投稿日:2024/02/10
(最終更新日:2024/07/26)

顔汗・頭の汗がすごいのはなぜ?病態と止める方法について

顔汗・頭の汗がすごいので悩んでいる女性

多くの人が抱える悩み、「顔の汗がすごい」、「頭の汗が止まらない」、「汗で髪の毛がびっしょり」というキーワードで日々インターネットを賑わせています。この問題に対し、一体何が原因なのか、どのようにして対処すればよいのか、多くの方が疑問を持っていることでしょう。本記事では、これらの顔や頭に汗をかく原因や病気について医学的根拠に基づき詳細に解説し、さらに頭からの汗や顔汗を止める方法に焦点を当て、治療方法を幅広くご紹介します。日々の生活において、汗による不快感や社交的な悩みを抱える方々へ、この記事が一助となれば幸いです。

頭と顔に大量の汗をかく病気があります

外的な刺激や体温上昇といった明確な原因がないにも関わらず、顔や頭から滝のように汗が噴き出すことがあります。頭からの大量に汗により常に髪の毛が汗でびっしょりという状態になることもあります。このような状態は「原発性頭部顔面多汗症」と呼ばれ、汗腺の過活動により引き起こされる特殊な病態です。この症状は「原発性局所多汗症」というカテゴリーに属し、体の特定の部位が原因不明で異常に発汗するという特徴を持っています。原発性局所多汗症には、原発性頭部顔面多汗症の他にも、腋窩多汗症(わきの下の過剰な発汗)、手掌多汗症(手のひらの過剰な発汗)、足底多汗症(足の裏の過剰な発汗)、掌蹠多汗症(手のひらと足の裏の両方での過剰な発汗)などが存在します。さらに、特定の部位に限らず全身から過剰な発汗が見られる場合は「原発性全身性多汗症」と診断されます。これらの症状は、日常生活において大きな影響を与えることがあり、時には社会生活や心理的な健康にも影響を及ぼすことがあります。そのため、適切な診断と治療が求められる重要な病態と言えるでしょう。

顔汗と頭汗の役割

多くの人が経験する顔汗や頭汗ですが、これらには重要な生理的な役割が存在します。特に、私たちの脳は高温に非常に敏感であり、過剰な熱に対して保護される必要があります。このために、頭や顔の皮膚は体の他の部位と比べて発汗が起きやすい構造になっており、これが「脳冷却」の生理的意義を持つのです。具体的には、頭部や顔面の発汗閾値は他の全身部分と比較して低く設定されています。これは、低体温の状況であっても、他の部位では発汗しない場合でも、頭や顔から汗が生じる可能性があることを意味しています。頭汗・顔汗は脳を冷却し、適切な温度で機能させ続けるために非常に重要です。この頭部・顔面の発汗は、通常温熱刺激によって誘発されるため、全身の温熱性発汗と同じく「体温調節性発汗」と分類されます。このように、顔汗や頭汗は単なる不快な症状ではなく、私たちの健康と安全を守るための、非常に重要な生体機能の一部なのです。この点を理解することで、汗に対する見方が変わるかもしれません。

冷や汗も実は顔汗と頭汗

冷や汗も顔汗

私たちは過度な緊張やストレスの状況下で、多量の汗をかく経験をしばしばします。この種の発汗は「精神性発汗」と呼ばれ、体温が低い状況下でも生じることが一般的です。このため、この現象は一般的に「冷や汗」と称されます。特に、「冷や汗」は頭部や顔面に限らず、腋窩や手足などの他の部位にも現れることがあります。冷や汗には、実は重要な生理学的意義があります。これは、精神活動が亢進した際の脳の冷却を助けるための発汗と考えられています。緊張やストレスといった精神性の刺激によって誘発されるため、頭部や顔の冷や汗は、体温調節の一環としての発汗とも言えるのです。このように、冷や汗は単なる不快感を伴う現象ではなく、私たちの脳を適切な状態で保持するための、重要な役割を担っていることが分かります。

顔汗、頭汗と辛い食べ物の関係

辛い食べ物を口にした際に顔や頭から汗をかく現象は、多くの人が経験していることでしょう。一般的には、この種の発汗を単なる味覚反応だと考えがちですが、実はもう少し複雑なメカニズムが関与しています。一般に、「味覚性発汗」とは、甘味や酸味に反応して顔面に限定して生じる発汗を指します。しかし、辛い食べ物による発汗はこのカテゴリーには当てはまりません。

辛い食べ物、特に唐辛子に含まれるカプサイシンは、体の温度感受性受容体を直接刺激する作用があります。これにより、食事中に頭や顔だけでなく、全身の発汗が促進されるのです。特に顔や頭部の発汗が多いのは、これが脳冷却を目的とした「体温調節性発汗」であるためです。

このように、辛い食べ物を摂取した際の顔汗や頭汗は、単に味覚の反応というよりも、私たちの体が脳を適切な温度で保つための自然な生理反応であることが理解できます。

顔汗・頭汗が病気と診断される場合

顔汗や頭汗は、脳冷却という重要な生理的役割を持ち、通常は正常な生理的反応の一部です。しかし、すべての顔汗や頭汗が健康的な現象とは限りません。緊張やストレスなどの精神的負荷に対して、病的に過度な発汗を引き起こす場合、これは「頭部多汗症・顔面多汗症」と診断されます。頭部顔面多汗症では、通常の体温調節性発汗とは異なり、反射的に大量の顔汗や頭汗が生じることが特徴です。この過剰な発汗は、時に数時間にわたって持続することもあり、日常生活において著しい不快感や社会的な制約をもたらすことがあります。

頭と顔の汗悩む人は実は多い

顔汗・頭汗で悩む人は多い

多汗症に関する幾つかの調査から、頭部や顔の汗に悩む人が意外に多いことが明らかになっています。2013年の調査では、対象となった5807人の中で頭部多汗症の割合は4.7%にのぼりました。これに対し、腋窩多汗症は5.75%、手掌多汗症は5.33%、足底多汗症は2.79%でした。さらに、2020年のより広範な60,969人を対象にした調査では、原発性頭部顔面多汗症の有病率が3.6%であることが判明しました。これに比べて、腋窩多汗症は5.9%、手掌多汗症は2.9%、足底多汗症は2.3%という結果でした。これらの数字は、頭部や顔の多汗症が手足の多汗症と比較しても比較的高い割合で存在することを示しており、医師である私自身もこの事実には驚きました。特筆すべきは、原発性頭部顔面多汗症を自覚しているにも関わらず、医師の診察を受けているのはわずか3.5%に過ぎないことです。これに対して、手掌多汗症では9.6%、足底多汗症では10.2%が医師の診察を受けています。このことから、頭部や顔の多汗症に対する認識の低さや医療機関を訪れる傾向の少なさが伺えます。この調査結果から、頭部顔面多汗症が実際には人口の約3〜4%程度に影響していることが示唆されています。

顔汗、頭汗の割合の表

出典元:

Fujimoto T, Inose Y, Nakamura H, et al: Questionnaire based epidemiological survey of primary focal hyperhidrosis and survey on current medical management of primary axillary hyperhidrosis in Japan, Arch Dermatol Res, 2022.

顔汗・頭汗の多汗症の症状

一般的に多汗症に悩む人の中で、女性が多い傾向にありますが、頭部顔面多汗症に関しては男性の割合がやや高く、症状の経過が長期にわたることが特徴です。発症年齢は主に成人前後から自覚され始めることが多く、耳の上部や側頭部、後頭部、そして前額部から大量の汗が流れ落ちるほどの状態になることが報告されています。このように頭汗・顔汗の症状は、特に髪の生え際周辺で顕著に現れることが一般的です。頭汗・顔汗の多汗症は、熱い食べ物や飲み物を摂取した後、または物理的または情動的なストレスを受けた際に発症することがあります。発汗は通常、数分で収まることが多いのですが、状況によっては数時間から1日中続くこともあるとされています。

顔汗・頭汗は遺伝?原因は?

顔汗が多い原因に悩む男性

手のひらや足の裏で過剰な発汗が起こる掌蹠多汗症が遺伝的要素を含むことが知られていますが、頭部顔面多汗症が遺伝するかどうかについては、現時点では明確な答えが得られていません。ただし、頭部顔面多汗症の根本的な原因については、他の多汗症と同様に、汗の分泌を制御する自律神経、特に交感神経の過剰反応が関与していると考えられています。この交感神経の過剰反応は、個々人の個性や体質の一部と見なされることもあります。しかし、この反応が日常生活に支障をきたすほどの過剰な発汗を引き起こす場合、原発性頭部顔面多汗症としての診断がなされることがあります。

顔汗・頭汗を止める方法

頭部顔面多汗症の治療法として、現在いくつかの効果的な方法があります。以下にそれらを効果の高い順に紹介します。

1.ボトックス注射

ボトックス注射は頭部顔面多汗症治療に最も効果的な選択肢の一つです。ボツリヌス毒素を使用して汗腺の神経を一時的に麻痺させ、発汗を抑制します。この治療法は約6ヶ月間効果が持続し、症状の重症度に応じて繰り返し治療が行われることが一般的です。効果の持続期間には個人差があり、最長で1年程度続くこともあります。副作用は特に報告されていません。【保険適用外】

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2.局所制汗剤(塩化アルミニウム製剤)

塩化アルミニウム製剤の局所制汗剤も効果的な治療法の一つです。この制汗剤は、汗腺を一時的に塞ぎ、汗の分泌を減少させます。30~40%濃度の塩化アルミニウムサリチル酸ゲルの使用により、約60%の患者が症状の改善を報告しています。ただし、刺激性接触皮膚炎などの副作用が一般的です。【保険適用外】

3.内服薬

抗コリン薬は、神経伝達物質を抑制し、発汗を減らすために用いられる薬です。全身の汗腺に作用するため、ボトックス注射や局所制汗剤が効果を示さない場合に使用されます。若年者においては、長期使用による認知機能への影響が不明であるため、慎重な判断が必要です。【保険適用】

4.交感神経遮断術(ETS)

交感神経遮断術(ETS)は、手掌多汗症治療においては一般的に行われる手術ですが、頭部顔面多汗症には通常適用されるべきではありません。その主な理由は、手術後にほぼ避けられない代償性発汗が生じるためです。代償性発汗とは、胸部や背中、腹部、腰、お尻、太ももなど、手術前にはほとんど問題とならなかった体の特定の部位から過剰な汗が生じる状態を指します。この代償性発汗は、治療部位の発汗を上回る精神的な負担をもたらす可能性があり、交感神経遮断術(ETS)が多汗症の治療方法として推奨されることが少ない理由の一つです。【保険適用】

5.その他の治療について

腋窩多汗症や手掌多汗症、足底多汗症の治療に用いられる外用の抗コリン薬、イオントフォレーシス、ビューホットなどは、頭部顔面多汗症に対しての安全性や効果が確認されていないため、この種の治療は行われていません。頭部顔面多汗症の治療には、これまで紹介した方法の選択が優先されるべきです。

頭汗・顔汗の治療法でおすすめはボトックス

日本皮膚科学会が公表している「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」に掲載されている複数の治療法は、推奨度C1として均等に評価されています。しかし、実際の臨床現場で頭部顔面多汗症の治療効果を最も実感しやすいのは、ボトックス注射だとされています。ボトックス注射は、他の治療方法に比べて治療直後からの改善が顕著で、実施の手間も比較的少ないのが特徴です。注射時の痛みが懸念されることがありますが、私はマスク麻酔を併用することで、患者さんが完全に無痛でボトックス注射を受けられるよう配慮しています。この方法により、治療への不安を軽減し、より多くの患者さんに快適な治療体験を提供できるよう努めています。頭部顔面多汗症に悩む方々には、この治療法を特におすすめしています。

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頭汗、顔汗の治療ガイドライン

↑「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版」に掲載されている頭部顔面多汗症の治療のアルゴリズムを表した図表

出典元:

原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版

顔汗・頭汗の多汗症でよくあるご質問

Q:顔から汗がすごい出る原因は何ですか?

A:交感神経の過剰反応が原因です。この過剰反応は各個人の体質によるものです。

Q:顔に汗をかくのを治す方法はありますか?

A:ボトックス注射が最も簡便で有効な治療方法です。ボツリヌス毒素を使用して汗腺の神経を一時的に麻痺させ、発汗を抑制します。この治療法は約6ヶ月間効果が持続し、症状の重症度に応じて繰り返し治療が行われることが一般的です。効果の持続期間には個人差があり、最長で1年程度続くこともあります。副作用は特に報告されていません。

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Q:顔と頭だけ汗をかくのはなぜですか?

A:交感神経の過剰反応が原因です。この過剰反応は各個人の体質によるものです。手のひらや足の裏だけ汗が多い人もいます。この病態を原発性局所多汗症と言います。

Q:頭と顔の汗がすごい 何科?

A:皮膚科もしくは多汗症を専門としている美容外科がよいです。

Q:頭皮に汗をかきやすい人はどのような人ですか?

A:特に特徴はありません。汗をかきやすいことは個人の体質に考えるべきです。

Q:顔に汗がよく出る原因は何ですか?

A:交感神経の過剰反応が原因です。この過剰反応は各個人の体質によるものです。

Q:頭と顔に大量の汗をかくのは病気ですか?

A:日常生活に不自由がでるほど汗が多い場合は原発性頭部顔面多汗症と診断されます。原発性局所多汗症は過剰な発汗が明らかな原因がないまま 6 カ月以上認められ,、以下の6症状のうち2項目以上当てはまる場合に診断されます。

1)最初に症状がでるのが 25 歳以下であること

2)対称性に発汗がみられること

3)睡眠中は発汗が止まっていること

4)1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること

5)家族歴がみられること

6)それらによって日常生活に支障をきたすこと

Q:頭からの汗を止める方法はありますか?

A:ボトックス注射が最も有効です。ボツリヌス毒素という薬剤を使用して汗腺の神経を一時的に麻痺させ、発汗を抑制します。この治療法は約6ヶ月間効果が持続し、症状の重症度に応じて繰り返し治療が行われることが一般的です。効果の持続期間には個人差があり、最長で1年程度続くこともあります。副作用は特に報告されていません。

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Q:多汗症は保険適用になりますか?

A:治療方法によって保険適用となります。また、治療部位によっても治療の保険適用が異なります。

Q:顔面多汗症の手術費用はいくらですか?

A:自由診療でのみ治療が可能はボトックス注射はおおよそ55,000円~84,000円が治療の相場です。

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まとめ

顔汗、頭汗の相談は信頼できる医師に

この記事を通して、頭部顔面多汗症に苦しむ方々に向けて、日本皮膚科学会が提供する「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」を基に、最新の治療法について詳細にご説明しました。頭汗や顔汗の問題で深く悩む方々が、病院での治療が可能であることを知らず、適切な解決策を見つけられないケースが多いのが現状です。このブログ記事、無痛麻酔を併用したボトックス注射という、効果的で実用的な治療方法を広く伝える一助となればと思います。頭汗・顔汗の多汗症の治療に関しては、常に最新の情報をもとに、患者さん一人ひとりに最適な治療法を提供することが重要です。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

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