投稿日:2024/10/11
(最終更新日:2024/10/11)
スマホ顔:スマホの使いすぎで顔・首がたるむ?
最近、「スマホ顔」という言葉がインターネットやメディアで注目を集めています。これは、スマートフォンやパソコンを長時間使用することで、顔や首にたるみやシワが生じる現象を指します。特に、首を長時間前に傾ける姿勢が続くことで、首の皮膚に負担がかかり、重力の影響で顔の下半分にたるみが見られることがあるとされています。日本のニュース番組でもこの現象が取り上げられ、多くの人々が関心を寄せるようになりました。では、「スマホ顔」は本当に現実に起こり得る問題なのでしょうか?このブログ記事では、スマホ顔の科学的な根拠の有無等について詳しく解説していきます。
スマホ顔とは
「スマホ顔」(スマートフォンフェイス)とは、スマートフォンやパソコンを長時間使用することで、顔や首に現れるたるみやシワの状態を指す言葉です。この現象が広く知られるようになったのは、2012年に英国の美容外科医Dr. Mervyn Pattersonの発言が大きく影響したとされています。彼は、スマートフォンを長時間下を向いて見続けることで、首の筋肉が短縮し、あごや頬が重力によって下に引っ張られることから、顔全体がたるみやすくなると指摘し、こういう顔をsmartphone faceと名付けました。こうして「スマホ顔」という現象が注目を集めるようになり、特に以下の特徴が「スマホ顔」の兆候として多くのメディアでは取り挙げられています。
■あごや頬のたるみ
長時間、前傾姿勢でスマートフォンを見ることで、首の筋肉が弱まり、フェイスラインがぼやけ、頬やあごが垂れ下がるとされています。
■マリオネットラインの深化
口の両端からあごに向かってできるシワが、スマホを見ている時の無意識の表情や姿勢によって深くなるとのことです。
■二重あごの形成
前傾姿勢を維持することで、首の皮膚や筋肉に余計な負担がかかり、結果的に二重あごが形成されやすくなるとされています。
■首のシワや肌の弾力の低下
首を前に傾けた状態が長く続くと、首の皮膚が伸び、シワができやすくなり、皮膚の弾力が低下し、年齢以上に首元が老けて見える原因となるとされています。
Nスタでもスマホ特集:医師の解説付き
2023年12月、TBSのニュース番組「Nスタ」で特集された「スマホ顔」が大きな話題を呼びました。この放送により、日本国内で「スマホ顔」という言葉が急速に広まり、特に若年層に与える影響について多くの視聴者が関心を寄せました。番組では医師が登場し、スマホ顔について詳細に解説しています。
医師によれば、スマホ顔は、スマートフォンを長時間、前かがみで覗き込むことによって生じる若者特有のシワやたるみを指します。これらの症状は加齢によるものではなく、下を向き続けることで首や顔に通常以上の重力がかかり、皮膚がダメージを受けることが原因とし、スマホ使用中の無表情な時間が長いため、顔の表情筋が衰え、これもシワやたるみの進行に寄与すると説明。特に、ほうれい線や頬のたるみ、首の横ジワなどが若年層で顕著に増加していることが問題と医師は発言されています。
キャスターも「20代や10代など、本来ならたるみが出にくいはずの若い世代でも、スマホの使用が常態化することで、このような症状が増えている」とコメントし、視聴者の関心をさらに引きつけました。医師は、予防策として「猫背の姿勢を避けることが最も重要」であると強調しています。正しい姿勢でスマホを使用すれば、大きな問題にはならず、たるみやシワの発生も防げると説明しました。
出典元:youtube「Nスタ」
スマホ顔:全く科学的な根拠がないのが事実
「スマホ顔」に関する科学的根拠が存在するのか、私は世界中の医学研究を検索し、医学論文のデータベースにもアクセスしましたが、結論としては、スマホ顔が科学的に立証された研究は全く見つかりませんでした。この「スマホ顔」という概念は、2012年に英国の美容外科医であるDr. Mervyn Pattersonが発言したことがきっかけで広まりましたが、これは憶測や推測に基づいたものであり、実際のエビデンスに裏付けられたものではありません。彼の発言以降、同様の主張をする美容皮膚科医がインターネット上で散見されるものの、それらも科学的な根拠に基づく発言ではありません。
さらに重要なのは、この「スマホ顔」という概念の発端となったDr. Mervyn Pattersonのインタビューが現在では削除されているという点です。これから推測すると、彼自身がこの発言を撤回した可能性が高いと言えるでしょう。事実、近年では海外のメディアにおいて「スマホ顔」を問題視する報道はほとんど見られず、この現象が実際に医療界で取り上げられることも少なくなっています。つまり、「スマホ顔」は日本のメディアや一部の専門家が誇張して広めた一種の都市伝説であり、科学的な裏付けは全く存在していないというのが現実です。
猫背とシワ・たるみの関係:科学的根拠は?
スマホ顔に関連してよく語られるのが、「長時間の猫背姿勢が顔や首の皮膚にダメージを与え、たるみやシワを引き起こす」という説です。しかし、この考えには科学的な裏付けがありません。猫背や悪い姿勢が筋肉や関節に影響を及ぼすことは確かですが、これが直接的に顔のたるみやシワに繋がるというエビデンスは見当たりません。
確かに、猫背の姿勢は首や肩、背中の筋肉に過度な負担をかけ、慢性的な筋肉の緊張や痛みを引き起こす可能性があります。しかし、その影響が顔や首のたるみを進行させるという科学的根拠は現在のところ存在していません。筋肉の緊張や姿勢が悪いことがシワやたるみに繋がるというのは、あくまで一部の医師の憶測に過ぎないのです。
たるみやシワの主な原因は加齢や紫外線によるダメージ、遺伝的要因とされており、姿勢が直接の要因となることありません。つまり、猫背による見た目の変化は姿勢の問題であり、肌の老化やたるみとは無関係なのです。
スマホ顔と同じ理屈なら“読書顔”もあるはず?
もし「スマホ顔」という現象が本当に科学的に証明されているのなら、長時間読書をしている人にも同様に顔のシワやたるみが生じるはずです。読書もスマホの使用と同じく、下を向きがちで長時間無表情のまま同じ姿勢を保つことが多いからです。むしろ、読書に没頭する場合、スマホ以上に長時間同じ姿勢を続けることすらあります。しかし、誰も「読書顔」なるものを心配しているわけではありません。長時間の読書が顔のシワやたるみを引き起こすという主張があったとしても、それはおそらく笑い話になるでしょう。
この点を考えると、「スマホ顔」を信じることは「読書顔」があると信じるのと同じくらい根拠が薄弱であると言えます。科学的なエビデンスが存在しない以上、どちらも単なる憶測に過ぎず、不安を煽るための作り話でしかありません。
多数のメディアが取り上げる「スマホ顔」の虚実
「スマホ顔」と検索すれば、多くのサイトが「スマートフォンの長時間使用中、無表情が続くことで表情筋が衰え、顔がたるむ」といった主張を展開しています。しかし、これらの情報には、科学的な裏付けが一切ありません。美容系のウェブサイトやクリニックのホームページでも、スマホ使用が顔のたるみを引き起こすという説を広めているものが多く見受けられます。特に、美容外科のサイトがこのような根拠のない情報を発信し、それに基づいて治療を推奨することは、通常のメディアが同様の内容を報じるよりも深刻な問題をはらんでいると言えます。
こうした美容外科クリニックによる誤った情報は、不必要に人々の不安を煽り、自院での治療を促進するための商業的な意図が感じられます。たるみやシワに対する恐怖心を利用し、科学的な根拠が薄い主張で治療を提案するのは、患者を騙していることと同等です。
メディアや専門家の発言に影響されやすい日本人の傾向に注意
日本人は、メディアや専門家が発言する内容を無条件に信じやすいという傾向があります。特に、テレビ番組や著名な医師のコメントなどが放送されると、それが事実であるかどうかを検証することなく、そのまま受け入れてしまうことが少なくありません。この現象は、「スマホ顔」に関しても同様です。ある医師が「スマホ顔が存在する」と主張すれば、その根拠の有無にかかわらず、多くの人がその言葉を鵜呑みにしがちです。
しかし、どんな専門家であっても間違いを犯す可能性があることを忘れてはいけません。医師やメディアの情報も、誤解や不確かなデータに基づいていることがあります。したがって、私たちは情報を受け取る際に盲信するのではなく、必ずその情報の真偽を自ら確かめる姿勢を持つことが重要です。特に美容や健康に関するトピックでは、感情的になりがちですが、冷静に情報を精査し、科学的なエビデンスに基づいて判断することが求められます。
まとめ
スマホ顔とは、長時間にわたるスマートフォンの使用に伴う姿勢の悪化が原因で、顔のたるみや首のシワを引き起こすとされる現象です。しかしながら、読書による「読書顔」が存在しないのと同様に、スマホ顔に関しても、科学的な裏付けは全く存在しません。この概念はメディアや一部の美容外科が取り上げていますが、その根拠は非常に曖昧で、エビデンスに基づく情報はありません。
こうした不確かな情報に対しては、私たちは常に批判的な視点を持ち、流されることなく、信頼性の高い科学的根拠に基づいた情報を求める姿勢が重要です。特に、美容や健康に関する情報は、信頼のおける医学的なデータに基づくものであるかどうかを確認する必要があります。誤った情報に惑わされることなく、自らの健康を守るためにも、正確な知識を持つことが大切です。
このブログ記事が、スマホ顔についての理解を深め、日常生活に役立つ情報となれば幸いです。引き続き、当ブログでは医学的根拠に基づいた正確な情報を発信してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがあり、アンチエイジング治療、リフトアップ治療を得意としている。日本美容外科学会で「スプリングスレッドを併用したフェイスリフト手術」で学会発表し、好評を得た。また、形成外科学会での勉強会においても講演をおこなっている。ウルセラについても日本国内に導入直後から取り入れており、日本美容外科学会でもウルセラの学会発表を行っている。【関連項目】
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