投稿日:2024/11/12
(最終更新日:2024/11/13)
アクアフィリング除去を行う理由とタイミング
アクアフィリングの除去治療について
かつて日本国内の多くの美容外科で、アクアフィリング(別名アクアリフト)という注射剤を用いた豊胸治療が盛んに行われていました。私自身もこの治療に携わってきた一人ですが、現在ではさまざまな医学的・安全性に関する理由から、アクアフィリングを用いた豊胸術は推奨されておらず、施術そのものが中止されています。その結果、アクアフィリングを体内から除去したいと希望する方が年々増加しているのが実情です。女性たちが除去を望む理由は多岐にわたり、健康上の不安や審美的な懸念などがあります。このブログでは、女性たちがアクアフィリング除去を希望される理由、そして除去を行うための最適なタイミングについて詳しく解説します。さらに、除去手術と同時に別の豊胸手術を行う選択肢についても、医師としての私の見解を述べていきますので、ぜひ参考にしてください。
アクアフィリングとは
アクアフィリング(Aquafilling)は、コポリアミドフィラーを主成分とする豊胸用の注射剤で、PAAGやポリアクリルアミドフィラーに類似した特性を持つ物質です。アクアリフト(Aqualift)、ロスデライン(Los Deline)、アクティブジェル(Activegel)などの製品も、アクアフィリングと同一、もしくはほぼ同成分の注射剤として知られています。日本では2015年に開催された日本美容外科学会で、聖心美容外科の医師によるアクアフィリングの発表が大きな注目を集め、それを契機に全国の美容外科でアクアフィリングによる豊胸治療が急速に広まりました。筆者自身もこれまでに200人以上の患者様に対してアクアフィリング豊胸を実施してきました。
しかし、2019年に一般社団法人日本形成外科学会、一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS)、一般社団法人日本美容外科学会(JSAS)、および公益社団法人日本美容医療協会が「非吸収性充填剤注入による豊胸術に関する共同声明」を発表しました。この声明では、「安全性が証明されるまで(アクアフィリングなどの)非吸収性充填剤を豊胸目的に注入することは実施するべきではない」との見解が示されました。この声明以降、アクアフィリングを用いた豊胸施術は急激に減少し、筆者も現在では新規の患者様へのアクアフィリング、アクアリフト、ロスデラインを用いた豊胸治療は行っておりません。
アクアフィリング除去を希望される理由①:腫れ(炎症)
アクアフィリングを過去に注入された方が除去を希望される理由はさまざまですが、最も多いのは「腫れと痛みが生じた」という症状です。このようなケースでは、できるだけ早急にアクアフィリングを除去することが推奨されます。なぜなら、放置しても自然に症状が改善することはなく、むしろ炎症が悪化する可能性があるからです。炎症が進行すると、体内で自分自身の乳腺組織や脂肪が溶解してしまい、除去後の胸がアクアフィリングを注入する前よりも小さくなったり、変形してしまうことがあります。このようなリスクを避けるため、アクアフィリングの注入後に腫れや痛みが発生した場合は、速やかに専門医に相談して除去するのが最善の対応です。
アクアフィリングを除去される理由②:下方移動
アクアフィリングは注入後、時間が経つにつれて重力の影響で下方へ移動してしまうことがあります。この移動によって、もともとバストの膨らみがない部分、つまりアンダーバストの領域が不自然に膨らむことがあり、見た目に違和感を生じさせます。さらに、深刻なケースでは腹部、鼠径部、さらには陰部にまで移動することも報告されています。このように、アクアフィリングが体内で移動した場合、自然に元に戻ることはありません。そのまま放置すると、見た目にも悪影響を及ぼす可能性が高いため、適切なタイミングで除去することが必要です。
アクアフィリングを除去される理由③:将来への不安
現在は見た目がきれいなバストの状態でも、将来的に炎症やその他の健康リスクが生じる可能性への不安から、アクアフィリングの除去を希望される方も少なくありません。このような場合、多くの方が除去のタイミングに関して悩まれることが多いです。将来への不安に基づく決断は難しいものですが、私としては現状で特に問題がない場合、積極的な除去を強く推奨することはありません。しかし、患者様が強く望まれる場合には、その不安を解消するため、適切な除去手術を行います。安心感を得ることも重要な要素ですので、最終的には患者様の意思と希望を尊重しつつ、最善の選択をサポートいたします。
アクアフィリング除去の方法
炎症がある場合
アクアフィリングに炎症を伴う場合には、まず脇のしわに沿って約5mm程度の小さな切開を行います。この切開部分から圧力をかけながらアクアフィリングを丁寧に掻き出していきます。しかし、アクアフィリングは非常に粘性が高いため、これだけでは完全に除去しきれないこともあります。そのため、切開部からカニューレを挿入し、生理食塩水で空洞を徹底的に洗浄しながら残留物を取り除きます。1回の施術で完了する場合もありますが、体内で被膜を形成しているケースでは、複数回の処置が必要になることもあります。
移動している場合
アクアフィリングが体内で移動した場合は、移動先で最も膨らみが目立つ部分に約5mm程度の切開を加え、内腔を洗浄しつつアクアフィリングを排出します。こちらも通常は1回の処置で除去が完了しますが、必要に応じて複数回の治療が求められることがあります。
無症状の場合
アクアフィリング注入後に炎症が起きていない無症状のケースでは、注入材が乳腺と一体化して自然な形状を保っていることが多いため、触診だけでのアクアフィリングの特定は困難です。この場合、5mmの小さな切開からの除去は難しく、乳房下縁を5cm以上切開することが必要な場合があります。通常は1回の治療で完了しますが、除去が引き金となり、治療後に炎症が生じるリスクがあります。この炎症により、痛みや腫れが発生し、追加の除去治療が必要になることもあります。
アクアフィリング除去と豊胸バッグ挿入の同時手術について
アクアフィリング注入後を無症状のまま過ごされている方の中には、アクアフィリングの除去と同時に豊胸バッグの挿入を希望されることがあります。しかし、私はこの二つの手術を同時に行うべきではないと考えています。その理由は、除去手術前には症状がなかった場合でも、アクアフィリングの除去をきっかけに炎症が発生するリスクがあるためです。もし除去と豊胸バッグの挿入を同時に行い、その後に炎症が生じた場合、挿入したバッグを再び取り出す必要が出てくる可能性があります。
このようなリスクを避けるため、手術は2回に分けて行うことを強く推奨します。まず、1回目の手術で乳房下縁に約5cmの切開を加え、乳腺下にあるアクアフィリングを完全に除去します。その後、術後3か月間は慎重に経過を観察し、炎症や腫れなどの症状が全く現れないことを確認します。炎症が発生しなかった場合には、2回目の手術で同じ乳房下縁の切開部から大胸筋下に豊胸バッグを挿入する手術を行います。この順序を守ることで、安全かつ最良の結果が得られる可能性が高くなります。
まとめ
私は、自身が行ったアクアフィリング注入後に炎症や移動が生じた患者様に対して、無償で丁寧なアフターケアを提供しています。また、他院でアクアフィリングを受けた方の除去治療も多く手掛けてきました。その豊富な経験を活かし、診察時には最適な治療の順序や投薬プランを熟知した上で、患者様一人ひとりに最も効果的な対応を行っております。アクアフィリング注入後に不安やトラブルを抱えている方は、どうぞお気軽にご相談ください。私が全力でサポートし、安心していただけるよう努めます。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。異物除去治療には特に定評がある。【関連項目】
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