元神院長執筆 専門医と学ぶ美容医療ブログ

豊胸バッグの除去すべきタイミングと理由

更新日:2025/12/24

公開日:2025/12/29

私は、美容外科専門医として20年以上の経験があり、特に豊胸手術や豊胸インプラント(シリコンバッグや生理食塩水バッグ)の抜去を数多く手がけてきました。

今回は「豊胸バッグの抜去すべきタイミングと理由」について、最新の知見も踏まえて分かりやすく解説いたします。

カプセル拘縮が著明な豊胸バッグ術後

豊胸インプラントは一生もつ?最新の寿命とメンテナンス事情

かつて豊胸用のシリコンバッグは「10年に一度は交換が必要」と言われた時代がありました。しかし現在使用されている高品質なインプラントでは、破損や合併症がなければ10年ごとの定期的な入れ替えは必ずしも必要ありません。メーカー各社の技術向上により、強い衝撃や経年劣化による破裂リスクは大幅に低減しています。

実際、多くの患者さんは10年以上問題なくインプラントを維持しており、中には20年以上良好な状態を保つ例もあります。とはいえ、これが「一生メンテナンスフリーでOK」という保証になるわけではありません。アメリカ形成外科学会(ASPS)によれば「豊胸インプラントは永久的なデバイス(医療機器)ではない」とされ、平均して10年以上の耐久性はあるものの年々破損のリスクは高まります。

概算では破損リスクは1年ごとに約1%ずつ増加し、例えばシリコンインプラントの場合は10年で約10%、15年で20%以上の破損率になるという報告もあります。要するに、インプラントが古くなるほど破裂や他の合併症のリスクが高まるということです。 基本的な大前提として、術後にバストの形状や柔らかさが自然な状態で保たれており、自覚症状も特にない場合、豊胸バッグを無理に抜去したり交換したりする必要はありません。

現在の高品質シリコンバッグは耐久性が飛躍的に向上しているため、明らかなトラブル(破損・被膜拘縮・変形など)がなければそのまま生涯使い続けることも可能と考えられています。実際、定期交換を推奨しない専門医も多く、私自身も「状態が良ければ生涯抜去の必要はない」というスタンスで経過観察するケースがほとんどです。しかし一方で、20年以上前に挿入された古い世代のバッグの中には、現在ほど品質が良くないものも存在しました。

当時はシリコンの構造やシェル(袋)の技術が未熟で、経年で劣化しやすかったり、内容物が漏れ出しやすい素材もあったのです。例えば2010年前後に問題となったPIP社製インプラントは工業用シリコンを用いた粗悪品で、防護用のシェルも不十分だったため極めて破損しやすく、1年以内に約10%が破裂したとの報告があります。このようなケースでは健康被害への懸念から全世界的に抜去・交換が推奨されました。

現在ではこのような欠陥インプラントは市場にありませんが、古い時代に入れたバッグほど破損やトラブルのリスクが高いことは念頭に置くべきでしょう。まとめると、最新の高品質インプラントであれば「一生もの」と言ってよい耐久性を持ち、定期的な抜去・交換は不要です。ただし経年的な劣化リスクはゼロではなく、特に古いバッグでは破損や合併症が起きやすい可能性があります。

では、具体的にどのような場合に豊胸バッグを抜去すべきなのか――次章で詳しく見ていきましょう。

参照元: baaps.org.uk

▶️ 豊胸バッグの入れかえについてはこちら

豊胸バッグを抜去すべきケースとは?

カプセル周囲に石灰化があり、すでにバッグが破損しているケース

冒頭で述べたように、調子の良いインプラントをむやみに外す必要はありません。しかし、次のような異常のサインがみられる場合には、抜去(または交換)を検討すべきです。

バストが硬くなった場合(不自然な硬さの出現)

触った感じが以前より明らかに硬く、弾力が失われている場合、被膜拘縮(カプセル拘縮)が生じている可能性が高いです。 被膜拘縮とは、インプラント周囲に体が作る瘢痕組織(被膜)が過剰に硬化・収縮し、インプラントを締め付けてしまう合併症です。軽度で症状がなければ経過観察もありますが、進行するとバストの変形や痛みを引き起こし、見た目にも不自然になります。

実際、カプセル拘縮が起こると乳房がカチカチに硬くなり、左右差や形のゆがみが生じることもあります。硬さや張り感、圧迫感を感じる場合は、必要に応じてバッグの抜去・入れ替えや被膜の除去を検討します。

バストが明らかに小さくなっている場合(ボリュームダウン)

以前と比べて片側のバストが極端に萎んだ、サイズが目に見えて小さくなった、といった場合はインプラントの破損(破裂)を疑います。特に生理食塩水バッグを使用している場合、破裂すると中身の食塩水が体内に漏れ出て短期間でバッグがしぼんでしまうため、見た目にもはっきり分かります。食塩水は体に吸収され無害ですが、バストはペタンと縮み左右差が出てしまうため、早急な抜去と再手術(入れ替え)で対処すべきでしょう。

一方、シリコンバッグの場合は内容物がジェル状であるため「静かな破裂(サイレントラプチャー)」と呼ばれ、破損しても中のシリコンが袋の中または被膜内に留まっていることが多く、見た目に大きな変化が出にくいことがあります。それでも徐々にサイズダウンしたり形がゆがむ、片側だけ不自然に硬くなってきた等の変化があれば要注意です。シリコンバッグの破損は、本人が気づかないまま長期間経過することもあるため、定期的なエコー検査やMRI検査で内部の状態をチェックすることが推奨されます。

いずれにせよ、明らかなバストの縮小・しぼみが見られた場合は早めに、バッグの抜去(および必要なら新しいバッグの挿入)を検討してください。

痛みや違和感がある場合(炎症・漏出の兆候)

原因不明のバストの痛みや、赤み・腫れといった炎症症状がある場合は特に必要です。手術直後ではなく長期間経ってから痛みが出てきた場合は、インプラントの破損による内容物の漏出や、それに伴う炎症・感染が起きている可能性があります。 シリコンバッグが破裂してシリコンジェルが被膜の外に漏れると、体は異物に反応して肉芽腫や炎症反応を起こします。

その結果、胸の腫れ、慢性的な痛み、熱感などが現れたり、触ってしこりや硬い塊を感じることもあります。さらに炎症が強い場合、被膜内に液体(時に古い出血を含む液体=旧血)が溜まって圧痛を生じさせることもあります。「最近バストに痛みが出てきた」「片方の胸だけ赤く腫れている」といった場合は速やかに診察を受けましょう。

感染が起きていればバッグを抜去する以外に治す方法はありませんし、放置すれば症状が悪化する恐れがあります。

抜去時にカプセル内に旧血が貯留していたケース

以上のように、「硬くなる・小さくなる・痛くなる」が豊胸バッグ劣化の三大サインと言えます。このほか形の明らかなゆがみや輪郭の変形(インプラントのシワや縁が触れる)などが生じた場合も、バッグの位置ズレや内容漏れを示唆するため要注意です。また非常に稀なケースですが、術後数年たって急に胸が腫れてきた場合は、バッグ周囲に液体が溜まる特殊なリンパ腫(BIA-ALCL)の可能性も報告されています。

この疾患は極めて稀で、多くの方に心配は不要ですが、「腫れ」「しこり」「急激な変形」といった異常が現れたら迷わず医療機関を受診することが大切です。

参照元: ncbi.nlm.nih.gov

シリコンバッグ除去の方法とカプセル(被膜)について

では、実際に豊胸インプラントを抜去するとなった場合、どのような手術方法になるのでしょうか? ポイントは、インプラントを包む被膜(カプセル)を取り除くか、残すかという点です。被膜とは、体がインプラントを異物とみなして周囲に形成する薄い膜(瘢痕組織)です。

多くの場合この被膜は柔らかく問題を起こしませんが、上述の被膜拘縮のように硬く厚くなることもあります。インプラント抜去手術では、状況に応じて以下のような方針をとります。

バッグのみ摘出(被膜は残す)

バッグが破損しておらず被膜拘縮も起きていない場合、シリコンバッグ本体だけを取り出し、被膜は体内に残したままにすることができます。この方法は手術の侵襲が比較的小さく、被膜を無理に剥がさない分出血や組織へのダメージが少ないのが利点です。被膜は残しておいても健康上大きな問題を起こすことはなく、時間とともに薄く縮小していくことが期待できます。

特にトラブルのないバッグの単純抜去であれば、被膜をあえて取らずに済ませるのが一般的です。私の経験でも、「(もう若くないから、)古くなったから、抜去したい」というケースではバッグのみを取り出し、被膜はそのまま温存しています。術後は残された被膜の中に少量の液体が溜まることがありますが、通常は徐々に吸収され、数ヶ月かけて被膜自体も萎縮していきます。

バッグと被膜の両方を摘出(カプセル除去/被膜切除)

インプラントが破損して内容物が漏れている場合や、被膜拘縮でカプセルが厚く硬くなっている場合、あるいは感染・炎症が疑われる場合には、被膜ごと摘出する手術(カプセル除去術)が検討されます。特にシリコンバッグが破裂している場合、被膜内や周囲にシリコンが残留します。シリコンは体内に留まると肉芽腫や炎症を引き起こす可能性があるため、可能な限り被膜を丸ごと取り出して中のシリコンや異物反応を除去することが推奨されます。

また重度の被膜拘縮では被膜自体が石灰化したり肥厚していることが多く、そのまま残すとしこりの原因になるため、被膜を摘出して乳房を柔らかい状態に戻す手術が有効です。実際、私もカプセル拘縮で痛みを伴うケースではバッグと一緒に被膜を取り除くことをご提案しています。カプセル除去術を行う際は、可能であれば被膜を全て一塊(いっかい)に摘出する「一塊摘出(en bloc)」が理想です。

バッグと破損したシリコン、そして被膜内にある内容物を一まとめに取り出すことで、漏れたシリコンや分泌物が体内に散らばるのを防げるからです。ただし、実際には患者さん個々の状態によって被膜を全て取り切ることが難しいケースもあります。特に大胸筋下(胸筋下)にインプラントが挿入されていた場合で被膜拘縮を起こしているようなケースでは、被膜の後面が肋骨や胸壁に強く癒着していることがあります。

無理にこれを胸壁から剥がそうとすると大出血を起こしたり、最悪の場合は胸膜を傷つけて気胸(肺の損傷)を引き起こす危険さえあるのです。私は術中所見で「被膜が胸壁に石灰化して張り付いている」と判断した場合は、無理に全摘出しない戦略を取ることがあります。具体的には、安全に取れる範囲の被膜は除去し、リスクの高い部分はあえて残す(部分的なカプセル除去)という判断です。

このように安全第一で柔軟に対応することで、患者さんへの負担とリスクを最小限に抑えつつ、必要な治療効果を得ることができます。カプセル除去を伴う手術は通常、全身麻酔下あるいはマスク麻酔下で行います。バッグのみの抜去であれば比較的短時間の手術ですが、カプセル除去を伴うケースでは慎重な操作が求められ、出血管理のために手術時間も数時間に及ぶこともあります。

そのようなケースでは術後にドレーン(排液管)を留置して内部に溜まる液を排出し、圧迫固定をした上で経過を観察します。

炎症がある例では、術後の上記のようにドレーンを留置する必要なケースがあります。

参照元: topdoctors.co.uk

▶️ 豊胸バッグの入れかえについてはこちら

まとめ

最新の豊胸インプラントは品質が向上し、適切にケアすれば半永久的に使える可能性があります。形や触感が良好で違和感がない限り、生涯そのまま使用し続けても問題ないでしょう。一方で、年月の経過とともに破損や被膜拘縮などのリスクは徐々に高まるため、定期的な自己検診やクリニックでのチェック(触診・エコー検査など)は欠かさないようにしてください。

 

特に片側だけ形が変わった、硬くなった、痛みが出たといった何らかの異常サインを感じたときが、「抜去すべきタイミング」と言えます。 その際は放置せず、ぜひ早めに専門医を受診してご相談ください。私自身、豊胸バッグの抜去や入れ替え手術を数多く行ってきた経験から申し上げると、適切なタイミングで対処すれば大事に至るケースはほとんどありません。

 

破損して漏れ出したシリコンも、きちんと摘出すれば大きな健康被害を残すものではありませんし、拘縮した被膜を取り除けば元の柔らかいバストに近づけることが可能です。

 

「もしかしておかしいかな?」と思う症状があれば一人で悩まず、まずは検査で状態を確認することをおすすめします。豊胸手術を受けた方が長期にわたり安心して美しくいられるよう、適切なサポートとアドバイスを提供するのが私たち専門医の務めです。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。
1999年慶応義塾大学医学部卒。
外科専門医(日本外科学会認定)。
美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。
美容外科医師会理事。
美容外科医として20年以上のキャリアがあり、アンチエイジング治療、リフトアップ治療を得意としている。
日本美容外科学会で「スプリングスレッドを併用したフェイスリフト手術」で学会発表し、好評を得た。
また、形成外科学会での勉強会においても講演をおこなっている
ウルセラについても日本国内に導入直後から取り入れており、日本美容外科学会でもウルセラの学会発表を行っている。

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