投稿日:2024/09/16
(最終更新日:2024/09/16)

女性の「潮吹き」と「女性の射精」の明確の違いについて

潮吹きする女性

潮吹き(しおふき)とは、性行為中に女性の尿道口付近から大量の液体が放出される現象として広く知られています。しかし、近年の科学的研究により、潮吹きとは別に、または同時に発生する「女性の射精」と呼ばれる現象も明確に区別されるようになっています。この現象は長らく曖昧な理解のまま混同されてきましたが、近年の研究によってそのメカニズムや成分の違いが明らかになってきました。本記事では、「潮吹き」と「女性の射精」がいかに異なる現象であるかについて、最新の研究論文をもとに、科学的な視点から詳細に解説します。

女性の射精とは

女性の射精とは、オーガズム中またはその直前に、尿道の下部に位置するスキーン腺(女性の前立腺)から液体が分泌される現象を指します。この現象は、しばしば「潮吹き」と混同されることがありますが、実際には異なる生理的メカニズムによるものです。女性の射精では、比較的少量の液体がスキーン腺から放出され、これはイク時(オーガズム時)に骨盤底筋の収縮によって促されます。

スキーン腺とは

スキーン腺(Skene’s glands)は、発生学的および解剖学的に、男性の前立腺に相当する器官です。女性の体内では、尿道の両側に位置しており、尿道周辺の組織に開口しています。このため、スキーン腺はしばしば「尿道傍腺」とも呼ばれています。スキーン腺の体積はわずか24㎤、重量は35gとされ、非常に小さな構造を持つため、スキーン腺の出口を肉眼で確認するのが難しいこともあります。

スキーン腺の出口

↑スキーン腺の出口

スキーン腺の役割とは

スキーン腺は、女性の性反応において非常に重要な役割を果たしています。性的興奮が高まると、オーガズム前にもわずかながら分泌液を生成し、膣の潤滑をサポートするとされています。そして、オーガズムに達する瞬間、いわゆる「女性の射精」として放出されます。スキーン腺自体は非常に小さな器官であるため、分泌される液体の量は1~5cc程度であり、これは男性の射精量よりも少ないとされています。しかし、オーガズムに達しなくても、性的な刺激が強い場合には分泌が増加することがあるため、性行為中の快適さや潤滑性を高める役割も果たします。また、スキーン腺の活動は個人差が大きく、すべての女性が同じように射精を経験するわけではありません。このように、スキーン腺は女性の性的快感や反応において不可欠な要素であり、特にイク時(オーガズム時)における独特の役割が注目されています。

スキーン腺からの分泌液の性状と量

スキーン腺から分泌される液体は、一般的にやや粘り気のある乳白色の液体であることが報告されています。これはサラサラとした液体ではなく、濃厚な質感を持ち、男性の前立腺液に似た性質を持っています。男性の前立腺液は精液の約30%を構成していますが、男性の前立腺に該当する女性のスキーン腺から分泌される液体には、男性の前立腺液と同様に前立腺特異抗原(PSA)やプロスタグランジンが含まれており、これが特徴的な粘性をもたらしています。オルガズム時に放出されるこの液体は、濃厚で粘性があり、透明でさらさらした「潮吹き」の液体とは異なる性質を持っています。

スキーン腺からの女性の射精量は、通常数cc程度であり、具体的には15mlの範囲であるとされていますが、これは個人差が大きく、同じ女性でも性行為の状況や刺激の強さによって量が変動することがあります。

このように、スキーン腺からの分泌液は、女性の射精と潮吹きとの違いを明確に示す特徴の一つです。

出典元:New Insights from One Case of Female Ejaculation

女性の射精液

↑女性の射精液

潮吹きとは

潮吹きとは、女性がオルガズムの最中に大量の液体を放出する現象を指します。潮吹きで放出される液体の量は、時には数百ccにも達することもあります。この現象は古くから文献に言及されており、歴史的には存在が知られていましたが、広く認知されるようになったのは比較的最近のことです。特に、1980年代以降、ポルノ映像の普及が潮吹きの現象を広く知らしめる要因となりました。日本では、AV男優の加藤鷹氏が「ゴールドフィンガー」と呼ばれる指技(手マン)を駆使して女性の潮吹きを引き出すシーンが話題となり、これが一般的に潮吹きという現象が注目されるきっかけとなったと言われています。1980年代から1990年代にかけて、アメリカのポルノ業界でも「squirting」として女性の潮吹きが映像の中で強調され、世界的に広がりを見せました。

一部の人々にしか知られていなかった潮吹きが、ポルノ映像を通じて、やがて多くの人々に認識される現象へと変わっていったのです。こうして潮吹きは、性に関する話題として一層の注目を集めるようになり、医学の分野でも近年研究が進んでいます。

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潮吹きの正体とは

潮吹きは、その大量の液体が射出される様子から、長い間「尿である」と考えられてきましたが、科学的な調査や研究は近年までほとんど行われていませんでした。しかし、近年の複数の研究により、潮吹きの主な成分が尿であることが確認されています。これらの研究から、潮吹き時には2種類の液体が射出されることが明らかにされています。一つは大量に放出される粘度が低い液体で、これは尿であると結論づけられています。もう一つは粘性が高い液体で、これはスキーン腺(女性の前立腺)から分泌される「女性の射精液」とされています。

潮吹きにより大量に放出される尿は、通常の排尿時とは異なり、たとえ水分を多く摂取していなくても黄ばみが少なく、単なる尿失禁とは異なる現象であることが示唆されています。実際、潮吹きする女性の多くは普段から尿失禁の症状がなく、潮吹き時に尿失禁を感じることもないことが研究で確認されています。このことから、潮吹き時に射出される尿は、性的刺激や興奮時に作用するまだ解明されていない生理的メカニズムにより、通常よりも薄められている可能性があると考えられています。こうした研究結果は、潮吹きが単に尿失禁ではなく、性的な興奮に伴う複雑な現象であることを示唆しています。

潮吹き液

↑(左)潮吹き液(薄い尿)
(右)同じ被験者の尿

Gスポットと潮吹きの科学的関連性

潮吹きは、多くの場合、膣前壁に位置する「Gスポット」への適切な刺激が引き金となると考えられています。Gスポットは、膣内の約3センチ先の前壁にあり、その感触は周囲の滑らかな膣壁とは異なり、ややザラザラした「くるみ状」の質感を持つことが特徴です。この領域は性感帯として知られており、刺激されると性的快感を伴うことが多いです。研究では、Gスポットを刺激することによって、女性の約1040%が「潮吹き」として知られる現象を体験することが示されています​。また潮吹きをする女性においても、毎回潮吹きをするわけではなく、パートナーの技術(手マン)に依存することもアンケート調査から明らかになっています。

ただし、Gスポットが実際に存在するかどうかは長年にわたって議論されており、すべての女性が同じ感覚を持つわけではありません。いくつかの研究では、潮吹きが必ずしもGスポットの刺激によるものではなく、性的興奮によっても生じることもあるとされています。

潮吹きとオーガズム性尿失禁の違い

潮吹きとオーガズム性尿失禁は、どちらも性的興奮に伴って尿が放出される現象ですが、そのメカニズムは根本的に異なります。

オーガズム性尿失禁は、骨盤底筋や膀胱括約筋が弱い、または過活動膀胱による影響で、オーガズム中に尿が不随意に漏れてしまう現象です。オーガズム性尿失禁では通常、尿意を伴い、性的な刺激や膀胱への圧力によって引き起こされます。ある研究では、膀胱過活動症を持つ女性の約69%がオーガズム時に尿漏れを経験することが報告されています​。

一方、潮吹きは尿意を感じることなく、性的快感の絶頂時(=イク時、オーガズム)に尿が放出される現象です。また、潮吹きを体験する女性は、通常は日常的に尿失禁の症状を持たないことが特徴です​。

このように、潮吹きとオーガズム性尿失禁は見た目こそ似た現象に思われるかもしれませんが、実際にはそれぞれ異なる生理学的メカニズムによって引き起こされ、潮吹きは尿失禁とは異なる感覚的な経験が伴います。

潮吹き

↑エコーでの膀胱の状態

(上)イク前の膀胱に尿がたまった状態 

(下)潮吹き後の膀胱から尿が射出されてしぼんだ状態

参照元:Nature and Origin of “Squirting” in Female Sexuality


潮吹きが女性の性的満足度に与える影響とは?

研究によると、潮吹きを体験した女性の約80%が、潮吹きを経験したことで性生活の満足度が大きく向上したと報告しています​。

また、潮吹きは、膣前壁(いわゆるGスポット周辺)への直接的な機械的刺激と、強い心理的なリラックス感を伴った状態がうまく組み合わさって起こることが多いとされています。

潮吹きを体験することで、性的な自信が高まるだけでなく、パートナーとの関係においても精神的な繋がりが強化される傾向が見られると指摘する研究もあります。これは、潮吹きが単なる生理現象ではなく、感情や精神状態の向上にも寄与するためです​。このため、潮吹きが可能になることで、性生活に対する満足度が大きく改善されることが多いと結論付けられています。このように、潮吹きは身体的な快楽だけでなく、心理的・精神的な側面でも女性の性的満足度を高める重要な要素であると考えられます。

「女性の射精」「潮吹き」研究に挑む科学者たちへの敬意

女性の射精や潮吹きの研究が進展しなかった背景には、この現象が極めてプライベートな空間で発生するため、研究環境を整えることが難しかったことが挙げられます。従来、こうした現象に対する科学的な研究はタブー視されてきたこともあり、長い間、詳細な研究が不足していました。この記事で紹介した研究では、被験者が自らの手や道具、またはパートナーとの性交を通じてオーガズムに達した際、研究者がその現場に立ち会い、液体のサンプルを回収したり、エコー検査を実施するという、非常にデリケートで複雑な過程を経ています​。

このように、女性の射精や潮吹きのような繊細かつ個人的な生理現象を科学的に解明することは、研究者にとって非常に困難な挑戦です。こうした試みは、科学への揺るぎない情熱と知的好奇心に支えられており、その尽力には心から敬服せざるを得ません。研究の進展により、今後も多くの未知の部分が解明されていくことが期待いたします。

潮吹きの写真

↑膣内性交後に事前に着色された尿を潮吹きする被験者

参照元:Enhanced visualization of female squirting

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まとめ

潮吹きは、4世紀の中国の道教の文献にも記述が見られるほど、古くから神秘的な現象として知られてきました。近年の研究によって、「女性の射精」という現象が明確に解明され、潮吹きとは異なるものであることが明らかになりました。女性の射精は、イク時(オーガズム時)にスキーン腺から放出される分泌液であり、5cc程度の粘性のある液体が特徴です。これに対して、潮吹きは主に尿が大量に放出される現象ですが、スキーン腺からの分泌物が混ざることもあります​。

女性の射精と潮吹きは、いずれもオーガズムに伴って起こる現象であり、どちらが優れているというわけではなく、それぞれが個々の体験として尊重されるべきです。しかし、これらがしばしば混同されるため、正しい知識を持つことは重要です。これにより、性的な体験やパートナーとのコミュニケーションがより充実し、セックスライフを豊かにする手助けになるでしょう。今後も、さらなる研究が進むことで、女性の性反応に関する理解がより深まることを期待しています。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。また、女性器、男性器を問わず、多くの性器の美容外科手術を行っている。男性向けの性講座Youtube「元神チャンネル」は好評を博している。

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