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令和ロマン・くるまさんも悩む代償性発汗:手汗手術で後悔しないために
更新日:2025/12/16
公開日:2025/12/16

お笑いコンビ「令和ロマン」の高比良くるまさんが、幼い頃から手足の多汗症に悩んでいたことを最近明かしました。旅番組の中で「足の裏にめっちゃ汗をかく。サンダルの中で滑ってしまうほどなんです」と自身の症状を告白し、「これは暑さのせいの汗じゃなくて、神経の汗なんです」と説明しています。つまり、生まれつき緊張や自律神経の作用で手足に異常な発汗が起こる原発性多汗症だったのです。
くるまさんはまず手汗の悩みを解消するために交感神経遮断術(ETS手術)と呼ばれる手術を受けました。脇の下付近で交感神経の一部を切断し、手のひらの発汗を抑える手術です。その結果、手汗自体は完全に止まったそうです。
しかしその代わりに、胸や背中から大量の汗が出るようになってしまったといいます。手術前に医師からも「代償性発汗がどこに出るかは予測できない」と説明され、「極端なケースでは全ての汗が鼻の下から出る人もいる」と例示されたそうです。くるまさんは「それだけは勘弁してくれ!」と心底思い、全身麻酔から覚める際には「頼むから鼻の下以外であってくれ…」と祈ったと語っています。
幸い鼻の下が濡れ続けるような事態は避けられたものの、手術後に思わぬ場所から汗が噴き出す―これこそが「代償性発汗」です。くるまさんの体験は、多汗症に苦しむ人にとって他人事ではありません。汗を止めるための手術には、こうした不可逆的(元に戻せない)なリスクがあることを、まず知っておきましょう。
出典元: 令和ロマンくるま、幼少期から抱える病気を告白「手術前に医師から…」
代償性発汗とは? なぜ起こるのか

代償性発汗とは、手術などである部位の発汗を抑制した結果、身体の別の場所で発汗が増加してしまう現象です。ETS手術のように交感神経を切断して手や足など特定の部位の汗を止めると、本来その部分でかいていた汗の行き場がなくなります。体は体温調節やストレス反応を維持するため、他の部位の発汗を過剰に促すことがあります。
例えば「手のひらの汗を止めたら背中やお腹に汗をかくようになった」というように、身体がバランスを取ろうとして起こる副作用と考えられています。なぜ代償性発汗が起こるのか、その詳細なメカニズムは完全には解明されていません。ただ一般的に言われるのは、交感神経系の一部を遮断すると残った神経の活動が相対的に活発化し、その影響が他の汗腺に及ぶという考え方です。
また、特に上位の神経節(胸椎の高いレベル、例えばT2の交感神経節)を切断すると体温調節中枢へのフィードバックが乱れ、代償性発汗が起こりやすいとも報告されています。いずれにせよ、代償性発汗はETS手術に付きものの合併症であり、防ぐ確実な方法は今のところありません。日本皮膚科学会のガイドラインでも「代償性発汗を完全に防止する術式は確立されていない」と記載されています。そのため、手術を検討する段階で十分な説明と覚悟が必要なのです。

↑代償性発汗により衣服が常にびしょびしょになっている状態
ETS手術のリスク:一度切った神経は元に戻せない
交感神経遮断術(ETS)は重度の手掌多汗症などに対して効果がある反面、代償性発汗のリスクが非常に高い手術です。実際、術後なんらかの代償性発汗が現れる確率はほぼ100%とも言われます。症状の程度には個人差がありますが、軽度ですむ人もいれば術前の悩みを上回るほど大量の汗に苦しむ重症例も少なくありません。

↑字幕注視。ETS手術を多く行うクリニックの動画内でも代償性発汗は100%起こることを断定しています(youtubeより抜粋)
特に胸から下(背中、腹部、太ももなど)にかけて滝のような汗が止まらなくなり、衣服が常にびっしょり濡れてしまうような方もいます。ひどい場合は発汗による脱水症状や皮膚トラブルを引き起こし、日常生活に支障をきたすことさえあります。くるまさんも語っていたように、「手術前より汗の悩みが増えてしまった」というのでは本末転倒です。
さらにETS手術には代償性発汗以外にも深刻な副作用が報告されています。例えば、食事の刺激で顔面に汗をかく味覚性発汗、まぶたが下がるなどの症状を起こすホルネル症候群、血圧や心拍の変動、不眠など自律神経失調的な症状が現れるケースなどです。こうしたリスクは交感神経という体の重要な神経ネットワークを切断することに起因します。
言い換えれば、体の恒常性を保つ回路にメスを入れるわけですから、想定外の不調が起きても不思議ではないのです。何より注意すべきは、一度切ってしまった神経は元通りに修復できないという点です。残念ながらETS手術の効果を解除してもとに戻す治療は極めて困難です。
海外(フィンランドや台湾)では交感神経のリバーサル手術(切断した神経を別の神経移植で繋ぎ直す試み)も行われていますが、日本国内では実施されておらず、成功率もまだ確立されたものではありません。つまり、ETS手術は不可逆的な決断なのです。「やっぱり元に戻したい」と思っても簡単には取り返しがつきません。この事実を踏まえると、多汗症に苦しむ患者さんに安易に手術を勧めるべきではないと私は考えます。
実際、過去には重い後遺症を理由に裁判になったケースも報道されていますし、インターネット上でも「ETS手術を受けて後悔した」という声は後を絶ちません。後悔しないためには、手術以外の選択肢についてもしっかり検討することが大切です。
神経を切らず汗腺を狙う!最新の「切らない治療」
幸いなことに、近年は発達した医療技術によって交感神経を切らずに多汗症を治療する方法がいくつも登場しています。汗そのものを抑えるアプローチとして、主に次のような治療法があります。
■ボ●ックス注射(●はト)

発汗を促す神経伝達をブロックする薬剤を、発汗の気になる部位(手のひら・脇の下・足の裏・顔など)に注射します。汗腺の働きが一時的に弱まり、数ヶ月間は発汗量が大幅に減少します。効果は約6ヶ月持続しますが、定期的に繰り返し治療することで長期的に症状が改善したとの報告もあります。
注射自体は短時間で終わり、傷跡も残りません。手のひらや足裏への注射は痛みを伴うため敬遠されがちですが、私のクリニック(青山セレスクリニック・船橋中央クリニック)では短時間の麻酔を併用することで痛みを感じずに治療を受けていただく工夫をしています。ボトックス治療は世界中で効果と安全性が確認された第一選択肢であり、私自身も多汗症治療で真っ先に検討する方法です。最大のメリットは交感神経を切らないため代償性発汗のリスクが極めて低いことです。
■ビューホット(ViewHOT)

切開せずに行える最新の医療機器による治療です。皮膚に極細の針を刺し、高周波RFエネルギーを照射して皮下の汗腺を熱破壊します。特に脇の下のワキ汗・ワキガ治療に高い効果を発揮しますが、手足の多汗症においても、一度の治療でエクリン汗腺の約半分程度を不活化できるため半永久的な改善効果が期待できます。
傷口が残らず、治療直後から普段どおりの生活が可能な点も魅力です。汗の元であるエクリン汗腺・アポクリン汗腺を狙い撃ちするため、身体の他の部位の発汗に影響を与える心配はありません。
■切らない多汗症治療のメリット
これら「切らない治療」の最大の利点は、体の神経ネットワークを破壊しない点にあります。発汗そのものを抑えるか、汗腺を取り除くことで汗の量を減らすため、身体全体の発汗調節機能には影響を与えないのです。実際、ボトックスや外科手術以外の治療で代償性発汗が起きる頻度はごく低く、起きたとしても一時的で軽度だと報告されています。
「汗を止めたいけど、副作用で別の場所から汗が出るのは怖い」という方には、まずはこれら安全性の高い保存的治療から試してみることを強くおすすめします。
まとめ
手汗や脇汗がひどいと、「もう神経を切るしか解決方法がないのでは…」と絶望的な気分になるお気持ちはよくわかります。事実、ETS手術は発汗を劇的に止める即効性がありますから、最終手段として検討されるのも無理はありません。しかし、その裏にはここまで述べてきた大きなリスクが潜んでいます。
高比良くるまさんのように、長年の悩みから解放された喜びも束の間、新たな汗の問題に苦しむ可能性があるのです。しかも一度手術をしてしまえば簡単には元に戻せません。「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためにも、手術以外の選択肢を知った上で慎重に判断することが大切です。
幸い、現在ではボ●ックス治療やビューホットなど切らずに済む優れた治療法が手に入ります。これらの治療なら副作用の心配も少なく、安全に汗の悩みを軽減できます。実際に私のクリニックでもこうした治療を導入し、これまでに延べ1万例以上の多汗症・わきが治療に携わってきましたが、皆さん「手術しなくてよかった」「もっと早く相談すればよかった」という声を多くいただきます。
まずは信頼できる専門医に相談し、ご自身の症状やライフスタイルに合ったベストな方法を一緒に考えてみましょう。神経を切るのは最後の手段でも遅くありません。切らない安全な治療で、汗の悩みを克服し、快適な生活を取り戻していただければ幸いです。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。
1999年慶応義塾大学医学部卒。
外科専門医(日本外科学会認定)。
美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。
美容外科医師会理事。
美容外科医として20年以上のキャリアがあり、ビューホット治療を日本にいち早く導入。ビューホットにおけるスソワキガ治療は日本で初めて行った。これまでのスソガ、わきが治療例は延べ1万人を超える。
多汗症, 多汗症 ボトックス, ビューホット, ワキガ, 手汗, 代償性発汗
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