投稿日:2024/01/22
(最終更新日:2024/01/21)

美容外科治療と健康保険制度における適用範囲について

美容外科の保険適用について

「美容治療は健康保険でカバーできるのか?」という疑問は、多くの方が抱えているものです。筆者の答えは明確に「できません」となります。実際、かつてはホクロ除去のような一部の処置が保険適用されていたこともありますが、現在では状況が異なります。本記事では、日本における美容外科治療と健康保険の適用に関する現行のガイドラインと、その背景にある理由について詳しく解説します。

「もしホクロ除去が保険適用だったら」という問いの真実

想像してみてください。もし、ホクロ除去が健康保険の適用範囲内だったらどうなるでしょうか。日本の健康保険の主要な財源は、私たちの支払う税金と保険料です。この保険料は、毎月私たちが自己負担する金額を積み立て、それが医療費の一部をカバーしています。通常、医療費の自己負担は3割、残りの7割は税金と保険料で賄われます。さて、あなたが美容目的で1万円のホクロ除去を望んだとしましょう。保険適用を受けた場合、その7割、すなわち7000円は税金と保険料から支払われることになります。このうち3500円は税金、残りの3500円はあなたが加入している保険組合からの支払いです。しかし、ここで一つ重要なポイントがあります。その保険組合は、会社などで設立され、組合員の自己負担によって成り立っています。つまり、あなたのホクロ除去には、あなたの同僚のお金が間接的に使用されることになるのです。この事実を考えると、美容目的のホクロ除去に、税金や同僚のお金を使用することが、直感的にも道徳的にも疑問を呈するのではないでしょうか?私たちの共有する貴重な資源(財源)を、本来の目的である病気の治療や健康維持に貢献しない美容手術に使用することは、倫理的にも、経済的にも問題があると言えます。

「昔は健康保険が使えたのに」という誤解

多くの患者様から、「昔はホクロ除去や二重瞼手術が健康保険でできた」という話を耳にします。確かに、過去には一部の医療機関で、ホクロ除去を「悪性腫瘍の疑いあり」と診断したり、二重瞼手術を「逆さまつ毛の治療」として保険請求することがありました。これにより、医療機関は収益を上げ、患者様は通常よりも安価に美容手術を受けることが可能でした。一見、医療機関と患者にとって双方にメリットがあるように見えたこの状況ですが、実は深刻な倫理的問題が潜んでいました。こうした行為は、実際には国民のお金である保険料を不正に利用することに他なりません。税金を含むこれらの資金は、真に必要な医療に充てられるべきものです。医療機関が私利私欲のために不正な請求を行い、患者がその恩恵を受けることは、国民全体を欺く行為と言えます。このような事態を受けて、政府は保険請求の監視を強化しました。現在、各都道府県の保険審査事務所は保険請求を厳格にチェックし、不正が疑われる請求には保険金が支払われなくなりました。また、詐欺行為として取り扱われ、医療機関が保険医療の停止などの重い処罰を受けるケースも増えています。毎年、不正な保険請求が原因で医業停止に追い込まれる医療機関の報告がなされています。このように、現在の厳格な保険審査体制のもとでは、美容手術の健康保険適用は許されておらず、保健診療を行っている医療機関では医療倫理の遵守が求められています。

「健康保険でやってあげますよ」の誤った誘い

美容外科治療と保険医療の区別は、患者様にとってしばしば曖昧なものです。特に、保険診療と美容治療の両方を行っている医療機関では、患者様が混乱することも少なくありません。そうした中で、一部の医師から「そのホクロ、保険で治療しましょう」という甘い誘いがなされることがあります。これは、端的に言えば「国民の税金を利用して、お互いに利益を得ましょう」と提案しているに等しいのです。このような提案は、医療倫理に反するだけでなく、法律に抵触する可能性もあります。患者様としては、この種の誘いには断固として拒否し、さらには適切な行政機関への通報を検討するべきです。国民一人ひとりが、保険医療の正しい利用と不正行為への警戒心を持つことが重要です。医師と患者の関係は信頼に基づくものであり、その信頼を損なうような行為は、医療界全体の名誉を汚すものです。我々国民は、保険医療に関する正しい知識を持ち、健全な民度を保つことが求められています。このような誤った誘いに応じることなく、正しい医療を受ける権利と義務について、常に自覚を持つべきです。

豊胸手術後のバッグ除去に健康保険を利用できないか?

多くの方が疑問に思うのが、美容外科で行った豊胸手術、特に豊胸バッグ挿入後に生じる痛みや合併症のために豊胸バッグ除去の必要性が生じた場合においての健康保険の適用範囲です。たとえば、豊胸バッグ術後数年後、あるいは十数年後にバッグが破裂したり、カプセル拘縮により痛みが生じた場合、これらの症状に対して行う豊胸バッグ除去手術は健康保険でカバーされるのでしょうか?この点について、患者様が「バッグの破裂や痛みがあるので健康保険が使えるのでは?」と思うのは自然なことです。しかし、実際には、美容外科治療に起因する合併症の治療も、美容外科手術の延長として扱われ、健康保険の適用外となります。現在の健康保険制度では、治療に関するルールが厳密に定められており、美容目的の手術やその後に生じる合併症に関する治療は、保険適用の対象外とされています。これは、保険資源の適切な利用と公平性を保つための重要な原則です。したがって、美容手術後に生じる合併症には、自己負担での治療が必要となるのが現状です。このように、美容手術と健康保険の関係は、しばしば誤解されることがありますが、保険適用の基準は明確です。美容外科手術に伴うリスクとその後の治療には、患者様自身の理解と準備が不可欠と言えるでしょう。

除去された古い豊胸バッグ

除去された古い豊胸バッグ

美容外科治療に対する健康保険制度とその原則

日本の健康保険制度は、国民が医療費によって過度な経済的負担を背負わないように設計された、極めて重要な公共的なシステムです。この制度の根幹を成すのは、国民と企業から徴収される税金と加入者自身が支払う保険料です。具体的には、医療費の3割は患者が自己負担し、残りの7割はこの財源から賄われるという仕組みになっています。ここで、美容外科治療が健康保険適用外とされる根本的な理由に焦点を当てます。

■健康保険の適用基準:医療的必要性

健康保険の適用は「医療的必要性」に基づいています。これは、患者の生命や健康に直結する治療に対して適用されるもので、美容外科手術はこの基準には該当しません。例えば、火傷による重大な損傷の修復や疾患による変形の矯正など、医療的に必要な再建手術は保険の適用を受けます。

■美容外科治療の位置づけ

美容外科治療は、一般的に健康の維持や回復ではなく、見た目の改善や美的要望を満たす目的で行われます。例えば、しわの除去、豊胸手術、脂肪吸引などの美容手術は、健康を害するものではないため、健康保険の対象外とされています。具体的な例として、前述した1万円で行われるホクロ除去の場合、この手術は純粋に美容目的であり、健康保険制度の下では、その費用の70%を税金や保険料から賄うことはできません。

■健康保険の資源配分と公平性

健康保険制度のもう一つの重要な側面は、資源の公平な配分です。制度の財源は、全国民の健康を守るために使われるべきであり、美容目的の処置にこれらの資源を使用することは、他の必要としている人々から医療機会を奪うことになります。これは、特に緊急性や医療的必要性の高い治療に資源を集中させるべき健康保険の目的に反する行為です。

■美容外科と自己負担の関係

結局のところ、美容外科治療は個人の主観的な価値観や希望に基づいており、医療的には必須ではないと見なされます。したがって、ホクロ除去のような美容手術は自費診療の範疇に入り、完全に個人の自己負担に委ねられるのです。これは、健康保険の本質と基本的な考え方に根ざしたものであり、美容外科治療が健康保険の適用外とされる明確な理由となっています。

まとめ

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日本の健康保険制度は、その核心である「医療的必要性」という原則に基づいて運用されています。この制度は、病気や怪我の治療など、実際に健康を守るために必要な医療行為に焦点を置いており、限られた医療資源を最もそれを必要とする人々へ効率良く配分することを目的としています。美容目的の治療は、この健康保険制度の枠組み内で考えると、保険適用外とされるのは合理的な決定です。このような治療は、主に見た目の改善を目的としており、生命や健康の維持・回復という基本的な医療サービスの範囲を超えています。このため、美容外科治療を希望する人々には、これらのサービスを自己負担で利用することが求められます。医療資源の公平な配分を確保するためには、このような自己負担の原則が不可欠です。この記事が読者の方々にとって美容医療と保険制度の関係をより深く理解するための一助となれば幸いです。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。

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