院長ブログ わきがチェックキットはおすすめしない！専門医による診断を勧める理由 | 美容整形・美容外科 青山セレスクリニック

こんにちは。青山セレスクリニック・船橋中央クリニック院長の元神賢太です。美容外科医として20年以上の経験があり、特にわきが治療を専門としてきました。ワキガ（腋臭症）とは、脇の下にあるアポクリン汗腺からの汗が皮膚の常在菌によって分解されることで発生する独特の体臭のことです。その強い臭いゆえに人間関係や自尊心に影響を及ぼすこともあり、多くの方がこの問題に悩んでいます。

また、ワキガは遺伝的な要素も強い体質です。ご両親の片方がワキガ体質の場合は約50%、両親ともにワキガ体質の場合は約70〜80%の確率で遺伝すると報告されています。そのため、家族にワキガの方がいると「自分もそうではないか」と心配になるケースも少なくありません。

この記事では、「わきがチェックキットはおすすめしない」というテーマで、なぜセルフチェック用のキットよりも専門医による診察を受けることを強く勧めるのか、その理由を詳しく解説します。わきがかどうか悩んでいる方にとって、有益な情報を提供できれば幸いです。

ワキガチェックキットとは何か？

まず、市販されているワキガのセルフチェックキットについて説明しましょう。近年、病院に行かずとも自宅で簡単にワキガを調べられるキットが販売されています。脇に挟んだガーゼやTシャツを用いる郵送検査タイプのキットが一般的です。

専用の無地Tシャツを1日着用したりガーゼを腋に一定時間はさんだりして、体臭を染み込ませて、それを郵送して専門機関で分析してもらうものです。代表的な例では、臭気判定士（国家資格を持つ臭いの専門家）が実際に送られてきたTシャツの臭いを嗅ぎ、ワキガ臭の有無や強さを客観的に評価します。資格がない人が単に臭いを判定することもあります。結果は後日レポートで通知され、必要に応じて提携クリニックの紹介まで行われます。

また、最近では人の嗅覚による判定だけではなく、機器分析を併用する取り組みも見られます。これはGC-MS（ガスクロマトグラフ質量分析）と呼ばれる機器を用いて、臭気分子の種類と強度を特定する機器です。しかし、現状、機械で人間の嗅覚と同等の総合判断を下すことは難しいとされています。

確かに、GC-MSは臭いの原因となる分子を同定・定量するには最適な手法で、実際に研究ではワキガ臭の主成分として(E)-3-メチル-2-ヘキセノイク酸（3M2H酸）等の脂肪酸が検出されています。しかし、GC-MSが示すのは化学成分の種類と濃度に過ぎず、それらが混ざり合ったとき人間にどう感じるか（不快かどうか、強烈かどうか）は最終的に人間の嗅覚で評価するしかありません。このため、臭気分析の分野では人間の鼻を使った官能評価が「ゴールドスタンダード」とされ続けています。

近年では将来的に「機械だけで臭いを判定する」可能性を感じさせる技術も登場していますが、一般に広く普及し信頼される段階にはまだ至っていません。

この郵送タイプの検査キットの価格は決して安くありません。相場としては１～3万円程度の費用がかかります。決して安い買い物ではありませんが、自分一人で完結でき、匿名性・プライバシーが守られる点がメリットとして挙げられています。

「病院に行かずにワキガかチェックする方法はないか」「チェックのためだけに皮膚科に行くのは恥ずかしい」と感じる方にとって、こうしたキットは魅力的に映るのかもしれません。

参照元： sciencedirect.com

ワキガチェックキットをおすすめしない理由

私は医師として、セルフチェック用キットを患者さんにおすすめしていません。その主な理由は次の4点です。

• 専門医の診断の方が圧倒的に正確
• 費用面でクリニック受診の方が安価
• 汗臭とワキガ臭を混同した誤判定を防げる
• その場で適切なアドバイスと治療提案が受けられる

専門医の診断の方が圧倒的に正確

ワキガか否かの判定は、最終的には人間の嗅覚による「臭いをかぐテスト」に頼るしかありません。実際、この記事で紹介した郵送キットでも最終的には臭気判定士がTシャツやガーゼの臭いを嗅いで評価しています。

経験豊富な専門医であれば、診察室で患者様の腋の臭いを直接確認し、瞬時にワキガの有無や程度を判断できます。さらに、耳垢の状態（湿ってベタベタしていないか）、衣服の黄ばみの有無、家族の体質など総合的に問診することで、機械やキットでは得られない高い精度の診断が可能です。

費用面でクリニック受診の方が安価

キットには1万円前後の費用がかかりますが、専門クリニックでのカウンセリング費用はそれよりはるかに低い場合がほとんどです。多くの美容クリニックでは初診相談が数千円（1,000～5,000円程度）で受けられます。

わざわざ高価なキットを取り寄せなくても、実はクリニックで直接診てもらった方が安上がりなのです。

汗臭とワキガ臭を混同した誤判定を防げる

ワキガの臭いと、単なる汗の臭い（いわゆる汗臭）は異なります。例えば、多汗症の方は、脇汗が多いことで衣類が蒸れて強い体臭を発することがあります。しかしそれはエクリン汗腺からの汗臭であり、アポクリン汗腺由来のワキガ臭とは匂いの質が違います。

ご自身ではこの違いを判断しにくく、「自分はワキガだ」と思い込んでしまうケースも少なくありません。専門医であれば、その場で臭いを嗅ぎ分けてワキガ特有の臭いかどうかを見極めることができます。なお、実際にはワキガではないのに「自分が臭う」と思い込んでしまう自己臭恐怖症というケースも存在します。

専門医に相談すれば、そうした誤った思い込みも含めて客観的に判断し、無用な心配を解消することが可能です。

その場で適切なアドバイスと治療提案が受けられる

キットで「ワキガの可能性あり」という結果が出たとしても、結局その後に治療を望むなら医療機関を受診する必要があります。であれば、最初から専門医に相談した方がスムーズです。

クリニックであれば、検査と同じ場で「今後どうすれば良いのか」まで含めて相談できます。軽度であれば日常生活でのケア方法をアドバイスできますし、本格的な治療が必要と判断されればその場で治療法の提案も可能です。医師との対面相談では、疑問や不安を直接質問できる安心感があります。

プライバシーも厳守されますので、恥ずかしがらずに専門家に頼ることをおすすめします。実際、私のクリニックでも「自分はワキガではないか」と長年悩み続けた末に受診され、診察の結果ワキガ体質ではなく、通常の多汗症によるものであると判明して安心されたケースが多々あります。

逆に、本当にワキガ症であった方も、早期に治療に踏み切ることで臭いの悩みから解放され、日常生活の質（QOL）が大きく向上した例を数多く見てきました。専門医による診断を受けることで、ご自身の状態を正しく把握し、適切な対策を講じる第一歩となるのです。

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ワキガと診断された場合の治療法

専門医の診察によって「ワキガ症」であると診断された場合でも、症状の程度に応じて様々な治療法の選択肢があります。私はこれまで数多くのワキガ治療を手がけてきましたが、特に効果と安全性のバランスに優れた ビューホット治療 と シェービング法 を中心に患者様に提案しています（軽症～中等症にはビューホット、重症例にはシェービング法という使い分けです）。

ビューホット治療（軽度～中等度のワキガ向け）

ビューホット（View HOT）とは、メスを使わない切らないワキガ治療です。高周波エネルギー（RF）を利用して皮膚の下にあるアポクリン汗腺にダメージを与え、汗腺の働きを半永久的に抑制します。2014年頃から日本国内でも導入が進んだ治療法で、切開を伴わないため体への負担が少なく、施術当日から日常生活に復帰できるという利点があります。

治療効果には個人差がありますが、ワキガ臭に対して約7割程度のニオイ軽減効果が得られ、汗の量についても大幅に減少するケースが多いです（※当院調べ）。ビューホット治療は局所麻酔下で行い、施術時間は約30分程度です。治療直後から脇の臭いや汗が軽減されるのを実感する患者様も少なくありません。

メスを入れないとはいえ、照射の前には局所麻酔を行い、痛みがないことを確認して施術します。特に「手術は怖いが、根本的にワキガを治したい」という軽度～中等度の患者様に適した治療と言えます。

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シェービング法手術（重度のワキガ向け）

（シェービング法で使用する特殊な器具）

シェービング法は、根本的にワキガの原因を除去する手術治療です。"シェービング (shaving)"とは英語で「削る」という意味で、その名の通り皮膚を裏側から削るようにして汗腺を取り除きます。脇の下を小さく切開し、専用の器具で皮膚の裏側からアポクリン汗腺を直接確認・除去します。

毛根やエクリン汗腺（通常の汗の腺）も一緒に削り取るため、術後は汗の量自体も大幅に減少し、脇毛も生えてこなくなるという効果もあります。シェービング法の手術時間は両脇で約1時間程度です。術後は脇の下を固定して安静を保つ必要があり、3～4日目に固定除去のための通院、1週間後に抜糸のための通院が必要です。

従来の剪除法（皮膚を反転させて直接汗腺を切除する方法）に比べ、シェービング法は皮膚表面の切開創が小さいため、傷跡が目立ちにくいメリットがあります。私のクリニックでは、シェービング法で可能な限り再発しないよう徹底的にアポクリン汗腺を除去しています。万一臭いが残るような場合でも、追加治療の保証制度を設けることで患者様に安心して手術を受けていただける体制を整えています。

シェービング法は体への負担はありますが、その分効果は非常に高く、重度のワキガでも臭いの悩みから解放される可能性が極めて高い治療法です。実際、当院でも重度の患者様にはこの手術を選択される方が多く、高い満足度を得ています。傷跡が心配な方もいらっしゃいますが、個人差はあるものの時間経過とともに薄れていき、脇の下という目立ちにくい部位でもあるため過度に心配する必要はありません。

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