投稿日:2024/12/16
(最終更新日:2024/12/18)
てんちむ裁判の判決結果と豊胸効果がない育乳ブラの真実
豊胸手術を受けていたにもかかわらず、バストメイクブラ(ナイトブラ)の効果でバストアップが可能だとYouTubeで大々的に宣伝していたインフルエンサー「てんちむ」。後に彼女が豊胸手術を行っていた事実が明るみに出たことで、大きな批判を浴びました。そして、2024年12月16日、てんちむとこのナイトブラを販売していた企業との間で行われた裁判がついに結審し、てんちむの敗訴が確定。このブログでは、裁判の敗訴判決理由や一連の経緯を詳しく振り返るとともに、豊胸効果を謳うナイトブラやバストメイクブラなどの下着やに騙されないための注意点をお伝えします。
てんちむとナイトブラ騒動①:ナイトブラがバカ売れするまで
てんちむこと橋本甜歌さんは、1993年生まれのタレント、YouTuber、そして起業家として多岐にわたる分野で活躍してきました。幼少期にはNHKの人気番組「天才てれびくんMAX」に出演し、注目を浴びましたが、その後の芸能活動は一時停滞し、挫折を経験することに。しかし、その困難な時期を乗り越え、YouTubeを通じて再起を図りました。リアルな自分をさらけ出す「ぶっちゃけキャラ」が多くの共感を呼び、彼女は再び注目を集める存在となりました。
YouTubeやInstagramでの成功を基盤に、てんちむさんはナイトブラ「バストメイクブラ:モテフィット」をプロデュース。この商品は、彼女自身の「バストアップ体験」をもとに開発されたもので、「寝ている間にバストを整える」というコンセプトが女性たちの支持を集めました。特に彼女のSNSでの影響力は非常に大きく、YouTubeやInstagramを駆使して商品の効果を熱心にアピール。2019年3月には、「ご報告 爆乳が止まりません」というタイトルの動画を公開し、AカップからEカップにバストサイズが成長したことを報告しました。このようなリアルで説得力のあるストーリーテリングが、視聴者に「自分も試してみたい」という購買意欲をかき立てました。
その結果、「モテフィット」は累計約55万枚を販売し、総売上は驚異の約37億円に達しました。

↑バストメイクブラ「モテフィット」の実際の商品パッケージ
てんちむとナイトブラ騒動②:豊胸手術の発覚と賠償
2020年、てんちむさんにとって大きな転機となる出来事が起こります。彼女の元友人であり、同じくインフルエンサーとして活動していたかねこあやさんが、両者の間での仲たがいをきっかけに、てんちむさんが過去に豊胸手術を受けていた事実を暴露したのです。この衝撃的な告発は瞬く間にSNSで拡散され、てんちむさんがこれまで『バストメイクブラ「モテフィット」を使えばバストアップが可能』と宣伝してきた内容と矛盾するものとして大きな批判を呼びました。「嘘をついて商品を売り出していたのではないか」という声がネット上で広がり、彼女の信頼性は一気に揺らぐ事態となりました。
暴露を受けたてんちむさんは、自身のYouTubeチャンネルで謝罪動画を公開。動画の中で、豊胸手術を受けていた事実を認め、これまでの行動について深く反省の意を示しました。同時に、彼女は「ナイトブラを購入した方々に対して責任を果たしたい」として返金対応を表明。この対応には約5億円もの巨額が必要となり、その全額をてんちむさんが自腹で負担することになりました。
てんちむとナイトブラ騒動③:販売会社からの提訴
2024年9月、ナイトブラ「モテフィット」の販売元であるYUIKU株式会社が、てんちむさんに対し約5億円の損害賠償を求める裁判を起こしました。この裁判は、返品対応や売れ残り在庫の問題、ブランドの信頼失墜、さらには契約違反の責任追及といった、複数の要因が絡み合った結果として発展したものです。YUIKU側は、商品の販売における損失がてんちむさんの過去の行動によって引き起こされたと主張しました。
一方、てんちむさんはX(旧ツイッター)で、自身の立場について次のようにコメントしました。「過去にした豊胸を隠してナイトブラを販売したのは反省してます」。しかし同時に、「ですが『これで胸が大きくなりました』と誇大広告を制作して販売したのは企業であり、全責任を私に押し付けられるところに悔しい」と反論し、自身だけが責任を負う状況への不満を明らかにしました。
しかし、2024年12月、東京地方裁判所は、YUIKU株式会社側の主張を認め、てんちむさんに対して約3億8,457万円の賠償金を支払うよう命じる判決を下しました。これによりてんちむの「圧倒的敗訴」(本人談)が確定しました。
参照元:てんちむ、敗訴を報告 「ナイトブラ」巡る5億円裁判で「圧倒的敗訴」 約4億円の賠償命令報道
てんちむだけではない育乳ブラ・ナイトブラの嘘
てんちむさんは、実際には豊胸手術を受けていたにもかかわらず、ナイトブラ「モテフィット」の効果によってバストアップが可能であるかのように宣伝を行っていました。この行為は消費者を誤解させるものであり、その悪質性から、現在の彼女が直面している批判や法的措置については、同情の余地はないと言えるでしょう。しかし、育乳ブラやナイトブラ(バストメイクブラと呼ばれることもあります)に豊胸効果があると謳ってきたのは、てんちむさん一人ではありません。過去には、このような矯正下着に対し、誇大広告として行政指導や販売停止命令が下されたケースが無数に存在しています。
現在でも「育乳」と検索すれば、インターネット上には膨大な数の商品が並び、それぞれが「簡単にバストアップが可能」「理想のバストが手に入る」といった謳い文句で宣伝されています。しかし、これらの商品が宣伝している効果には嘘だらけです。そもそも、これらの商品は一体何をもって「育乳」と呼んでいるのでしょうか。
【動画解説】豊胸バッグ:安全で自然に見せるための施術法とは?
育乳ブラ・ナイトブラの効果とは
「育乳ブラ」と称される商品は、バストの形状やサイズを改善する効果を謳う補正下着の一種です。これらの製品は主に以下のようなメカニズムや効果を根拠に宣伝されています。しかし、これらの主張の多く科学的根拠があるわけではなく、過度な期待を抱かせる広告も少なくありません。
1.バストの脂肪を寄せ集める効果
育乳ブラは、脇や背中に流れた脂肪をバストに集めることで、ボリュームアップを図るとされています。商品説明では、「脂肪を正しい位置に固定することで胸を大きくする」といったフレーズが用いられることが多いですが、脂肪の恒久的な移動や定着が可能であるという科学的証拠はありません。実際には一時的な見た目の改善にとどまるだけです。
2.クーパー靭帯の保護
バストを内部で支える結合組織であるクーパー靭帯は、伸びると元に戻らない性質を持つため、これを保護することがバストの下垂防止に繋がるとされています。育乳ブラは、着用中に重力や動きによる負担を軽減することで靭帯を守り、形状を維持すると主張します。ただし、これが恒久的な下垂予防にどれほど効果があるかについての明確なエビデンスは不足しています。
3.バストの血流やリンパの流れを改善
一部の育乳ブラでは、適度な圧力をかけることで血流やリンパの流れを促進し、乳腺や脂肪の成長をサポートすると謳っています。これが「成長を促す」「育乳を実現する」といった効果に繋がるとされていますが、血流やリンパが直接バストサイズの増加に寄与するという科学的な裏付けはありません。
4.姿勢改善による効果
育乳ブラには背筋を伸ばすためのデザインやサポート機能が備えられているものも多く、「姿勢が良くなることでバストが引き上げられ、大きく見える」とされています。これは物理的な効果であり、見た目の印象を改善する点では一定の効果が期待できますが、実際のバストサイズに影響を与えるものではありません。
育乳ブラ・ナイトブラの本当の効果と知っておくべきリスク
育乳ブラ・ナイトブラは、その広告において効果を強調する巧みな言葉やビジュアルで消費者の興味を引きつけます。しかし、科学的視点から見ると、恒久的なバストサイズの増加や根本的な形状改善を期待するのは現実的ではありません。これらの商品は、あくまで一時的な見た目の補正や形状維持を目的とした補助的な役割を果たすものです。使用中にバストが持ち上がり、整った形に見えることはありますが、これが実際に体の構造そのものに変化を与えるわけではありません。
また、消費者が注意すべき点として、広告や口コミがしばしば誤解を招く表現を含んでいることが挙げられます。「これだけでバストアップが可能」や「劇的な変化が得られる」といった宣伝文句に惑わされるのではなく、商品の本質的な特性を理解することが重要です。
さらに、過剰な期待を抱いて購入した結果、効果が得られず失望するだけでなく、誇張された広告により金銭的な損失や心理的な負担を感じるケースも少なくありません。特に、過度な締め付けや不適切な使用が身体に悪影響を与えるリスクも報告されています。
まとめ
このブログ記事では、てんちむさんのナイトブラを巡る一連の騒動を解説するとともに、ナイトブラや育乳ブラの実態についても詳しく掘り下げました。これらの商品は、「見た目を整える」「バストの形状を維持する」といった補正効果が期待できる一方で、実際にバストサイズを恒久的に増加させる効果については科学的根拠がないことを指摘しました。広告で謳われる「劇的な変化」や「簡単にバストアップ」という文言に惑わされないことが何より大切です。
もし本当に豊胸を希望されるのであれば、美容外科で行われる豊胸治療が現時点で唯一、確実に結果を得られる方法です。豊胸治療において経験豊富な医師のカウンセリングを受け、自分の身体に合った安全な選択をすることをお勧めします。
このブログ記事が、バストの大きさや形状に悩む女性たちにとって、役立つ情報源となり、より良い選択をするための一助となれば幸いです。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがあり、豊胸バッグ手術、アンチエイジング治療を得意としている。日本美容外科学会で「スプリングスレッドを併用したフェイスリフト手術」で学会発表し、好評を得た。また、形成外科学会での勉強会においても講演をおこなっている。【関連項目】
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