投稿日:2023/11/11
(最終更新日:2024/01/16)
アプトスリフトの効果と糸リフトの進化
画期的なアプトスの登場
過去30年間、顔のたるみ解消といえばフェイスリフト手術が主流でした。しかし、その大がかりな手術には腫れや長い社会復帰時間が伴い、多くの人がためらっていました。そんな中、1990年代後半にアプトスリフトという糸リフトの方法が誕生し、美容外科の世界に革命をもたらしました。
この技術は、ロシアの美容外科医スラマニーチェ親子によって開発され、2000年には300人の患者に対する有効性と安全性がロシア厚生省の委員会によって検討されました。2004年には、Lyckaによる論文が発表され、350例中348例で顔面の若返りに成功したとの結果が報告されています。
日本では2001年から導入され、2002年には日本美容外科学会での学会発表が行われました。初期の数年間、アプトスリフトや糸リフトは手探り状態でしたが、現在では新しい糸リフトの開発や技術の向上により、多くの患者が安全な糸リフトを受けています。
アプトスリフトの糸について
アプトスリフトに使用されるポリプロピレン製の糸は、医療現場で安全性が高く評価されている素材です。吸収されない非吸収性の糸リフトになります。アプトス糸に施された特殊な毛羽立ちは、皮下組織を保持しつつ、皮膚を収縮させることでリフトアップ効果を発揮します。12cmの糸は両端から中央に向かって特殊なギザギザが施されており、これにより皮膚が糸の中心に向かって引き上げられます。
アプトスリフトの技術と効果
アプトスリフトは皮膚を切開することなく、特殊な針と糸を使用してたるみを引き上げる治療法です。特に頬のたるみに効果的で、ほうれい線の改善や頬の張りを取り戻すことができます。施術後は直ぐにたるみが改善され、2〜4週間後には糸の周囲に形成された線維組織の効果でさらなるリフトアップが期待できるとされていました。
アプトスリフトのアフターケアとリスク
アプトスリフト後は腫れや内出血が生じることがありますが、これらは通常自宅での冷却により軽減され、施術後すぐにメイクが可能です。リフトアップ効果は数年間持続するとされており、特に45歳未満の軽度のたるみに効果が高いと言われています。
アプトスリフトの治療流れ
カウンセリング: 患者の状態を診察し、治療の適切性を判断します。
局所麻酔: デザイン後、アプトス糸を通す部位に麻酔を施します。
施術: 特殊な針でアプトス糸を皮膚下に挿入します。
治療後: 腫れは通常わずかで、数日で針の跡も消えます。翌日から洗顔やメイクが可能です。
アプトスリフトのQ&A
Q:糸が皮膚に残っても違和感はありませんか?
A:初期には違和感がありますが、糸が馴染むにつれて感じなくなります。
Q:糸が体内に残っても安全ですか?
A:問題ありません。ポリプロピレン製のアプトス糸は、感染などのトラブルを起こすことはほとんどありません。
アプトスリフトは本当に効果があるのか
アプトスリフトが登場したときは画期的な技術でした。2000年初期には大いに流行りました。その後アプトスリフトの糸をさらに改良した糸が登場しました。
現在では少し古い糸という立場です。アプトスリフトは非吸収性の糸であるために、ミラクルリフトと同様に吸収性の糸(VOVリフト等)より効果があると予想されます。
ただ、アプトスリフトはその構造上、糸の中央部で折り返し、糸の両側とも柔らかい脂肪層に中に糸が固定されます。糸が硬い筋膜などに固定されるわけではないので、時間の経過とともに重力で糸の位置が下がります。これにより効果もなくなります。効果がある糸リフトは片側の糸の端は硬い筋膜に固定される必要があります。
またアプトスリフトは通常のナイロン(ポリプロピレン製)であるため、収縮性がありません。このため、糸の挿入部位の皮膚に凹凸ができやすいのです。これが術後の引きつれやトラブルの要因となっています。
現在では非吸収性タイプの糸リフトでは「スプリングスレッド」という非常に優秀な糸リフトがあるので、アプトスリフトが使用されることはほとんどありません。
スプリングスレッドはシリコン製であるため、収縮性に富んでおり、凹凸が出にくいとされています。また、片側の頭皮内の硬い筋膜に固定されるため、たるみが強い場合も効果があり、持続性も3年以上となります。
アプトスリフトのまとめ
アプトスリフトは2000年ころに登場した当初は、画期的な技術として人気の治療でしたが、数か月で効果がなくなることや、効果が弱い点で、その後登場した新しい糸に取って代われることになりました。糸リフトを検討される場合はまず何を優先するのか決めるのが大事です。つまりは、「吸収性か非吸収性か」、「持続性か」です。この2つを基準で判断されると自ずと選択されるべき糸リフトの種類は決まってきます。
ただし、糸リフトやフェイスリフトに関する知識や経験が不足している医師や、技術が未熟ながら専門医を自称する医師も存在するのが現実です。治療を検討される場合は、実際に専門の医師としっかりと相談し、まずはカウンセリングのみを受けることが最も重要です。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがあり、アンチエイジング治療、リフトアップ治療を得意としている。第109回日本美容外科学会で「スプリングスレッドを併用したフェイスリフト手術」で学会発表し、好評を得た。切らないフェイスリフトのウルセラも日本国内に導入直後から取り入れており、第107回日本美容外科学会でもウルセラの学会発表を行っている。
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