投稿日:2025/03/13
(最終更新日:2025/03/13)
閉経後のセックスの悩みについて:解説と解決方法
閉経はすべての女性に訪れる自然なライフステージの一つです。しかし、閉経を迎えることでホルモンバランスが大きく変化し、体調や気分に影響を及ぼすだけでなく、セックスに関する悩みを抱える女性も少なくありません。膣の乾燥や性欲の低下、パートナーとの関係の変化など、閉経後に生じるさまざまな課題は、適切な知識と対策を知ることで改善が可能です。本記事では、閉経後の女性が直面するセックスの悩みについて詳しく解説し、それぞれの症状に対する具体的な解決方法を紹介します。より快適で充実した性生活を維持するためのヒントをお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
女性の閉経とは
閉経とは、加齢に伴い1年間月経が来ない状態が続いたときに確定される生理的な現象です。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳前後(49〜51歳)とされていますが、個人差が大きく、40代前半で閉経を迎える方もいれば、50代後半まで月経が続く方もいます。
閉経の時期に影響を与える要因
閉経の時期は遺伝的要因が大きく関与すると考えられていますが、それだけではありません。生活習慣や環境要因によっても閉経のタイミングは左右されることが知られています。以下の要素が特に関係するとされています。
① 喫煙
喫煙は閉経を早めることが多くの研究で確認されています。タバコに含まれる有害物質が卵巣機能を低下させるため、喫煙者は非喫煙者に比べて閉経が早まる傾向があります。
② BMI(体脂肪量)
体脂肪が少なすぎると閉経が早まり、適度な体脂肪があると遅れる傾向があります。脂肪細胞は微量のエストロゲンを産生するため、極端に痩せている女性ではエストロゲンが不足しやすく、閉経が早まる可能性があると考えられています。
③ ストレス
慢性的な強いストレスは、閉経を早める要因になり得ます。ストレスが続くと、視床下部–下垂体–卵巣系のホルモンバランスが乱れ、卵巣機能の低下を促す可能性があります。
④ 食生活
食生活も閉経のタイミングに影響を与える可能性があります。特に、大豆製品を多く摂取する人は閉経が遅くなる傾向があるという研究があります。これは、大豆イソフラボンがエストロゲン(女性ホルモン)に似た作用を持つためと考えられています。
⑤ 出産回数
妊娠・出産回数が多い女性ほど閉経が遅くなる傾向があると報告されています。妊娠や授乳期間中は排卵が一時的に抑制されるため、卵巣への負担が軽減され、その結果として閉経が遅れる可能性が示唆されています。
⑥ 性交渉の頻度
近年の研究では、性交渉の頻度も閉経のタイミングに影響を与える可能性が示されています。2019年にRoyal Society Open Science誌に掲載された研究によると、性交渉の頻度が高い女性ほど閉経が遅れる傾向があることが報告されました。
- 性交渉の頻度が高い(週1回以上)グループ の女性は、閉経が遅れる傾向が見られた。
- 性交渉の頻度が低い(月1回未満)グループ の女性は、比較的早く閉経を迎える傾向があった。
この研究では、性交渉が少ないと体が「妊娠の可能性が低い」と判断し、閉経を早める可能性があると考察されています。
閉経後の女性が抱えるセックスの悩み
閉経を迎えると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が大幅に減少 し、身体的・精神的なさまざまな変化が現れます。このホルモンバランスの変化は、セックスにも大きな影響を及ぼし、多くの女性が性交時の痛み(性交痛)、性欲の低下、オーガズムの感じにくさ などの悩みを抱えるようになります。
これらの変化は自然なものですが、適切な対策を取ることで快適な性生活を維持することも可能です。以下においては、閉経後の女性が直面しやすいセックスの悩みについて、詳しく解説していきます。
閉経後の女性が抱えるセックスの悩み①:性交痛
閉経後、エストロゲンの減少によって膣の粘膜が薄くなり、潤いが失われる 「萎縮性膣炎(老人性膣炎)」が起こりやすくなります。これにより、性交時の痛み(性交痛) や 膣の乾燥感、ヒリヒリ感 が生じ、場合によっては出血を伴うこともあります。さらに、膣の粘膜が萎縮することで膣の柔軟性が低下し、挿入時に違和感や圧迫感を覚える こともあります。
この症状はセックスの際だけでなく、日常生活でも外陰部のかゆみや違和感が増えることがあり、不快感を感じる女性も少なくありません。しかし、適切なケアや治療を行うことで、膣の健康を保ち、性交痛を軽減することが可能です。
閉経後の性交痛の対策
- 潤滑剤(ローション・ジェル)の使用
シリコン系や水溶性の潤滑剤 を使用することで、膣の乾燥を補い、摩擦による痛みを軽減 できます。特に、水溶性のものは自然な感触があり、違和感なく使用できるためおすすめです。
- エストロゲン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法(HRT) を行うことで、減少したエストロゲンを補い、膣の潤いを回復させる ことが可能です。経口薬、貼り薬、膣剤など、さまざまな方法があり、医師と相談しながら選択できます。
- 膣用保湿剤の使用
ローションとは別に、膣専用の保湿剤(オイルタイプやジェルタイプ)を日常的に使用することで、膣の乾燥を防ぎ、粘膜の健康を維持 することができます。定期的な使用が効果的です。
- 定期的なセックスや膣マッサージ
セックスの頻度が減ると、膣の血流が滞り、粘膜の萎縮が進むことがあります。定期的なセックスや膣マッサージ を行うことで、膣の血流を促進し、膣の柔軟性や潤いを維持 する効果が期待できます。
- レーザー治療(モナリザタッチ)
モナリザタッチ は、膣粘膜に炭酸ガスレーザーを万遍なく照射し、コラーゲンの生成を促進して膣の弾力や潤いを回復させる治療法です。非ホルモン治療の選択肢として注目されており、HRTを使用できない女性にも適した方法です。
閉経後の女性が抱えるセックスの悩み②:性欲の低下
閉経後、多くの女性が性欲の低下を感じるようになります。その主な原因は、エストロゲンの減少 に加え、性欲を高める働きを持つテストステロン(男性ホルモン)の分泌も低下することにあります。このホルモンバランスの変化により、以前は自然に湧いていた性への関心が薄れ、パートナーが求めても応じる気になれない、性的刺激に対する感度が低下するといった悩みが生じます。
しかし、これは加齢による不可避な現象ではなく、適切なケアや対策を取り入れることで改善できる可能性が十分にあります。
閉経後の性欲の低下を改善する対策
- パートナーとのコミュニケーションを深める
セックスは肉体的な行為だけでなく、精神的なつながりや安心感も重要です。スキンシップやマッサージ、ハグなど、触れ合う機会を増やすことで、自然と性への興味が高まることがあります。言葉でのコミュニケーションも大切で、お互いの気持ちを伝え合うことが関係の質を向上させます。
- 性的な刺激を意識的に取り入れる
セックスへの興味を取り戻すためには、視覚や想像力を刺激する要素を日常に取り入れる ことが有効です。
- 官能小説を読む
- ロマンティックな映画を観る
- ホルモン補充療法(HRT)やテストステロン補充を検討する
ホルモンバランスの変化が性欲低下の大きな原因となるため、ホルモン補充療法(HRT)やテストステロン補充 を行うことで改善するケースもあります。特に、テストステロンは女性の性欲に深く関与するホルモンであり、補充することで性欲が回復する可能性があります。
閉経後の女性が抱えるセックスの悩み③:オーガズムの感じにくさ
閉経後、加齢に伴いクリトリスや膣の感度が低下 し、性的刺激に対する反応が鈍くなることがあります。その結果、オーガズムに達しにくくなる、オーガズムまでの時間が長くなる、以前よりも快感の強さが弱まる などの変化を感じる女性も少なくありません。
しかし、これは決して避けられない問題ではなく、適切な刺激の工夫やトレーニングを取り入れることで、オーガズムの質を向上させることが可能 です。
閉経後のオーガズムの感じにくさを改善する対策
- 刺激の方法を変えてみる
性感帯への刺激方法を工夫することで、オーガズムの感じ方が改善することがあります。
- クリトリスの刺激を意識的に増やす(指やバイブレーターを活用)
- パートナーと新しい体位を試してみる(膣への刺激が変わることで快感が増す)
- リラックスしやすい環境を整える(緊張がオーガズムを妨げることもある)
- 骨盤底筋トレーニングを行う
骨盤底筋を鍛えることで、オーガズム時の筋収縮が強まり、快感を高める効果が期待できます。
- ケーゲル体操(膣を締めるトレーニング)を継続する
- ヨガやピラティスで骨盤周りの筋肉を強化する
- スクワットなど下半身の筋肉を鍛える運動を取り入れる
- セルフプレジャー(マスターベーション)を取り入れる
オーガズムの感度を取り戻すために、自分自身の快感ポイントを再確認することも有効です。
- 自分の体を知り、どのような刺激が気持ちいいかを把握する
- クリトリスや膣の感度を高めるため、定期的にセルフプレジャーを行う
- 性感を高めるためのアイテム(潤滑剤、感度向上ジェルなど)を活用する
閉経後のセックスがもたらすメリット
閉経後のセックスには、身体的・精神的・ホルモン的なメリット が数多くあります。
「閉経=セックスの終わり」ではなく、適度なセックスやスキンシップを続けることで、心身の健康を維持し、より豊かな人生を送ることが可能 です。
① 膣の健康を保つ
🔹 効果
- 膣の血流が促進され、乾燥や萎縮を防ぐ
- 膣粘膜の柔軟性が保たれ、萎縮性膣炎(老人性膣炎)の予防につながる
- 性交痛が軽減され、快適なセックスが可能に
閉経後はエストロゲンの減少により、膣粘膜が薄くなり、潤いが失われる ため、萎縮性膣炎のリスクが高まります。しかし、定期的なセックスや膣の刺激を行うことで血流が促進され、粘膜の健康が維持されることが研究で示されています。
👉 ポイント
「膣を使わないと萎縮しやすい」と言われるように、適度な性交やマスターベーションを取り入れることで、膣の柔軟性を保つことが重要です。
② 女性ホルモンの分泌をサポート
🔹 効果
- エストロゲンの低下による影響を軽減し、女性らしさを維持
- テストステロン(性欲ホルモン)の分泌を促し、活力を向上
- 更年期症状(ほてり・不眠・イライラなど)を緩和
閉経後、エストロゲンの分泌が大幅に減少しますが、セックスやオーガズムは、エストロゲンやテストステロンの分泌を活性化する可能性がある と言われています。特にテストステロンは、性欲・活力・筋力維持に関与する重要なホルモン であり、セックスを楽しむことがエネルギッシュな生活につながると考えられます。
👉 ポイント
セックスを積極的に楽しむことで、更年期の不快な症状を和らげ、女性としての自信を持ち続けることができます。
③ オキシトシン(愛情ホルモン)によるストレス軽減
🔹 効果
- 幸福感やリラックス効果をもたらす
- 不安やストレスを軽減し、精神的な安定につながる
- パートナーとの絆を深め、愛情を強化
セックスやスキンシップの際に分泌される 「オキシトシン」 は、「愛情ホルモン」や「幸せホルモン」 とも呼ばれ、以下のような効果が期待できます。
✅ ストレス軽減
✅ 不安やイライラの抑制
✅ パートナーとの関係性の向上
👉 ポイント
オキシトシンは、ハグやキス、マッサージなどのスキンシップでも分泌されるため、セックス以外の方法でも精神的な安定に役立ちます。
④ 骨盤底筋を鍛え、尿漏れを予防
🔹 効果
- 膣の締まりを維持し、骨盤底筋を強化
- 尿漏れ(腹圧性尿失禁)の予防・改善
- 膣圧が高まり、セックスの快感も向上
閉経後は、膣や膀胱を支える骨盤底筋が衰えやすくなり、尿漏れが起こるリスクが高まります。しかし、セックスやオーガズムによる骨盤底筋の収縮は、この筋肉の維持に役立ち、尿漏れの予防・改善が期待できます。
👉 ポイント
セックスの機会が減った場合でも、ケーゲル体操(膣を締めるトレーニング)を取り入れることで、同様の効果が得られます。
⑤ 閉経後のセックスがもたらすその他のメリット
🔹 心血管の健康維持
- セックスは適度な運動になり、血流を促進する
- 血圧を安定させ、動脈硬化のリスクを軽減する
🔹 睡眠の質を向上
- セックス後にリラックスし、寝つきが良くなる
- オーガズム時に分泌されるホルモンが、深い眠りをサポート
🔹 若々しさを保つ
- 性の充実感が女性としての自信につながる
- ポジティブな気持ちを維持し、精神的な若さを保つ
まとめ
閉経後のセックスに関する悩みは、ホルモンバランスの変化に伴う身体的・精神的な変化 によって引き起こされます。性交痛、性欲の低下、オーガズムの感じにくさといった問題は、多くの女性が経験するものですが、適切な対策を取ることで改善することが可能です。
潤滑剤や膣保湿剤の活用、ホルモン補充療法(HRT)、骨盤底筋トレーニング、モナリザタッチなどを取り入れることで、膣の健康を維持し、快適なセックスを楽しむことができます。 また、パートナーとのコミュニケーションやスキンシップを深めることで、精神的なつながりを強化し、性への興味を取り戻すことも大切です。
さらに、セックスは単なる快楽だけでなく、心身の健康維持にも大きなメリット をもたらします。膣の萎縮を防ぎ、ホルモンの分泌を促進し、ストレスを軽減するだけでなく、尿漏れの予防や心血管の健康維持にも役立ちます。「閉経=セックスの終わり」ではなく、むしろ新たなライフステージの中で、より自分に合った楽しみ方を見つける機会 と捉えることが重要です。
閉経後も自分の体と向き合いながら、無理のない範囲で性生活を楽しむことで、より豊かで健康的な人生を送ることができるでしょう。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。女性器、男性器の整形手術を多く行っている。モナリザタッチを日本にいち早く導入し、これまでのべ1000人以上の患者様を治療している。【関連項目】
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