投稿日:2025/06/17
(最終更新日:2025/06/17)

肝斑(かんぱん)の治療:原因・対策から有効な治療法まで解説

肝斑(かんぱん)とは、主に30代以降の女性に見られるシミの一種です。左右対称に現れる薄茶色から灰色がかったシミで、頬や額、鼻の下、口周り、顎にかけて地図状に広がるのが特徴です。境界がはっきりせずもやっと広がるため、一見すると通常のシミ(老人性色素斑)やそばかすと区別が難しいこともあります。そのため「なかなか治らない厄介なシミ」と言われ、「他のクリニックで全然よくならないで、ここで肝斑を消したい」というご相談が私の元に多く寄せられます。

本記事では、専門医の立場から肝斑の原因や症状、日常生活での対策、有効な治療法についてやさしく解説します。さらに、治療効果を高める組み合わせ治療の例や、肝斑にはおすすめできない治療法とその理由についても触れます。肝斑にお悩みの方が最適な治療法を選べるよう、最新の知見やエビデンスも交えて説明します。それでは肝斑治療について順に見ていきましょう。

肝斑の原因と症状

肝斑ができる明確な原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。代表的な原因・悪化要因として次のようなものが挙げられます。

  • 女性ホルモンの影響: 妊娠やピルの服用、更年期などホルモンバランスの変化が肝斑発症に関与するとされています。実際、妊娠中に肝斑が現れる例もあります。
  • 紫外線: 日光に含まれる紫外線(UV)は、あらゆる色素沈着を悪化させる最大の要因です。肝斑も例外ではなく、紫外線を浴びると肝斑が濃くなることが知られています。紫外線による刺激でメラニン産生が亢進し、肝斑が悪化するのです。
  • 摩擦などの物理的刺激: 肌をこする刺激も肝斑を引き起こす重要な要因です。私は特に慢性的な刺激による色素沈着が肝斑の主因と考えています。毎日のメイクやクレンジングで肌をこすり過ぎることが肝斑の原因になりうるのです。実際、肝斑ができやすい部位はファンデーションを塗ったり落としたりする際によく触れる頬や目尻などで、皮下にすぐ骨があって衝撃が伝わりやすい部分と一致します。一度肝斑ができると、それを隠そうと厚塗りすることでさらに摩擦刺激を与えてしまい、悪循環に陥りがちです。
  • ストレスや体調の影響: 明確な因果関係は断定できませんが、睡眠不足や過度のストレス、喫煙・過度の飲酒など生活習慣の乱れも肌の代謝やホルモンバランスに影響し、肝斑の悪化要因になりえます。

以上のように、ホルモンや紫外線、摩擦刺激など様々な要因が重なりあって肝斑は発症・悪化すると考えられています。特に日常的な摩擦と紫外線は肝斑を濃くする二大要因です。次章では、肝斑をこれ以上悪化させないために日常生活でできる対策を詳しく見てみましょう。

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肝斑を悪化させないための日常対策

肝斑は一度できると完治まで時間がかかることも多いですが、日々のスキンケアや生活習慣に注意することで悪化を防ぎ、治療効果を高めることができます。美容皮膚科の現場でよくアドバイスするポイントを以下にまとめます。

紫外線対策を徹底する

肝斑に限らず全ての色素沈着の悪化要因は紫外線です。日焼け止め(SPF50+・PA++++程度がおすすめ)は季節を問わず毎日欠かさず塗るようにしましょう。特に春夏だけでなく、冬場でも紫外線は降り注いでいます。また、日焼け止めだけでなく帽子や日傘、サングラスなどで物理的に日光を遮る工夫も有効です。肝斑のある方は「ちょっとそこまで」の外出でも油断せず、徹底した紫外線ケアを心がけてください。紫外線対策は肝斑治療の基本中の基本です。

肌をこすらない

クレンジングや洗顔の際にゴシゴシ擦らないようにしましょう。摩擦は肝斑を悪化させる大敵であり、優しく扱うことが肝斑治療の鉄則です。具体的には、クレンジング時は強い力で擦らなくても落とせる低刺激のクレンジング剤を使う、洗顔時は石けんや洗顔料をしっかり泡立てて指が直接肌に触れないように洗う、といった方法がおすすめです。タオルで拭くときも押さえる程度にして、決してゴシゴシ拭かないよう注意しましょう。「擦らない」ことを意識するだけでも、肝斑の悪化を防ぐ効果は絶大です。

その他の生活習慣の見直し

紫外線と摩擦への対策に加えて、全身の健康管理も肝斑改善には重要です。例えば禁煙や節度ある飲酒、十分な睡眠、適度な休養でストレスを溜めないことなども心がけましょう。ホルモンバランスの乱れにつながる要因(例えば経口避妊薬の内服など)については主治医に相談し、必要に応じて対処します。これら生活習慣の改善は一見肝斑と無関係なようですが、肌のターンオーバー(新陳代謝)を正常化し治療効果を高める下地となります。不摂生を完璧になくすのは難しくとも、できる範囲で生活習慣を整えることでレーザー治療等の効果も高まり、再発予防にもつながります。

以上のように、肝斑治療は「レーザーなどの施術」+「生活習慣改善」の二本柱で臨むことが重要です。どちらが欠けても十分な効果は得られにくいため、治療中は医師の指導のもと日々のセルフケアにも取り組んでください。

肝斑に有効な治療法

肝斑は適切な治療を行えば必ず改善が期待できるシミです。現在、美容皮膚科で行われる肝斑に有効な治療法として主に以下のようなものがあります。

レーザートーニング

レーザートーニングは、肝斑治療の切り札ともいわれるレーザー治療法です。従来、肝斑は刺激を与えると悪化しやすいため強力なレーザー照射は禁忌とされてきました。しかしレーザートーニングでは1064nmのQスイッチNd:YAGレーザーを用い、ごく弱い出力で肌全体に均一に照射します。こうすることで余計な刺激を避けつつ、メラニン色素だけを選択的に徐々に破壊することが可能です。レーザーの光エネルギーはメラニンに吸収されると熱に変わり、色素を細かく破砕します。粉々になったメラニンはマクロファージという免疫細胞に貪食・排出されるため、時間をかけて肝斑が薄くなっていきます。

レーザートーニングは一度の施術で劇的にシミが消えるわけではありませんが、2週間おき程度に繰り返し施術を受けることで徐々に改善が実感できます。例えば当院でレーザートーニングを5回施術した患者様では、頬の肝斑が大幅に薄くなり、3回目ほどから「効果を実感し始めた」とおっしゃっています。肝斑は「治りにくいシミ」と言われますが、適切な治療を重ねれば数ヶ月でここまで改善することも可能です。

さらにレーザートーニングには肌全体のくすみ改善や毛穴引き締め効果も期待でき、お肌のトーンアップにもつながります。副次的にコラーゲン産生が促進され、肌質が向上するといったメリットも報告されています。痛みやダウンタイムもほとんどなく安全性が高いため、肝斑でお悩みの方にとって非常に有効かつ安心な治療選択と言えるでしょう。

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トラネキサム酸内服(飲み薬)

トラネキサム酸は、本来は止血剤(血を止める薬)として使用されてきた薬ですが、肝斑に劇的な効果を示すことが分かり近年広く用いられています。トラネキサム酸は肝斑に対して唯一効果がある飲み薬とも言われ、トラネキサム酸が含まれたトランシーノ®は日本では唯一肝斑治療目的での承認薬です。

肝斑におけるトラネキサム酸の作用メカニズムは、メラニン産生を間接的に抑制することです。肝斑では女性ホルモンや紫外線の影響でメラノサイト(色素細胞)が過剰に活性化し、メラニンが増えています。また慢性的な炎症も関与しています。トラネキサム酸は炎症を抑え、メラノサイト活性化のカスケードをブロックすることで、過剰なメラニン生成を抑制します。その結果、内服を続けると肝斑が徐々に薄くなっていきます。

当院でも肝斑と診断した患者様にはまずトラネキサム酸の内服をおすすめしています。目安として1日750~1000mgを数ヶ月程度服用いただくケースが多いです(症状により異なります)。副作用は比較的少ない薬ですが、まれに胃の不快感や生理不順が起こることがあります。また血栓症のリスクがある方には注意が必要ですので、必ず医師の指導のもと服用してください。「擦らないこと」とトラネキサム酸内服の両輪で治療を行えば、多くの肝斑は改善します。

ビタミンCイオン導入

ビタミンCのイオン導入も肝斑治療に有効な補助的施術です。イオン導入とは、弱い電流を流すことで水溶性の有効成分を肌の奥まで浸透させる施術です。ビタミンC(アスコルビン酸)は美白効果が高い成分ですが、通常の塗布では肌のバリアを通過しにくい難点があります。イオン導入を使うことでビタミンCを効果的に真皮まで届け、メラニン生成を抑制したり抗酸化作用で肌ダメージを修復・保護するといった効果を発揮させます。

ビタミンCイオン導入はレーザートーニング後のアフターケアとして併用するのがおすすめです。レーザー照射後の肌は一時的に有効成分が浸透しやすい状態のため、直後にビタミンCを導入することで治療効果の底上げが期待できます。実際、レーザー後にビタミン導入を組み合わせるとレーザー単独より肝斑の薄くなり方が良い傾向があります。施術自体は痛みもなくリラックスして受けていただけます。レーザーの刺激でほてった肌をクールダウンしながらビタミンを補給できるので、一石二鳥のケアと言えるでしょう。

その他の治療法について

上記の他にも、肝斑治療に用いられることのある手法として外用薬(ハイドロキノンやトレチノインなど)や光治療(IPL)ケミカルピーリングなどがあります。しかし私は、肝斑に対してこれらの治療は基本的におすすめしません。なぜなら、これらは肝斑には効果が乏しいか、場合によっては悪化させるリスクがあると考えているからです。次の章で、肝斑治療で推奨しない治療法とその理由を解説します。

肝斑治療で推奨しない治療法とその理由

肝斑の治療法をインターネットで調べると、実にさまざまな方法が出てきます。しかし、中には肝斑にはおすすめできない治療法も存在します。ここでは代表的なものを挙げ、その理由を説明します。

  • ハイドロキノン外用(美白クリーム): ハイドロキノンは強力な美白成分で、一部のシミ治療では定番ですが、肝斑への使用はおすすめできません。理由の一つは刺激が強いためです。ハイドロキノンは濃度や肌質によっては赤みやかぶれなど刺激性皮膚炎を起こしやすく、それ自体が炎症後色素沈着を招いて肝斑を悪化させる恐れがあります。また、ハイドロキノンは効果が出るまでに時間がかかり、効果が出ても使用をやめると再発(リバウンド)しやすいという難点もあります。長期間使用すると稀に白斑(肌がまだらに白く抜ける)や外因性組織褐変症(灰青色の色素沈着)を生じるリスクも報告されています。以上より、肝斑治療でハイドロキノンを安易に使うことは推奨できません。
  • IPL(光治療、フォトなど): IPLは広範囲のシミやくすみに効果的な光治療で、フォトなどの名称でエステ等でも人気ですが、肝斑には向きません。IPLの光エネルギーは波長が広いため、必要なメラニン以外にも熱が加わりやすく、肝斑には刺激が強すぎて逆に悪化させる可能性があるのです。実際、誤って肝斑にIPLを当ててしまい濃くなってしまった例もしばしば見受けられます。また、IPLは老人性色素斑やそばかすには有効ですが、肝斑とは原因も治療法も異なるため効果が出にくいことも指摘されています。こうした理由から、肝斑に対してIPLを用いることは避けた方が無難です。
  • ビタミンCの内服: ビタミンC(アスコルビン酸)のサプリメントや錠剤を飲むこと自体は体に良いことですが、肝斑治療の観点から言えば内服のみで劇的な効果を得ることは難しいです。ビタミンCには確かにメラニン生成を抑える作用がありますが、それは主に高濃度を患部に直接作用させた場合です。経口摂取の場合、摂取したビタミンCのごく一部しか皮膚まで届かず、肝斑を目に見えて薄くするだけの効果は期待しにくいのが現状です。実際、ビタミンC単独での肝斑改善効果を検証した研究では、有意差は測定機器上で認められても見た目にはほとんど差がなかったとの報告があります。総合的に見て、ビタミンCの内服は肝斑治療の「決め手」にはなりえないため、積極的には推奨していません。もちろん健康維持目的で適量を摂る分には問題ありませんが、過度な期待は禁物です。

以上、肝斑治療で避けた方が良い治療法について説明しました。ネット上の情報には玉石混交の部分もありますので、自己判断で誤った治療を行うと肝斑がかえって悪化する恐れがあります。肝斑の治療は専門的な判断が求められる分野ですので、必ず信頼できる医師にご相談ください。

参照元: A case of exogenous ochronosis in a Japanese patient: Capillaroscopic findings and literature review

複数の治療を組み合わせると効果的な理由

肝斑は一つの治療だけで完璧に治すのが難しい場合も多く、複数の治療を組み合わせることで相乗効果を発揮します。実際、当院で肝斑治療を行う際も「擦らない生活指導+トラネキサム酸内服+レーザートーニング+ビタミンCイオン導入」というように内服薬と外部施術を組み合わせることが多いです。この章では、治療を組み合わせるメリットを具体的に見てみましょう。

まず、レーザートーニングとトラネキサム酸内服の組み合わせについてです。レーザーでメラニンを破壊しつつ、トラネキサム酸で新たなメラニン生成を抑えることで、双方の効果が補完されます。レーザー単独でも肝斑は薄くなりますが、内服薬を併用することで再度メラニンが作られるのを防ぎ、治療効果のスピードアップと再発予防に繋がります。例えばレーザー治療でせっかく薄くした肝斑も、内服を併用しないと日常生活の刺激ですぐに戻ってしまうケースがあります。両輪で治療することが大切です。

次に、レーザー後のビタミンCイオン導入併用です。先述の通り、レーザートーニング直後は皮膚にビタミンが浸透しやすい状態になるため、ビタミンCを導入することで治療効果の底上げが期待できます。レーザーによる肝斑改善効果をより確実なものにし、肌全体の透明感アップや毛穴ケアなど美肌効果もプラスできます。患者様からも「レーザー後にビタミン導入をすると肌の調子が良い」「肝斑以外のくすみも取れてきた」という声を頂くことが多いです。

さらに、生活習慣の改善との組み合わせも見逃せません。いくら最新の治療を行っても、日常で紫外線を浴び放題・肌をゴシゴシ擦り放題では元の木阿弥です。「治療」と「セルフケア」は車の両輪であり、両者を組み合わせてこそ最大の効果が得られます。事実、レーザー治療と並行して日々のスキンケア・紫外線対策を頑張った方の多くは、治療効果を実感されています。

以上のように、肝斑治療は複合的なアプローチが有効です。一人ひとりの肝斑の状態(濃さや範囲、他のシミとの混在状況、肌質など)に合わせて、適切な治療の組み合わせを専門医が提案いたします。当院でも経験豊富な医師が診察し、患者様にとってベストな治療プランをオーダーメイドでご提案しております。

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まとめ

肝斑は確かに簡単には消えない厄介なシミですが、適切な診断と根気強い治療の継続により改善できます。重要なのは、肝斑か他のシミかを見極めてベストな治療法を選ぶ医師の判断と、患者様ご自身の日々のケアの両方です。レーザートーニングは肝斑治療の中核となる有力な選択肢であり、これにトラネキサム酸内服やビタミンCイオン導入を組み合わせることでさらなる効果を引き出すことが可能です。逆に、誤った治療(強いレーザーや不適切な外用など)は肝斑を悪化させる恐れがあるため避けなければなりません。

 

肝斑治療は数ヶ月以上のスパンで経過を見ていく必要があり、途中でめげずに続けることが大切です。私はこれまで多くの肝斑患者様を治療してきましたが、適切な治療を根気よく続ければ必ず肝斑は改善します。一人で悩まず、ぜひ経験豊富な医師にご相談ください。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。
1999年慶応義塾大学医学部卒。
外科専門医(日本外科学会認定)。
美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。
美容外科医師会理事。
美容外科医として20年以上のキャリアがあり、美容外科医でありながら、肌治療にも精通している。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。シミ治療、にきび、ニキビ跡治療に定評がある。

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