投稿日:2024/07/06
(最終更新日:2024/09/11)
ウルセラ等のハイフ機器に潜む後遺症と事故の危険性【船橋中央クリニックの元神賢太医師が解説】
関西テレビの番組「newsランナー」で2024年7月5日に放送された美容治療に関する特集が話題を呼んでいます。この放送では、超音波を集約し熱を生じさせることでたるみを引き上げる治療機器、通称「ハイフ」による医療事故が多発している問題が取り上げられました。特に、ウルセラなどのハイフ機器による後遺症や危険性が注目されています。この記事では、ハイフの基本的な原理から始め、これらの機器に関するトラブルや事故の具体的な要因、そして安全に利用するための対策について、ハイフ(ウルセラ)を日本でいち早く導入した船橋中央クリニック・青山セレスクリニックの元神賢太医師が詳しく解説していきます。
番組内容の概要
【「顔がおかしい」美容医療のトラブル増加 「医師免許なしでの施術は“医師法違反”」厚労省が通知 火傷や神経損傷リスクもある「HIFU(ハイフ)」】というタイトルで関西テレビの番組「newsランナー」で放送された番組の概要は以下のとおりです。
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↑番組内で紹介されたハイフによる火傷
美容医療のトラブルが増加しており、特にHIFU(ハイフ)による被害が問題となっています。HIFUは超音波を使用してシワやたるみを改善する施術で、手軽に受けられるため人気がありますが、神経損傷ややけどなどの深刻な被害が報告されています。番組内で紹介された40代の女性がエステサロンで顔と顎下のハイフを受けた際、施術後すぐに激しい痛みを感じ、顔全体が真っ赤になりやけどの痕が残りました。
消費者庁によると、2015年ごろからこうしたトラブルの相談が増え始め、2022年までに135件の相談が寄せられました。トラブルの原因の一つは、医師免許のない人が施術を行っていることです。HIFUに関しては医療行為としての明確なルールがなく、エステサロンなどで医師免許のない人が施術を行うことが一般的になっています。消費者庁のデータでは、HIFUによる事故の約7割がエステサロンで発生し、そのうちの6割以上が医師の研修を受けずに施術を行っていたことが分かっています。
湘南美容クリニックでは、こうしたリスクを減らすために、医師が患者の肌の状態を診察し、看護師が施術を行う体制を整えています。同クリニックの医師は、正しい知識を持って施術を行わなければ効果が出ないばかりか、リスクが伴うと強調しています。6月、厚生労働省は「医師免許なしでの施術は“医師法違反”にあたる」との通知を各都道府県に出しました。これにより、医療行為としての認識が明確になり、今後は医師の指導の下で施術を行うことが求められるようになります。
美容医療のトラブルが増加している背景には、「自由診療」であるため指導や監査が限定的であることや、実際のトラブル件数がもっと多いとされることが挙げられます。厚労省は2024年6月27日、不適切な美容医療の対策に向け初めて会合を開き、年内に報告書をまとめる方針です。番組内では、美容医療の機器は安全性が確認されていないものが多く、使用には医師の責任が伴うとし、治験を行い安全性や効果を確認する義務付けの必要性を指摘しました。
ジャーナリストの浜田敬子さんは、ハイフの技術はもともとがんの治療に使われていたものであり、医療行為として扱われるべきだと話しました。また、機器が輸入品であり日本の薬機法の対象外であるため、安全性の基準がないことが問題だと指摘しました。利用者は値段だけで選ぶのではなく、医療行為としてクリニックで施術を受けることが重要です。
消費者庁などは、美容医療を受ける前のチェックポイントを提示しています。使用する薬の説明ができるか、効果とリスクや副作用について理解しているか、他の方法や選択肢の説明を受けているか、施術が今すぐ必要かを再確認することが求められます。不安がある場合は医師に再度相談し、慎重に判断することが重要です。

↑番組内で紹介されたハイフの事故件数
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以上、関西テレビの番組「newsランナー」で2024年7月5日に放送された【「顔がおかしい」美容医療のトラブル増加 「医師免許なしでの施術は“医師法違反”」厚労省が通知 火傷や神経損傷リスクもある「HIFU(ハイフ)」】の番組内容でした。
出典元:ヤフーニュース
ハイフ施術のトラブルと事故:原因とその背景
ハイフによるトラブルや事故が発生する原因は、多岐にわたります。これらは大きく分けて、機器に関連する要因と施術者に関連する要因に分類できます。
■機器に関連するトラブル・事故の要因
①深部への作用: ハイフは深い層にまで作用するため、適切な部位に照射することが重要です。
②高出力: 機器によりかなり高出力であるために、取り扱いに注意が必要です。
③操作上の注意点: 機器の肌への密着いやジェルの量など、細かな点に注意が必要です。
④痛み: 施術中の痛みが強く、適切な管理が求められます。
■施術者に関連するトラブル・事故の要因
①無資格者による施術: エステサロンで医療資格を持たない者が施術を行うケースが見られます。
②看護師による施術: 医療従事者であっても、看護師が施術を行うことが多く、本来は医師が担当すべきです。
③経験不足の医師: 解剖学的知識が不十分な、経験の浅い医師が施術を行う場合があります。
以下の記事ではこれらの要因について詳細に解説します。
↑筆者の元神賢太(船橋中央クリニック院長)によるウルセラ(ハイフ)の施術風景
ハイフ機器に関連するトラブル・事故の要因①:深部への作用
ハイフ(HIFU:高密度焦点式超音波、High-Intensity Focused Ultrasound)は、超音波を用いて皮膚の深部組織を加熱し、引き締め効果を発揮する技術です。ハイフ装置は高周波の超音波を発生させ、このエネルギーを「特定の深さ」で一点に集中させることができます。この一点に集まるエネルギーを「焦点」と呼び、超音波エネルギーが焦点に集まると、その部分の温度が急激に上昇します。この加熱によってコラーゲン繊維が収縮し、新しいコラーゲンの生成が促され、引き締め効果が得られます。
しかし、この「特定の深さ」には顔面神経も存在しており、照射部位を誤ると顔面神経を損傷するリスクがあります。顔面神経麻痺が生じると、顔の筋肉が正常に動かなくなり、深刻な後遺症を引き起こす可能性があります。
ハイフ機器に関連するトラブル・事故の要因②:高出力
ハイフ機器は、焦点を絞った超音波エネルギーによって50〜100℃(機器や設定によって異なります)の高温を生成します。この高温が筋膜や皮下組織に熱変性を引き起こし、引き締め効果をもたらします。しかし、この強力な熱エネルギーが誤って皮膚に照射されると、容易に火傷を引き起こしてしまいます。高出力での照射は効果が高い反面、リスクも伴います。
ハイフ機器に関連するトラブル・事故の要因③:操作上の注意点
ハイフ機器による照射エネルギーは、皮膚の深部、主に4.5mmおよび3mmの深さに到達します。これは、それぞれSMAS筋膜と皮膚の真皮層が存在する深さです。施術時には、ハンドピースを皮膚表面にしっかりと密着させることで、エネルギーがこの深度に正確に届きます。しかし、ハンドピースが皮膚に十分に密着していない場合、エネルギーが浅い皮膚表面に照射され、火傷を引き起こすリスクが高まります。
また、ハンドピースの操作性を向上させ、患者の不快感を軽減するために、ハンドピースと皮膚の間にはジェルが塗布されます。しかし、ジェルの量が多すぎると、ハンドピースが皮膚にしっかり密着せず、同様に火傷の危険性が増します。このように、ハイフ機器の操作には細心の注意が求められます。照射深度の精密さゆえに、施術者には慎重で丁寧な操作が必要不可欠です。
ハイフ機器に関連するトラブル・事故の要因④:痛み
ハイフ機器の大きな課題の一つは、施術中の痛みの強さです。ハイフ機器の種類によって出力パワーが異なるため、痛みの程度も機器によって大きく変わります。特に、麻酔なしで施術を行う場合、出力が高いほど痛みは強くなります。出力の高さは効果に直結するため、最大限の効果を引き出すには高出力が必要です。
中でも、ウルセラは最も高出力での照射が可能なハイフ機器ですが、最大パワーである12ジュールでの照射は、麻酔なしでは耐えられないほどの激痛を伴います。このため、無麻酔での最大出力照射は事実上不可能です。
施術を受ける際には、使用するハイフ機器の種類や出力に応じた痛みの程度について事前に理解しておくことが重要です。痛みを軽減するための麻酔や他の対策についても、施術前に十分な説明を受け、納得した上で施術に臨むことが大切です。
ハイフ施術者に関連するトラブル・事故の要因①:無資格者による施術
テレビ番組でも取り上げられたように、エステサロンで無資格者がハイフ治療を行うケースが問題となっています。この問題の根本的な原因は、厚生労働省や保健所が長い間この状況を放置していたことにあります。医療知識のない人々がハイフのような高度な機器を扱える環境が整っていたこと自体が異常と言えます。
最近になってようやく、厚生労働省がハイフを医療行為と認定し、その旨を通知しましたが、この決定は遅すぎた感があります。もしこの措置がもっと早く取られていれば、ハイフによる事故やトラブルは未然に防げた可能性があります。
ハイフ施術者に関連するトラブル・事故の要因②:看護師による施術
多くの美容外科では、ハイフの施術を医師の指示のもとで看護師が行っています。これはテレビ番組で紹介された湘南美容クリニックでも同様で、実際に看護師がハイフを照射している様子が放送されました。しかし、私はハイフ機器の種類によっては看護師による施術も危険だと考えます。特に、ウルセラのような高出力のハイフは解剖学に精通した医師のみが行うべきです。
ウルセラなどの高出力ハイフによって、顔面神経麻痺という深刻な後遺症が発生することが学会でも報告されています。効果の弱いハイフの場合でも、誤った照射によって火傷が起こるリスクはありますが、顔面神経麻痺まで引き起こすことはほとんどないとされています。これから推察すると、看護師が施術を行うハイフは出力が弱く、効果も弱いものが多いと考えられます。
安全で効果的なハイフ施術を受けるためには、機器の出力に応じた適切な施術者の選定が重要です。高出力のハイフを使用する際は、必ず医師による施術を受けるようにし、看護師による施術の場合は出力が低い機器を選ぶことが望まれます。
ハイフ施術者に関連するトラブル・事故の要因③:経験不足の医師
ハイフの中でも最も高出力で効果が高いウルセラは、そのパワーゆえに、医師が施術を行っても合併症が起こるリスクがあります。実際、私自身もウルセラ施術を始めた当初、火傷などの合併症を経験しました。これらの経験を基に、私は日本美容外科学会で発表し、ウルセラがより安全かつ効果的に行われるよう啓発活動を続けてきました。
ウルセラのような高出力ハイフの施術には、医師であっても解剖学的知識と機器の特性に対する深い理解が必要です。これらが欠けていると、施術中に合併症を引き起こし、後遺症が発生する危険性が高まります。そのため、ハイフを受ける際には、無資格者や看護師による施術は避け、最低限でも医師による施術を選ぶことが重要です。そして、さらに安心して施術を受けるためには、経験豊富な医師に依頼することがベストです。
↑ウルセラについて学会発表する筆者の元神賢太(船橋中央クリニック院長)
まとめ
ハイフでトラブル・事故に遭わないために
ウルセラをはじめとする高出力のハイフ機器は、たるみを効果的に引き上げる一方で、顔面神経麻痺のよる後遺症や火傷などのリスクを伴います。逆に、低出力での施術は効果が薄く、満足のいく結果を得られないこともあります。安全かつ効果的な施術を受けるためには、施術者の技術と経験が極めて重要です。適切なトレーニングを受けた専門家による施術は、トラブルのリスクを低減し、ハイフの効果を最大限に引き出します。
安全で効果的なハイフ治療を受けるためには、医師が施術を行う信頼できる医療機関を選ぶことが重要です。また、その医師がどれだけの経験を持っているかにも注意を払うべきです。経験豊富な医師によるハイフ施術は、合併症のリスクを最小限に抑えながら、期待する効果を得るための最善の選択です。安心してハイフの施術を受けるためには、医療機関と医師の選定に慎重になることが求められます。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがあり、アンチエイジング治療、リフトアップ治療を得意としている。ウルセラは日本国内に導入直後から取り入れており、日本美容外科学会でもウルセラの学会発表を行っている。【関連項目】
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