投稿日:2025/01/13
(最終更新日:2025/01/13)
女性薄毛の根本的原因:加齢による女性ホルモンの低下【第33回】
(第32回「女性の薄毛・脱毛症の種類と症状:FAGAだけではない原因」からの続き)
薄毛が気になり始めた女性や、すでに薄毛に悩む方が最も知りたいのは、その「根本的な原因」ではないでしょうか。このブログでは、女性特有の薄毛の原因に焦点を当て、詳しく解説します。そもそも薄毛の原因には、加齢やホルモンバランスの変動、誤った頭皮ケア、ストレス、栄養不足(特にタンパク質やビタミン、ミネラルの不足)など、さまざまな要因があります。しかし、女性の薄毛には男性とは異なる、女性特有の要因が深く関わっています。その最大の要因が、加齢に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の低下です。本記事では、女性ホルモンと薄毛の関係について詳しく解説し、原因を理解することで改善の第一歩を踏み出していただける内容をお届けします。
女性の薄毛が起こる最大の原因は加齢と女性ホルモンにあった!
女性の薄毛を引き起こす要因にはさまざまなものがありますが、最大の原因は「加齢」による変化です。特別に問題のある食生活や生活習慣とは無縁で、健康的な日常を送ってきた女性であっても、薄毛に悩むことが少なくありません。その多くは、避けることのできない「加齢」に起因するものなのです。
加齢は誰にでも訪れ、避けることのできない自然なプロセスです。しかし、女性の場合、この加齢が薄毛の主な原因になり得ます。特に、更年期を境に薄毛の兆候が見え始めるケースが多く見られます。閉経後になると、髪の毛が細くなり、毛周期の休止期に入る毛根が増加するため、髪全体の密度が低下し、地肌が透けて見えるようになることも珍しくありません。
では、なぜ年齢を重ねると薄毛が進行するのでしょうか?その答えの鍵を握っているのが「女性ホルモン」、特にエストロゲンの存在です。女性の体内では加齢とともにエストロゲンの分泌量が減少します。この自然な変化が、薄毛を引き起こす大きな要因となっているのです。

↑年齢とエストロゲンの関係
そもそもエストロゲンが髪にとってどのような役割を果たしているのでしょうか?次の段落では、この重要なホルモンの働きと髪への影響について詳しく解説していきます。
エストロゲンと毛周期の関係
毛包には「エストロゲンレセプターβ(ER-β)」という受容体が存在し、この受容体が毛周期の調整に重要な役割を果たしています。具体的には、エストロゲンが毛の成長期を延長し、成長期にある毛の割合を増やす働きを持っています。マウスを用いた実験では、このER-βが欠損している場合、毛周期の退行期が早期に訪れることが明らかになっています。これにより、エストロゲンが毛髪の維持に欠かせないホルモンであることが裏付けられています。
人間においても、エストロゲンが髪に与える影響はさまざまな場面で確認できます。例えば、妊娠中にはエストロゲンの増加により髪の毛が増える一方で、出産後にはその減少によって脱毛が目立つようになります。また、避妊目的で使用していたピルを中止すると抜け毛が増えることや、閉経後に薄毛が進行することもエストロゲンの影響です。さらに、乳がんの治療薬として使用されるアロマターゼ抑制薬が、エストロゲンの合成を阻害することで男性型脱毛症(AGA)を引き起こすケースも多く報告されています。
このように、エストロゲンは髪の成長と維持において極めて重要な役割を担っています。エストロゲンが減少すると、毛周期の成長期から退行期、さらには休止期への移行が促進され、脱毛が進行してしまいます。閉経後に脱毛が進みやすいのは、加齢とともにエストロゲンの分泌量が大きく低下するためです。エストロゲンの分泌量は一般的に30歳前後でピークを迎え、その後は右肩下がりに減少していきます。この自然な変化が、女性に特有の薄毛が進行する主な理由となっています。
エストロゲン変動の要因とその影響:加齢以外の視点から
エストロゲンは、加齢以外にもさまざまな要因で変動し、その減少は髪の状態に大きな影響を与えます。過度なダイエットや極端な食事制限は、エストロゲンの原料であるアミノ酸や良質なコレステロールの不足を招き、分泌量の低下につながります。
また、強いストレスは自律神経の乱れを引き起こし、視床下部の機能に影響を与えることで、エストロゲンの分泌を減少させる可能性があります。
さらに、喫煙や過度のアルコール摂取、睡眠不足、冷えなどの生活習慣もエストロゲンの分泌に悪影響を及ぼすことが知られています。
これらの要因が重なると、エストロゲンの減少が加速し、結果として薄毛や抜け毛の進行を招くことがあります。
一方、妊娠・出産に伴うエストロゲンの変動も見逃せません。妊娠中はエストロゲンの分泌が増加し、髪の成長が促進されるため、毛量が増える傾向があります。しかし、出産後にはエストロゲンの急激な減少が起こり、これにより一時的な脱毛、いわゆる「分娩後脱毛症」が発生します。この脱毛は通常、6カ月ほどで自然に回復するのが一般的です。
このように、エストロゲンの変動は加齢以外の多岐にわたる要因によっても引き起こされ、その結果として薄毛や抜け毛が進行することがあります。
女性ホルモンの減少が引き起こすFAGAのリスク
これまで、女性ホルモン(エストロゲン)の減少が女性の薄毛に影響を与えることをお伝えしてきました。さらに、エストロゲンの減少に伴い、相対的に男性ホルモン(アンドロゲン)の影響が強まることで、女性にも男性型脱毛症と同様の薄毛のメカニズムが働く可能性があります。
女性の体内にも、テストステロンをはじめとする男性ホルモンが存在します。通常、エストロゲンがこれらのホルモンの影響を抑制していますが、エストロゲンの減少により、そのバランスが崩れると、男性ホルモンの影響が顕著になります。特に、毛包内のⅡ型5αリダクターゼという酵素がテストステロンと結びつき、ジヒドロテストステロン(DHT)を生成します。このDHTが毛母細胞に作用し、髪の成長を抑制する遺伝子群を活性化させ、脱毛を促進するタンパク質であるTGF-β1の発現を引き起こします。
このようなメカニズムにより、女性ホルモンが減少し、男性ホルモンが相対的に優位となった女性にも、男性型脱毛症と同様の薄毛の進行が見られることがあります。これが「FAGA(女性男性型脱毛症)」と呼ばれる状態です。FAGAは、加齢ホルモンによるホルモンバランスが崩れることで発症し、特に頭頂部や分け目の髪が薄くなる傾向があります。男性のAGA(男性型脱毛症)とは異なり、女性の場合は全体的に髪が細くなり、ボリュームが減少する特徴があります。
まとめ
女性の薄毛は、加齢に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少が主な原因とされています。エストロゲンは髪の成長を促進し、毛周期の成長期を維持する役割を果たしていますが、年齢とともにその分泌量が減少し、髪のボリュームや質に影響を与えます。
さらに、エストロゲンの減少により、相対的に男性ホルモン(アンドロゲン)の影響が強まり、女性でも男性型脱毛症(AGA)に似た「FAGA(女性男性型脱毛症)」が発症することがあります。FAGAは特に頭頂部や分け目の髪が薄くなる傾向があり、早期の対策が重要です。
エストロゲンの減少は自然な生理現象ですが、日常生活の工夫や適切なケア、専門的な治療を組み合わせることで、薄毛の進行を遅らせたり、改善したりすることが可能です。自身の体と向き合い、早めの対策を講じることが健康な髪を維持する鍵となります。
筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。これまで延べ5万以上の薄毛治療を行う。著書に「専門医が徹底解説!女性の薄毛解消読本」(元神賢太著 / 幻冬舎)。女性の薄毛治療のほか、エイジングケア治療、美肌治療を得意としている。【関連項目】
女性の薄毛・脱毛症の種類と症状:FAGAだけではない原因【女性薄毛対策第32回】
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