投稿日:2024/06/06
(最終更新日:2024/06/06)

【白髪の原因と予防】「白髪の人は薄毛にならない」は迷信!

白髪に悩む日本人女性

(第24回「紫外線は髪にとって大敵!UVが女性の髪に与える悪影響」からの続き)

薄毛と白髪については、多くの人々が誤った認識を持っています。「白髪の人は薄毛にならない」という俗説もその一例です。この言葉は一見もっともらしく聞こえるかもしれませんが、実際には医学的な根拠はありません。白髪と薄毛には明確な関連性はなく、白髪のある人でも薄毛になることは十分にあります。

この記事では、髪の色を決定するメラノサイトの機能や白髪の原因とそのメカニズムを詳しく解説します。さらに、白髪の予防方法や、薄毛との関連性がない理由についても説明していきます。

髪に色がある理由

髪はメラニン色素によって色がついています。メラニン色素は毛包(毛根部)に存在するメラノサイトと呼ばれる色素細胞において生成されます。メラノサイトは、毛包の毛乳頭付近にあるメラノサイト幹細胞から分化し、髪の成長期にメラニンを生成します。メラニンは、毛髪のケラチンと結合し、髪の色を決定します。

■メラニンの種類

髪の色を決定するメラニンには、以下の2種類があります。

エウメラニン: 黒から茶色の色素を作り出す。エウメラニンの量が多いほど、髪の色は黒くなります。

フェオメラニン: 黄色から赤色の色素を作り出す。フェオメラニンの量が多いほど、髪の色は赤や金色になります。

■人種による違い

人種によって髪の色が異なるのは、メラノサイトが生成するエウメラニンとフェオメラニンの割合が異なるためです。

アフリカ系の人々:アフリカ系の人々の髪は、通常非常に濃い黒色です。これは、メラノサイトが大量のエウメラニンを生成するためです。エウメラニンが多いことで、髪の色は非常に濃くなり、紫外線から頭皮を保護する効果もあります。

ヨーロッパ系の人々:ヨーロッパ系の人々の髪の色は、多様性があります。これは、エウメラニンとフェオメラニンのバランスが様々だからです。金髪の人々はフェオメラニンが多く、エウメラニンが少ないため、髪の色が明るくなります。一方、茶色や黒色の髪を持つ人々は、エウメラニンの割合が高くなります。

アジア系の人々:アジア系の人々の髪は、通常濃い茶色から黒色です。これは、エウメラニンの量が多いためです。ただし、ヨーロッパ系の人々と比べると、フェオメラニンの生成が少なく、結果として髪の色は濃くなります。

白髪が発生する要因

白髪が気になる女性

白髪は、髪の色を決定するメラニン色素の生成が減少または停止することによって発生します。メラニンの生成が停止すると、毛髪は色を失い、白髪になります。このプロセスには以下の要因が関与しています。

■加齢

加齢に伴い、メラノサイトの機能が低下し、メラニンの生成が減少します。

■遺伝

遺伝的要因がメラニンの生成に影響を与えることがあり、早期に白髪が出ることもあります。

■活性酸素

メラノサイト(色素細胞)は毛包の中に10年以上もとどまり、髪の毛に色素を与えるため活発に活動することで、活性酸素を大量につくり出すとされます。この活性酸素を除去する能力が加齢とともに衰え、自分でつくり出した活性酸素自体によってメラノサイトにダメージを与え、メラノサイトの機能を低下させます。これは加齢やストレス、喫煙などによって増加します。

■栄養不足

ビタミンB12や鉄など、特定の栄養素の不足もメラニン生成に影響を与えます。

白髪の発生のメカニズム

白髪の発生は、主に成長期におけるメラノサイトの機能低下によるものです。メラノサイトの機能が低下する要因としては、以下が考えられます。

■幹細胞の枯渇

加齢によりメラノサイト幹細胞が減少または機能不全に陥ると、新しいメラノサイトが供給されなくなります。

■アポトーシス

メラノサイトがプログラム細胞死(アポトーシス)によって自ら消滅することがあります。これは、活性酸素が蓄積すると、がん化する危険性があるため、生体の防御反応としてメラノサイト自身が「細胞死(アポトーシス)」を自ら選択しているとも考えられています。

■DNA損傷

紫外線や化学物質によるDNA損傷がメラノサイトの機能を阻害することがあります。

薄毛のメカニズム

薄毛は白髪とは全く異なるメカニズムによって発生します。女性の薄毛の主な原因は、遺伝的要因や女性ホルモンの低下、栄養不足が挙げられます。女性の薄毛は、全体的に髪が薄くなる傾向がありますが、これは白髪が進むパターンとも異なり、発祥のメカニズムの違いによるものです。

白髪と薄毛の関連性について

これまで述べてきたように、白髪と薄毛はそれぞれ異なるメカニズムによって発生します。そのため、「白髪の人は薄毛にならない」というのは誤りです。実際、白髪であっても薄毛になる人は多くいます。例えば、加齢によって白髪が増えると同時に、薄毛も進行することがあります。これは、加齢が両方の現象に影響を与えるためです。

喫煙と白髪の関連性

タバコと白髪

喫煙が白髪の増加に影響を与えるという研究があります。

■酸化ストレスとDNA損傷

喫煙によって体内で活性酸素(フリーラジカル)が増加し、これがメラノサイト(髪の色素細胞)にダメージを与えることで、メラニンの生成が減少します。これにより、髪が白くなる可能性が高まります。

■血流の減少

喫煙は血流を減少させることで、毛包への栄養供給を阻害します。毛包はメラノサイトを含んでおり、栄養不足によりその機能が低下すると、白髪が増えることがあります​。

■遺伝的要因

一部の研究では、特定の遺伝子変異が喫煙と関連し、これがメラノサイトの機能に影響を与える可能性が示唆されています。例えば、MC1R遺伝子の変異は髪の色素生成に関与しており、喫煙者にこの変異がある場合、白髪になるリスクが高まることが報告されています​。

これらの研究結果に基づき、喫煙が白髪の発生を促進することは広く認められています。

喫煙以外にもある白髪になる要因!

喫煙以外に白髪の原因となる要因には、いくつかのものがあります。以下は、明確なエビデンスに基づいて示された主な要因です。

■遺伝的要因

白髪の出現は強く遺伝に影響されます。特定の遺伝子が白髪の早期発生に関連していることが研究で示されています。例えば、IRF4という遺伝子がメラニンの生成に関与しており、この遺伝子の変異が白髪の発生に影響を与えることが知られています。

■紫外線

紫外線(UV)は、皮膚だけでなく毛髪にもダメージを与えることが知られています。紫外線は、毛包のメラノサイトにダメージを与え、メラニンの生成を減少させることで白髪を引き起こす可能性があります。これは、活性酸素種(ROS)の生成が増加し、酸化ストレスを引き起こすためです。この酸化ストレスがメラノサイトにダメージを与え、メラニン生成の減少をもたらすことが研究で示されています。

■栄養不足

特定の栄養素の不足も白髪の発生に寄与します。ビタミンB12、ビタミンD、銅、亜鉛などの欠乏は、メラニン生成の低下を引き起こし、白髪の原因となることがあります。例えば、ビタミンB12の欠乏は、メラノサイトの機能を低下させることで白髪を促進することが知られています。

■酸化ストレス

酸化ストレスは細胞にダメージを与え、メラノサイトの機能を低下させます。活性酸素種(ROS)の過剰な生成は、メラノサイトのアポトーシス(プログラム細胞死)を引き起こし、これが白髪の一因となります。酸化ストレスの増加は、喫煙や紫外線だけでなく、環境汚染や有害な化学物質への曝露などの外的要因によっても引き起こされます​​。

■自己免疫疾患

自己免疫疾患も白髪の発生に関連しています。例えば、円形脱毛症などの自己免疫疾患では、自己免疫反応がメラノサイトを攻撃することで、白髪が発生することがあります​​。

■ホルモンの変化

ホルモンバランスの変化も白髪の発生に影響を与えることがあります。特に、甲状腺ホルモンの異常(甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症)は、髪の色素細胞に影響を与え、白髪を引き起こすことがあります​。

これらの要因は、それぞれが単独で白髪を引き起こす場合もあれば、複数の要因が相互に影響し合って白髪を引き起こすこともあります。

白髪の出現パターン

白髪の出現パターンには個人差がありますが、一般的には男性と女性で異なる傾向が見られます。男性の場合、こめかみやもみ上げから白髪が始まり、徐々に頭頂部や後頭部へと広がっていくことが多いです。一方、女性は生え際から白髪が増え始め、次第に頭頂部、側頭部、後頭部へと広がる傾向があります。

白髪の予防方法

日傘で紫外線対策

白髪の予防には、いくつかの重要な対策が挙げられます。まず、禁煙と紫外線対策が非常に効果的です。喫煙は体内の活性酸素を増加させ、メラノサイト(色素細胞)にダメージを与えるため、禁煙することは白髪の予防に役立ちます。また、紫外線はメラノサイトの機能を低下させる原因となるため、日常的に頭皮が直射日光を浴びないようにして紫外線から髪を保護することが推奨されます。

さらに、ビタミンB5(パントテン酸カルシウム)は髪の成長や代謝に不可欠な栄養素であり、マウス実験では白髪の予防効果が確認されています。このビタミンは、髪の色素を維持するための細胞機能をサポートします。バランスの取れた食事を心がけ、ビタミンB5を含む食品(全粒穀物、卵、魚など)やサプリを積極的に摂取することが重要です。

また、ビタミンB12や鉄分の摂取も白髪予防に有効です。これらの栄養素はメラニンの生成を助け、髪の色素細胞をサポートします。食事やサプリから十分なビタミンやミネラルを摂取することで、髪の健康を維持し、白髪の進行を遅らせることができます。

ストレス管理も白髪予防に欠かせません。ストレスはホルモンバランスを乱し、白髪を促進する可能性があります。リラックスするためのヨガや適度な運動を取り入れることで、ストレスを軽減し、髪の健康を保つことができます。

以下のポイントを実践することで、白髪の進行を遅らせることができます。

禁煙: 活性酸素の生成を抑え、細胞の健康を保つ。

紫外線対策: 日傘や帽子の使用で紫外線から髪を保護する。

栄養バランスの取れた食事: ビタミンB5、B12、鉄分を豊富に含む食品を摂取する。

適度な運動と十分な睡眠: 全身の健康を維持し、ストレスを軽減する。

これらの予防策を実践することで、白髪の進行を効果的に遅らせることが期待できます。

出典元:

Karger Publishers – Medication-Induced Repigmentation of Gray Hair

まとめ

「白髪の人は薄毛にならない」というのは迷信であり、白髪と薄毛には直接的な関連性はありません。白髪は主にメラノサイトの機能低下によって発生します。一方で、薄毛は主に遺伝的要因やホルモンの変動(特に女性ホルモンの減少)によって引き起こされます。これらの現象はそれぞれ異なるメカニズムに基づいており、白髪があるからといって薄毛にならないということはないのです。

白髪の予防には禁煙や紫外線対策が不可欠です。また、バランスの取れた食事を心がけ、ビタミンB5、B12や鉄分などの栄養素を十分に摂取することも重要です。これに加えて、ストレス管理も白髪の進行を遅らせるために有効です。

食事から十分なビタミンを摂取できない場合は、サプリメントの利用を検討することも一つの方法です。これにより、栄養不足を補い、髪の健康を維持することができます。

結論として、白髪と薄毛の予防には、総合的な健康管理が必要です。日常生活の中でこれらの対策を実践することで、髪の健康を維持し、白髪や薄毛の進行を効果的に遅らせることが期待できます。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。これまで延べ5万以上の薄毛治療を行う。著書に「専門医が徹底解説!女性の薄毛解消読本」(元神賢太著 / 幻冬舎)。女性の薄毛治療のほか、エイジングケア治療、美肌治療を得意としている。

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