元神院長執筆 専門医と学ぶ美容医療ブログ

美容医療と学歴ロンダリング:本当に信頼できる医師の見分け方

更新日:2025/10/11

公開日:2025/04/02

元神賢太

近年、美容外科業界は急速な拡大を遂げており、その背景には「直美(ちょくび)」と呼ばれる分野に医師が流入する現象が大きく関わっています。一般診療科での医師不足が深刻化する一方、美容医療は高収入や自由な働き方への憧れから、初期研修後直接美容外科に就職する(直美)するケースや他科からの転向が相次ぎ、美容外科・美容皮膚科の医師数は増加の一途をたどっています。その結果、既存の美容外科クリニック間では患者獲得競争が過熱し、医師たちはSNSYouTube、テレビ出演など、あらゆるメディアを通じて知名度を上げようと必死になっています。

中には過激な発言や行動で話題を集める「炎上商法」に走る医師もおり、注目を集める手段が過激化する傾向も見られます。そんな中、時折見かけるようになってきたのが「学歴ロンダリング」や「経歴ロンダリング」と呼ばれる行為です。つまり、自身の出身大学や職歴を意図的にぼかしたり、誇張したりすることで、実際以上の華やかなキャリアを印象付けようとするケースです。

本記事では、美容外科業界におけるこうした学歴・経歴ロンダリングの実態や、それがもたらす問題点について掘り下げて解説していきます。

学歴ロンダリングとは何か?──学歴詐称との違いを考える

「学歴ロンダリング」とは、表面的には正当な経歴でありながら、実態とは異なる印象を与えることで、自身の学歴をアップグレードして見せようとする行為を指します。具体的には、偏差値がさほど高くない大学を卒業した後に、東京大学や慶應義塾大学など、いわゆる超一流大学の大学院に進学し、「自分は慶應出身」「東大の人間」といった印象を前面に押し出すケースなどが典型的です。
大学院に正規で入学・修了しているため、履歴書上は事実に基づいたものであり、いわゆる「学歴詐称」には該当しません。しかし、出身大学を意図的に言及しなかったり、プロフィール上で上位の学歴のみを強調したりすることで、受け手に最初から高学歴だったという誤認を与える点が問題視されます。

このような行為は、特に学歴やブランドイメージが重視されがちな業界──例えば医療、美容外科、法律、教育など──において、周囲からの信用や影響力を高める手段として用いられることがあり、その動機には経済的・社会的な思惑も含まれます。

学歴詐称との違い

一方で、「学歴詐称」は明確な虚偽行為です。実際には通っていない大学を名乗ったり、取得していない学位を有していると偽ったりすることを指し、法的に問題となる可能性もあります。例えば一時期、ワイドショーなどでも話題となったショーンK氏のケースが記憶に新しいでしょう。彼は実際には取得していない海外のMBAや博士号を名乗り、経営コンサルタントとしてメディアで活躍していましたが、経歴詐称が発覚し、活動停止に追い込まれました。

このように、「ロンダリング」と「詐称」は一見似ているようで、その本質的な違いは「事実に基づいているかどうか」という一点に集約されます。しかしながら、たとえ事実であっても、それが意図的に誤解を誘うかたちで提示されているのであれば、倫理的な問題をはらんでいると言えるでしょう。

日本の大学院は「入るのが簡単」という不都合な真実

本テーマにあまり馴染みのない読者の中には、「たとえ二流大学を卒業していても、その後に東京大学や慶應義塾大学の大学院へ進学できたなら、立派な経歴なのでは?」と感じる方もいるかもしれません。確かに一見すると、そうした逆転は評価に値するように思えます。

しかし、ここで重要なのは「日本の大学院入試の実態」を理解することです。米国のハーバード大学をはじめとする世界的な名門校の大学院、たとえばMBAプログラムなどでは、入学に際して非常に高い学力や競争力が求められます。そのため、そうした学校を修了した経歴は確かに世界的に見ても価値あるものです。

ところが、日本における超一流大学の大学院の場合、その入学基準は驚くほど低いケースが少なくありません。現実としては、大学を卒業しており、かつ大学院の授業料を自己負担できるのであれば、ほとんど審査なく受け入れられるプログラムも存在するのです。つまり、学力というフィルターが実質的に機能していない例があるということです。

このような背景があるため、学部時代の学歴を意図的に伏せ、大学院だけの肩書を強調する「学歴ロンダリング」や「院ロンダ(大学院ロンダリング)」が、特に医療・美容業界において一種のブランド演出として通用してしまっているのです。

「医師=高学歴」という誤解──なぜ学歴ロンダが必要になるのか

医師と聞くと、誰もが「高学歴で優秀な人」というイメージを持つことでしょう。確かに、現代においては多くの医学部が偏差値60を超えており、たとえ地方の私立医大であっても、一般的な意味で「高学歴」と見なされるのは事実です。

しかしながら、今の40代後半以上の医師たちが医学部に進学した1990年代以前の時代背景を振り返ると、状況はまったく異なっていました。筆者自身もその時代の受験戦争を経験しましたが、当時は偏差値40台という、現在の基準でいえば「非・高学歴」とされるような医学部が、いくつも存在していたのです。

つまり、「医師=高学歴」という等式は、すべての世代に当てはまるわけではないのです。過去には、決して学力的に上位とはいえない成績でも、医師国家試験に合格し、医師としてのキャリアを積むことが可能だった時代が存在しました。

では、そうした「本来の出身大学」に学歴的な自信を持てない医師たちは、どのように経歴を「補強」しているのでしょうか。そのひとつの方法が、「超一流大学の大学院への進学」という、いわゆる「学歴ロンダリング」です。

たとえ学部は偏差値が高くない大学であっても、東京大学や京都大学、慶應義塾大学といったネームバリューのある大学院を修了すれば、「最終学歴」としての肩書きが一気に格上げされます。実際、医師プロフィールやクリニックの紹介文では、大学院の学歴だけを強調し、出身学部については一切触れないケースも少なくありません。

こうして生まれるのが、「高学歴医師」という印象操作です。見た目上は華々しく見える経歴の背後に、ロンダリングというカラクリが潜んでいる可能性があるのです。

医学部ランキング1987

↑1987年の医学部歯学部偏差値ランキング(出典元詳細不明)

偏差値4050台の医学部──かつて「入りやすかった」医大の実名

1980年代から1990年代にかけて、大学受験界の指標として広く使われていた予備校各社の「大学難易度ランキング」を見れば、当時の医学部の偏差値水準が具体的に浮かび上がってきます。たとえば駿台予備学校は全体的に偏差値をやや厳しめに出す傾向がありますが、それでも40台〜50前後という評価を受けていた医学部は少なからず存在しました。

現在の医学部受験は偏差値60超が当たり前、70台も珍しくないほどの超難関になっていますが、数十年前は「学力的には平均前後」で入学できる医学部が確かに存在していたのです。

具体的な大学名を挙げると、以下のような学校が当時の「比較的入りやすい医学部」として知られていました。

  • 川崎医科大学
  • 金沢医科大学
  • 聖マリアンナ医科大学
  • 埼玉医科大学
  • 藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)
  • 帝京大学
  • 杏林大学
  • 東海大学
  • 愛知医科大学

もちろん、これらの大学も現在では教育内容や入試の難易度が大きく変化しています。しかし、当時においては「偏差値4050台で入れる医学部」として、多くの受験生にとって滑り止めあるいは最後の砦のようなポジションを担っていました。

この歴史的な事実は、「医師=高学歴」というイメージが、必ずしもすべての世代に当てはまるわけではないことを示す一つの根拠にもなります。

1990医学部ランキング

↑1990年の駿台予備校による私立医学部偏差値ランキング

出典元:私立医学部の過去の偏差値

 美容外科業界における学歴ロンダリング実態 

有名人であり、美容外科医の中では学歴ロンダリングをしている二名の医師を例にあげます。それは、東京美容外科の麻生泰医師と湘南美容クリニックの相川佳之医師です。両名は美容外科業界のリーダー的存在ですが、そのプロフィールには「慶應義塾大学医学部大学院卒業(医学博士)」や「ハーバード大学医学部PGA所属」といった一見輝かしい肩書きが並びます。これらは事実なのか、また一般にどのような誤解を与える可能性があるのか、批判的に検証していきます。

麻生泰医師の学歴 :藤田保健衛生大学から慶應医学部大学院へ

麻生泰経歴

↑東京美容外科のホームページより

 

麻生泰(あそう・とおる)医師は、現在東京美容外科の統括院長を務める美容外科医です。彼の学歴は公式プロフィールによれば以下の通りです:

  • 1999: 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 2018: 慶應義塾大学医学部大学院 博士課程修了。

藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)は決して知名度が低い医科大学ではありませんが、慶應義塾大学医学部と比べるとブランド力で劣ると見られがちです。そのためか、麻生医師は研修医時代に「学歴コンプレックス」で負い目を感じていたとも自身で語っています。そのコンプレックスを払拭するかのように、医師となって約20年後に慶應大学大学院で博士号を取得しました。

注目すべきは、麻生医師自身が「自分も学歴ロンダリング組」であることを公言している点です。20233月、麻生医師はSNS(当時Twitter)で「医師免許と慶應ブランドの両方があれば鬼に金棒ですよ。僕も学歴ロンダリング組。」と投稿しました。この発言は、自らの経歴戦略を率直に認めるものでありました。また麻生医師はその投稿で慶應大学発行の学位記(博士号証書)の写真を添付し、慶應の学歴を堂々とアピールしています。

こうした行動からも分かるように、麻生医師は自らの慶應大学ブランドを積極的に打ち出していると言えます。実際、東京美容外科の公式サイトでも彼の肩書きに「慶應義塾大学 医学部大学院 医学博士号取得」と明記され、プロフィールの冒頭で強調されています。一方で、藤田保健衛生大学卒業であることも学歴欄には記載されていますが、慶應博士号ほど前面には出ていません。このバランスが「学歴ロンダリング」と批判されるポイントです。すなわち、「最終学歴」である慶應博士号にスポットライトを当て、あたかも慶應出身の医師であるかのような印象を与えかねない点が学歴ロンダリングそのものなのです。

麻生泰の経歴

↑麻生泰のX(旧ツイッターより)

相川佳之医師の学歴・経歴 : 日本大学医学部と「ハーバード大学医学部PGA所属」の真相

相川医師の経歴ロンダリング

↑湘南美容クリニックのホームページより

 

湘南美容クリニック(SBC)の創業者であり、現在では美容外科業界を代表する人物のひとりとして広く知られる相川佳之(あいかわ・よしゆき)医師。その華々しい経営実績とともに、彼が掲げるプロフィール上の肩書きにも注目が集まっています。

相川医師の基本的な学歴とキャリアは以下の通りです:

  • 1997年:日本大学医学部医学科 卒業。卒業後、癌研究所附属病院(現・がん研有明病院)麻酔科に勤務
  • 1998年:品川美容外科クリニックに勤務し、美容外科医としてのキャリアを開始
  • 2000年:神奈川県藤沢市にて湘南美容外科クリニック(現・湘南美容クリニック)を開業

日本大学医学部は中堅私立大学に位置づけられ、相川医師が入学した当時の偏差値はおおよそ57前後と推測されます。卒業後は麻酔科に進んだものの、その勤務期間は1年未満と非常に短く、現在の業界用語で言えば「直美(ちょくび)=初期研修後直接美容外科へ就職した医師」に近い形態だったといえるでしょう。

こうした経歴、すなわち偏差値的に一流とは言い難い出身校と、一般診療をほとんど積まずに美容医療に転じた背景を、相川医師はブランド的に補強する必要性を感じたのかもしれません。その手段として取り入れられたのが、「2008年 ハーバード大学医学部PGA所属」という一行です。

この肩書きは、湘南美容クリニック関連のメディアやプレスリリース、SBCグループのIR資料、さらには学校法人SBC東京医療大学(旧・了德寺大学)の理事長就任報にも繰り返し掲載されています。この文言が放つインパクトは強く、多くの一般人は「ハーバード大学医学部に所属していた」「ハーバードで勤務・研究していた」といったイメージを持ちかねません。

しかし、実際には「PGA」とはPostGraduate Assembly(卒後教育集会)の略であり、ハーバード大学医学部麻酔科が主催する、年次ベースの研修・教育イベントを指すものと考えられます。つまりこれは、短期的な研修参加や学会的な集まりの一種であって、正式な学位取得や職員としての在籍を意味するものではありません。

「所属」という語の選び方にも問題があります。英語では “member” “participant” とされることが多いこの立場を、日本語で「所属」と表現すれば、誤解を招くことは避けられません。実際、ハーバード大学医学部に常勤した実績がないにもかかわらず、この表現によって海外名門校の医師という印象操作が行われている可能性は高いといえます。

つまり、「ハーバード大学医学部PGA所属」という文言は、経歴ロンダリングの一種として使われていると見なされても不思議ではありません。本人が実際に短期的な参加をした可能性は否定しませんが、それが経歴の核心のように掲げられることで、実態以上の価値や権威を誤認させる構図が生まれています。

このように、相川医師のケースでは、「直美に近い経歴」と「日本大学卒」という事実を覆い隠すために、「ハーバード」という世界的ブランドを前面に打ち出す戦略が取られていると考えられます。

→合わせて読みたい「直美(ちょくび)の問題点:日本の医療に与える影響とは?」

学歴ロンダ医師は信用できるのか?

学歴ロンダリングや経歴ロンダリングは、それ自体が法律に違反しているわけではありません。実際、最終学歴や留学歴を強調する手法は、ある意味で見せ方のひとつであり、誰でも行い得るブランディング戦略の範疇です。したがって、それを行ったからといって即座に非難の対象とするのは、少し短絡的かもしれません。

しかし問題は、その「見せ方」にどこまで誠実さが伴っているか、そしてその背後にある人間性に尽きると思います。ロンダリングという手法を選ぶ人の中には、しばしば“何かをごまかしたい”“実力以上に見せたい”という意識が潜んでいるケースが見受けられます。そしてこの「ごまかし癖」が、医師という職業においては特に深刻なリスクにつながり得るのです。

医療の現場においては、患者との信頼関係がすべての基盤です。にもかかわらず、経歴を「盛る」ことに抵抗がない人物が、果たして診療内容においても誠実である保証があるでしょうか? もちろん、すべてのロンダリング医師が不誠実だとは言いません。しかし、他人を騙す可能性がある人という前提で見ざるを得なくなるのもまた事実です。

特に自由診療の美容医療の世界では、学歴・経歴といった看板が大きな武器になるため、なおさら「虚飾の肩書き」で患者の信頼を得ようとする構図は危険です。もし経歴に不透明さがあれば、それは診療内容や医療方針においても何かを隠している可能性を疑われても仕方ありません。

結局のところ、学歴や経歴以上に大切なのは誠実さです。そして誠実さとは、自分の過去をどう語るか、自分をどう見せるかという部分に最も顕著に表れます。経歴を飾ることよりも、等身大の自分を真摯に語れる医師こそが、最も信頼に値する存在ではないでしょうか。

まとめ

私は慶應義塾大学医学部を卒業し、医師としてのキャリアを歩んできました。その立場からあえて申し上げたいのは、学歴や肩書きは医師としての価値を保証するものではないということです。むしろ、それらを過剰に強調したり、出身校を曖昧にしてブランドだけを前面に出すような姿勢には、慎重であるべきです。患者様が信頼すべきは、医師の学歴ではなく、日々の診療で示される誠実さと実力です。美容医療は自由診療であるがゆえに、医師の情報がそのまま信頼に直結します。だからこそ、私たち医師自身が、誠実であることにもっと自覚的でなければなりません。学歴は医師を選ぶうえで一つの基準になることは確かですが、医師が学歴で人を惑わせてはならないと、私は考えています。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。

【関連項目】

美容外科治療を受ける場合の問題と注意点

直美(ちょくび)の問題点:日本の医療に与える影響とは?

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