投稿日:2024/02/12
(最終更新日:2024/07/26)
首の後ろの汗は多汗症による?あせもの要因にも
首の後ろの汗に悩む人は少なくありません。特に女性の中には、髪が濡れるほどの発汗に苦しむ方もいるでしょう。さらに、このような状況が原因で首に「あせも」が発生することもあります。このブログでは、首の後ろの汗がもたらす様々な問題や、その背後にある頭部多汗症の可能性に焦点を当て、その原因や効果的な対処法について詳しく掘り下げていきます。この記事を通じて、首の汗や首の「あせも」に悩む方々への有益な情報を提供したいと思います。
首の後ろの汗は自律神経の乱れ?
インターネット上では、自律神経のバランスが崩れること、特に自律神経失調症により交感神経が過剰に反応することで、首の後ろからの汗が引き起こされるという説がしばしば見受けられます。この考え方は、必ずしも誤りとは言えませんが、正確ではありません。自律神経失調症における多汗症は一般的に全身性のものであります。首の後ろの汗など体の特定部位のみに異常な発汗が見られる場合は、原発性局所多汗症の可能性が高いとされています。
首の後ろの汗は頭部多汗症の可能性が高い
首の後ろからの汗が、後頭部から発生してその汗が流れ落ちるほどになったり、汗により髪の毛がびしょびしょになるような状態であったりした場合、原発性頭部多汗症という疾患の可能性が考えられます。この状態は、単に不快感を伴うだけでなく、日常生活においても大きな影響を及ぼす可能性があります。原発性頭部多汗症では、後頭部だけでなく、耳の上や側頭部、前額部からも大量の汗が発生することがあります。さらに、頭部だけでなく、顔にも多汗が見られる場合は、頭部顔面多汗症と診断されることが一般的です。
原発性局所多汗症とは
原発性局所多汗症は、体の特定の部位(通常は手のひら、足の裏、脇の下、頭、顔など)に異常に多量の汗をかく状態を指します。この状態は特定の原因がなく、自律神経の特に交感神経の過剰反応によって生じると考えられています。原発性局所多汗症はしばしば遺伝的な要因が関与しているとされ、症状は通常思春期に始まります。加齢による改善する場合もありますが、一生続くこともあります。この症状は社会生活や職業生活に影響を与えることがあり、治療には局所の発生部位により薬物療法や外科的手術、ボトックス注射などが用いられることがあります。首の後ろの汗や首の汗はこの原発性局所多汗症のうちの原発性頭部多汗症の可能性があります。
↑原発性局所多汗症の分類
首の「あせも」の原因になることも
首の後ろからの大量の汗は、時として「あせも」、医学的には「汗疹」と言う皮膚のトラブルを引き起こす原因となることがあります。あせもは、大量の汗によって引き起こされる皮膚疾患であり、発汗部位には小さな水疱や赤い丘疹が頻繁に発生します。この状態は、何らかの原因により汗管が塞がれ、生成された汗が皮膚の外に排出されずに皮下に蓄積することにより発生します。あせもの治療には、汗の分泌を抑え、患部の通気性を良好に保つことが重要です。多くの場合、これにより自然治癒しますが、かゆみが伴うことも多く、患部をかきむしることで細菌感染が生じ、痛みや発熱を引き起こすリスクもあります。
首の後ろの汗・首の汗の対処方法
首の後ろからの汗、特に原発性頭部多汗症に対する対処方法について考える際、まずはこの状態を自身の体質の一環として理解し、受け入れることが重要です。また、首のあせもを予防するためにも、首周りの汗を小まめに拭き取ることが効果的です。この際、接触性アレルギーを引き起こす可能性があるため、肌に優しい素材のタオルを選ぶことが大切です。首の拭き取りは繊細であり、肌を傷つけないよう注意が必要です。それでもなお、日常生活に大きな支障をきたすような場合には、多汗症を専門とするクリニックでの治療を検討することを推奨します。
首の後ろの汗が治療できること知らないかたがほとんど
最新の研究によると、首の後ろの汗や首の汗が原因となる原発性頭部顔面多汗症の有病率は3.6%とされています。これは他の多汗症と同程度の割合ですが、驚くべきことに、実際に医師の診察を受けている患者の割合はわずか3.5%に過ぎません。たとえば、掌蹠多汗症の受診率が10%前後であることを考慮すると、原発性頭部顔面多汗症の受診率は非常に低いことが分かります。これは、多くの方が原発性頭部顔面多汗症が医学的に治療可能であるという事実を知らずにいることを示しています。
出典元:
田村直俊,中里良彦:味覚性発汗再考,自律神経,2020; 57:193―205
首のうしろの汗や首の汗を止める方法
首のうしろの汗や首の汗の要因となる頭部多汗症の治療法として、現在いくつかの効果的な方法があります。以下にそれらを効果の高い順に紹介します。
1.ボトックス注射
ボトックス注射は、頭部顔面多汗症治療のための最も効果的な方法の一つです。この治療では、ボツリヌス毒素を使用して汗腺の神経活動を一時的に麻痺させ、発汗を抑制します。効果は約6ヶ月間持続し、症状の重さに応じて繰り返し治療が必要になることがあります。最大で1年程度効果が続くこともありますが、個人差があります。副作用は特に報告されていません。【保険適用外】
2.内服薬
抗コリン薬は、神経伝達物質を抑制し、発汗を減少させる目的で使用されます。全身の汗腺に作用するため、ボトックス注射が効果を示さないケースに選択されることがあります。特に若年者の場合、長期使用による認知機能への影響がまだ明らかでないため、使用には慎重な判断が求められます。【保険適用】
3.交感神経遮断術(ETS)
交感神経遮断術(ETS)は手掌多汗症の治療に一般的に用いられる手術方法ですが、頭部多汗症に対しては通常推奨されません。主な理由は、手術後に発生する可能性が高い代償性発汗です。これは、胸部や背中、腹部、腰、お尻、太ももなど、手術前には問題とならなかった体の特定部位から過剰な汗が生じる状態のことを指します。代償性発汗は治療部位の発汗を上回る心理的な負担を引き起こす可能性があり、これがETSが多汗症の治療の選択肢として推奨されない理由の一つです。【保険適用】
4.その他の治療について
頭部多汗症の場合、髪の毛が治療の妨げになることが多いため、腋窩多汗症や掌蹠多汗症の治療に用いられる外用抗コリン薬や局所制汗剤(塩化アルミニウム製剤)、イオントフォレーシスといった治療法が効果的でない場合がほとんどです。
首のうしろの汗や首の「あせも」にはボトックス!
首の後ろの汗や首の汗に対する最も効果的な治療法の一つとして、ボトックス注射を推奨します。ボトックスは、明らかに汗が減ったことを確実に実感できる唯一の治療です。ボトックスは約6ヶ月から最長で1年間の効果が持続し、症状の重症度に応じて繰り返し治療が必要になる場合があります。さらに、ボトックスを用いることで、汗によるあせもの発生も予防することが可能です。あせもで既に悩んでいる場合にも、ボトックスによる治療は即効性のある効果が期待できます。
首の汗についてよくあるご質問
Q:首の周りにだけ汗をかくのはなぜですか?
A:首の周り、特に後頭部は頭部多汗症の好発部位です。首の周りの汗だけが多い場合、頭部多汗症の可能性がありますので、多汗症治療を専門としている医療機関の診察を受けるのを検討されることをおすすめします。
Q:うなじにすごい汗がでる原因は?
A:首の周りの汗と同様に、頭部多汗症の可能性があります。原発性頭部多汗症では、うなじや髪の生え際だけでなく、耳の上や側頭部、前額部、後頭部からも大量の汗が発生することがあります。
Q:首の周りだけ汗をかくのはなぜですか?
A:首の周りだけにかかわらず、体の特定の部位から大量の汗をかく場合は、原発性局所多汗症の可能性があります。原発性局所多汗症は汗をコントロールする自律神経の一つである交感神経が過剰な活動していることが要因とされています。
Q:後頭部に汗をかく病気は?
A:後頭部に大量に汗をかくのは頭部多汗症という病気の可能性があります。原発性頭部多汗症では、後頭部だけでなく、耳の上や側頭部、前額部、うなじ等からも大量の汗が発生することがあります。
Q:首がベタベタするのはなぜですか?
A:首の汗の分泌によると考えられます。首の汗の分泌量が異常に多い場合は頭部多汗症という病気の可能性もあります。頭部多汗症は頭や顔などから異常に多量の汗をかく状態を指します。原因は交感神経の過剰反応によって生じると考えられています。治療にはボトックス注射が用いられます。
まとめ
首の後ろの汗が原因で生じる多汗症やあせもは、実はボトックス治療によって軽減することが可能です。しかしながら、この貴重な情報はまだ多くの方々に知られていないのが現状です。この記事を通じて、首の後ろの汗に関する問題を深く理解し、その治療方法についての情報を得ていただけたことを願っています。この知識が皆様の生活の質の向上に貢献し、首の汗やあせもに悩むことなく、より快適な毎日を過ごすための一助となることを心より願っております。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。
【関連項目】
足汗がひどい原因:足底多汗症の遺伝的背景と最新治療法の徹底解説
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