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トラネキサム酸(トランサミン)はなぜシミ・肝斑に効くの?
更新日:2025/07/22
公開日:2025/07/25
「トラネキサム酸って、もともと止血剤なのにシミにも効くの?」 そう不思議に思っている方も多いのではないでしょうか。シミや肝斑に悩む皆さんに向けて、美容皮膚科医の視点からトラネキサム酸の効果と安全性についてやさしく解説します。
トラネキサム酸(トランサミン)は本来、抗炎症薬・止血剤として使われてきたお薬ですが、それがなぜお肌のシミや肝斑に有効なのか、不思議ですよね。
この記事では、臨床での経験や実例も交えながら、その秘密に迫ります。薬は長期間服用するものであるため、特に「安全性」に重点を置いてお伝えし、市販薬(トランシーノ)との違いについても触れていきます。
トラネキサム酸とは?本来の用途と歴史

まずはトラネキサム酸という薬について簡単にご説明します。トラネキサム酸は実は人工的に合成されたアミノ酸の一種で、1960年代に日本で開発された比較的新しいお薬です。もともとは止血剤として誕生し、外科手術後の出血予防や抜歯後の止血、さらには風邪をひいたときに喉の炎症や痛みを和らげる薬(商品名「トランサミン」)として古くから広く処方されてきました。
皆さんの中にも、「喉が痛いときにトラネキサム酸を飲んだことがある」という方がいるかもしれませんね。実は皮膚科領域でも歴史的にトラネキサム酸が使われてきた経緯があります。例えば、昔はじんましんや湿疹などの治療に使われていたこともありましたが、現在ではそれらの用途は少なくなりました。
一方で肝斑(かんぱん)という女性に多いシミの一種に対しては、現在でもトラネキサム酸がよく使われており、近年さらに使用頻度が増えてきている印象です。では、その止血剤としての薬がなぜシミや肝斑にも効果を発揮するのでしょうか?次の章で詳しく見ていきましょう。
トラネキサム酸がシミ・肝斑に効く理由
トラネキサム酸がシミや肝斑の治療に用いられるのは、その抗炎症作用とメラニン産生抑制作用によって、過剰な色素沈着を改善できるためです。難しい話に聞こえるかもしれませんが、ご安心ください。ポイントをかみ砕いて解説しますね。
メラニン産生を抑える作用(抗プラスミン作用)
日焼けや肌荒れなどで肌に炎症が起こると、体内で「プラスミン」という酵素が増加します。増えたプラスミンは肌の色素細胞(メラノサイト)を刺激し、メラニン色素を過剰に作らせてしまいます。これがシミ・肝斑の原因の一つです。トラネキサム酸にはこのプラスミンの働きをブロックする効果(抗プラスミン作用)があり、その結果メラニン産生を抑制してシミや肝斑を薄くする効果が期待できます。言い換えれば、「炎症による色素沈着の連鎖」を断ち切ってくれるのです。

炎症を鎮める作用
トラネキサム酸は、肌で炎症が起きた際に細胞から放出されるプロスタグランジンなどの物質を抑制する働きもあります。プロスタグランジンは炎症のシグナル伝達物質であり、メラノサイトを活性化してメラニン生成を促す一因です。
トラネキサム酸がこれらを抑えることで、肌の炎症そのものを鎮め、結果的にメラニンの過剰生成を防ぐ効果が期待できます。肌の赤みや炎症後にシミが濃くなる「炎症後色素沈着」の予防にも役立つというわけですね。
血管や細胞への作用
最新の研究では、トラネキサム酸が皮膚の中の特定の細胞や血管にも作用することが示唆されています。例えば、アレルギー反応などに関与する肥満細胞(マスト細胞)の増殖を抑えたり、肌内部の過剰な新生血管(余分な毛細血管)の形成を減少させたりする作用です。肝斑では皮膚の血管拡張や肥満細胞の増加が関与していることが知られており、トラネキサム酸はこうした要素にもアプローチすることで肝斑の発生を抑えると考えられています。
以上のように、トラネキサム酸は多角的な作用でシミ・肝斑にアプローチします。簡単にまとめると「炎症を鎮めてメラニンのもとを断つ薬」と言えるでしょう。止血剤として使われていたのは、血液を溶かすプラスミンを抑える性質があったからですが、その延長で「炎症による色素沈着を抑える効果」が偶然見出されたのです。「抗炎症薬・止血薬でありながら美白効果がある」というのは一見不思議ですが、こうした作用機序を知ると納得できるのではないでしょうか。
臨床例と効果の実際

では、実際にトラネキサム酸を服用するとシミや肝斑はどの程度よくなるのでしょうか。美容皮膚科医としての臨床経験や研究データから、その効果のほどをお伝えします。
臨床での印象
私のクリニックでも肝斑治療にトラネキサム酸の内服を取り入れることがありますが、だいたい半年ほど根気よく飲み続けると、7~8割の患者さんが「シミが薄くなってきた」と実感されます。もちろん個人差はありますが、多くの方が数ヶ月経ったあたりから鏡の自分の肌の変化に気づき始めるようです。「ファンデーションの量が以前より少なくて済むようになった」「コンシーラーで隠していた肝斑が目立たなくなった」といった声をよく聞きます。
特に、他の治療と組み合わせることで効果を高めることが多く、レーザートーニングとビタミンイオン導入を併用するケースがほとんどです。そのため、「トラネキサム酸単体の効果はどれぐらいか」という厳密な評価は難しいのですが、総合的な治療の中でトラネキサム酸が肝斑改善に大きく寄与しているのは間違いないと感じています。
臨床試験のデータ
小規模ながら興味深い臨床試験も報告されています。一例を紹介すると、肝斑患者さんを対象にトラネキサム酸の効果を検証した研究では、24週間(約6ヶ月)経過時点で約70%の患者において肝斑の面積・濃さが「75%以上の改善」と判定される顕著な効果が認められたという結果があります。残りの患者さんの多くも半分以上の改善が見られたとのことで、数字の上でもおよそ7~8割の方に有効という印象が裏付けられています。
やはり最低でも2~3ヶ月、できれば6ヶ月程度は継続して服用することで効果がはっきりしてくるのです。
患者さんの実体験(ケース紹介)
実際に私が診た患者さんの一例をご紹介しましょう。40代の女性Aさんは、頬に左右対称に広がる肝斑に長年悩まされていました。妊娠・出産を機に濃くなった肝斑を何とかしたいと来院され、トラネキサム酸内服とレーザートーニング・ビタミンイオン導入の併用療法を開始しました。
Aさんは当初治療に半信半疑でしたが、3ヶ月を過ぎる頃から「なんだか薄くなってきた気がする」と実感。6ヶ月経つ頃にはご本人もはっきりわかるほど肝斑が改善し、久しぶりに会ったご友人からも「お肌が明るくなったね!」と言われたそうです。トランサミンの副作用も特になく、Aさんは「もっと早く試せば良かった」と笑顔でおっしゃっていました。
このように、トラネキサム酸とレーザートーニングを組み合わせた治療は、一般的なレーザーでは効果が出にくかった肝斑に対して、新たな希望をもたらす治療と言えるでしょう。なお、トラネキサム酸による単独治療の場合は、トラネキサム酸の内服をやめてしまうと、肝斑が再発する可能性がある点には注意が必要です。残念ながら、一度良くなった肝斑もトラネキサム酸の服用を中止するとまた元に戻ってしまうことがあるのです。
これは、トラネキサム酸の有効成分は体内で代謝されやすく、効果が一過性であるためと考えられています。そのため、治療効果を維持するには、レーザートーニングとビタミンイオン導入を併用した治療を受けることが望ましいとされています。

↑肝斑に対してレーザートーニング5回施術の前後
レーザートーニング 5回 110,000円(税込)
※照射後一時的に、赤みが出ることがあります。
トラネキサム酸の安全性について
シミや肝斑に効果があるとはいえ、「お薬を長く飲むのは副作用が心配…」という方もいらっしゃるでしょう。ここではトラネキサム酸の安全性について、詳しくお話しします。
基本的な安全性
結論から言えば、トラネキサム酸は非常に安全性が高く副作用が少ない薬です。もともと医療現場で何十年も使われてきた実績があり、その安全性の高さから市販薬(OTC)としても販売されているほどです。
原価も安く扱いやすいため、現場の医師にとっても患者さんにとっても使いやすい薬となっています。もちろん「安全な薬=副作用ゼロ」というわけではありませんが、トラネキサム酸の場合副作用のリスクはごく低いことが知られています。
起こり得る副作用と頻度
トラネキサム酸で報告されている副作用は、いずれも頻度が非常に低く軽微なものがほとんどです。その一例を挙げると、消化器系の不調(食欲不振、吐き気、胃のむかつき、下痢など)が0.1~1%未満、皮膚のかゆみや発疹などの過敏症状が0.1%未満、眠気も0.1%未満という頻度です。いずれも1%未満のごく少数のケースでしか起きないことが分かっています。
これらが起きた場合も大半は軽度で、一時的に服用を中止すれば改善するものです。また極めてまれなケースとして、人工透析中の患者さんに大量投与した際にけいれんが起きたとの報告がありますが、通常の使用量ではまず心配いりません。
血栓症のリスクについて
トラネキサム酸は「止血剤」として血を固める方向に作用する薬ですので、「飲むと血栓(血の塊)ができやすくなるのでは?」と不安に思う方もいるかもしれません。この点については、確かに血液を固まりやすくするリスクは理論上考えられます。しかし実際には、健康な人が適切な用量を守って服用する限り、血栓症を起こす副作用は極めてまれです。
医療用として処方する際には、明確な血栓リスクのある方には処方しないというルールを徹底していますのでご安心ください。
服用を避けた方がよいケース
以下のような方は、トラネキサム酸の内服を原則として避けるか慎重な判断が必要です。
- 血栓症の既往がある方(過去に深部静脈血栓症、肺塞栓、心筋梗塞、脳梗塞などを起こしたことがある場合)
- 血液が固まりやすい傾向のある方(先天性の凝固異常や消費性凝固障害と診断された方など)
- 大きな手術直後で長期間寝たきりの状態にある方(術後安静で血流が滞りやすい状況にある場合)
- 重度の腎不全がある方(腎機能が極端に低下していると、薬の排泄がうまくいかず副作用リスクが増します)
- ピル(経口避妊薬)を服用中の方(ピル自体が血栓リスクを高めるため併用は注意)
- 妊娠中・授乳中の方(妊娠中でも使えるお薬とはされていますが、美容目的での服用は基本的に控えます)
- 高齢の方や喫煙者の方(一般に血栓リスクが高まるため慎重に判断します)
- トラネキサム酸でアレルギー症状を起こしたことがある方(過去に服用して発疹など過敏症状が出た場合は使用不可)
上記に当てはまらない大多数の方にとっては、トラネキサム酸は正しく使用すれば重篤な副作用の心配が少ない安全なお薬と言えます。もちろん、万が一体調に異変を感じたときは速やかに服用を中止し、医師に相談してください。
白髪になるって本当?
ところでインターネット上などで「トラネキサム酸を飲むと白髪になる」という噂を耳にした方もいるかもしれません。しかしこれは誤解ですのでご安心ください。白髪は毛根の色素細胞が何らかの原因で減少・消失することで起こりますが、トラネキサム酸は色素細胞そのものを傷つけたり殺したりする作用はありません。
したがって、トラネキサム酸服用が原因で髪が白くなることは医学的に考えにくいのです。実際、私の患者さんでも「飲んでいて白髪が増えた」という報告は今のところありません。どうぞ安心して下さい。
参照元:soujinkai.or.jp
市販薬(OTC)のトラネキサム酸と医療用処方の違い

トラネキサム酸は病院で処方されるだけでなく、ドラッグストアなどで市販薬(OTC)としても購入できることをご存知でしょうか?代表的な商品名に「トランシーノII」(第一三共ヘルスケア)などがあり、「肝ぱん斑改善薬」として薬局で手に入ります。
市販薬として手軽に入手できるのは便利ですが、処方薬と市販薬ではいくつか違いがありますので押さえておきましょう。
用量・用法の違い
市販のトラネキサム酸配合薬は、1日あたりの服用量が750mg程度までに制限されています。例えばトランシーノIIの場合、1回2錠(トラネキサム酸375mg)を1日2回内服し、1日の合計量は750mgとなります。一方、美容皮膚科で処方されるトラネキサム酸錠は250mg錠や500mg錠があり、状況に応じて1日750mg~最大1500mg程度まで用いることがあります。
つまり、医療機関では市販薬の倍量程度まで投与量を調整できるわけです。ただし近年の研究では、「1日500mgでも1000mgと同程度に効果的」**との報告もあり、必要以上に多く飲めば良いというものでもないことがわかっています。医師は患者さん一人ひとりの状態に合わせ、最適な用量を判断して処方しています。
服用期間の違い
市販薬の注意書きを読むと、「8週間(約2ヶ月)使用したら一旦服用を中止する」という用法・用量が定められています。これは市販薬としての安全マージンを考慮し、臨床試験で有効性が確認された期間(8週間)を上限とし、それ以上の連続使用データが不十分なため休薬期間を設けているだけなのです。実際、トランシーノIIの臨床試験では服用終了後に肝斑が再燃するケースの多くが「休薬2ヶ月後」だったため、「2ヶ月飲んだら2ヶ月休む」というサイクルは決して医師として推奨できる飲み方ではありません。
一方で、病院での肝斑治療では3ヶ月でピタリと中止することは少なく、症状に応じて半年から場合によっては1年ほど継続するケースもあります。医師の管理下では定期的に経過を確認しながら、安全に留意しつつ必要な期間続けることが可能だからです。
例えば先述のAさんも6ヶ月間服用を続けましたが、これは医師が副作用の有無や効果の出方を見ながら判断した結果です。市販薬では自己判断での長期連用は推奨されませんが、医療機関では専門家の判断のもとで柔軟に対応できるという違いがあります。
効果の違い
「市販のトラネキサム酸を毎日飲んでいるけれど、正直あまり効果が感じられない…」という声を耳にすることがあります。市販薬も有効成分は同じトラネキサム酸ですが、上述のように服用量や期間に制限があること、また単剤で飲んでも効果が緩やかであることなどから、人によっては劇的な変化を感じにくい場合もあります。その点、美容クリニックでは医師が処方する医療用のトラネキサム酸を用いるため有効成分量も確保されており、さらにレーザートーニングなどの他の治療との組み合わせによる相乗効果も期待できます。
実際、レーザートーニングとビタミンイオン導入を組み合わせれば、なかなか消えなかった肝斑も大幅な改善が期待できます。総合的に見ると、「より効果的に肝ぱんを治したい」「安全に長期管理したい」場合は、市販薬より医療機関での治療がおすすめと言えるでしょう。

まとめ
トラネキサム酸(トランサミン)は、元々は止血や抗炎症のために開発・使用されてきた薬ですが、その副産物的な効果としてシミ・肝斑を改善する作用が認められ、美容皮膚科の分野でも活躍するようになりました。炎症を抑えてメラニンの生成をブロックするというユニークな作用機序により、従来の治療だけでは改善が難しかった肝斑にも有効性が報告されています。実際、私の患者さん達の多くもトラネキサム酸で肌のトーンが明るくなるのを実感されています。
安全性の面でも優れた薬であり、適切に使えば重篤な副作用はほとんどありません。市販薬として手に入ることからも、その安全性の高さがうかがえます。ただし、「薬である以上、副作用の可能性はゼロではない」という点も忘れず、自己判断で無理に使い続けたりせず不安なときは専門の医師や薬剤師に相談しましょう。
また、市販薬との違いでも触れたように、肝斑のような繊細なシミ治療は医療機関での診断・治療が望ましいです。市販薬で効果を感じにくかった場合でも、医師のもとで適切な用量・期間でトラネキサム酸を利用し、他の治療と併用することで改善が期待できるケースも多いです。お肌の状態に合わせてオーダーメイドの治療プランを立ててもらえるのは美容皮膚科ならではのメリットですね。
トラネキサム酸は決して「怖い薬」ではなく、正しく使えば頼もしい味方になってくれます。もちろん魔法のように一晩でシミが消えるわけではありませんが、時間をかけてケアを続けることで少しずつお肌の変化が感じられるはずです。その過程で不安なことや疑問が出てきたら、遠慮なく専門家に相談してください。あなたの肌と向き合う心強いパートナーとして、トラネキサム酸を上手に活用していただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が皆さんの美肌づくりの一助になれば幸いです。シミや肝斑にお悩みの方は、一人で悩まずぜひ一度美容皮膚科で相談してみてくださいね。あなたに合った最適な治療法がきっと見つかることでしょう。一緒に前向きにケアを続けて、明るく透明感のあるお肌を目指しましょう!
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。
1999年慶応義塾大学医学部卒。
外科専門医(日本外科学会認定)。
美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。
美容外科医師会理事。
美容外科医として20年以上のキャリアがあり、美容外科医でありながら、肌治療にも精通している。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。シミ治療、にきび、ニキビ跡治療に定評がある。
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責任者:元神賢太
最終学歴:H11年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H15年船橋中央クリニック開業
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最終学歴:S43年慶応義塾大学医学部卒業
勤務歴:H28年青山セレスクリニック管理者






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