投稿日:2024/10/03
(最終更新日:2024/12/08)

切開フェイスリフトの腫れとダウンタイムの経過

フェイスリフトの腫れについて

切開フェイスリフト手術を受けるにあたって、多くの方が術後の腫れの程度やダウンタイムの長さについて不安を感じることでしょう。「どれくらい腫れるのか?」「ダウンタイムはどのくらい続くのか?」「その間、職場復帰は可能なのか?」といった疑問が浮かぶのは当然です。本記事では、20年以上の美容外科の経験を持ち、学会や講演でも発表を行っている専門医が、切開フェイスリフト手術後の腫れの進行やダウンタイムの具体的な経過について、詳しく解説します。また、個々の体質による回復速度の違いについても取り上げていきます。手術を検討中の方にとって、安心して前向きに手術に臨める情報を提供いたします。

切開フェイスリフト手術の腫れが起こる要因

切開フェイスリフト手術後に起こる腫れ(浮腫)は、いくつかの生理学的な要因が関与しています。手術による腫れの主な原因は以下の通りです。

1.血管の損傷と炎症反応

切開フェイスリフト手術では、皮膚を切開し、皮下組織や筋膜(SMAS層)にアプローチします。この過程で、細かい血管やリンパ管が多かれ少なかれ必ず損傷されます。これにより、炎症反応が引き起こされ、局所的に免疫細胞(白血球やマクロファージ)が集まり、炎症性物質(ヒスタミン、プロスタグランジン、サイトカインなど)が放出されます。これらの物質が血管を拡張させ、血管透過性を高め、血漿成分が周囲の組織に漏れ出し、腫れ(浮腫)を引き起こします。

2.リンパ管の損傷とリンパ液の滞留

リンパ管も手術によって切断され、リンパ液が正常に排出されにくくなります。リンパ液の排出が滞ると、局所に液体が蓄積し、腫れを引き起こします。この腫れは特に顔面や首のようにリンパ液の流れが重要な部位では顕著に見られます。

3.出血と血腫

手術中の血管の損傷により、微細な出血が生じることがあります。これが血腫として皮下に溜まると、その圧力で周囲の組織が押され、腫れが生じます。血腫は、血液が凝固してできた塊ですが、凝固するまでの間に液体成分が周囲に広がり、腫れの原因となります。

4. 組織の剥離による空間の形成

切開フェイスリフト手術では、皮膚が下の筋膜から剥離され、リフトアップされます。この剥離によって、皮下に新たなスペースができ、そのスペースに組織液や血漿が蓄積しやすくなるため、腫れが起こります。この腫れは通常、剥離された範囲の広さや深さに比例して大きくなります。

5.所麻酔薬や注射液の影響

手術中に局所麻酔薬や血管収縮薬を含む注射液が使用されることがあります。これらの液体は術中には血管収縮効果で腫れを抑える一方、術後にはその液体が吸収される過程で腫れを助長することがあります。

6.炎症性サイトカインの作用

手術後の炎症反応の一環として、サイトカインが放出され、周囲の血管透過性が増加し、体液の漏出を引き起こします。この反応は手術部位に免疫細胞が集まることを助け、修復プロセスを促進する一方で、腫れの原因ともなります。

このように、切開フェイスリフト後の腫れは、手術による組織の損傷、炎症反応、リンパ液の滞留、血腫の形成、組織液の蓄積などが複合的に作用して起こります。

↑フェイスリフト手術の直後の腫れの状態

腫れを決定する要因:術式

切開フェイスリフト術後の腫れの程度を決定する要因は、術式による要因と医師の技量による要因に大別できます。ここでは術式による要因について、詳細に説明します。

剥離範囲の広さ

切開フェイスリフトでは、皮膚を筋膜(SMAS層)から剥離し、リフトアップします。この剥離範囲が広ければ広いほど、術後の腫れが大きくなる傾向があります。広範囲の剥離によって、より多くのリンパ管や血管が損傷されるため、炎症反応が強くなり、腫れの原因となる組織液の蓄積が増加します。

ミニリフト:比較的剥離範囲が狭く、通常、耳の周辺の皮膚のみが剥離されるため、腫れが少ない傾向があります。

フルフェイスリフト:顔全体、場合によっては首周りまで広範囲に剥離が行われるため、術後の腫れが顕著になります。

切開の長さ

切開する長さも術後の腫れに影響します。切開が長いほど、周囲の組織がより広範囲に損傷されるため、血管やリンパ管の損傷が増え、それに伴う炎症や浮腫の程度も強くなります。

短い切開(ミニリフト):切開の範囲が小さいため、腫れは比較的軽度で回復も早いです。

長い切開(SMAS法等の伝統的なフェイスリフト):耳の前から髪の生え際、時には首まで広がるため、腫れが顕著に現れます。

手術時の剥離の深さ

手術の深さ、特にSMAS層や筋膜、脂肪に対する操作がどの程度行われるかによっても、腫れの程度は異なります。より深い層に対する操作がある場合、血管や神経、リンパ管に対する影響が大きくなり、腫れが長引く傾向にあります。

浅い層の操作:皮膚層のみの剥離や操作の場合、腫れが少なく、回復も早いです。

深い層(SMAS法)の操作:より深い層に働きかけると、炎症が強まり腫れも長期間続くことがあります。

最も深い層(リガメント法):最も深い骨膜近くまで手術の操作が及ぶことがあるため、腫れが最も長くなります。

リフトの種類

切開フェイスリフトにはさまざまな術式があり、例えば、SMAS法リフト、リガメント法、ミニリフトなどの種類があります。これらの術式によって腫れの程度も変わります。

SMAS法リフト:SMAS層にしっかりとアプローチするため、術後の腫れは比較的大きく、長期間続くことがあります。

リガメント法:顔のリガメント(靭帯)を広範囲に切開して剥離するため、腫れが非常に大きくなることが多いです。

ミニリフト:剥離範囲が狭く、腫れも少なくなります。

腫れを決定する要因:医師の技量

切開フェイスリフトの腫れを決定する要因として、次に医師の技量による要因について、詳細に説明します。

手術時間の長さ

手術時間が長引くと、組織が露出している時間が長くなるため、乾燥や外的ストレスにさらされ、腫れや炎症が悪化する可能性があります。また、長時間の手術によって疲労やストレスが組織にかかるため、回復が遅れることもあります。熟練した医師は、効率的かつ精密な操作で、手術時間を最小限に抑えることができます。

出血量の多さ

手術中の出血量が多い場合、その血液が組織内に蓄積し、血腫を形成することで腫れが悪化します。熟練した医師は、出血を最小限に抑えながら手術を進める技術を持っており、これにより術後の腫れを軽減することができます。

出血コントロールの技術:医師の技量が高ければ、切開や剥離の際に血管を適切に避けることができ、出血を抑えることができます。これにより、腫れや血腫のリスクが減少します。

術中の組織操作の丁寧さ

術中の組織への操作が粗い場合、不要な損傷が広がり、炎症反応や腫れが強くなります。逆に、熟練した医師は最小限の組織損傷で手術を行うことができるため、腫れも軽度で済みます。特に、リンパ管や神経をできるだけ損傷しないように操作することが重要です。

術後のケア

術後のケアの指導も、医師の技量に関連しています。例えば、腫れを抑えるために適切な術後の指示が重要です。これらのケアが適切に行われるかどうかで、腫れの程度や回復速度に大きな影響があります。

手術時の麻酔薬や薬剤の選択

手術中に使用される麻酔薬や薬剤の選択も腫れに影響します。例えば、局所麻酔薬や血管収縮剤が適切に使用されれば、手術中の出血を抑え、腫れを軽減することができます。経験豊富な医師は、個々の患者に最適な薬剤を選択し、術後の腫れを最小限に抑えることができます。

切開フェイスリフト術後の腫れとダウンタイムの期間

切開フェイスリフト術後の腫れが続く期間は、術式や個々の患者の体質に大きく左右されますが、以下のように術式別におおよその期間を示します。

■ミニリフト

腫れの期間:12週間程度

概要:ミニリフトは、剥離範囲が狭く、切開も小規模なため、術後の腫れは比較的軽度で、回復も早いのが特徴です。通常、1週間程度で大部分の腫れが引き、2週間ほどで日常生活に復帰できます。軽度の浮腫は1ヶ月程度続く場合もありますが、目立たないことが多いです。

■ネックリフト・コメカミリフトなどの部分的なリフト

腫れの期間:12週間程度

概要:ネックリフトは、首周りの皮膚や筋肉を引き上げる手術です。コメカミリフトはコメカミのみを切開して、目尻引き上げる手術です。部分的な顔全体のフェイスリフトよりは腫れが少ないですが、剥離範囲が大きい場合、腫れが長引くことがあります。通常、12週間程度で腫れが引いてきますが、完全な回復には1ヶ月程度かかることもあります。

■フルフェイスリフト(SMAS法によるリフトなど)

腫れの期間:24週間程度

概要:SMASリフトやフルフェイスリフトは、顔全体の皮膚や筋膜(SMAS層)を広範囲に剥離し、リフトアップします。このため、術後の腫れは比較的強く、完全に引くまでに数週間を要します。通常、2週間程度で腫れが大幅に改善し、34週間でさらに目立たなくなりますが、完全に自然な外観に戻るまでには13ヶ月かかることもあります。

■リガメント法フェイスリフト

腫れの期間:38週間程度

概要:リガメント法は、顔のリガメント(靭帯)を切開して広範囲に剥離するため、腫れが非常に大きくなる傾向があります。術後23週間はかなりの腫れが見られますが、その後は徐々に改善します。腫れが完全に引くまでには8週間程度かかることがあり、術後数ヶ月は軽度の腫れが残ることもあります。

■リフト手術と併用する施術(脂肪吸引や脂肪注入)

腫れの期間:24週間程度(併用する施術によって変わる)

概要:フェイスリフトに脂肪吸引や脂肪注入などを併用する場合、その範囲や量によって腫れが強くなり、回復期間も延びることがあります。これらの施術は局所的に腫れを引き起こすため、場合によっては通常のリフト手術よりも腫れが長引くことがあります。

■まとめ

術式ごとに腫れが引くまでの期間は以下の通りです。

術式

腫れの期間

ミニリフト

12週間

ネックリフトなどの部分的なリフト

12週間

フルフェイスリフト

24週間

リガメント法フェイスリフト

38週間

脂肪吸引や脂肪注入との併用

24週間

■注意点

腫れが完全に引くまでの期間は個人差があり、体質や年齢、健康状態によっても異なります。

また、腫れが引いた後も、皮膚の緊張感や引きつり感が続くことがあり、これが完全に自然な状態に戻るには数ヶ月かかることが多いです。

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切開フェイスリフト術後の腫れの経過

切開フェイスリフト術後に最も腫れが顕著になるのは、手術後23日目です。この時期は、手術による炎症反応がピークに達し、体が損傷した組織を修復するために炎症性物質が大量に放出されるため、腫れが最も強くなります。また、手術中に使用された麻酔薬や薬剤の効果が切れてくることで、腫れが目立ちやすくなります。

以下に、腫れの経過についての一般的なタイムラインを示します。

1.術後0〜1日目

腫れの程度:軽度〜中等度

説明:手術直後は麻酔薬や冷却処置の影響で、腫れは比較的軽度です。ただし、術後数時間から腫れが徐々に現れ始めます。

2.術後2〜3日目

腫れの程度:ピーク

説明:炎症反応が最も強く、腫れが最大に達する時期です。この期間に最も顕著な浮腫が見られ、顔全体が腫れぼったくなることがあります。

3.術後4〜7日目

腫れの程度:軽減傾向

説明:炎症反応が徐々に収まり、腫れが少しずつ引き始めます。ただし、まだ目立つ腫れが残っていることが多く、特に朝起きた時に腫れが強く感じられることがあります。

4.術後1〜2週間目

腫れの程度:中等度〜軽度

説明:腫れが大幅に改善する時期であり、多くの患者が日常生活に戻り始めますが、まだ多少の腫れや浮腫が残っていることがあります。外から見ても目立つ腫れはだんだん減ってきます。

5.術後1〜3ヶ月目

腫れの程度:ほぼ解消

説明:腫れが完全に引くまでには13ヶ月かかることがあります。特に深層SMASリフトやリガメント法のような大規模な手術の場合、軽度の腫れや引きつり感がしばらく続くことがありますが、日常生活に支障をきたすほどではありません。

このように、術後23日目が最も腫れやすい時期であり、その後は徐々に改善していきます。術後のケアや医師の指導に従うことで、腫れの程度や持続期間を軽減することが可能です。

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切開フェイスリフト手術における腫れの個人差を決定する因子

切開フェイスリフト術後の腫れには個人差がありますが、その個人差を決定する主な因子には以下のようなものがあります。それぞれが腫れの強さや持続期間に影響を与えます。

1.年齢

影響:一般的に、年齢が高くなると、皮膚や血管の弾力性が低下し、リンパの流れが悪くなるため、術後の腫れが強くなり、回復も遅くなる傾向があります。また、年齢を重ねると、代謝が低下し、組織の修復力が減少するため、腫れが長引くことがあります。

2.体質(浮腫みやすい体質)

影響:浮腫みやすい体質や血液循環が悪い人は、術後に腫れが強く出やすいです。リンパの流れが滞りやすい人や水分が体内に溜まりやすい傾向がある人は、腫れが長引くことが多いです。

3.健康状態

影響:全体的な健康状態は腫れの程度や回復速度に大きく影響します。例えば、心疾患や高血圧、糖尿病などの持病がある場合、血液循環やリンパの流れが悪くなり、術後の腫れが長引くことがあります。また、免疫力が低下していると、炎症反応が強く出やすく、腫れが増すことがあります。

4.喫煙と飲酒

影響:喫煙や過度の飲酒は、血流を悪化させ、組織の修復能力を低下させます。喫煙者は血管が収縮しやすく、酸素供給が不足するため、腫れが引きにくくなります。また、アルコールの摂取は血管拡張を引き起こし、腫れが強く出ることがあります。術前から禁煙や飲酒制限を行うことが推奨されます。

5.食生活と栄養状態

影響:術前から栄養バランスの良い食生活を送っている人は、組織の修復が早く、腫れが早期に改善する傾向があります。特にビタミンCやプロテイン、亜鉛など、傷の治癒を促進する栄養素を十分に摂取していることが重要です。逆に、不十分な栄養状態は、腫れが長引く原因となります。

6.水分摂取量

影響:水分の摂取量も腫れに影響を与えます。適度な水分摂取はリンパの流れを助け、腫れを早く引かせます。一方で、過度な水分摂取や、逆に水分不足があると、体内の水分バランスが崩れ、腫れが引きにくくなることがあります。

7.薬剤の使用

影響:一部の薬剤(抗凝固剤や血圧降下剤など)を服用している場合、出血や腫れが増加する可能性があります。特に、アスピリンなどの抗凝固薬は、術後の腫れや血腫のリスクを高めます。

腫れは最小限・効果が最大限の手術方法

筆者が自信を持って推奨する「元神式フェイスリフト」は、スプリングスレッドを併用したフルフェイスリフトの手法では、腫れが最小限でありながら効果が最大限に発揮される優れた術式です。この方法では、腫れが術後2週間程度で大幅に軽減し、効果はリガメント法と同等、あるいはそれ以上とも言われています。元神式フェイスリフトの特徴は、従来のSMAS法フェイスリフト手術では難しかったMalar Fat Pad(頬の脂肪組織)の引き上げを実現し、ほうれい線や頬のたるみを劇的に改善できる点にあります。

特にスプリングスレッドの併用により、リガメント法に匹敵するリフト効果を、短期間の腫れで実感できる点が魅力です。術後の腫れは2週間程度でほぼ解消し、術後の翌日からマスクをすれば職場復帰が可能なほどに自然な仕上がりになります。特に女性の場合、傷跡も髪で簡単に隠せるため、術後の外出やデスクワークにも支障をきたすことはほとんどありません。

さらに、術後2週間で抜糸を行う頃には軽度のむくみを除いて、腫れはほぼ完全に引き、マスクなしでも違和感なく過ごせる状態にまで回復します。1か月も経てば腫れは完全に消失し、リフトアップ効果が最大限に現れます。ダウンタイムが短く、効果が抜群なこの元神式フェイスリフトは、現代の忙しいライフスタイルを持つ方々にとって理想的な切開フェイスリフト手術方法です。

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まとめ

切開フェイスリフト手術後の腫れの程度は、選択する術式と医師の技量によって大きく異なります。具体的には、剥離範囲、切開の長さ、手術の深さ、そしてリフトの種類といった術式による要因や、手術時間、出血量、組織の取り扱い方、術後ケア、麻酔薬の選択など、医師の技術が影響します。患者ができる最も重要なことは、豊富な経験と高い技術を持つ医師を選ぶことで、術後の腫れを最小限に抑え、より早い回復を期待することが可能です。

筆者が特に推奨するスプリングスレッド併用のフルフェイスリフト(元神式フェイスリフト)は、腫れやダウンタイムが非常に短く、リガメント法と同等の優れた引き上げ効果を得られる画期的な方法です。術後の負担を軽減しながら、最大限のリフトアップ効果を実感できるため、多忙な現代人にとって理想的なフェイスリフト手術法と言えるでしょう。

この記事が、切開フェイスリフト手術を検討している方々にとって有益な情報となり、手術に対する不安を和らげる一助となれば幸いです。今後も、美容医療に関する正確で役立つ情報を提供してまいりますので、ご参考にしてください。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがあり、アンチエイジング治療、リフトアップ治療を得意としている。日本美容外科学会で「スプリングスレッドを併用したフェイスリフト手術」で学会発表し、好評を得た。また、形成外科学会での勉強会においても講演をおこなっている

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