
Yahooニュース『わきが治療で汗と臭いの悩みを解消!』を専門医が斬る
更新日:2025/08/25
公開日:2025/08/27
はじめに

先日公開されたYahooニュースの記事「わきが治療で汗と臭いの悩みを解消!」を拝見しました。この記事は男性に多いワキの汗や臭い(いわゆる「わきが」や多汗症)の悩みについて、治療法や選び方を解説する内容でした。
しかし、わきが・多汗症治療を20年以上専門としてきた私(美容外科専門医・元神賢太)から見ると、この記事には重大な誤情報が含まれており看過できません。特に「ミラドライは中等度までのわきがや多汗症であれば、再発のリスクも低く抑えられます」とする記載は全くの誤りです。
今回は専門医の立場から、この記事の問題点を鋭く指摘し、正しい治療選択について解説します。
参照元: わきが治療で汗と臭いの悩みを解消!【男性のコンプレックスを解消しよう】
ミラドライではワキガは治せない — その効果と限界

Yahoo記事では「切らないわきが治療」としてミラドライという機器による治療が紹介されています。ミラドライは皮膚にマイクロ波を照射し、汗の原因となる汗腺を熱で破壊する施術です。確かにミラドライは脇汗(エクリン汗腺)の量を減らす多汗症治療としては一定の効果があります。
しかし、肝心の「わきがの臭い」(アポクリン汗腺由来)に対してはほとんど効果がありません。これはミラドライの原理的な限界によるものです。ミラドライのマイクロ波は固定の深さまでしか届かず、皮膚浅層のエクリン汗腺は破壊できても、より深い皮下組織にあるアポクリン汗腺にはエネルギーが届かないのです。
その結果、ワキガの原因であるアポクリン汗腺は残ったままで、臭いはほとんど改善しません。実際、厚生労働省の審議会においても「臨床試験の結果、ミラドライは臭いの低減効果を示さなかった」と公式に報告されています。このため日本ではミラドライは重度の原発性腋窩多汗症(ひどい脇汗)の治療器具としてのみ承認されており、わきが治療への適応外*と結論付けられました。
つまり国も専門機関も「ミラドライは臭いには効かない」と判断しているのです。Yahoo記事のように「中等度のわきがなら再発リスクも低い」などと謳うのは事実に反していますし、読者に誤った期待を抱かせてしまいます。私自身、日々の診療で「ミラドライを受けたが臭いが全く治らなかった」という相談を数多く受けています。
せっかく高額な治療を受けたのに効果がなく、患者さんが落胆したり、遠回りを強いられるケースが後を絶ちません。わきがの臭いに悩む患者さんにとって、時間も費用も無駄にしてしまうミラドライの過大広告は大きな問題です。繰り返しますが、ミラドライでワキガ臭を根本的に解決することはできません。
▶️ 合わせて読みたい記事: 【ミラドライがワキガに効果がない理由】広告に騙されないように
「専門家」のプロフィールに見る疑問点

この記事では専門家の解説として、宮部崇医師(男性美容クリニック院長)が登場しています。しかし、その経歴を読んで驚きました。宮部医師は麻酔科出身で、その後はAGA(男性型脱毛症)や発毛治療を専門に経験を積んできた方と紹介されています。
実際プロフィールにも「最先端の薄毛治療から再生医療まで興味を向け、男性専門の発毛治療の普及に尽力」と記載があり、薄毛治療・発毛分野が主な専門であることがわかります。一方で「わきが・多汗症治療に従事してきた」とはどこにも書かれていません。もちろん麻酔科医としての経験や他分野の知識がある医師でも、わきが治療について語る資格が全く無いとは言いません。
しかし、専門外の分野では最新の知見や経験が不足している可能性が高い。実際、ミラドライの効果に関する誤った記述があったことからも、本当にわきが治療を専門とする医師であれば避ける基本的なミスを犯しているように感じられます。なぜこの分野を専門としていない医師がYahooニュースの記事で「専門家」として解説しているのか、大いに疑問です。読者からすれば「お医者さんの言うことだから正しいだろう」と思ってしまいがちですが、専門分野の異なる医師の発言には注意が必要です。
メディアが果たすべき責任

今回のYahooニュース記事を掲載したメディア側にも、大きな問題があると言わざるを得ません。Yahooニュースは多くの人が目にするプラットフォームであり、そこで流布される情報の影響力は絶大です。にもかかわらず、わきが・多汗症の専門ではない医師の不正確な解説をそのまま載せてしまったことは、メディアとして非常に無責任ではないでしょうか。
結果として読者は誤解し、無駄な治療に走ったり、本来得られるはずの適切な治療機会を逃したりする恐れがあります。特に今回は「Yahooニュースの記事」という信頼されやすい媒体だけに、一般の患者さんは疑いもなく信じてしまうかもしれません。しかし前述の通り、その内容には明確な間違いが含まれていました。
このようないい加減な情報を発信させてしまうメディア側にも問題があり、わきが・多汗症に悩む人々を混乱させる要因にもなります。専門家として、このような状況には強い憤りと危機感を覚えます。医療系の記事であれば、執筆者の専門分野や内容のファクトチェックを徹底し、正確で読者のためになる情報を提供すべきです。安易に「切らない治療」「最新の機器」といったキャッチーな言葉に飛びつかず、本当に効果が実証された治療なのかを見極める視点がメディアにも求められます。
本当に効果的なわきが・多汗症治療とは

では、わきがや多汗症に悩む方が正しい治療法を選ぶにはどうすればよいのでしょうか。大切なのは、まずご自身の症状が「臭い(わきが)」主体なのか「汗(多汗症)」主体なのかを見極めることです。これによって適切な治療法が変わります。
専門医による診断を受け、自分の状態に合った治療を選択することが何より重要です。汗の量が多い多汗症の場合は、切らずに汗腺を抑える治療も選択肢になります。例えばボトックス注射は一時的ですが汗の分泌を抑制できます。ミラドライも前述の通り多汗症(汗対策)に限れば一定の効果があります。
実際、厚労省にも重度の原発性腋窩多汗症治療として認可されています。汗の悩みが主であれば、こうした「切らない治療」で発汗をコントロールすることは可能です。しかし、これらは汗の量を減らす対症療法であり、効果の持続期間に個人差がある点には注意が必要です(ボトックスは数ヶ月、ミラドライも将来的に汗腺が再生すれば再発あり得ます)。
またこれらの治療には臭い自体をなくす効果はないため、臭いの悩みが強い方には不十分です。一方、臭い(ワキガ)自体に悩んでいる場合、根本的に解決するには臭いの原因であるアポクリン汗腺を直接取り除く治療または破壊する治療が必要です。現時点でこれを確実に行えるのは外科的手術(剪除法やシェービング法など)とビューホット治療しかありません。
剪除法とは脇の下を数センチ切開し、医師が直視で汗腺を一つひとつ丁寧に取り除く手術です。臭いの元を物理的に除去するため、医師が丁寧に手術を行えば、臭いに対する改善効果は非常に高く、再発率も極めて低いことが特徴です。Yahoo記事でも手術の効果については「汗腺自体を除去するため臭いの発生源を直接取り除ける」「剪除法は再発率が極めて低く半永久的な効果が見込まれる」と正しく記載されていました。
シェービング法は剪除法と同様にアポクリン汗腺を直視下で確実に除去する方法ですが、剪除法と比較して傷跡が小さく、術後の瘢痕が目立ちにくいメリットがある方法です。アポクリン汗腺を確実に破壊するもう一つの方法は、ビューホットという高周波(RF)治療機器を用いた治療です。ビューホットは皮膚に細い針を刺し、先端から出る熱でエクリン汗腺だけでなく、アポクリン汗腺も破壊できる点がミラドライと異なります。
針の深さを調整できるため、皮膚の深い位置にある汗腺にも届き、アポクリン汗腺を確実に破壊し、ワキガ臭に対して効果を発揮します。実際、ビューホットの臭い改善率は約70%、多汗症の改善率は約50%と報告されております。
まとめ
わきが・多汗症に悩む方にとって、インターネット上の情報は頼りの綱です。しかし、すべての情報が正しいとは限らないことに注意しなければなりません。今回のYahooニュースの記事のように、一見もっともらしく書かれていても内容に誤りが含まれているケースもあります。
特に「切らないで治る」「再発リスクが低い」などといった魅力的なフレーズには飛びつきたくなる気持ちもわかりますが、その裏付けとなる事実や専門家の意見を冷静に確認する姿勢が必要です。私はこれまで数多くのわきが患者さんの治療に携わり、悩みを解消するお手伝いをしてきました。専門医の立場から断言できるのは、わきがの根本治療には確かな技術に裏打ちされた適切な治療法の選択が不可欠だということです。
もし情報の真偽に迷ったときは、ぜひ一度信頼できる専門クリニックに相談してください。適切な診断と正しい知識にもとづいた治療こそが、長年の悩みから解放される近道です。以上、Yahooニュースの記事に対する批判を通じて、少しでも皆さんが正しい判断をする助けになれば幸いです。悩める患者さんが誤情報に惑わされず、自分にとって最善の治療法にたどり着けるよう願っています。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。
1999年慶応義塾大学医学部卒。
外科専門医(日本外科学会認定)。
美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。
美容外科医師会理事。
美容外科医として20年以上のキャリアがあり、ビューホット治療を日本にいち早く導入。ビューホットにおけるスソワキガ治療は日本で初めて行った。これまでのスソガ、わきが治療例は延べ1万人を超える。
千葉エリアで治療をご希望の方はこちら

〒273-0005
千葉県船橋市本町6-4-15
グラン大誠ビル 2F
責任者:元神賢太
最終学歴:H11年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H15年船橋中央クリニック開業
東京エリアで治療をご希望の方はこちら

〒107-0061
東京都港区北青山2-7-26
ランドワーク青山ビル7F
(旧ヒューリック外苑前ビル)
責任者:高林洋一
最終学歴:S43年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H28年青山セレスクリニック管理者








フリーダイヤル
