投稿日:2025/05/14
(最終更新日:2025/05/16)
豊胸バッグ除去は保険適用される?大学病院での対応や費用を徹底解説
こんにちは、青山セレスクリニック・船橋中央クリニック理事長の元神賢太です。今回は豊胸バッグ除去について、医師の専門的視点からわかりやすく解説していきます。豊胸手術で入れたシリコンバッグを取り出したいと考えている方の中には、「保険が使えるの?」「大学病院でも手術できる?」「費用はどのくらい?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。この記事では豊胸バッグ除去の保険適用の有無から、大学病院・総合病院での手術事情、さらには費用相場、そして手術件数の動向まで、最新情報を踏まえて徹底解説します。それでは順に見ていきましょう。
豊胸バッグ除去と健康保険適用の現状
まず最初に気になるのが「豊胸バッグの除去は健康保険が適用されるのか?」という点です。結論から言えば、美容目的で入れた豊胸バッグの除去手術は原則として公的医療保険の適用外(自費診療)となります。豊胸術は美容外科の自由診療で行われる手術ですので、その後発生したトラブルや合併症の治療も美容医療の延長とみなされ、健康保険ではカバーされないのが現在の制度上のルールです。例えば、バッグ挿入後に数年~十数年経って起きたバッグの破損やカプセル拘縮による痛みであっても、それを取り除くための手術費用は公的保険の対象にならないのです。これは公的医療保険が本来「病気や怪我の治療など医療的必要性」に限定されており、美容目的の手術やその副作用対応は税金や保険料を原資とする保険給付の範囲外と厳密に定められているためです。したがって、「美容整形でも痛みが出たなら保険が使えるのでは?」というのは残念ながら誤解なのです。
例外となるケースも少しだけあります。乳がんの治療後の乳房再建目的で挿入したインプラント(シリコンバッグ)に関しては、トラブルが起きて除去や入れ替えを行う場合には健康保険が適用されます。あくまで乳房再建は医療上の必要性がある治療だからです。しかし美容目的で自己負担で行った豊胸手術のバッグ除去は、公的保険の適用外となります。この点は公的な制度上も明確にされていますので、まず知っておきましょう。
「保険で対応可能」と謳うクリニックには要注意
中には「うちのクリニックでは保険適用で豊胸バッグ除去ができます」などとうたうケースがあるかもしれません。しかし、そのような宣伝には注意が必要です。かつて美容医療の分野では、ホクロ除去を「悪性の疑い」と偽って保険請求したり、二重整形を逆さまつ毛の治療と称して保険診療にするなどの不正請求が一部で行われた時代もありました。これは患者さんにとって安く美容手術を受けられるメリットがあるように見えましたが、実際には保険制度の不正利用であり、国民全体のお金を騙し取る行為です。現在では政府も監視を強化し、不自然な保険請求は支払われないばかりか、発覚すれば医療機関は厳しい処分を受けます。美容目的の豊胸バッグ除去を無理に保険適用にしようとするのは、このような不正請求に当たる可能性が高いのです。ですから、「保険でできますよ」と安易に勧めてくるクリニックがあれば十分に警戒してください。
→合わせて読みたい「美容外科治療と健康保険制度における適用範囲について」
大学病院・総合病院で豊胸バッグ除去は受けられる?
「美容外科クリニックではなく、大学病院や総合病院で豊胸バッグの除去はできるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。結論として、大学病院や大きな総合病院の形成外科でも豊胸バッグ除去手術自体は受け付けてもらえる場合があります。
ただし、大学病院だからといって健康保険が使用できるわけではありません。前述の通り、美容目的の手術は医療保険の適用外ですので、大学病院であっても豊胸バッグ除去は自費診療になります。日本医科大の美容後遺症外来でも「当外来は自費診療となります」と明記されています。初診料や検査料、手術費用などは病院毎に定められた自由診療の料金を支払う必要があります。大きな病院や大学病院の場合、入院設備が整っている一方で、過剰な事前な検査などで費用は民間の美容クリニック以上にかかること場合がほとんどです。
手術の方法や入院の有無についても気になるところです。大学病院や総合病院の形成外科では、通常全身麻酔で手術を行い、数日入院となります。これは、患者さんによって安心感が得られる一方で、局所麻酔で日帰り手術でのバッグ除去が一般的な美容クリニックと比較して、仕事の調整や家族の理解が必要になります。
また、大学病院や総合病院の美容外来、外来や手術日程が混み合っていることから、手術日はかなり先になる場合がほとんどです。また、病院によって方針は異なりますが、「まずは豊胸手術を受けたクリニックに相談を」と、せっかく大病院を受診したのに、門前払いのような案内をするところも多いのが現状です。
豊胸バッグ除去の手術方法
豊胸バッグ除去の手術内容は基本的にシンプルですが、状況に応じていくつかポイントがあります。手術自体は通常、乳房下縁(バストの折り込み線)に3~5cmほどの切開を入れてバッグを取り出します。元の手術で腋の下や乳輪から入れている場合は、傷跡を考慮して同じ場所から取り出すこともあります。美容クリニックでは手術時間は片胸あたり30分程度と比較的短時間で、麻酔は局所麻酔に加えて静脈麻酔(ウトウトと眠くなる麻酔)を併用するのが一般的です。大学病院で行われている全身麻酔を使用しなくとも、静脈麻酔で痛みや不安を取り除きながら行うことで、患者様の負担を軽減できます。私のクリニックでも原則この方法で日帰り手術が可能です。麻酔が醒めた後しばらく安静にしたら歩いて帰宅できますので、仕事などの日程調整もしやすいです。
カプセルの処置について
豊胸バッグの周囲には手術後に必ず被膜(カプセル)と呼ばれる膜組織が形成されています。バッグ除去手術には、このカプセルを除去するか残すかはケースバイケースです。通常はカプセルを取り除かずに残すのが一般的です。このカプセルを無理に剥がそうとすると出血や体へのダメージが大きくなる恐れがあるためです。一方で、手術にカプセルを残しても、バッグを抜けば、残ったカプセルは次第に体に吸収されていきます。
ただし、カプセルが極端に厚く石灰化するほど硬い(重度のカプセル拘縮)場合や、バッグが破れて中身のシリコンが漏れている場合には、カプセル(被膜)ごと取り除くほうが望ましいケースもあります。例えばバッグ破損でシリコンが漏出していると、残したカプセル内にシリコンゲルが残存して炎症を起こす可能性があるため、その際はカプセルも一緒に摘出します。
豊胸バッグ抜去の経験豊富な医師なら、手術前の診察において、バッグやカプセルの状態を推量することができ、適切な方法を提案します。いずれにせよ、大半の症例ではバッグ摘出のみで問題なく、カプセル除去まで行うケースは稀だと覚えておいてください。
→合わせて読みたい「豊胸バッグ除去時にカプセルも除去すべき?」
参照元:
Evaluating the Necessity of Capsulectomy in Cases of Textured Breast Implant Replacement
豊胸バッグ除去の費用
豊胸バッグ除去の費用相場は、クリニックや手術の難易度によって幅がありますが、一般的には約40万円程度が一つの目安です。しかし実際には、自費診療のため各クリニックや病院ごとに料金設定がかなり異なります。
費用に影響する要素としては、麻酔の種類(局所+静脈麻酔で済むか全身麻酔にするか)、手術の難易度(他院で入れたバッグで情報が少ない場合や強い癒着がある場合は難しくなり追加費用の可能性あり)、カプセル除去の有無などが挙げられます。
例えば、あるクリニックでは「癒着・硬縮・石灰化等がある場合は別途費用がかかる」旨を料金表に記載しています。また、全身麻酔を使用する場合は麻酔科医や設備の関係で麻酔代が数十万円加算されることもあります。逆に静脈麻酔で対応できればその分費用は抑えられます。
さらに、「他院でのバッグ挿入施術かどうか」で料金が変わるのも一般的です。これは他院施術だとバッグの種類や挿入位置などの情報が乏しく、除去手術のリスクが高まりやすいことが理由です。
いずれの場合も保険適用ではありませんから、事前に総額いくらぐらいになるのか、カウンセリング時によく確認しておくことが大切です。
豊胸バッグ除去手術件数の傾向と今後の動向
最後に、豊胸バッグ除去の手術件数の傾向についてお話しします。近年は海外でも「エクスプラント(インプラント抜去)」の動きが広がりつつあり、日本国内でもバッグ除去を希望する方が徐々に増えている印象があります。実際、私のクリニックにも「昔豊胸したシリコンバッグを取ってしまいたい」という相談が年々増えてきていますし、特に2000年前後に豊胸手術を受けた方が今になって摘出に踏み切るケースが急増しています。20年以上前に入れたバッグが劣化したり体に合わなくなってきたりして、不安を感じて除去を決意する方が多いのです。
背景にはいくつかの要因があります。まず、バッグの寿命と品質です。現在のシリコンインプラントは半永久的とも言われますが、一昔前までは品質が悪く、劣化で入れ替えが必要だったのが一般的です。また、昔のシリコンバッグや生理食塩水バッグでは、経年で形や触感が変わったり内容物が蒸発・漏出することもあります。そうした経年的な変化で見た目や触り心地に不自然さが出てきたり、カプセル拘縮が進んで硬くなったりした問題が数十年経過すると起きてきます。
患者様の中には「昔はハリのあるバストになって満足していたけど、今は硬く不自然になってしまったので取り出したい」という声も少なくありません。
また、安全性に関する情報の広まりもあります。近年、豊胸インプラントと関連するリスクとしてBIA-ALCL(インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)という極めて稀なリンパ腫の存在が知られるようになりました。2019年には日本でも初めて症例が確認され、対象となった特定メーカーのバッグが自主回収されるなど報道もありました。リスクはごく低いものの「シリコンバッグをずっと入れていて大丈夫だろうか」と不安に感じる方も出てきています。さらに、バッグによる慢性的な不調を訴えるいわゆる「ブレストインプラント病(BII)」への関心も高まり、一度バッグを外して様子を見たいという方も増えています(※BIIは医学的な確立診断ではないですが、自己判断で除去を希望されるケースもあります)。
統計データを見ても、美容医療全体に占める豊胸系手術の件数は毎年一定数あり、その中でバッグ抜去手術の割合が少しずつ増えてきています。私個人の実感としても、豊胸バッグ除去は増加傾向にあり、もはや珍しい手術ではなくなりつつあると言えるでしょう。
まとめ
豊胸バッグの除去は基本的に保険適用外の自費診療ですが、信頼できる医療機関で適切に行えば体への負担も小さく、安全に受けられる手術です。大学病院や専門クリニックなど選択肢はいくつかありますので、費用やアフターケア体制を比較検討しながら、自分に合った場所でご相談ください。当院でも豊胸バッグ除去のご相談を随時承っておりますので、迷われている方は遠慮なく私にご相談いただければと思います。あなたの決断が健康と安心につながるよう、心から願っています。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。【関連項目】
豊胸バッグ除去, 乳房インプラント病, 豊胸場バッグ除去 保険適用
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