薬としての購入も可能です。

ただし、医療用トラネキサム酸による肝斑治療は適応外使用で、服用方法や治療期間は肝斑の状態や健康状態によって判断されます。特に、持病や服用中の薬の種類によっては、慎重な判断が必要になります。医療機関で肝斑治療を受ける際は、医師にご自身の健康状態を正しく伝えることが大切です。

肝斑は、トラネキサム酸だけでなく、肌の状態に応じてレーザートーニングなどを組み合わせたほうが改善を期待できるケースも少なくありません。肝斑の原因や見分け方、治療全体について詳しく知りたい方は、あわせて肝斑の総合記事もご参照ください。

 

筆者:元神 賢太 船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがあり、美容外科医でありながら、肌治療にも精通している。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。シミ治療、にきび、ニキビ跡治療に定評がある。

ブログTOPに戻る

当院は開設20年以上の歴史を持つ医療法人社団セレスのグループクリニックです。
千葉船橋院:千葉県船橋市(JR総武線・横須賀総武快速線、東武野田線、京成本線船橋駅)、東京青山院:東京都港区北青山(地下鉄銀座線外苑前駅)がございます。
年間で累計約4万人の患者様にご来院いただいており、国内屈指の症例数がございます。
様々な治療のご相談をお受けし、施術を行っておりますのでどうぞ安心してお任せください。

千葉エリアで治療をご希望の方はこちら

船橋中央クリニックmap

〒273-0005
千葉県船橋市本町6-4-15
グラン大誠ビル 2F
責任者:元神賢太
最終学歴:H11年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H15年船橋中央クリニック開業

東京エリアで治療をご希望の方はこちら

青山セレスクリニックmap
詳細地図はこちら

青山セレスクリニック
東京青山院

フリーダイヤル 0120-010-099

〒107-0061
東京都港区北青山2-7-26
ランドワーク青山ビル7F
(旧ヒューリック外苑前ビル)
責任者:高林洋一
最終学歴:S43年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H28年青山セレスクリニック管理者

メニューを開く

ライン相談をする 相談/予約

希望される
クリニックを選択して下さい。

どちらも元神医師が診察しています。

フリーダイヤル フリーダイヤル相談/予約

受付時間:11:00~18:00 年中無休
(12/31~1/3を除く)

希望される
クリニックを選択して下さい。

どちらも元神医師が診察しています。