投稿日:2024/04/03
(最終更新日:2024/04/06)
豊胸手術に悪性リンパ腫のリスク?バッグはトラブルになる?
2024年4月3日のヤフーニュースのトップ記事に「豊胸手術には悪性リンパ腫のリスクも」という衝撃的なタイトルで豊胸バッグにより悪性リンパ腫と言われる血液の癌の一種になる危険性があることを思わせるようなタイトルの記事がアップされました。豊胸バッグが多くの女性にとって関心がある美容治療であるだけにこの真偽については大きな関心事となっていることでしょう。私は医師として、この記事の内容を深く掘り下げ、豊胸バッグの発がん性のリスクに関する真実を検証し、読者の皆様にその真意を明らかにしていきたいと考えています。
豊胸手術には悪性リンパ腫のリスク??
【「関心高まる「美容医療」~トラブルから身を守る(2)豊胸手術には悪性リンパ腫のリスクも」というタイトルのヤフーニュース記事は下記のとおりです。
■ヤフーニュースの記事の転載
女性に人気のある美容整形のひとつが「豊胸手術」だ。シリコーンバッグの挿入やヒアルロン酸注入、脂肪注入など、手術法はさまざまだが、例えばシリコーンバッグを挿入した場合、長期の経過観察が大切だという。日本医科大学付属病院美容外科・美容後遺症外来で診察を行う朝日林太郎氏に聞いた。自分の理想的なバストをすぐ手に入れられる「豊胸手術」は、豊胸用のシリコーンバッグ(インプラント)が開発された1960年代から現在に至るまで高い人気を誇る。インプラントはヒアルロン酸注入や脂肪注入に比べて確実なバストアップや持続性の高さがメリットとされている。ただ人工物である以上、体に吸収されることはないため、感染やバッグの破損などのトラブルのリスクを常に抱えることになる。 高齢女性において比較的多く見られる合併症としては、インプラントの破損や感染などのトラブルである。 「ある80代の女性は、20年前にインプラントの挿入による豊胸手術を受けていたといいます。半年前から右胸が腫れてコブのようなしこりが見られ、1週間前に表面の皮膚が張り裂けたと当院を受診。診るとインプラントが破損して肉芽腫と呼ばれる腫瘤が作られ、皮膚潰瘍を起こしていたのです。まずは手術で原因となったインプラントを除去し、肉芽腫の切除を行いました。高齢になると手術の負担も大きいので少しでも違和感があれば早めに受診してください」 一般的に胸にインプラントを挿入すると、インプラントの周りに被膜が形成され、これが年数の経過とともに石灰化や拘縮(ひきつれ)を起こすことがある。他にも、何らかの強い衝撃によってインプラントが破損すると、炎症や感染などを起こす可能性が高くなる。合併症や後遺症を引き起こさないためにも定期的なフォローアップが重要だ。 「非常にまれではありますが、近年、テクスチャータイプと呼ばれる表面がザラザラしたタイプのインプラントを胸に挿入すると、悪性リンパ腫を発症する場合があるとの報告もあります。発見が遅れると最悪のケースでは死に至る危険もあるので、挿入手術を受けた後は治療を行った医師にしっかりとフォローアップしてもらう必要があります」 とりわけ高齢者の場合、施術治療を受けたクリニックが閉業していたり、執刀医が引退しているケースも少なくない。万が一トラブルが生じた際は、美容後遺症外来を受診することだ。
この記事の問題点
20年以上の美容治療経験を持つ私が指摘する、この記事の主要な問題点は以下の三つです。
①タイトルが今後も豊胸バッグ挿入後に悪性リンパ腫発症のリスクを暗示していることです。
②記事が主に過去のトラブル事例を取り上げているにも関わらず、それらが最新の豊胸バッグにも当てはまる可能性があるかのように記述していることが問題です。
③記事がトラブル発生時の対応策として美容後遺症外来の受診を推奨している点です。
これら3つのポイントに関して、以下で詳しく解説していきます。
①豊胸バッグと悪性リンパ腫の関係について
乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫(Breast Implant-Associated Anaplastic Large Cell Lymphoma;BIA-ALCL)は、豊胸バッグの使用、特に表面がざらざらしたテクスチャードタイプと言われるインプラントバッグに関連して発症する稀な悪性リンパ腫です。悪性リンパ腫は乳腺よりガンが発症する乳がんではなく、血液のガンと言われるガンの一種です。ここで、BIA-ALCLについての重要な要素を深く掘り下げてみましょう。
■ 危険因子
BIA-ALCLのリスクは、表面が滑らかなスムースタイプの豊胸バッグではなく、テクスチャードタイプのバッグを使用した場合に顕著に高まりますが、一般的な発生率は低いとされています。シリコンおよび生理食塩水を充填したインプラントの両方で、このリスクは存在します。ちなみに過去に私はテクスチャードタイプの豊胸バッグを挿入したことはありません。
■症状と診断
BIA-ALCLの症状には、原因不明の乳房の増大、非対称性、体液の蓄積、乳房や脇の下のしこりなどがあります。その他の症状として、皮膚の発疹や乳房の硬化がみられることもあります。BIA-ALCLが疑われる症例に対する診断では、通常、バストの診察、画像診断(超音波検査やMRI検査など)、インプラント周囲に貯留している液体に含まれるCD30などの特異的マーカーの検査が行われます。
■治療
BIA-ALCLと診断された場合、インプラントとその周囲の瘢痕組織を外科的に除去する治療が推奨されます。場合によっては、特に病気が進行している場合には、化学療法、放射線療法、幹細胞移植療法などの追加治療が必要になることもあります。ただ、日本の厚労省にあたる米国のFDAは、無症状の患者におけるインプラントについて定期的な検診は推奨しているものの、除去を推奨していません。
■ 現状の豊胸バッグと日本における使用状況
日本国内では、過去には一部の美容外科でテクスチャードタイプのバッグが使用されていましたが、現在はその使用は見られません。そのため、国内で新たに豊胸手術を行った場合のBIA-ALCL発症のリスクは限りなくゼロに近いと考えられます。
参照元:
Breast implant-associated anaplastic large cell lymphoma: a review
②豊胸バッグのトラブル
このヤフーニュース記事では、特に高齢者における豊胸バッグの破損や感染についてのトラブルが取り上げられています。しかし、これらのトラブル例の大半は、20年以上前に挿入された古いバッグに関連しています。対照的に、現代の豊胸バッグは品質が大幅に向上しており、破損やその他のトラブルの発生確率はかなり低減しています。これは、技術革新と厳格な品質管理によるもので、現在使用されているバッグは過去のものとは大きく異なります。最新の製品では、安全性と信頼性が大きく強化されていることを理解することが重要です。
③トラブルの際は美容後遺症外来?
このヤフーニュース記事ではトラブルの際は美容後遺症外来の受診をすすめていますが、トラブルの際はまずは手術を受けた医療機関の受診をすすめるのが鉄則です。患者の情報が通常残されているからです。手術を受けた医療機関がすでに閉院した場合などのやむを得ない事情で新たな医療機関を受診する場合は致し方ないですが、手術を受けた医療機関では患者の情報が通常残されているため、何かトラブルがあった際もスムーズに診断や治療が可能です。また、後遺症外来を診療科として標榜している保険診療の病院は日本国内では数施設しかありません。また、過去の美容医療による術後のトラブルや合併症については現在では健康保険が使用できません。このため、こういった後遺症外来では高額な治療費になる可能性があるがあるため、おすすめできません。
豊胸治療のケアについて
日本国内において現在行われている豊胸治療は、ヒアルロン酸注入、脂肪注入、インプラントバッグ挿入の3つの方法ですが、どの豊胸治療も一長一短があり、合併症や副作用が全くない豊胸治療はありません。バッグの豊胸治療は、希望の大きさに一度の治療で達成され、大きさも変わらないという大きなメリットがあります。稀な副作用やトラブルとして破裂や拘縮があります。拘縮の予防として私は豊胸後にはご自身による定期的なマッサージを推奨しています。過去のバッグは拘縮が起こる確率も高かったのですが、現在のバッグは拘縮もほとんど起こらないため、多くの美容外科ではマッサージが不要とされています。しかし、それでも私がマッサージを推奨するのは、拘縮までの硬いバストになることはないにしても、やはり数十年かけて挿入されたバッグの空間が狭くなり、バッグの動きに制限が起こり、少し硬くなる可能性があるからです。また、少なくてとも1週間に1回、ご自身マッサージを行うことにより異常を早期に察知することができます。
まとめ
このヤフーニュース記事は、豊胸バッグに関心を持つ人々やすでに手術を受けた人々の不安を無用に煽るような中途半端な内容であるため、私は憤りを感じます。マスメディアの役割は正しい情報を届けることです。もし、注意喚起をするための記事であれば、最新のバッグ事情や手術まで取材した記事を掲載するべきです。美容外科治療に対する日本のマスコミが流す情報は多くの場合、偏った彎曲した情報になりがちです。豊胸治療についてご心配がある場合は、まず豊胸治療について経験が豊富な美容外科専門医の診察を受けることをお勧めします。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。
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