投稿日:2024/01/13
(最終更新日:2024/11/12)
アクアフィリングは除去すべきか?アクアリフト等の問題点と除去について
アクアフィリング(Aquafilling)は主成分がコポリアミドフィラー(PAAG及びポリアクリルアミドフィラーと類似の物質)の豊胸用の注射剤です。アクアリフト(Aqualift)、ロスデライン(Los Deline)、アクティブジェル(Activegel)と呼ばれている製品もアクアフィリングと全く同じ製品か、ほぼ同じ成分の注射剤です。
筆者はかつてアクアフィリング注入による豊胸を数多く行ってきました。単独の医師によるアクアフィリング豊胸の症例数ではおそらくトップクラスであり、200症例以上行ってきました。ただし、一般社団法人日本形成外科学会、一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS)、一般社団法人日本美容外科学会(JSAS)、公益社団法人日本美容医療協会による「非吸収性充填剤注入による豊胸術に関する共同声明」を重く受けて止めて、現在では新規のアクアフィリング、アクアリフト、ロスデラインによる豊胸は基本的には受け付けておりません。
筆者が運営している青山セレスクリニック及び船橋中央クリニックにおいて過去にアクアフィリング豊胸を受けた患者様には無料でアフターケアを行っています。従って、アクアフィリング注入後に何らかの副作用や合併症が生じた場合はほぼ100%まず当院に連絡があると推測しております。その副作用・合併症は決して多くはなく、5%以下と推量しております。この記事ではアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインの問題点、世間で「アクアフィリングはやばい」と言われている理由と実際にアクアフィリング注入後にどのような副作用や合併症が生じたが、具体的に紹介します。
アクアフィリングの問題点①:予測不能な炎症
アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインの最大の懸念事項は、術後に炎症が起こり得ることです。しかもこの炎症は注入時期とは無関係に突然生じることです。アクアフィリング施術後、例えば1年間は全く副作用を感じることなく快適に過ごしていたのに、1年後経過してから突然片側のバストが腫れたり、痛みが生じたりすることがあります。このように予測不能な時期に突然炎症が起こる得ることはアクアフィリングの最大の懸案事項です。筆者はこれを無菌性炎症という診断名を付けています。無菌性炎症が生じた場合は、注入時と同じように脇のシワに沿って皮膚を5㎜程度切開、そこからアクアフィリングを一部除去するか、全部除去しなければならないことが多いです。そして筆者は無菌性炎症が生じた患者様にはステロイド内服をしてもらうこともあります。ただ、無菌性炎症が起きた場合でも早期に対処すれば、バストの変形などが起こることはほとんどありません。
アクアフィリングの問題点②:下方に移動
アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインはかなり時間が経過してから下方に移動することがあります。バストに注入されていたものが乳房下縁のラインを越えて、腹部に下りることがあります。これをさらに放置すると鼠径部や股間に移動することすらあります。アクアフィリングが下方に移動した場合は通常は炎症を伴っておらず、痛みもありません。このため患者様に肥満がある場合は腹部に下方移動していることを気付かないこともあり、「少しおなかが出たのは太ったせいかな?」と思ってしまうことが多いようです。これをさらに放置すると股間や陰部にまで移動することがあり、陰部の大陰唇までアクアリフトが移動した例は他院で報告されています。アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインが移動した場合は、局所麻酔を行った上で、移動した最も下方の位置で5㎜弱の皮膚を切開すれば、比較的容易にほぼすべて除去することが可能です。
アクアフィリングの合併症の発症時の症状
■痛みと腫れ
アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインにおいて無菌性炎症が生じた場合はまず腫れあがるのが特徴です。痛みを伴わないときもあります。ただ、腫れが強くなった場合は痛みが徐々に現れる傾向があります。
■しこり感
アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインは通常は非常に柔らかく自然ですが、時に大きなしこりのように硬くなることがあります。この場合は、マスク麻酔のもとでマッサージを行えばしこり感はなくなり、再び柔らかい胸になります。ただ、マッサージを契機に無菌性炎症が起こることも稀にあるので、マッサージも注意が必要です。
■発熱はアクアフィリングの感染?
アクアフィリングの合併症として発熱があり、これがしばしば医師の中でも感染していると診断されることがあります。ただ、無菌性炎症は感染を伴わないので、通常は化膿による発熱は起こりません。ですが、炎症が強い場合は、感染ではなく、炎症自体による発熱が起こることがあります。発熱を伴うような無菌性炎症が起こっている場合は相当にバストが腫れている状態であり、すぐにアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインを除去する処置が必要です。アクアフィリングを除去すれば速やかに解熱します。ただし、発熱の原因が感染ではないので、アクアフィリングを除去しないで抗生剤治療を行っても解熱はほとんどしません。
■漏れ出てくる
無菌性炎症が生じて腫れがかなり強くなった状態を放置すると、稀ですが、アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインが体外に漏れ出てくることがあります。漏れ出る体の部位は脇や乳房下縁です。この部位には数㎜の穴が開いてしまい、その穴からアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインが徐々に漏れ出てしまうのです。このように漏れ出てしまう前に適切な処置を受けるべきです。
■出血に伴う貧血
無菌性炎症が強い場合、アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインが入っている部位で炎症による出血が起こることがあります。出血に伴い、貧血症状が起こることがあります。
■移動
アクアフィリングの問題点でも記載したようにアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインが移動することがあります。アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインの移動に気付いた場合早期に抜去したほうが無難です。自然に治ることがなく、更に下方に移動する可能性があるからです。また、移動が起こりやすいかたはアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインの施術直後に炎症が起こり、炎症が落ち着くまで通常より時間を要した場合に起こりやすい傾向があります。
アクアフィリング豊胸は合併症が多いのか?
前述に記載した合併症が起こる確率は5%以下と推量しており、アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインによる豊胸は他の豊胸術と比較してもその合併症の確率は決して高くはないです。ここで他の豊胸治療の合併症を例示し、解説します。
■脂肪注入豊胸の合併症
脂肪注入豊胸ではそもそも採取した脂肪の50%以下(通常20~30%程度)しか脂肪が残りません。そのため一度に理想の大きさのバストにすることは不可能です。合併症としては注入した脂肪がシコリになることがあり、これが乳がん検診時に診断を難しくさせることがあります。また稀ですが、注入した脂肪が石灰化したり、壊死したりすることがあります。
■ヒアルロン酸豊胸
ヒアルロン酸豊胸は持続性が最大2年程度の豊胸術です。比較的合併症が少ないですが、入れたヒアルロン酸が粒状のシコリになることがしばしばあります。
■バッグ豊胸
最新のバッグでない場合や過去にバッグ豊胸を入れた場合は、拘縮という現象が起こることがあり、不自然な硬いバストになることあります。拘縮が起こった場合は、バッグを抜去もしくは入れ替えを行わない限り、自然なバストにはなりません。ただ、バッグの拘縮は最新のバッグの性能と医師の技術で克服されつつある合併症です。
■合併症の確率を比較
上記のとおり、すべての豊胸治療にはある一定の確率で合併症が起こる可能性があり、その頻度はアクアフィリング豊胸と比較しても大きな差はありません。どんな豊胸治療においても合併症が起こり得ることは豊胸治療を受けるにあたって、知っておくべき重要な事項です。
無症状のアクアフィリングを除去すべきか?
前述のアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインの合併症が起こることは稀です。筆者が推量したところではアクアフィリングの合併症の頻度は5%以下です。なお、アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインによる豊胸を複数回受けた場合のほうが合併症の確率はあがります。1回のアクアフィリング治療しか受けていない場合は、その確率は5%よりかなり小さく、1~2%程度と推量しています。では、過去にアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインによる治療を受けて、現在は合併症を発症しておらず、全く問題ない状態の場合、これを事前に抜去すべきでしょうか?筆者の考えとしては抜去すべきではないと考えています。その理由は以下のとおりです。
■今後も合併症が起こる確率がそれほど高くはない
アクアフィリング豊胸後は通常は非常に自然な状態が保たれており、当初言われていたアクアフィリングが5年程度で吸収されることもなく、10年以上も持続する可能性があります。アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインによる豊胸後の現状の形や大きさがよい状態が保たれるならば、今後も合併症が起こる確率が低いことから、あえて除去する必要がないと思います。
■炎症がない場合は除去しにくい
アクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインによる豊胸では炎症がおこっていない場合、乳腺と一体化しているほど自然な形のため、触診では注入材を特定できません。従って、この状態で入れた注入材を除去するには乳房下縁を5cm以上切開する必要あります。大きな切開の瘢痕を残してまで状態に問題がないアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインを除去するメリットはないと考えます。
■炎症が起こった場合にすぐに除去すればよい
無菌性炎症が起こり、バストが腫れた場合は1cm以下の小さい切開層からアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインを比較的容易に除去できます。また、炎症が起こった場合、早期にアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインを除去すれば、除去後にバストの変形が起こることもほとんどありません。従って現在合併症を感じることなく問題がないアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインの注入材は炎症が起こってから除去しても遅くはないと考えます。ただし、炎症がもし起きた場合は速やかに除去することが重要です。
まとめ
筆者の考えとしてはここに記載したアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインの問題点がなければ、現在でもアクアフィリングは非常に良い豊胸術と考えています。なぜなら、見た目も触った感覚もどの豊胸治療よりも自然だからです。また、ここに記載した合併症が起こる確率も5%以下と推量しており、他の豊胸術と比較してもその合併症の頻度には大きな差がありません。ただ、筆者も現在では日本美容外科学会をはじめとする4つの医学会による「非吸収性充填剤注入による豊胸術に関する共同声明」の勧告に従い、新規のアクアフィリング治療は行っていません。筆者自身もアクアフィリングの無菌性炎症と移動が起こる合併症は重く受け止めているからです。特にアクアフィリングの問題点はこれらの合併症がいつ起こるか全く予想できないことです。そういう注入材を医師の立場として積極的にはすすめることができなくなりました。ただ、筆者のクリニックは万全のアフターケアを行っています。過去にアクアフィリングを入れて悩んだり困ったりしている状態ならお気軽にご相談ください。また、他のクリニックにおいて過去にアクアフィリング・アクアリフト・ロスデラインによる豊胸治療を受けた患者様も診察し、ご希望があれば除去することが可能です。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。【関連項目】
豊胸, アクアフィリング, アクアリフト, ロスデライン, アクアフィリング除去
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