投稿日:2025/03/04
(最終更新日:2025/04/28)

行き過ぎたダイエットや偏食が引き起こす女性の薄毛リスク(第34回)

女性薄毛とダイエット偏食

(第33回「女性薄毛の根本的原因:加齢による女性ホルモンの低下からの続き)

近年、美容や健康を意識するあまり、極端なダイエットや特定の食品を避ける偏食が増えています。特に若い女性の間では、短期間での体重減少や食の好みに偏った食生活が習慣化しがちですが、これが髪の健康に深刻な影響を与えることをご存知でしょうか? 髪の成長にはバランスの取れた栄養が不可欠であり、極端な食事制限や栄養不足は、毛根の機能を低下させ、薄毛を進行させる原因となります。本記事では、過度なダイエットや偏った食事が女性の薄毛にどのように関与するのか、具体的なメカニズムや対策について詳しく解説します

 あなたの食事、大丈夫ですか?

私のクリニックに薄毛の悩みを抱えて来院される女性の多くは、無意識のうちに 栄養不足 に陥っているケースが少なくありません。その背景には、過度なダイエットや極端な偏食があり、髪の成長に欠かせない タンパク質 や ビタミン・ミネラル などが慢性的に不足しているのです。一方で、パスタやパン、お菓子といった 炭水化物の過剰摂取 によって栄養バランスが崩れ、結果として髪の健康が損なわれていることも珍しくありません。

さらに問題なのは、こうした女性たちの 多くが自分の栄養不足に気づいていない ことです。毛髪を生み出す 毛包(毛根)は、体の中でも特に代謝が活発な細胞 であり、わずかな栄養不足でもすぐに影響を受けやすいのです。髪のハリやコシがなくなったり、抜け毛が増えたりするのは、単なる一時的な体調不良ではなく、栄養の偏りが原因かもしれません。

「自分は大丈夫」と思っていても、食生活を振り返ると 意外な落とし穴 があるかもしれません。健康な髪を育てるためにも、今一度、 自分の食事内容を客観的に見直す ことを心がけましょう。

参照元:Diet and hair loss: effects of nutrient deficiency and supplement use

 カロリー不足とタンパク質不足が引き起こす女性の薄毛リスク

極端なダイエットは、カロリーおよびタンパク質の不足を招き、結果として女性の薄毛を引き起こす可能性があります。​これらの栄養素の欠乏は、髪の健康と成長に直接的な影響を及ぼします。​

カロリー不足と髪の健康

過度な食事制限により、身体が必要とするエネルギーが不足すると、生命維持に不可欠な臓器や機能に優先的に栄養が供給されます。​その結果、髪の成長に必要な栄養が後回しにされ、抜け毛や薄毛のリスクが高まります。​特に、基礎代謝を大幅に下回るカロリー摂取や、炭水化物や糖質を一切摂らない極端な糖質制限は、体全体の栄養不足を引き起こし、髪の健康に悪影響を及ぼします。

タンパク質不足と髪の構造

髪の主成分であるケラチンは、タンパク質から構成されています。​そのため、タンパク質の摂取が不足すると、ケラチンの生成が滞り、髪が細く弱くなり、抜け毛が増加する可能性があります。​特に、肉や魚を避けるなどの極端な食事制限は、タンパク質不足を招き、健全なヘアサイクルを乱す要因となります。

休止期脱毛(Telogen Effluvium)のリスク

カロリーやタンパク質の不足は、髪の成長サイクルにおける成長期から休止期への早期移行を促し、休止期脱毛と呼ばれる大量の抜け毛を引き起こす可能性があります。​この状態は、急激な体重減少や栄養不足によって誘発されることが多く、髪の密度が低下する原因となります。 ​

ビタミン・ミネラル不足が引き起こす女性の薄毛リスク

髪の健康を維持するためには、適切なビタミンやミネラルの摂取が不可欠です。​これらの微量栄養素が不足すると、髪の成長サイクルが乱れ、脱毛や薄毛のリスクが高まります。以下に、特に重要な栄養素とその影響について詳しく解説します。​

鉄分(Fe

鉄分は、血液中のヘモグロビンの構成要素であり、全身の組織に酸素を供給する役割を担っています。​鉄分が不足すると、毛包への酸素供給が不十分となり、髪の成長が阻害される可能性があります。​これにより、休止期脱毛と呼ばれる大量の抜け毛が発生することがあります。​特に女性は月経による鉄分の喪失が多いため、意識的な鉄分摂取が重要です。​鉄分は、レバー、赤身の肉、ほうれん草、ひじきなどに豊富に含まれています。

ビタミンD

ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けるだけでなく、毛包の健康維持にも関与しています。​ビタミンDが不足すると、女性型脱毛症や円形脱毛症のリスクが高まる可能性があります。​日光浴や魚類、キノコ類を通じてビタミンDを適切に摂取することが推奨されます。​

亜鉛(Zn

亜鉛は、細胞分裂やタンパク質合成に必要なミネラルであり、毛包の修復や正常な機能に不可欠です。​亜鉛が不足すると、髪の薄毛や脱毛を引き起こす可能性があります。​亜鉛は、ウナギ、ナッツ類、肉類、魚介類などに多く含まれています。

ビオチン(ビタミンB7

ビオチンは、アミノ酸代謝や脂質代謝に関与し、頭皮と髪の健康維持に重要な役割を果たします。​ビオチンが不足すると、髪の薄毛や脱毛、さらには皮膚炎などの症状が現れることがあります。​ビオチンは、卵黄、ナッツ類、大豆製品などに含まれています。​

その他のビタミンB

ビタミンB12、葉酸、リボフラビン(ビタミンB2)などのビタミンB群も、髪の健康に深く関与しています。​これらのビタミンが不足すると、細胞の再生やエネルギー代謝が滞り、結果として脱毛のリスクが高まります。​ビタミンB群は、レバー、ナッツ類、緑黄色野菜、魚介類などに豊富に含まれています。

ビタミンA

ビタミンAは、新陳代謝を促進し、頭皮の健康を保つ役割があります。​不足すると、頭皮の乾燥やフケの原因となり、髪の成長を妨げる可能性があります。​一方、過剰摂取も脱毛を引き起こす可能性があるため、適切な摂取量を守ることが重要です。​ビタミンAは、緑黄色野菜やレバーなどに含まれています。 ​

ビタミンC

ビタミンCは、コラーゲンの生成を助け、血行を促進することで、頭皮の健康を維持します。​また、抗酸化作用により、毛包を酸化ストレスから守る役割も果たします。​ビタミンCが不足すると、髪のハリやツヤが失われる可能性があります。​ビタミンCは、柑橘類や緑黄色野菜に多く含まれています。 ​

ビタミンE

ビタミンEは、強力な抗酸化作用を持ち、頭皮の血行を促進することで、髪の成長をサポートします。​不足すると、頭皮の老化や乾燥を招き、脱毛のリスクが高まります。​ビタミンEは、ナッツ類や植物油に豊富に含まれています。

銅は、鉄の代謝や赤血球の形成に関与し、間接的に髪の健康を支えています。​銅が不足すると、貧血を引き起こし、結果として毛包への栄養供給が滞る可能性があります。​銅は、レバーやナッツ類、全粒穀物などに含まれています。

 脂肪不足が引き起こす女性の薄毛リスク

ダイエット方法として脂質を極端に制限する人が増えています。しかし、脂質は単なるエネルギー源ではなく、髪の成長や頭皮の健康を支える不可欠な栄養素 です。脂肪不足が続くと、髪の乾燥やツヤの喪失、抜け毛の増加を引き起こし、薄毛へとつながる可能性があります。

必須脂肪酸の重要性と不足の影響

オメガ3脂肪酸 や オメガ6脂肪酸 は、毛包の栄養補給、頭皮の保湿、髪の弾力性やツヤの向上 に欠かせません。しかし、極端な低脂肪ダイエットではこれらの摂取が不足し、以下のような問題が生じます。

  • 髪の乾燥やパサつき、切れ毛の増加
  • 頭皮の乾燥によるフケやかゆみ
  • 毛包の機能低下による髪の細化と抜け毛の増加

これを防ぐために、ナッツ類、青魚(サーモン・イワシ)、オリーブオイル、アボカドなどの良質な脂質 を適度に摂取することが大切です。

脂溶性ビタミンの吸収と髪の健康

脂質は ビタミンADEK の吸収を助け、これらのビタミンは髪の成長や頭皮の健康維持に重要な役割を果たします。極端な低脂肪食では、これらのビタミンの吸収が阻害され、毛髪の成長が鈍化し、抜け毛が増える 可能性があります。

ホルモンバランスの乱れと抜け毛

脂質は ホルモンの合成や調整 に関与し、特に エストロゲン と プロゲステロン は髪の成長と維持に不可欠です。しかし、低脂肪ダイエットを続けると、これらのホルモンの生成が阻害され、髪が細くなり、抜け毛が増加 するリスクが高まります。また、脂質不足によるストレスホルモン(コルチゾール)の増加は、血行不良を引き起こし、毛包への栄養供給が滞る原因になります。

 急激な体重減少が引き起こす女性薄毛のリスク

短期間で大幅な体重減少を目指すクラッシュダイエットは、美容や健康を意識する女性にとって魅力的に映るかもしれません。しかし、極端なカロリー制限や過度な運動による急激な体重減少は、髪の成長に深刻な影響を及ぼす可能性があります。体重が急減すると、体はこれを「生理的ストレス」と捉え、ホルモンバランスを崩し、休止期脱毛(Telogen Effluvium) を引き起こす要因となるのです。

急激な体重減少がホルモンバランスに与える影響

体重が急激に減ると、体は「飢餓状態」に適応しようとし、ホルモンの分泌を大きく変化させます。特に以下のホルモンが影響を受け、脱毛を加速させる可能性があります。

■コルチゾール(ストレスホルモン)の上昇

体が強いストレスを感じると、副腎からコルチゾールが分泌されます。このホルモンは通常、血糖値を維持し、エネルギー供給を助ける働きを持ちますが、慢性的に高いレベルが続くと、毛包を「休止期」に移行させ、抜け毛を増やす原因 になります。さらに、アンドロゲン(男性ホルモン)の作用を助長 し、女性でも薄毛を引き起こす可能性があります。

■甲状腺ホルモンの乱れ

極端なカロリー制限は、甲状腺機能の低下を引き起こすことがあります。甲状腺ホルモン(T3T4)は髪の成長を促す重要な役割 を担っているため、機能が低下すると、新しい髪の成長が妨げられ、広範囲の脱毛を引き起こす可能性があります。

■エストロゲンの減少

女性の体脂肪率が急激に減ると、エストロゲンの分泌が低下 します。エストロゲンは髪の成長を促し、ヘアサイクルの「成長期(アナゲン期)」を延ばす働きがあります。エストロゲンが急激に減少すると、更年期後の薄毛と似た脱毛症状 を引き起こす可能性があります。

休止期脱毛(Telogen Effluvium)のメカニズム

急激な体重減少を体が「ストレス」と認識すると、髪の成長サイクルが乱れ、通常よりも多くの毛が休止期に移行 します。通常、髪の8090%は成長期(アナゲン期)にあり、1015%が休止期(テロゲン期)にあります。しかし、クラッシュダイエットの影響で、休止期の髪の割合が3050%以上に増加 し、大量の抜け毛が発生します。

まとめ

本記事では、極端なダイエットや偏った食生活が女性の薄毛リスクを高める ことについて詳しく解説しました。髪の健康を維持するためには、さまざまな栄養素をバランスよく摂取することが不可欠 です。

しかし、普通に食事をしているつもりでも、実は髪の成長に必要な栄養が不足している女性は少なくありません。特に、もともと髪が細い方や毛量が少ない方の場合、通常の食生活だけでは十分な栄養を確保するのが難しく、意識的に タンパク質やビタミン、ミネラルを適切に補うこと が求められます。

さらに、髪をつくる毛包細胞は、体の中で最も活発に細胞分裂を行う組織のひとつ です。そのため、全身の健康状態が髪の成長にも大きく影響を及ぼします。しかし、食事だけですべての必要な栄養素を完璧に摂取するのは容易ではありません。

そこで、食生活の見直しに加え、髪の成長をサポートする栄養補助 も効果的な選択肢となります。筆者が開発した 「ヘアーバースサプリ」 など、髪に必要な栄養素を効率的に補えるサプリメントを活用することで、健康的で美しい髪を育てる土台をしっかり整えることができます。

髪の健康は、毎日の食生活と適切な栄養補給から。無理なダイエットを避け、栄養バランスを意識した生活を心がけることで、髪本来の美しさを引き出しましょう。

筆者:元神 賢太

船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。これまで延べ5万以上の薄毛治療を行う。著書に「専門医が徹底解説!女性の薄毛解消読本」(元神賢太著 / 幻冬舎)。女性の薄毛治療のほか、エイジングケア治療、美肌治療を得意としている。

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