投稿日:2023/11/26
(最終更新日:2024/12/07)
ガイノ:アナボリックステロイド使用時の女性化乳房についての全て
アナボリックステロイドと女性化乳房(ガイノ)
アナボリックステロイドは、主に筋肉増強剤として使用される合成ステロイドです。アナボリックステロイドは、テストステロンを模倣して筋肉の成長を促進する効果があります。しかし、その使用には副作用のリスクが伴います。特に、女性化乳房治療(gynecomastia;通称:ガイノ)はアナボリックステロイド使用者にとって一般的な問題です。この状態は、男性の胸部が女性のように発達することを指し、体内のホルモンバランスの変化によって引き起こされますこの記事では、アナボリックステロイドの基本的な理解から、ガイノの発生メカニズム、そして治療法について詳細に解説します。
アナボリックステロイドの基本理解
アナボリックステロイドは、本来男性ホルモンであるテストステロン(アンドロゲン)の合成バージョンです。アナボリックステロイドが体内でアンドロゲン受容体に結合すると、細胞核内での特定の遺伝子の発現が促進され、筋肉細胞内のタンパク質合成を促進します。これにより、筋肉の修復と成長が加速されます。筋肉細胞は、傷害(トレーニングによる微細な損傷など)後に修復過程を経て成長するため、ステロイドによるタンパク質合成の増加は筋肉の大きさと力を向上させます。
また、筋肉組織は主にタンパク質で構成されており、タンパク質は窒素を含んでいますが、アナボリックステロイドは、筋肉における窒素の貯留を促進します。
アナボリックステロイドは、筋肉成長を促進する重要な成長因子であるIGF-1(インスリン様成長因子1)の肝臓での生成も促進します。
同時にアナボリックステロイドは、筋肉の分解を抑制する作用も持っています。これにより、筋肉の減少を防ぎ、筋力の維持や増加に寄与します。
筋肉増強剤としての役割と効果
アナボリックステロイドの主な役割は、筋肉の成長を促進することにあります。これにより、筋力の向上や筋肉の増大を期待できます。スポーツ選手やボディビルダーの間でよく使用される理由は、この迅速な筋肉増強効果にあります。しかし、これらの利点には、適切な用量の管理と注意深い使用が必要です。
使用時のリスクと副作用
アナボリックステロイドの使用は、女性化乳房の発生のみならず、肝障害、心血管系の問題、心理的な変化など、多くの健康リスクを伴います。これらのリスクは、用量や使用期間によっても異なります。
女性化乳房(ガイノ)の発生メカニズム
アナボリックステロイドの過剰な使用により、体内のエストロゲンレベルが異常に高まると、男性でも女性のような胸部の肥大が起こることがあります。これを女性化乳房(gynecomastia;ガイノ)と言います。女性化乳房の発生は、アナボリックステロイドが男性ホルモンをエストロゲンに変換する過程で起こります。これはアロマターゼという酵素の働きによるもので、男性ホルモンのバランスが崩れることにより発生します。その結果、乳腺組織の肥大を引き起こし、男性の胸部が女性のように肥大化し、見た目の問題だけでなく、痛みや不快感を伴うことがあります。
片側性と両側性ガイノの違い
アナボリックステロイドやホルモン関連の薬物の副作用によるガイノの場合、両側性での発生が観察されやすいです。これは薬剤が体内全体のホルモンバランスに影響を与えるためです。一方、発生原因が明確に特定されない特発性女性化乳房の場合は、片側性で発生するケースも多く存在します。
↑片側の真性女性化乳房(体の左側)
女性化乳房の治療方法
女性化乳房はアナボリックステロイドの使用者にとって望ましくない副作用の一つであり、ステロイドの使用をやめるか、またはエストロゲンの作用を抑える薬を使用することで、この状態を改善することができます。しかし、一度発生した女性化乳房は完全には元に戻らないこともあり、場合によっては外科的な手術が必要になることもあります。
薬物療法とその適応
「エストロゲンの作用を抑える薬」としては、主にアロマターゼ阻害剤やセレクティブエストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)が使用されます。これらはエストロゲンの生成や作用を抑制し、女性化乳房の発生または進行を防ぐために用いられることがあります。アナボリックステロイドによる女性化乳房の場合、しばしばこれらの薬剤が海外、特に米国処方されますが、治療効果は個人差があり、完全な症状の解消には至らない場合もあります。また日本国内ではこれらの薬剤を女性化乳房発生予防のために入手するのは困難であり、日本においては女性化乳房が発生した場合は外科的手術が一般的には選択されます。
●アロマターゼ阻害剤
アロマターゼはテストステロンをエストロゲンに変換する酵素です。アロマターゼ阻害剤はこの酵素の働きをブロックし、エストロゲンの生成を減少させます。代表的な薬剤にはアナストロゾール(Anastrozole)やレトロゾール(Letrozole)などがあります。
●セレクティブエストロゲン受容体モジュレーター (SERMs)
SERMsはエストロゲン受容体に結合し、エストロゲンの作用を選択的に調節します。たとえば、タモキシフェン(Tamoxifen)は乳腺組織におけるエストロゲン受容体をブロックし、女性化乳房の進行を抑制する効果があります。
外科的手術とその適応
女性化乳房の外科的治療方法は、主に乳腺組織の過剰な成長に対処するために行われます。外科的治療は日本国内においては通常すべての女性化乳房に対して適応されます。
手術の種類
●脂肪吸引術: 脂肪組織が主に増加している場合に行われます。小さな切開を通して、乳房の脂肪組織を吸引します。
●乳腺切除術: 乳腺組織が過剰に発達している場合に行われます。乳輪の周囲に小さな切開を行い、過剰な乳腺組織を取り除きます。
●複合手術: 乳腺組織と脂肪組織の両方が増加している場合には、脂肪吸引と乳腺切除あるいは乳腺吸引を組み合わせて行うことがあります。
まとめ
アナボリックステロイドの使用は、筋肉増強の利点を提供する一方で、女性化乳房(ガイノ)といった重大な副作用のリスクを伴います。この記事では、アナボリックステロイドの基本理解、女性化乳房の発生メカニズムそして治療法について詳しく解説しました。適切な知識と理解を持つことで、これらの副作用のリスクを最小限に抑え、より安全な使用が可能になります。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがあり、アンチエイジング治療、リフトアップ治療、女性化乳房修正手術を得意としている
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