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2024/03/05

院長ブログトップ > 【ワカメで髪が増える?】髪にはたんぱく質が大事!【女性薄毛16】

【ワカメで髪が増える?】髪にはたんぱく質が大事!【女性薄毛16】

わかめは髪の毛によいのか

(第15回「カツラやウィッグ、エクステで、女性の薄毛が加速!」からの続き)

「ワカメやひじきなど海藻類を食べると髪が黒々と丈夫になる」……。すでに常識のよう に語られる、薄毛にまつわる話の数々があります。つい信じてしまいがちですが、それらは本当に正しいのでしょうか。この記事ではワカメなどの海藻類などの髪への効果と髪の成長にとって最も大切である栄養素「タンパク質」について解説します。

海藻類は確かに髪の毛にとってよい!

ワカメや他の海藻が髪の毛に良いとされる言い伝えは、実際にはいくつかの根拠に基づいています。海藻に含まれる栄養素が髪の健康に良い影響を与える可能性があるためです。ここで海藻類に含まれる栄養素をいくつか挙げます。

■ミネラルとビタミン

ワカメを含む海藻は、亜鉛、鉄、セレニウム、カルシウム、ビタミンA、ビタミンCなど、髪の健康に重要なミネラルとビタミンを豊富に含んでいます。これらの栄養素は、髪の成長を促進し、髪を強く、健康に保つのに役立ちます。

■アミノ酸:

海藻にはアミノ酸も豊富に含まれています。アミノ酸は、髪の主要成分であるケラチンの構成要素です。これにより、髪の強度と弾力性が向上します。

■脂肪酸

特にオメガ-3脂肪酸が豊富な海藻は、髪の保湿と頭皮の健康をサポートするとされています。これは、乾燥やフケを防ぎ、髪の全体的な外見を改善するのに役立ちます。

■抗酸化物質

海藻に含まれる抗酸化物質は、紫外線や環境汚染から髪を保護し、早期の髪の老化を防ぐのに役立ちます。

これらの栄養素に基づいて、伝統的に海藻が髪の健康に良いと考えられているのは理解できます。ただし、これらの効果は科学的に厳密に証明されたものではなく、また、各物質の含有量は極めて微量であったりするため、個々の栄養素がどの程度髪に直接的に影響を与えるかはまだ明確ではありません。次に、特に髪にとってよいとされる特に良いとされる亜鉛、オメガ-3脂肪酸の海藻類の含有量をみていきましょう。

海藻に含まれる亜鉛の量について

亜鉛は重要なミネラルで、多くの海藻類に含まれています。亜鉛が豊富な海藻の例として、以下のものが挙げられます。

■ヒジキ

ヒジキは亜鉛を豊富に含むことで知られています。約100gの乾燥ヒジキには約34mgの亜鉛が含まれているとされています。

■コンブ

コンブは、日本料理でよく使われる海藻で、亜鉛の良い供給源です。100gあたり約1.23mgの亜鉛が含まれています。

■ワカメ

ワカメもまた亜鉛を含む海藻の一つで、100gあたり約3.4mgの亜鉛を含んでいます。

■ノリ(Nori)

寿司の巻き物に使われるノリも亜鉛を含んでいます。100gあたりの亜鉛含有量は約1.8mgです。

ヒジキは突出して多くの亜鉛を含んでいますが、1日15mgの亜鉛が髪の成長に不可欠と言われていますので、その他海藻類については亜鉛含有量がそれほど多くありません。また、海藻を食べる際は、過剰摂取を避けるために適量を心がけることが重要です。海藻には他にもヨウ素などのミネラルが豊富に含まれており、過剰に摂取すると健康上の問題を引き起こす可能性があります。特に甲状腺機能に問題がある場合は、摂取量に注意する必要があります。

ひじきは亜鉛が豊富

オメガ-3脂肪酸の髪への作用について

オメガ-3脂肪酸は、髪の毛にとって多くの利点を提供します。これらの脂肪酸は、特に次のような方法で髪の健康に寄与すると考えられています。

■頭皮の健康の改善

オメガ-3脂肪酸は、抗炎症作用を持っているため、頭皮の炎症を減らし、フケや頭皮の乾燥を防ぐのに役立ちます。健康な頭皮は、健康な髪の成長に不可欠です。

■髪の成長の促進

オメガ-3が髪の毛包の健康をサポートし、髪の成長サイクルを改善する可能性があります。これは、より健康で強い髪の成長につながります。

■髪の輝きと強さの向上

オメガ-3脂肪酸は、髪の自然な油分のバランスを整え、髪に自然な輝きと強さを与えます。これにより、髪が乾燥して抜けやすくなるのを防ぐことができます。

■髪の損傷の減少

オメガ-3は髪の毛を保湿し、外部からの損傷(例えば紫外線や汚染物質による損傷)に対する抵抗力を高めることができます。

ただし、100g当たり乾燥ノリには数十mg、乾燥ワカメには数十mgから数百mgのオメガ-3脂肪酸が含まれている程度です。亜鉛と同様にこのように海藻類は含まれる髪の良いとされる栄養素は極めて微量であり、これだけで髪の成長を実感できることはありません。

昔から海藻類が髪の良いとされてきたのはなぜ?

ワカメやひじき、昆布など、黒い海藻類が黒々とした髪の毛のイメージと重なるうえ、 海藻類に含まれるミネラルが髪によいというのが、この説の根拠でしょう。確かに前述した亜鉛やオメガ-3脂肪酸などのミネラルやアミノ酸は髪の毛がつくられるときに必要ですし、体のためにも大切な栄養素です。ただし、それらを含む食物を摂取したからといって、その含有量が極めて微量であるため、髪の毛が丈夫になったり、増えたりすることはありません。

たんぱく質が大事

海藻類を多く摂取するよりも、しっかりと摂取したい栄養素はタンパク質です。人間の体はすべてタンパ ク質からできており、それは髪の毛も同じです。そのため、過剰なダイエットで肉や魚を食べなかったり、偏食のために避けたりするのは薄毛対策としてもNG。タンパク質をきちんととらないと薄毛の原因になってしまいます。クリニックを訪れる方々を見ていても、自覚なく偏食している女性は多いのが実態です。 具体的にはタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが不足しがちで、パスタやパンなどの炭 水化物が中心の食事が薄毛の原因のひとつとなっていると考えています。

たんぱく質が髪の毛に良い理由

わかめが髪によいのか

たんぱく質が髪の成長に不可欠である理由は、髪の主要な構成成分がたんぱく質であるからです。以下に、たんぱく質が髪の成長にどのように重要であるかを分かりやすく説明します。

■髪の主成分はケラチン

髪の毛は主にケラチンというたんぱく質で構成されています。ケラチンは強度と弾力性を髪に提供し、健康な髪の外観を維持します。

■たんぱく質は髪の構築ブロック

体内で新しい髪の毛を作る際、たんぱく質は文字通りの「構築ブロック」として機能します。髪の毛を構成するためには、適切な量のたんぱく質が必要です。

■成長と修復に必要

髪の毛は常に成長し、修復されています。この過程にはたんぱく質が不可欠で、不足すると髪の成長が遅くなったり、髪が薄く弱くなったりします。

■健康な髪の外観をサポート

十分なたんぱく質を摂取することで、髪は強く、光沢があり、健康的な状態を保つことができます。たんぱく質が不足すると、髪は乾燥して脆く、容易に折れたり、分け目ができたりする可能性があります。

■食事からのたんぱく質摂取

 良質なたんぱく質は肉、魚、卵、乳製品、豆類などの食品から摂取できます。バランスの良い食事を通じて、髪の成長と健康をサポートするために十分なたんぱく質を摂取することが重要です。

参照元:

Nutrition and hair

まとめ

髪のためにも、 偏った食生活に陥らないように注意するようにしてください。たんぱく質は髪の毛を作るための基本的な素材であり、十分なたんぱく質がなければ、健康で丈夫な髪の成長は期待できません。髪の成長には、ビタミンもミネラルもタンパク質も必要だということは、つまり食生活 においては「バランスのいい食事」が大切だということです。当たり前のことですが、薄毛対策としても、いろいろな栄養をきちんと、まんべんなくとることが基本なのです。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。これまで延べ5万以上の薄毛治療を行う。著書に「専門医が徹底解説!女性の薄毛解消読本」(元神賢太著 / 幻冬舎)。女性の薄毛治療のほか、エイジングケア治療、美肌治療を得意としている。

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2024/03/04

院長ブログトップ > 【親に強要する整形についての是非】専門医の意見として

【親に強要する整形についての是非】専門医の意見として

漫画家グラハム子の写真

2024年3月1日にアベマタイムズ(アベマ TV)で放送された「「親に整形される子供たち」二重手術の強要も…どこまで許せる?当事者と考える」は、親からの圧力による二重手術などの強要に焦点を当てた番組でした。番組内では、このデリケートな問題に対して、多角的な視点から熱心な議論が交わされました。親の意向と子供の自己決定権の狭間で、美容整形の是非について、どのような基準で考えるべきなのか、その境界線はどこにあるのか。本稿では、この問題に対して、美容外科専門医としての視点から深く掘り下げ、私なりの考察と意見を述べたいと思います。

出典元:アベマタイムズ(ABEMA TIMES)

実際の番組内容①:「子供の身体に手を加える親の思い」

親に整形させられた私が母になる

子供たちの意思を無視して、親の一方的な願いにより、顔や身体に変更を加える行為。これはどこまで容認されるべきなのでしょうか。「「親に整形される子供たち」二重手術の強要も…どこまで許せる?当事者と考える」の番組では、この問題を扱った具体的な事例として、一つの漫画を取り上げました。その漫画のタイトルは『親に整形させられた私が母になる』。この漫画は、漫画家グラハム子さんによって描かれたもので、「一重のままでは可哀想」という母親の言葉が込められています。「中学を卒業したら整形してあげるわ。女の子は可愛くなくちゃ幸せになれないから」という母親の声が漫画には登場します。グラハム子さんは、「幼い頃から、“一重はダメ、二重が良い”と教え込まれ、それが当然のこととして受け止められてしまった」と語ります。このような状況は、「あなたのためを思って」という親の言葉によって正当化されがちですが、果たして親が子供の外見に介入することは許されるのでしょうか。番組内での議論では、グラハム子さん自身も参加し、この問題について深く掘り下げていきました。

実際の番組内容②:「グラハム子さんの体験とその影響」

親に整形させられた私が母になるbyグラハム子

番組では、グラハム子さんが自身の漫画で描いた、実際に体験した出来事に焦点を当てました。彼女の幼少期は、父親が単身赴任中であり、母子二人だけの生活でした。その環境の中で、母親の言葉は絶対であり、グラハム子さんは服装や髪型に至るまで、母親の意向に従うことを強いられていました。特に顕著だったのが、15歳の時に行われた二重の整形手術です。「高校入学前の春休みに、母によって予約された整形手術を受けさせられました。私は埋没法での手術を受けたが、まぶたの構造上、結局手術は3回繰り返され、最終的には元の奥二重に戻っています」と彼女は述べています。さらに、母親によって用意された好みではない服を着させられたり、自分の好みとは異なる髪型にされたりと、自身の意志は尊重されない状況が続きました。また、ダイエットも強要され、抵抗すると服を踏みつけられるなど、精神的な圧迫も伴っていました。「美容室の予約も母が勝手に取っており、行かなければ私が責められるという状況でした」とグラハム子さんは振り返ります。このような“きせかえ人形”のような生活は、彼女に大きな苦しみをもたらし、摂食障害にも陥りました。しかし、アキレス腱を切断し動けなくなったことが、この呪縛から解放されるきっかけとなりました。「もちろん、恨んでいた時期もありましたが、大人になってからは“しょうがなかった”と受け入れられるようになりました。漫画を描くことで自分の体験を表現し、ある意味でのプチ復讐もできました。今は、過去を乗り越えて前向きに生きています」と、彼女は語っています。

実際の番組内容③:「子供の意思と親の価値観の衝突」

グラハム子の二重埋没法

番組では、親によって容姿を変えられたと訴える子供たちの声にもスポットを当てました。SNSでは「自分の好みではなく、親の好みに合わせた服装や髪型」「“痩せること=正義”という価値観に基づき、親に体型維持を強要された」「脱毛を強要されるなどの嫌悪感」などの声が見受けられます。美容に関する低年齢化の問題に加えて、子供を所有物のように扱う親の存在について、母娘関係とモラハラに精通する心理カウンセラー影宮竜也氏は指摘しました。影宮氏は、「親は自分の価値観や正義感を子供に押し付ける傾向にあります。子供をステータスとして利用することや、“あなたのため”と言っての強要、親子間の境界線の曖昧さが問題です。子供が親の提案をどう受け取るか、子供の意思がどれだけ尊重されているかが重要な議題です」と語りました。

また、金融アナリストで名古屋商科大学大学院の教授である大槻奈那氏も、容姿に関する自身の経験を共有しました。彼女は、「小さい頃、毛深いという理由で父親に脱毛のため病院へ連れて行かれました。その時は“親が自分のためを思ってくれている”と思っていましたが、医師の前での恥ずかしさに泣いてしまいました。その瞬間、“自分は気にしていない。今はやりたくない”と拒否できました。後には脱毛しても良かったかと思うこともありますが、将来取り返しのつかないこと、後戻りできないことは避けるべきだと思います」と述べています。

実際の番組内容④:「子供の自我形成と親の影響」

番組では、心理カウンセラーの影宮竜也氏が子供の自我形成についての見解を述べました。影宮氏は、「子供が自分の意思をはっきりと表現できるならば問題は起こりにくい。しかし、自己の意思を表すことが難しい子供もいるため、この点に留意する必要があります」と指摘しました。さらに、「親の言う通りに育った子供は、大人になって自分の好きなものが分からなくなることが多い。自分は何をしたいのか、と問われても答えられない。このような弊害があるため、親子であっても自分の意思をはっきりと伝えられるようになることが重要です」と述べています。

一方で、子育てや教育における正しいやり方の線引きは難しい問題です。ネット掲示板「2ちゃんねる」の創設者、ひろゆき氏は子供にとって親を比較できる環境を提供することの重要性を説いています。ひろゆき氏は、「子供には自分の環境が正常かどうか判断する基準がないため、多くの大人との接触を通じてその判断基準を持たせることが解決策だと思います。親の話をして、その反応を見ることで、状況が正常かどうかを判断できる。問題がある場合は、児童相談所などの支援を受けることも可能です。大人の知り合いがいれば、そういったアドバイスも得られるでしょう」と語りました。

子に整形を強要する親

美容外科専門医の私の意見

私が運営するクリニックでは、子供を連れて訪れる親子が頻繁に来院します。相談内容は多岐に渡りますが、特に多いのは二重まぶたの手術やわきが治療に関するものです。二重整形を望む母親からは、「この子は一重で、父親似だからかわいそう」といった言葉をよく耳にします。わきが治療の場合、親御さん自身がワキガ治療を受けた経験があるため、子供にも早めに治療を受けさせたいという意見が目立ちます。私が最も重視するのは、子供の意思です。たとえ8歳や9歳の子供であっても、私は診察時に必ずその子に治療を受けたいかどうかを直接尋ねます。本人が「受けたい」とはっきりと意思表示しない限り、たとえ親がどれだけ手術を望んでいても、私は断ることにしています。これまでに5回以上、子供の手術をこの理由で断ってきました。なぜなら、親の意志だけで手術を行うと、その手術が子供にとって精神的なトラウマになる可能性があるからです。そのようなトラウマは子供の健全な成長を妨げるリスクがあると私は考えています。そのため、私は子供が自分の意思を記憶できる年齢(概ね8歳以上)であり、かつ、自ら治療を受けたいと明確に意思表示した場合のみ手術を行う方針です。親御さんにも、お子さんがはっきりと手術を望んだ場合にのみ、その手術を受けさせるべきだと考えていただきたいと思います。

美容外科医専門医元神賢太医師

まとめ

親による子供への整形手術の強要は、単に美容の問題にとどまらず、子供の心理的な健康、成長、そして自尊心にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。整形手術は人の外見だけでなく、内面にも大きな変化をもたらす行為であり、子供の意思の尊重が何よりも重要です。このブログで私が強調したいのは、子供の意見を尊重する医師の倫理の重要性です。残念ながら、現在、クリニックの利益を優先し、子供の意見を無視して親の意向のみで手術を行う医師が存在しています。このようなモラルの低い医師の増加は、医療業界全体にとって深刻な問題です。子供の声を聞き、適切な判断を下すことで、親の一方的な押し付けによる心理的なダメージを受ける子供を減少させることが可能です。子供の健康な成長を支援し、彼らの自己決定権を尊重することが、医師としての責任であると私は強く信じています。医師一人ひとりが倫理観を持ち、子供たちの心身の健康を第一に考えることが、美容医療においても大切だと考えます。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがあり、二重治療、わきが治療、アンチエイジング治療を得意としている。第109回日本美容外科学会で「スプリングスレッドを併用したフェイスリフト手術」で学会発表し、好評を得た。切らないフェイスリフトのウルセラも日本国内に導入直後から取り入れており、第107回日本美容外科学会でもウルセラの学会発表を行っている。

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2024/03/03

院長ブログトップ > 【ニキビに処方される薬】おすすめの薬とその効果について

【ニキビに処方される薬】おすすめの薬とその効果について

にきびの薬で効果があるものを探している女性

2023年に日本皮膚科学会よりニキビ治療の最新のガイドラインが発表されました。ガイドラインには、日本国内で保険診療において推奨される効果的なニキビ治療薬が詳細に掲載されています。この記事では、このガイドラインに基づいて、ニキビ治療において使うべきおすすめの薬についてその効果やメカニズムなどに詳細に解説します

そもそもガイドラインとは

日本で様々な疾患に対してそれを専門とする学会があり、ガイドラインはこれらの学会が発表されています。ガイドラインは、医療の質を高め、患者さんに最適な治療を提供するために非常に重要な役割を果たしています。ガイドラインは、最新のエビデンス(研究や論文による科学的根拠)に基づいて作成され、医師や医療関係者に最新の医学知識と治療方法を提供します。これにより、保健診療において全国の異なる医療機関でも一定の質の高い治療が提供され、治療の標準化が図られます。また、ガイドラインは、治療成果や患者様の満足度などを考慮して定期的に見直され、これにより、医療の質が常に最新の科学的根拠に基づいて向上し続けることが期待されています。このように、専門学会のガイドラインは、患者さんにとって最良の治療方法を保証するための重要な手引きとして機能しています。

ニキビの最新のガイドラインとは

ニキビ(医学用語では尋常性痤瘡と言います)の最新のガイドラインは2023年に日本皮膚科学会より発表され、「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」としてネット上でも閲覧可能です。このガイドラインの中ではさまざま治療方法に対して、推奨度を決めており、その根拠になっているエビデンスに対してもエビデンスレベルを決めております。

エビデンスレベルと推奨度の分類は下記のようになっています。

■エビデンスレベルの分類

数字が小さいほど、科学的なエビデンスの信用度が高いことを意味します。

I: システマティックレビュー,メタアナリシス

II :1つ以上のランダム化比較試験

III:非ランダム化比較試験(統計処理のある前後比較 試験を含む)

IV:分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究)

V: 記述研究(症例報告や症例集積研究)

VI: 専門委員会や専門家個人の意見

■推奨度の分類

A :‌行うよう強く推奨する(少なくとも 1 つの有効性 を示すレベル I もしくは良質のレベル II のエビデンスがある).

A*:行うよう推奨する(A に相当する有効性のエビデンスがあるが,副作用などを考慮すると推奨度が 劣る).

B ‌:行うよう推奨する(少なくとも 1 つ以上の有効性 を示す質の劣るレベル II か良質のレベル III ある いは非常に良質の IV のエビデンスがある).

C1 ‌:選択肢の一つとして推奨する(質の劣る III~IV, 良質な複数の V,あるいは委員会が認める VI のエビデンスがある).

C2:十分な根拠がないので(現時点では)推奨しない (有効のエビデンスがない,あるいは無効であるエビデンスがある).

 D: 行わないよう推奨する(無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)

出典元:

尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023

ニキビのガイドラインで推奨度Aの塗り薬

「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」においてすべてのニキビ(炎症性皮疹と面皰)に対して推奨度Aの塗り薬は主成分が過酸化ベンゾイルとアダパレンの2つのみです。この2つが塗り薬ではおすすめの処方薬となります。

■過酸化ベンゾイルとは

ニキビに効くベピオゲル

過酸化ベンゾイルを主成分とする塗り薬ではベピオゲルが先発医薬品で、2015年に発売された比較的新しい処方薬です。過酸化ベンゾイルはニキビ治療に広く用いられる外用薬で、以下に、その主な特徴を詳しく説明します。

抗菌作用: ベピオゲルはニキビの主要な原因菌でアクネ菌に対して強力な抗菌効果を発揮します。この薬剤は皮脂腺内で分解され、強い酸化剤として作用し、バクテリアの細胞壁を破壊します。

角質層の軟化と剥離: 過酸化ベンゾイルは角質層を軟化させ、古い角質を除去する効果があります。これにより、毛穴の詰まりを防ぎ、ニキビの形成を予防すると同時に、既存のニキビの治療を促進します。

抗炎症作用: 過酸化ベンゾイルには炎症を軽減する作用があります。これは、炎症を引き起こす因子の生成を抑制することにより、ニキビに伴う赤みや腫れを減少させます。

皮脂生成の抑制: 一部の研究では、ベピオゲルが皮脂腺の活動を抑制し、皮脂の過剰な生成を減らす可能性が示唆されています。

使用上の注意点としては、過酸化ベンゾイルは肌に対して刺激が強いため、使用初期には乾燥、赤み、はがれ、痒みなどの副作用が発生することがあります。これらの症状は通常、使用を続けることで徐々に軽減されますが、重度の刺激やアレルギー反応が現れた場合には使用を中止し、医師の診察を受けることが重要です。また、過酸化ベンゾイルは布などを漂白する性質があるため、使用時には衣類やタオルなどに注意が必要です。以上のように、ベピオゲルはその抗菌作用、角質層の軟化・剥離効果、抗炎症作用、および皮脂生成の抑制効果により、ニキビ治療において重要な役割を果たします。

■アダパレンとは

ディフェリンゲルのにきび薬

アダパレンを主成分とする塗り薬ではディフェリンゲルが先発医薬品で、2008年に日本国内では発売されました。ディフェリンゲルは、ニキビ治療に用いられる外用薬の一種で、エビデンスに基づいたそのメカニズムや効能について、以下のように説明します。

レチノイド作用: アダパレンは合成レチノイドであり、ビタミンAの誘導体です。この薬は、細胞の成長と分化に関わるレチノイド受容体に作用します。特に、ディフェリンゲルは特定のレチノイド受容体に選択的に結合することで、皮膚の角質層の正常化を促進し、毛穴の詰まり(コメド)の形成を防ぎます。

抗炎症効果: アダパレンには、ニキビの炎症を減少させる効果があります。これは、炎症を引き起こす細胞因子の活動を抑制することによるものです。これにより、ニキビによる赤みや腫れを軽減します。

角質層の正常化: ディフェリンゲルは、皮膚の角質層の剥離を促進し、毛穴の詰まりを解消します。これにより、コメドの形成を防ぎ、既存のコメドを除去する助けとなります。

皮脂腺活動の調節: いくつかの研究では、アダパレンが皮脂腺の活動を調節し、皮脂の過剰な分泌を抑える可能性が示唆されています。

使用上の注意として、アダパレンの初期使用では、皮膚の乾燥、赤み、痒み、刺激感などが起こることがありますが、これらは通常、使用を続けることで時間と共に減少します。また、アダパレンは光に敏感なので、使用中は日焼けを避けるか、日焼け止めを使用することが推奨されます。また、妊娠中や授乳中の女性には使用を避けるか、医師の指導の下で使用することが重要です。以上のようにディフェリンゲルは、その角質層の正常化作用、抗炎症効果、および皮脂腺活動の調節により、ニキビ治療において効果的な薬剤とされています。

ニキビのガイドラインで推奨度Aの飲み薬

額のにきびの治療薬とは

「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」において飲み薬が推奨度Aを得ているのはニキビが炎症性皮疹(赤ニキビと黄ニキビ)の場合のみで、その薬もドキシサイクリン、ミノサイクリンのみです。この2つが飲み繰りではおすすめの処方薬となります。

■ドキシサイクリンとは

ドキシサイクリンは、ニキビ治療に使用されるテトラサイクリン系の抗生物質の一つです。ドキシサイクリンは、ニキビの主要な原因菌であるアクネ菌に対して強力な抗菌効果を示します。この薬は細菌のタンパク質合成を阻害し、その増殖を抑制します。これにより、アクネ菌の数を減少させ、ニキビの発生を抑制します。ドキシサイクリンには、ニキビの炎症を抑制する効果があります。炎症はニキビの赤みや腫れの原因であり、この炎症を抑えることで、ニキビの症状を軽減することができます。一部の研究では、ドキシサイクリンがコメドの形成を抑制する可能性が示唆されています。コメドはニキビの初期段階であり、これを抑制することでニキビの進行を防ぐ効果が期待されます。使用上の注意点として、ドキシサイクリンは光線過敏症(日光に対する過敏反応)を引き起こす可能性があるため、日焼けを避けることが推奨されます。また、胃腸障害やめまいなどの副作用が起こることがあるため、医師の指示に従って使用することが重要です。

■ミノサイクリン(ミノペン🄬)とは

ミノサイクリン(商品名:ミノペン)もドキシサイクリンと同様に、ニキビ治療に使用されるテトラサイクリン系の抗生物質です。ミノペンは、ニキビの原因となるアクネ菌(に対して強力な抗菌効果を持っています。この薬は、細菌のタンパク質合成を阻害し、その増殖を抑制することで、ニキビの原因菌の数を減らします。この薬は、ニキビに伴う炎症反応を抑える効果も持っています。炎症はニキビの赤みや腫れを引き起こす主要な因子であるため、この作用はニキビの症状を軽減します。ミノサイクリンによるアクネ菌の増殖抑制と炎症抑制により、ニキビの進行を防ぐ効果があります。特に、毛穴に詰まった皮脂が悪化して感染を引き起こす中等症から重症のニキビに有効です。使用上の注意点として、ミノペンは、副作用として光線過敏症(日光に敏感になること)、胃腸障害、めまいなどが報告され

その他のニキビの塗り薬と飲み薬について

推奨度Aの薬はこれまで紹介した4つ(塗り薬2つ、内服薬2つ)のみです。ただ、ニキビの薬はその他にもたくさんあります。それぞれの推奨度と合わせて簡単に解説します。

■ニキビの塗り薬

外用抗菌薬(クリンダマイシン,ナジフ ロキサシン,オゼノキサシン)は炎症性皮疹(赤ニキビと黄ニキビ)に対しては推奨度A、面皰(白ニキビ、黒ニキビ)に対しては推奨度C2で推奨しないとされています。

非ステロイド系抗炎症外用薬(イブプロフェンピコ ノールクリーム)は炎症性皮疹(軽症から中等症)に対しては推奨度C1で、選択肢の一つとして推奨される場合があります。

ステロイド外用薬は推奨度C2であり、炎症性皮疹に対してはステロイド外用を推奨しないとされています。

アゼライン酸外用は保険適用外の外用剤ですが、推奨度C1 で、選択肢の一つとして推奨される場合があります。

ビタミン C 外用(テトラヘキシルデカン酸 アスコルビルと L-アスコルビン酸-2-リン酸ナトリウム の外用)は炎症性皮疹、炎症後の紅斑に使用されますが、保険適用外のためC2という判断です。

イオウ製剤外用はC1で、選択肢の一つとして推奨される場合があります。

■ニキビの飲み薬

ドキシサイクリン/ミノサ イクリン以外の抗生剤についてですが、炎症性皮疹に対してロキシスロマイシン/ファロペネムは推奨度B、テトラサイクリン/エリスロマイシン/クラリスロマイシン/レボフロキサシン/トスフロキサシン /シプロフロキサシン/ロメフロキサシン/ セフロキシムアキセチルは推奨度C1です。(抗生剤は面皰に対しては適用がありません)

漢方薬については荊芥連翹湯,清上防風湯,十味敗毒湯は炎症性皮疹に対しては推奨度C1で、黄連解毒湯,温清飲,温経湯,桂枝茯苓丸は炎症性皮疹に対してはC2です。面皰(白ニキビ、黒ニキビ)に対してC1は荊芥連翹湯のみで、その他すべての漢方薬はC2で推奨しないとされています。

ステロイド内服、DDS(diaminodiphenyl sulfone、dapsone)内服、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)内服はC2で推奨しないとされています。

経口避妊薬(いわゆるピル)はC2で推奨しないとされています。

スピロノラクトンはC2で推奨しないとされています。

ビタミン薬内服はC2で推奨しないとされています。

まとめ

本記事では、日本国内で保険診療におけるニキビ治療に用いられる薬剤について、最新の使用法と正しい知識を総合的にご紹介しました。特に、過酸化ベンゾイルとアダパレンという二種類の塗り薬、ドキシサイクリンとミノサイクリンという二種類の飲み薬は、その効果と安全性に基づき、特に推奨されており、おすすめの処方薬です。一方で、漢方薬を含む他の薬剤については、現時点ではエビデンス(科学的根拠)が不十分であり、一概に推奨することは難しいと言えます。しかし、これらの薬剤がニキビ治療に無効であるわけではなく、患者様個々の状態に応じて、医師の判断で効果的に用いられる場合もあります。この記事が、ニキビ治療薬に関する皆様の理解を深め、適切な治療選択の一助となれば幸いです。ニキビ治療における薬剤選択に際しては、その薬がガイドラインにおいてどのような位置づけであるかを理解することが非常に重要です。皆様のニキビ治療への知識が一層深まることを願っています。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。

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2024/03/02

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【プロアクティブにあまり効果がない理由】商品は悪質?

村上信五を宣伝に使用するプロアクティブ

ニキビのホームケア商品としてプロアクティブが有名です。プロアクティブは、その宣伝において著名人を起用し、特に旧ジャニーズ事務所の村上信五さんのような人気タレントの効果的な使用例を前面に出しています。彼の肌の顕著な改善は、多くの注目を集め、製品の魅力を伝える強力なメッセージとなりました。しかし、インターネット上でのユーザーレビューを見ると、この製品に対する満足度は必ずしも一様ではないようです。本稿では、プロアクティブの成分と効果に焦点を当て、ニキビケアにおけるその実効性について詳しく探求します。また、なぜこの製品が一部のユーザーにとって効果的でない可能性があるのかについても考察を加えます。

プロアクティブの歴史

プロアクティブ(Proactiv)は、アメリカの皮膚科医Katie RodanとKathy A. Fieldsにより開発されたスキンケアブランドで、1995年にダイレクトマーケティング会社Guthy-Renkerによって発売されました。プロアクティブ(Proactiv)は日本で言うテレビショッピングであるインフォマーシャルという形式で販売を開始し、インフォマーシャルを通じて広く知られるようになりました。また、米国内で多くの著名人を宣伝に起用し、世界中の消費者から注目を集めました。その成功の要因は、医薬品を混合するという革新的な製品開発と著名人を利用したマーケティング戦略にあります。また、洗顔料、トナー、ローションを組み合わせた3ステップケアが特徴で、これにより本来原価が安い洗顔料だけで十分な商品にさらに商品を2つ上乗せして付加価値をあるように見せて、高い値段設定にしました。これが大きな利益を生みました。日本市場では2003年からの展開が始まり、日本の薬事法に合わせた製品開発が行われています。プロアクティブは、その発売以来、その巧みな宣伝戦略により、ニキビケア製品の中でも特に認知度が高いブランドとしての地位を確立しています。ジャスティンビーバーを宣伝に使っているプロアクティブ

↑ジャスティンビーバーを宣伝に使っているプロアクティブの過去ホームページ

アメリカ版プロアクティブの成分とその効能

アメリカ版プロアクティブには「過酸化ベンゾイル(BPO)」が有効成分として使用されています。「過酸化ベンゾイル(BPO)」は、ニキビ治療において一定の効果を発揮する成分です。この成分は、日本国内では医薬品に分類されており、ニキビ治療用の外用薬「ベピオゲル」にも含まれています。ベピオゲルは、2015年より尋常性ざ瘡(一般的にニキビと呼ばれる状態)の治療薬として、保険適用の下で処方されるようになりました。過酸化ベンゾイルの特長は、顔のニキビを引き起こす主要因であるアクネ菌に対し、抗菌作用を発揮することにあり、その結果、多くのニキビ治療において効果を見せています。さらに、2017年にはプロアクティブMD(ProactivMD)という商品ががアダパレンを配合して発売されました​​。アダパレンも過酸化ベンゾイルと同様に日本では医薬品で、ディフェリンゲルという商品名で処方されています。

アメリカ版プロアクティブの有効成分の過酸化ベンゾイルやアダパレンとは

アメリカ版プロアクティブに含まれる過酸化ベンゾイルやアダパレンは、ともに尋常性痤瘡(一般的にニキビと呼ばれる状態)治療において、日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」で高い推奨度を得ている成分です。このガイドラインにおいて、過酸化ベンゾイルとアダパレンはともに「行うよう強く推奨する」カテゴリーのAランクに位置付けられています。私自身、日々の臨床でニキビ患者に対して直接ベピオゲル(過酸化ベンゾイル)やディフェリンゲル(アダパレン)を処方することもありますが、その効果は診察の中で明らかに見て取れます。日本では医療用薬品として扱われるこの成分が、アメリカ版プロアクティブに含まれていることは大きな驚きです。過酸化ベンゾイルの効能は、発売当初のアメリカ版プロアクティブの売れ行きにも大きく寄与しており、プロアクティブの人気は日本市場にも波及し、こちらでも発売されるに至りました(ただし、違う日本版は違う成分)。

日本版プロアクティブはサリチル酸

日本版プロアクティブとアメリカ版プロアクティブの間で最も顕著な差異は、それぞれの製品に含まれる主要な有効成分にあります。アメリカ版には過酸化ベンゾイル(BPO)が含まれていますが、日本版プロアクティブではその成分を使用しておらず、代わりにサリチル酸が主要成分として採用されています。サリチル酸は皮膚ケア製品において広く使用される成分で、特にピーリング石鹸などの製品で見られます。この成分は、古い角質層や余分な皮脂を取り除くことによって、新しい肌細胞の生成を促します。その結果、肌のトーンを明るくし、ニキビや黒ずみなどの皮膚トラブルの改善に効果を発揮すると言われています。

プロアクティブの3ステップ

↑日本のプロアクティブホームページに掲載されている3ステップの商品

出典元:

プロアクティブオームページ

日本版プロアクティブに含まれるサリチル酸の特徴とその効果

日本版プロアクティブに配合されているサリチル酸は、医療機関や美容皮膚科においてニキビ治療に広く用いられている成分です。特に、ケミカルピーリングの主要成分としての役割を担っています。ただし、ケミカルピーリングに使用されるサリチル酸は、石鹸などの日常的な皮膚ケア製品に配合されるものと比較して、はるかに高濃度です。この濃度の差が、その効果に大きな影響を与えます。さらに、サリチル酸の効果は個人差が非常に大きいという点が特筆すべきです。ある人には顕著な効果がある一方で、別の人にはほとんど効果がない場合もあります。このため、日本皮膚科学会が発表している「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」では、サリチル酸を使用したケミカルピーリングの推奨度はC1(治療の選択肢として考慮されるレベル)とされています。一般に市販されているピーリング石鹸に含まれるサリチル酸の濃度は、医療用のケミカルピーリングに比べて格段に低いです。市場には「スキンピールバー ハイドロキノール(サンソリット)」や「フォトホワイトC ホワイトソープ(ドクターシーラボ)」など、多くのピーリング石鹸が存在しますが、これらの製品もまた、効果を実感する人とそうでない人の間で大きな差があるのが現実です。

日本版プロアクティブの効果

日本市場において販売されている日本版プロアクティブは、その主成分としてサリチル酸を含んでいます。この点において、市場に存在する他のサリチル酸を含むピーリング石鹸製品との間に顕著な効果の差異は認められません。つまり、日本版プロアクティブの効果を実感する人がいる一方で、全く効果を感じられないという声も少なくないのです。特に、アメリカ版プロアクティブの大きな成功とその反響を背景に、多くの消費者が日本版に対して高い期待を抱いていました。しかし、肝心の効果に関しては、これらの期待とは異なる結果となることがあります。この違いの根底には、アメリカ版と日本版プロアクティブの成分の相違があります。アメリカ版の主成分である過酸化ベンゾイル(またはアダパレン)と、日本版のサリチル酸では、その作用機序や効果に大きな違いがあるため、同等の結果を期待することは難しいのです。この事実は、消費者にとって大きな落胆の原因となり得ますが、それは製品の成分の違いに基づくものであり、その効果の範囲や限界を理解することが重要です。したがって、日本版プロアクティブを使用する際には、これらの点を踏まえた上で、現実的な期待を持つことが肝要と言えるでしょう。

プロアクティブは悪質?

プロアクティブに関して、市場で見られるその価格設定には一定の疑問が持たれています。この製品の主要成分であるサリチル酸は、原価が比較的安価なピーリング石鹸に含まれる成分です。プロアクティブは、この一つの成分を含む製品を3つの異なる商品(洗顔料、化粧水、クリーム)に分割し、それぞれに特別な効果があるかのように宣伝しています。この戦略により、本来安価な成分を使用しながら、製品全体としては高価な価格設定をしているという点が指摘されています。しかし、化粧品市場においては、ブランド価値やマーケティング戦略が製品価格に大きな影響を与えることは一般的です。そのため、プロアクティブの価格が高いからといって、直ちに製品が悪質であると断じることはできません。消費者には、製品の価値が価格に見合っているかどうかを自身で判断し、購入の決断を下す権利があります。

まとめ

美容外科医専門医元神賢太医師

この記事を通じて、日本市場におけるプロアクティブの特徴と効果について詳細に解説しました。プロアクティブに含まれるサリチル酸は、一定の効果を持つことは間違いありません。この点を踏まえ、プロアクティブ製品自体を全面的に否定する意図はありません。しかしながら、多くの著名人がメディアやCMを通じて「プロアクティブだけでニキビが劇的に改善した」というメッセージを発信することについては、専門家の立場から見過ごすことはできません。プロアクティブが一部の人にとって効果的である可能性はありますが、それが万人に当てはまるわけではありません。この記事を読むことで、プロアクティブに関する正確な情報と、現実的な期待を持つことができたのであれば、これ以上の幸せはありません。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。

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2024/03/01

院長ブログトップ > 【代償性発汗だけではない後遺症】ETS手術で後悔しないために

【代償性発汗だけではない後遺症】ETS手術で後悔しないために

代償性発汗の実態

手汗や脇汗の過度な発汗に苦しむ方々にとって、ETS手術はしばしば最終的な救済手段として考えられがちです。しかし、この手術がもたらす危険な副作用や後遺症には、広く知られる代償性発汗のみならず、他にも多数のリスクが存在します。特に、ETS手術後に代償性発汗という後遺症に悩まされて手術を後悔される患者さんは少なくありません。代償性発汗はしばしば手術前に感じていた多汗症の苦しみを上回ることさえあるのです。さらに、ETS手術には代償性発汗以外にも、様々な深刻な副作用・後遺症が報告されています。このようなリスクが存在するにも関わらず、日本国内でのETS手術の実施件数は年々増加傾向にあります。本記事では、危険とも言えるこのETS手術がもたらす様々な副作用・後遺症やそれに伴う苦悩を、客観的な視点から詳細に解説し、これからETS手術を検討されている方々への注意喚起となることを目指しています。私たちの健康は何よりも大切です。したがって、どのような治療を選択するにしても、そのリスクと利点を十分に理解し、慎重な判断が求められます。

ETS手術とは

1ETS手術、すなわちEndoscopic Thoracic Sympathectomyは、医学用語で胸腔鏡下胸部交感神経遮断術と呼ばれます。この手術は原発性局所多汗症、特に手のひらや脇の下など特定部位の重度な発汗をコントロールするための外科的治療法として知られています。日本では1996年4月に健康保険の適用範囲となり、それ以降、国内での実施件数が急増しました。ETS手術は、発汗をコントロールする役割を持つ交感神経を特定の部位で遮断することにより、過度の発汗を抑制するという治療原理に基づいています。この手術方法は長い歴史を持ち、多くの患者にとって一定の効果をもたらしてきました。しかし、手術によって遮断された神経経路は元に戻すことができないため、この手術の効果も副作用も恒久的です。

そんな大事な神経を切るETS手術は危険ではないのか?

ETS手術の過程で、交感神経幹という生命維持に重要な自律神経の一部が切断されます。この手術で選択的に遮断される交感神経は、木の枝のように本幹から伸び、私たちの体が自動的に機能するために不可欠な役割を果たしています。自律神経系は交感神経と副交感神経の二つから構成され、これらは常に互いにバランスを取り合いながら無意識のうちに働いています。このバランスによって、私たちの身体は機能的に生きることが可能です。交感神経は、ストレスや危険に直面した際に体を活発化させる役割を担います。活動時には心臓の鼓動が速くなり、血圧が上昇し、筋肉への酸素と栄養の供給を増やすために血流が増加します。また、交感神経は発汗を促進し、体温の調節にも寄与しています。一方で、副交感神経は「休息と消化」に関連があります。この神経は体をリラックスさせ、心臓の拍動を遅くし、消化を助けるなど、体を落ち着かせる役割を果たします。食事をした後に眠くなるのは、副交感神経が活動して体をリラックスさせているからです。ETS手術では、このように体の自動制御にとって非常に重要な片方の自律神経の一部を遮断して、発汗機能をコントロールする手術です。しかし、ここで重要な疑問が生じます。「そんな大事な神経を切るETS手術は危険でないのか?」という疑問です。発汗機能の制御以外にも多くの生理的役割を担う交感神経を切断することは本当に安全なのでしょうか?後遺症は起きないのか?特に発汗の抑制のみを目的に、このように重要な神経を切断することについては、私はこれまで常に疑問が感じていました。

代償性発汗という苦しみ

代償性発汗の実態

↑代償性発汗により衣服が常にびしょびしょになっている状態

胸腔下交感神経遮断術(ETS手術)の潜在的な副作用・後遺症として、代償性発汗、味覚性発汗、ホルネル症候群などがありますが、中でも代償性発汗はその深刻さと発生率の高さから特に注目される後遺症です。代償性発汗は、手術によって発汗が抑制された部位以外の場所、例えば背中、腹部、足などで、異常な発汗が生じる現象を指します。代償性発汗の発症率は症状の強弱を除けば、ほぼ100%と言われており、症状の強弱もETS手術前にその程度を予測することは困難です。特に、重症の代償性発汗に悩まされる患者は10%以上にのぼるという報告もあります。重症の代償性発汗では、胸部以下の皮膚からの汗が止まらず、服が常に湿っている状態が続きます。このような状況では、発汗による脱水症状が頻繁に生じ、日常生活に甚大な影響を及ぼします。

代償性発汗は100%

↑字幕注視。ETS手術を多く行うクリニックの動画内でも代償性発汗は100%起こることを断定しています(youtubeより抜粋)

ETS手術ではこの代償性発汗という副作用・後遺症が発生する可能性がほぼ100%である点、そしてその重症度が予測不可能という点から、ETS手術を受けるかどうかを慎重に考える必要があります。重度の代償性発汗は単なる汗の問題ではなく、患者の生活の質を大きく低下させる深刻な副作用です。私はこのような重度の副作用が起こり得ることが予測不能なETS手術な危険手術と言えます。私は断固としてETS手術は受けるべきではないと考えます。

交感神経切断後の深刻な影響:多岐にわたる後遺症

交感神経は、単に発汗を制御するだけでなく、私たちの身体の多様な機能に影響を与える重要な神経です。ETS手術によるこの神経の切断は、発汗を止める目的だけではなく、体の自律的な制御に深刻な影響を及ぼす可能性があります。この重要な事実を踏まえると、その安全性に関しては医学的な知識を有する者であれば、誰もが疑問を抱くでしょう。ETS手術の副作用・後遺症としてよく知られる代償性発汗、味覚性発汗、ホルネル症候群は、手術施設で説明される一般的な副作用ですが、実際にはこれら以外にも多くの後遺症が発生する可能性があります。これらは交感神経という体の重要な神経を切断することに起因する副作用で、自律神経失調症とも言える状態になります。以下は、台湾の林口長庚病院 が公表した、ETS手術後に起こり得る様々な自律神経失調症とも言える後遺症の一部です。

髪:髪の乾燥、抜け毛

皮膚:皮膚のかゆみ、皮膚炎、顔の赤み、手足の赤み

目:眼精疲労、目やに、ドライアイ、羞明、夜盲症

耳:耳鳴り、耳閉感

喉:口の乾き、味覚障害、口腔潰瘍、のどの痛み

体温調節機能:冷たい手足

熱感覚:顔や首、胸、上下肢の熱さ

汗の問題:顔、首、胸、腹部、臀部、大腿、ふくらはぎ、足の発汗、ドライハンド(両手)

感覚異常:手足の感覚異常

精神障害:注意散漫、記憶障害、現実感の喪失、やる気の喪失、不安、憂鬱、不眠、疲労、頭痛、めまい

消化器系:胃痙攣、胸の灼熱感、食欲不振、下痢、腹鳴、満腹感、吐き気、消化不良

呼吸器系:呼吸困難、胸苦しさ、胸骨圧迫感

心血管系:動悸

筋骨格系:筋力低下、関節痛、ヒリヒリ感、骨粗鬆症、関節炎

泌尿生殖器系:頻尿、排尿障害、会陰部のかゆみ、腎尿管膀胱結石、男性の勃起不全、遅漏、インポテンツ、女性の月経困難症

これらの多岐にわたる後遺症は、ETS手術の重要なリスク要因として理解されるべきです。交感神経切断後の影響は単に発汗の問題に留まらず、身体のさまざまな機能に及ぶことが明らかです。

出典元:

長期的な視点から見たETS手術の隠された副作用・後遺症

ETS手術の副作用・後遺症に関するデータは、多くの医療機関や医学論文によって公表されていますが、これらの情報は主に術後2年間の短期的な追跡調査に基づいています。しかし、交感神経を切断するETS手術による副作用・後遺症は、術後数年、場合によっては10年後といった長期間経過した後に初めて顕著に現れることがあります。術後の短期間には患者の満足度が高いことも多いですが、時間が経過し、新たな健康問題が発生しても、これを手術との関連性を否定する医療機関が存在する場合、公表されるデータは実際のリスクを反映していない可能性があります。このような現状は、ETS手術の長期的な副作用・後遺症の実態を見落とす原因となり、医療機関からの報告によって手術の成功率や満足度が誤って高く評価されることにつながりかねません。

ETS手術の決断に伴う後悔の実態

病院外の独立した調査によると、SNSを通じて行われた患者自身の声から明らかになるETS手術に関する後悔率は、驚くべきことに約90%にも上ります。これは、ETS手術後に満足している患者がわずか10%未満であることを示唆しています。多くの国では、ETS手術に伴う予測不能な副作用・後遺症のリスクが高すぎると判断され、危険な手術として禁止または制限が行われています。ETS手術の発祥地であるスウェーデンでは、2003年に数多くの患者からの苦情を受けて法的に禁止されました。台湾では2004年以降、20歳未満の患者への施術が厳しく制限され、実質的には行われていません。日本国内でも、ETS手術を受けた多くの人々が、その後遺症により学業や職業を断念し、障害年金や生活保護の申請に至るケースが増えています。過去には、ETS手術に関連した医療訴訟が少なくとも十数件発生しており、訴訟の対象となった医療機関の多くは手術の実施を中止しています。

ETS手術以外のよい治療法

精神性発汗に悩む女性

原発性局所多汗症、例えば頭汗、手汗、足汗の過度な発汗に対処するための効果的かつ安全な治療法として、ボトックス注射が広く推奨されています。ボトックス注射は、ETS手術のように治らないような代償性発汗のリスクは全くなく、手軽かつ効果的な選択肢です。施術時の痛みがボトックスの一般的な懸念事項ですが、私のクリニックでは、10分間の全身麻酔によるマスク麻酔法を用いることで、患者様が痛みを感じることなくボトックス注射を受けられるよう配慮しています。ボトックス注射の効果は通常、約6ヶ月間続きますが、定期的な治療を受けることでその効果期間が延長する可能性があります。ボトックスは神経伝達を一時的にブロックし、注入部位の発汗を完全に抑制することで、日常生活における不快感や社会的な影響を軽減します。

それでもETSを受ける決断した場合

代償性発汗やその他の副作用のリスクを考慮して、それでも危険なETS手術の選択を検討する際は、最新の医療情報に注意することも重要です。近年、代償性発汗の発生率を低減するために、一部の医療機関では片側のみのETS手術を推奨しています。これらの施設では、片側手術における重症代償性発汗の発生率が非常に低いとの見解を示しています。また、この手法を支持する医学論文も出版されており、同様の理由から片側のみのETS手術が提唱されています。私自身はETS手術の実施に反対する立場を取っていますが、万が一ETS手術を受けると決断された場合は、利き手側のみの手術を選択することを考慮することをお勧めします。片側のETS手術は、重度の代償性発汗のリスクを低く抑える可能性があります。それでもなお、ETS手術はリスクが伴うことを十分に理解し、全ての可能性を慎重に検討した上で、最終的な判断を下すことが重要です。

【代償性発汗への対応】2つの有効な治療方法

ETS手術後に代償性発汗に悩まされている方にとって、以下の2つの治療法が最も効果的です。

1.ボトックス注射

ボトックス注射は、その効果が多くの医学論文によって確認されています。代償性発汗に苦しむ患者に対して、この治療法は最も効果的な解決策として認められています。治療を受けた患者のほぼ100%がボトックス治療に満足しているとの報告があり、その信頼性と手軽さから、私自身も代償性発汗の治療においてボトックス注射を第一選択肢として推奨しています。

出典元:

Compensatory Hyperhidrosis After Non-Surgical Treatment of Primary Focal Hyperhidrosis: Two-Year Single-Centered Prospective Study From Jordan. Jihan Muhaidat, Firas Al-qarqaz, and Diala Alshiyab 

2.リバーサル手術

リバーサル手術は、切断された交感神経を代替の神経で再接続し、機能を復活させる治療法です。この手術は日本国内ではおそらく行っている施設はなく、主にフィンランドと台湾で実施されています。台湾の桃園市にある林口長庚病院では、使用される神経の移植元としては、ふくらはぎの腓腹神経や人工神経が選ばれています。この手術では、切断された交感神経にこれらの神経を接続し、交感神経の機能をバイパスすることで、代償性発汗の症状を緩和します。

出典元:

台湾の代償性発汗に対するリハーサル手術youtube動画

まとめ

最近、アベマTVで取り上げられたこともあり、手掌多汗症に対するETS手術が注目を集めていますが、このブログを通じて、代償性発汗だけでなく、ETS手術に伴う多くの危険なリスクが存在することを広く理解していただければと思います。重症の代償性発汗やその他の副作用・後遺症により、日常生活が根底から覆されるような事態に陥る可能性もあるため、ETS手術には慎重な検討が必要です。XやFacebook等の各SNSで「ETS手術後遺症」などを検索すると実際にETS手術の後遺症に苦しむ患者様の生の声が聞こえますので、是非参考にしてください。このような日常を破綻させてしまうような合併症を引き起こす可能性があるETS手術は受けるべきでないですし、医療機関は行うべきではないと私は考えます。代わりに、ボトックス注射やビューホット治療等を考慮することで、ETS手術のリスクを避け、多汗症の症状を安全に管理することが可能です。このブログが、多汗症に悩む方々にとって有益な情報となり、より安全で効果的な治療選択につながることを願っています。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

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2024/02/29

院長ブログトップ > 【胸・デコルテにできる様々なブツブツ】原因と対策と治療法

【胸・デコルテにできる様々なブツブツ】原因と対策と治療法

胸・デコルテのニキビ、ブツブツの予防方法

女性の胸やデコルテに現れる様々なブツブツは、ただの肌のトラブルに留まらず、自信を失わせることもあります。これらは、しばしば視覚的な不快感を引き起こし、社交的な場面における自己表現や男性との交流にも影響を及ぼすことがあります。この記事では、女性の胸周囲やデコルテに出現するこれらのブツブツの原因を深く掘り下げ、効果的な対策と治療方法を詳細に解説し、皮膚の健康と美しさを保つためのヒントを提供します。

女性の胸周囲にブツブツがたくさんできる理由

女性のデリケートな胸周囲やデコルテにおいて、多く見られるブツブツの発生には、その特有の環境要因が深く関わっています。このような環境要因の中でも、特にブラジャーの使用による影響が大きいと言えるでしょう。特に、サイズが合っていない下着は、谷間やアンダーバスト(下乳)に不必要な摩擦を引き起こし、その結果、イボやニキビといった船のブツブツの一因となります。また、バスト自体が皮膚トラブルを起こしやすい特性を持つことも、胸のブツブツが頻繁に発生する原因の一つです。特に、女性の胸の谷間部分は、他の部位と比べて発汗が多く、温度と湿度が高い状態になりがちです。このような高温多湿の環境は、「胸にきび」の主原因とされているマラセチア(一種のカビ)の増殖を促し、あせもの発生を引き起こすことがあります。

胸・デコルテにできるブツブツや肌のトラブルの種類

胸部に生じる様々なブツブツや皮膚のトラブルには、いくつかの顕著なタイプがあります。これらには、「胸にきび」として知られるもの、発汗による「胸のあせも」、色の異なるイボ(「茶色のイボ」や「赤いイボ」)などが含まれます。さらに、「胸汗によるトラブル」という形で現れる悩みも見受けられます。以下より、これらの各トラブルについて、一つ一つ丁寧に詳細を解説していきます。特に、これらの皮膚トラブルがどのようにして発生するのか、その特性や原因を深く掘り下げ、理解を深めることが重要です

■胸ニキビ

胸のデコルテのニキビの正体とは
胸やデコルテに現れるニキビ、一般に「胸ニキビ」と称される状態は、真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)であることが多く、これは顔に現れる一般的なニキビとは異なる特徴を有します。この真菌性ニキビの原因は、皮膚に常在するマラセチア真菌が毛穴内で過剰に増殖し、それに伴う炎症によるものです。胸元は、下着による摩擦やその締め付けによって毛穴が損傷したり、下着と皮膚との間の高温多湿な環境が形成されやすいため、このような真菌(マラセチア)が増殖しやすい状況となります。これらの要因が複合的に作用し、胸やデコルテにマラセチア毛包炎という特有のニキビが発生するのです。

■胸のあせも

胸部とデコルテ領域は、特にあせもが発生しやすい環境にあります。この事実は、特に胸の谷間やアンダーバスト(下乳)のように、皮膚が互いに密接に接触する傾向がある部位において顕著です。これらの部位では、汗と熱がこもりやすくなり、結果として汗腺の正常な機能が妨げられることがあります。さらに、バストサイズが大きい方や肥満体型の方では、これらのエリアでの発汗量が通常よりも多くなる傾向があります。これは、体内の熱が皮下脂肪の存在によって外部に放出されにくいことが一因とされます。こうして大量の汗が一箇所に留まると、汗腺が詰まり、あせもの発生に繋がるのです。

■胸の茶色のイボ

デコルテのできたイボ
胸部に現れる茶色いイボ、一般に「アクロコルドン」と呼ばれるものは、スキンタグ、老人性イボ、軟性線維腫とも称されます。これらのイボは、皮膚の色に近いか、または茶色をしており、その発生機序は完全には明らかになっていませんが、一般的には皮下脂肪が薄い部位や、加齢とともに摩擦が生じやすい皮膚でより発生しやすいとされています。特にアンダーバスト(下乳)、谷間、デコルテといったエリアは、皮膚同士の接触や下着による摩擦が頻繁にあるため、アクロコルドンが生じやすい部位と言えます。また、バストが大きい方では、これらのイボが胸周囲に多数現れる傾向があります。

■胸の赤いイボ

胸元に多発する赤いブツブツ

胸やデコルテに見られる赤いイボは、一般に「老人性血管腫」と呼ばれ、皮膚の老化に伴い現れる非常に一般的な現象です。この赤いイボは、加齢に伴って全身に生じることがありますが、特に胸やデコルテに集中して多発することも珍しくありません。通常、これらの胸の赤いイボは無症状であり、健康上の害はほとんどないとされていますが、摩擦によって出血することがあるため、注意が必要です。

■胸汗のトラブル

胸の谷間やアンダーバスト部分は、他の体部位に比べて特有の環境を持ち、これが汗のトラブルを引き起こしやすい要因となっています。特に胸の谷間は他の部位よりも高温になることは医学的に確認されており、エクリン腺(汗腺の一種)の活動が他の部位よりも活発であるとされております。加えて、胸部は特に、下着や衣服によって覆われることが多く、特にバストが大きい場合には皮膚同士の接触が増え、その結果として密閉された状態になりやすいです。このような状況は、熱と湿度がこもりやすく、汗が分泌されやすい環境を形成します。これらの条件が重なることで、胸汗に関連した多汗症といった悩みを生じさせます。

胸の谷間は高温

↑胸の谷間部分だけ高温になることを確認した医学論文の中の図

出典元:

Regional sweat rates in humans

胸やデコルテのブツブツの治療

胸やデコルテのブツブツ治療において、まず最も重要なのは、適切かつ正確な診断を行うことです。特に、胸ニキビに関しては、顔のニキビに用いられる一般的な薬剤が効果を示さないため、適切な対処が遅れることで症状が悪化することは珍しくありません。以下では、胸・デコルテに生じる様々なブツブツについて、それぞれの状態に合わせた治療方法を解説していきます。

■胸やデコルテのブツブツがニキビである場合

胸やデコルテのブツブツがニキビである場合、その治療には特別なアプローチが求められます。特に注目すべき治療法として、「アグネス」という方法が推奨されます。アグネスは、さまざまな種類のニキビに対して効果的であり、その即効性が大きなメリットとなります。アグネスは、特に皮膚表面の問題を迅速に解決するためのものであり、多くの患者に対して好結果をもたらしています。さらに、胸のニキビがマラセチア毛包炎によるものである場合、アグネス治療と並行して抗真菌薬の使用を推奨します。この二つの治療法を併用することで、ニキビの原因となる真菌の増殖を抑制し、より効果的にニキビを治療することが可能になります。このように、胸やデコルテのニキビに対しては、その原因と特性を正確に把握し、それに適した治療法を選択することが、美しいバストの肌を取り戻す鍵となります。

■胸やデコルテのブツブツがイボの場合

胸やデコルテに現れるブツブツがイボの場合、その治療方法として炭酸ガスレーザーの利用が推奨されます。赤いイボであれ、茶色のイボであれ、炭酸ガスレーザーによる治療は、跡が残りにくく、肌をきれいに回復させる効果が期待できます。ただし、炭酸ガスレーザーによる治療は保険診療の対象外ですので、イボをきれいに除去し、美しい肌を取り戻したい場合には、美容皮膚科や美容外科の受診をおすすめします。美容の専門医は、炭酸ガスレーザー治療に関する豊富な経験と知識を有しており、患者の肌の状態に応じた最適な治療法を提供します。

■胸やデコルテのブツブツの原因があせもや胸汗の場合

胸とデコルテのブツブツやトラブルやがあせもや胸汗に起因する場合、これらの症状の根本的な原因は多汗症にあることが多く見受けられます。胸の多汗症に対する治療法として、特に推奨されるのがボトックス注射です。ボトックス注は、多汗症に対して高い効果を発揮し、約6か月間にわたる発汗抑制効果をもたらすします。ボトックスは、エクリン汗腺の過剰な活動を抑制する作用があり、これにより過度の発汗を効果的にコントロールすることができます。ボトックス注射による治療は、短時間で行うことが可能であり、治療後も日常生活に全く制限が起こらないという利点があります。

胸やデコルテのブツブツの予防

胸やデコルテのブツブツを予防するためには、その原因を理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。胸ニキビの一因であるマラセチア毛包炎、あせも、そして胸汗による肌トラブルは、主に胸部の過度な汗やその放置が原因となります。また、ブラジャーのサイズが合っていないことによる慢性的な摩擦も、イボやあせもを引き起こす重要な要因です。従って、胸やデコルテのブツブツの発症を予防するためには以下が重要です。

1.適切なサイズのブラジャーの選択

胸やデコルテのブツブツを予防する第一歩として、適切なサイズのブラジャーを選択することが非常に重要です。サイズが小さすぎるブラジャーは、肌に対する不必要な摩擦や圧迫を引き起こし、あせも、胸汗、ニキビ、アクロドン(イボ)の原因となる可能性があります。反対に、大きすぎるブラジャーもまた、肌同士の適切な隔離を行えず、同様にあせもやニキビを引き起こす原因になり得ます。適切なサイズと快適なフィット感を備えたブラジャーを選ぶことにより、下着と皮膚、または皮膚同士の不必要な摩擦を防ぐことが可能になります。これは、胸やデコルテのブツブツの発生を効果的に予防するための基本的かつ重要なステップとなります。

2.通気性の良いブラジャーの選択

胸やデコルテのブツブツを予防するうえで、ブラジャーの通気性も非常に重要な要素です。サイズの選定と同じくらい、どのような素材や設計のブラジャーを選ぶかが肝心です。穴あきメッシュ仕様のカップや裏地、吸水速乾性に優れた素材、薄手のレース生地を使用したブラジャーは、通気性を高め、快適な着心地を提供します。通気性が悪いブラジャーを長時間着用すると、ブラジャー内部に高温多湿の環境が生まれやすくなります。このような環境は、胸やデコルテにブツブツができるリスクを高めることになります。したがって、日々の下着選びにおいて、通気性を意識することは、胸やデコルテのブツブツや他の皮膚トラブルを予防する上で効果的な対策となります。

3.ノンワイヤーブラジャーの選択

胸やデコルテのブツブツを予防するうえで、ノンワイヤーブラジャーの選択は重要な役割を果たします。ワイヤーが入っていないノンワイヤーブラジャーは、特に胸の下の部分やワイヤーが接触する部位において、摩擦や汗が生じるリスクを軽減します。ワイヤーのないデザインにより、圧迫感が少なくなり、肌への優しさと快適な着用感が向上します。これにより、肌の摩擦や過度な発汗を抑え、ブツブツの発症を予防する助けとなります。ただし、ノンワイヤーブラジャーはワイヤーブラジャーに比べてホールド力が低い場合があります。そのため、フルカップタイプの選択や、涼しい日にはワイヤーブラジャーを選ぶなど、自分のバストの状態や活動に合わせて適切なバランスを取ることが大切です。

 

4.こまめな汗の拭き取りや汗吸収パッドや汗拭きシートの活用

胸やデコルテのブツブツ予防において、汗の管理は非常に重要です。汗を放置することは、胸ニキビや胸のあせもの直接的な原因となり得るため、特に注意が必要です。この問題を効果的に解決するためには、汗吸収パッドや汗拭きシートの積極的な活用が推奨されます。例えば、汗吸収パッドをブラジャーの下や谷間に挟むことで、肌と肌の直接的な接触を減らし、発汗を効果的にコントロールします。これにより、汗による不快感や皮膚トラブルのリスクを軽減することが可能です。また、日中の活動中や運動後など、汗をかいた際には汗拭きシートで素早く汗を拭き取ることが重要です。

5.正しいシャワーの活用法

胸やデコルテのブツブツを予防する上で、日々の清潔習慣、特にシャワーの正しい使い方は非常に重要です。胸ニキビやあせもの予防には、身体を清潔に保つことが不可欠です。特に、大量に汗をかいた後は、帰宅後すぐにシャワーで汗や汚れを洗い流すことをお勧めします。これは、マラセチア毛包炎の増殖を抑え、あせもを予防するために効果的です。また、シャワーを浴びる際は、石けんを十分に泡立て、肌に優しく洗うことが肝心です。肌を強くこすることは避けてください。強くこすり過ぎると、皮膚の天然の保護層であるバリア機能が損なわれ、結果としてマラセチアの増殖やあせものリスクを高めてしまう可能性があります。

6.毛の処理

胸やデコルテのブツブツ予防において、毛の処理方法にも注意が必要です。剃毛や毛抜きを用いた毛の除去は、しばしば毛穴への損傷や刺激を招く可能性があり、これが胸ニキビ(マラセチア毛包炎)の原因となることがあります。特に胸周囲のムダ毛が気になる場合、より肌に優しい処理方法としてレーザー脱毛の受診をおすすめします。レーザー脱毛は、肌表面を傷つけることなく、毛根に直接作用するため、毛穴へのダメージを大きく軽減します。また、長期的な効果を期待できるため、繰り返しの処理による肌への負担も減少します。

7.スキンケア用品や制汗剤の使用後は注意

胸やデコルテのブツブツ予防におけるスキンケア用品や制汗剤の使用は、注意を要するポイントです。多くの女性が胸汗に対処するために制汗スプレーを使用したり、肌のケアとしてボディクリームを塗ることがあります。こうした製品の使用は一般的ですが、重要なのはこれらの製品が肌に残ることで毛穴を詰まらせ、ニキビやあせもの原因になり得るという点です。日々のスキンケアでは、使用した製品による肌の汚れを適切に洗い落とすことが不可欠です。たとえスキンケア用品であっても、その成分が蓄積することで、マラセチアの増殖を促進させたり、毛穴を詰まらせたりする原因となります。したがって、1日1回は必ずシャワーを浴び、スキンケア用品の残りを丁寧に洗い流すことが大切です。また、肌に優しい製品を選び、過度の使用を避けることも重要な予防策の一つと言えます。

まとめ

胸、デコルテのブツブツが解消した女性

このブログでは、胸やデコルテに現れる様々なブツブツの原因、治療方法、そして予防策について、詳しくご紹介してきました。特筆すべきは、これらの皮膚トラブルが、胸部特有の高温多湿な環境と汚れが残りやすい状態に密接に関連しているという点です。そのため、胸やデコルテのブツブツの予防には、適切な下着の選択やこまめな汗の拭き取り、正しいシャワーの使用方法など、日常生活のさまざまな習慣が重要となります。美しい胸元とデコルテを保つためには、日々の小さなケアが不可欠です。このブログが、皆様の肌の健康を支え、美しさを保つための一助となれば幸いです。

【関連項目】

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。

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2024/02/28

院長ブログトップ > 【胸のブツブツ状の茶色のイボ】原因と治療方法

【胸のブツブツ状の茶色のイボ】原因と治療方法

胸のブツブツ状のイボに悩む女性

胸やデコルテの皮膚に現れる、小さな茶色いイボ状のブツブツは、多くの女性にとって気になる存在です。これらは主にデコルテやアンダーバストなど胸周囲でも皮下組織が薄い皮膚にたくさん形成されることが多く、アクロコルドンと呼ばれます。良性のイボであるため、除去はする必要はありませんが、時には胸周囲にたくさんのイボが発生することもあり、美容の観点から問題になります。この記事では胸の周囲に現れるこのイボの特性について、詳細に解説していきたいと思います。

胸のブツブツは全部イボ?

胸やデコルテの皮膚に見られる様々なブツブツは、その原因と性質が千差万別です。これらの中には、単なる胸のニキビやあせも、そしてイボが含まれることがあります。しかし、これらすべてがイボというわけではなく、それぞれ異なる特徴を持っています。例えば、イボはその形状によって、平らなものや膨らんだもの、赤色や茶色のものなど、多様な形態を取ります。胸の赤いふくらみがないイボは、多くの場合血管腫と呼ばれるものです。一方で、膨らみがあるか隆起している茶色や皮膚色に近い胸のイボは、本記事で重点的に取り扱うアクロドンという皮膚病変です。アクロドンはスキンタグや軟性線維腫、老人性イボとも呼ばれ、特に成人の皮膚に頻繁に見られる現象です。このように、胸部のブツブツは一見似ているものの、実際には様々な皮膚疾患を示している可能性があります。

アクロコルドンとは

デコルテのできたイボ

↑デコルテのアクロドンの写真

アクロコルドンは、一般にスキンタグ、軟性線維腫、または老人性イボとしても知られていいます、皮膚に発生する小さな非癌性の腫瘍です。多くの場合、茶色もしくは皮膚と同じ色を呈し、小さな茎から伸びるような皮膚組織の集まりとして現れます。アクロコルドンは、サイズや色において多様性があり、時には色が濃くなり、隆起したほくろのように見えることもあります。一般的には1~5mmの大きさですが、場合によっては数センチメートルに成長することもあります。また、ブツブツ状に多発することもよくあります。

参照元:

Skin tag. (NHS)

アクロコルドンがあることは普通のこと

アクロコルドン(スキンタグ、軟性線維腫、老人性イボ)の存在は、決して珍しいことではありません。実際、成人人口の約46%が一生に少なくとも一度はアクロコルドンを経験すると推定されています。これは誰にでも発生し得る一般的な皮膚状態であり、健康上のリスクを伴うものではありません。それにもかかわらず、アクロコルドンは見た目に関しては問題となる場合があります。特に、胸や首といった目立つ部位にブツブツ状にたくさん現れた場合、自己意識やコンプレックスの原因になり得ます。重要なことは、これらは多くの人々に共通する自然な皮膚の変化であるという理解です。アクロコルドンが存在すること自体は、皮膚の健康を反映するものではなく、多くの場合、単なる年齢に伴う自然な現象として考えるべきです。

参照元:

Acrochordon. Shehla Yasin Belgam Syed; Jules B. Lipoff; Kingshuk Chatterjee

アクロコルドンの症状

アクロコルドン、すなわち一般的に知られるスキンタグや老人性イボは、通常無症状で、日常生活において不便を感じることはほとんどありません。しかし、これらの小さな皮膚の突起が皮膚や衣服、アクセサリーと擦れ合うことにより、場合によっては摩擦による不快感や出血が生じることがあります。病理学的に見て、アクロコルドンは皮膚の上皮が肥厚し、拡張したリンパ管や毛細血管が真皮内に存在することが特徴ですが、これらは悪性の変化を示すものではありません。このため、美観上の問題を除き、医学的な観点からは除去する必要はありません。ただし、アクロコルドンがあることによって日常生活に支障をきたす場合や、ブツブツ状に胸周囲や首にたくさん生じて、見た目に関して強いコンプレックスを感じる場合には、適切な治療法で除去が可能です。

アクロドンが出来やすい部位

首のイボ

↑首のイボ(アクロドン)

アクロコルドン、すなわちスキンタグ(老人性イボ、軟性線維腫)は、体の特定の部位に形成される傾向があります。これらの部位は通常、摩擦が多いか、皮下組織が薄い場所です。以下にアクロコルドンが特に出来やすいとされる主要な部位を挙げます。

■首

首周辺は皮膚の摩擦が多く発生しやすい部位で、特に衣服の襟やアクセサリーなどが接触することにより、アクロコルドンが形成されることがあります。高齢のかたの首元にはブツブツ状に多数のこの老人性イボがあることもあります。

■胸やデコルテ

アンダーバスト(下乳)や谷間、デコルテは、皮膚同士の接触や下着の摩擦のためにアクロコルドンが生じやすいエリアです。特にバストが大きい方は、このイボがたくさん胸周囲のブツブツとして現れる傾向があります。

■脇の下

この部位も摩擦や湿度が高いため、アクロコルドンが形成されやすい傾向にあります。この部位は見にくいこともあり、本人の自覚がない場合もあります。

■まぶた

皮膚が非常に薄く、小さなアクロコルドンが発生することがあり、時には視界や美容上の問題を引き起こすこともあります。特に高齢のかたで瞼にブツブツ状にたくさんのイボがある場合は、このアクロドンの場合がほとんどです。

■鼠径部(股間や太もも)

体の折り曲げ部分である鼠径部は、特に摩擦が多く、アクロコルドンのイボが出来やすい場所です。

■性器

性器周辺も皮膚の摩擦が多く、性器のブツブツとしてこのアクロコルドンのイボが形成されやすいエリアです。

アクロコルドンと鑑別が必要な皮膚疾患

アクロコルドンは一見特徴的な外見をしていますが、時には他の皮膚疾患や、更に重要な皮膚がんなどとの鑑別が必要な場合があります。外見が似ている場合でも、それが単なるアクロコルドンなのか、もしくはホクロ、尋常性疣贅(普通のイボ)、皮膚がん、老人性角化症などの他の病態である可能性があります。これらの皮膚疾患は、外見上似ていることが多いですが、それぞれ異なる治療方法や経過を要します。正確な診断を得るためには、経験豊富な医師による詳細な診察が不可欠です。

アクロコルドンの原因

アクロコルドンの発生には複数の要因が関わっているとされていますが、その正確な病因は未だ明確には特定されていません。一般的には、肥満やホルモンバランスの乱れがアクロコルドンの形成に影響を与えると考えられています。特に、体内のホルモン変動は皮膚組織に影響を及ぼし、その結果としてアクロコルドンが生じる可能性が高まるとされています。また、加齢に伴う皮膚の変化も、アクロコルドンの形成に関係している重要な要素です。年齢とともに皮膚の弾力性が低下し、摩擦が生じやすくなることが、これらの小さな腫瘍の発生に寄与すると考えられています。さらに、家族歴にアクロコルドンがある場合、遺伝的な要素が影響している可能性もあります。感染症や糖尿病の存在、さらには妊娠中など、体の内部環境が大きく変化する期間も、アクロコルドンの発生を促進する要因として知られています。これらの要因が組み合わさることで、アクロコルドンの形成が促されると考えられています。

アクロコルドンの治療

アクロコルドン、一般にスキンタグ(老人性イボ、軟性線維腫)と呼ばれるこれらの小さな腫瘍は、多くの場合治療を必要としません。その外見に気になることがなく、痛みや不快感も伴わない場合、特に治療を行う必要はないでしょう。

しかし、ブツブツとした見た目の問題や、衣服に引っかかることによる炎症、出血などが生じた場合には、治療の検討が必要です。アクロコルドンの除去方法にはいくつかの方法がありますが、中でも炭酸ガスレーザーによる除去が、最も効果的かつきれいに治癒する方法として広く推奨されています。この方法は、病変部を高精度に削り取ることができ、回復も早く、瘢痕のリスクを最小限に抑えることができます。

また、液体窒素を用いた凍結療法や、電気焼灼法(電気凝固法)などの方法も一般的です。これらの方法は、アクロコルドンを除去するために用いられ、手軽な治療法です。ただし、これらの治療法には、炭酸ガスレーザーと比較して治療部位の痛みや炎症、稀に瘢痕の形成などのリスクも伴います。

胸のブツブツのイボの症例写真

アクロコルドンのよくあるご質問

Q: アクロコルドンを自分で切ってもいいですか?

A:市販のスキンタグやイボの除去製品は数多くありますが、自宅での治療は安全ではありません。傷跡、出血、感染の合併症のリスクが高くなります。また、アクロコルドンの除去が不完全であるため、再発する可能性があります。

Q:アクロコルドン除去は痛いですか?

A:通常局所麻酔を使用しますので、麻酔の痛みはあります。麻酔後は無痛です。ただし、アクロドンのイボがたくさんある場合は、局所麻酔が苦痛になり得ます。この場合はマスク麻酔による完全に寝ている間に受ける麻酔方法をおすすめします。

Q: アクロコルドン(スキンタグ)を除去した後、その部位はどのようになりますか?

A:施術後数日で治療部位がかさぶたになる可能性があります。かさぶたが剥がれた後、皮膚にわずかな窪みが生じることがありますが、他の人にはほとんど気づかれません。また、炭酸ガスレーザーによる除去ではこの窪みもほとんど生じることはありません。

Q:治療後にアクロコルドン(スキンタグ)が再発することはありますか?

A:医療機関でアクロコルドン(スキンタグ)全体を完全に除去した場合、それが再発する可能性は高くありません。

Q:アクロコルドン(スキンタグ)の予防方法はありますか?

A:肥満はアクロコルドン(スキンタグ)の老人性のイボのリスクファクターにはなり得ますので、健康的な体重を維持することは大切です。また、肌に擦れる可能性のあるアクセサリーや下着は避けたほうが無難です。

まとめ

胸にできてイボを炭酸ガスレーザーで治療した女性

アクロコルドン(一般的にスキンタグ、老人性イボ、軟性線維腫とも呼ばれます)は、多くの人々にとって馴染みのある皮膚の変化です。私たちの多くが一生のうちに少なくとも一度は経験する可能性が高いこのイボは、見た目の問題を除けば、健康上のリスクはほとんどありません。これらは非癌性の腫瘍であり、通常は無害です。しかしながら、アクロコルドンは自然に消えることはなく、特に胸の周りにたくさんできたブツブツ状のイボは見た目が気になるケースが多いと思います。。治療を行う際には、経験豊富な医師の手に委ねることで、合併症のリスクを最小限に抑え、美しい治癒を期待することができます。この記事を通じて、アクロコルドンという老人性イボがもたらす影響と治療方法について理解を深めていただけたことを願っています。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。

【関連項目】

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。

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【胸・デコルテにできる様々なブツブツ】原因と対策と治療法

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2024/02/27

院長ブログトップ > カツラやウィッグ、エクステで女性薄毛が加速!【女性薄毛15】

カツラやウィッグ、エクステで女性薄毛が加速!【女性薄毛15】

女性薄毛のとカツラ

(第14回「過度なパーマやカラーリングは要注意」からの続き)

湿った髪を放置すると蒸れて雑菌が繁殖する、髪をとかす際も摩擦がかかりやすいためダメージを受けやすい、と以前のブログでお話ししましたが、頭皮が蒸れることも髪にとってはよくありません。この記事では髪が蒸れる要因となる日常的な行動についてお話しします。

帽子とヘルメットのデメリット

頭皮が蒸れる原因としては、まず室内でもかぶりっぱなしの帽子やヘルメットなどがあります。帽子は屋外では紫外線予防の効果がありますが、室内でもかぶったままにしていると、頭皮が蒸れてしまいます。帽子やヘルメットの着用が頭皮や髪に与える可能性のあるダメージやデメリットには、以下のような医学的な側面があります

■通気性の問題

帽子やヘルメットは頭皮の通気性を低下させることがあります。これにより、汗や皮脂が閉じ込められ、頭皮の環境が不健康になる可能性があります。結果として、フケの増加や頭皮のかゆみ、脂漏性皮膚炎などが起こる可能性があります。

■摩擦によるダメージ

長時間の帽子やヘルメットの着用は、髪や頭皮に対する摩擦を引き起こすことがあります。これは特に、帽子やヘルメットがきつい場合に顕著です。摩擦は髪の毛の破損や薄毛の原因となることがあります。

■真菌(カビ)や細菌の増殖

暑い環境や汗をかく活動中に帽子やヘルメットを着用すると、湿った環境が真菌(カビ)や細菌の増殖を促すことがあります。これは頭皮の感染症や悪臭の原因となることがあります。

■牽引性脱毛症

特にヘルメットなどが引き起こすことがある牽引性脱毛症は、髪の毛に対する持続的な引っ張りによって引き起こされる薄毛の一種です。これは、主に帽子やヘルメットが髪の毛に対して継続的な圧力をかけることにより発生します。

■髪の健康

長時間の帽子やヘルメットの着用は、髪の自然な油分を取り除き、髪が乾燥して脆弱になる原因となることがあります。

■頭痛や偏頭痛

きつい帽子やヘルメットは頭部に圧力を加え、頭痛や偏頭痛の原因となることがあります。

牽引性脱毛症とは?

帽子やヘルメットは、頭皮を強く圧迫したり、髪をきつく牽引したりするようなタイプのものは特に頭皮や髪にダメージを与えてしまうので避けるべきです。牽引性脱毛症(トラクションアロペシア)は、頭皮や髪に継続的な引っ張り力が加わることによって発生する薄毛の一種です。牽引性脱毛症は以下のメカニズムにより発生します。

■毛包への機械的ストレス

牽引性脱毛症は、継続的な引っ張りによって毛包(髪の毛が生える皮膚の一部)に機械的なストレスが加わることで引き起こされます。このストレスは、ヘッドギア(帽子やヘルメット)の長時間の着用によって起きますが、髪をきつく引っ張るヘアスタイル(たとえば、ポニーテール、ブレイズ、ドレッドロックなど)でも生じます。

■血流の妨害

引っ張りによる圧力は、毛包への血流を妨害し、毛根が必要とする栄養素や酸素の供給を減少させる可能性があります。これにより、髪の成長サイクルが妨げられ、健康な髪の成長が阻害されます。

■毛周期の変化

持続的な引っ張りによって毛周期が変化し、成長期が短くなり、休止期が長くなる可能性があります。これにより、髪の毛が早期に脱落し、新しい髪の成長が遅れることがあります。

■毛包(毛根)の損傷

長期間にわたる牽引により、毛包(毛根)が永久的に損傷を受ける可能性があります。毛包が損傷を受けると、その部位からはもはや髪の毛が生えてこなくなります。

■炎症の引き金

慢性的な牽引は頭皮の炎症を引き起こすことがあり、これがさらなる毛包の損傷につながる可能性があります。

★牽引性脱毛症の初期段階では、髪への引っ張りを避けることで改善が見られることが多いですが、毛包の損傷が進行し過ぎると、薄毛は不可逆的になる可能性があります。そのため、引っ張りを伴う帽子やヘルメットの使用には注意が必要です。

カツラにはもっと注意!

女性薄毛に悩む

帽子やヘルメットは常に被っているアイテムではありませんので、ある程度は髪の通気性は保たれます。装着している時間の長さの観点から、薄毛に最も悪い影響を与えるのはカツラです。カツラ自体は薄毛隠しとして有効なアイテムではありますが、長くかぶり続けていると帽子やヘルメット以上に頭皮が蒸れるなどのデメリットがあるのです。

カツラやウィッグの種類

カツラには全頭部型のものから部分カツラまでさまざまなタイプがあります。中でも帽子のようにすっぽりとかぶるものは特に、頭皮が蒸れて雑菌が繁殖し、炎症まで起こしてしまうことも少なくありません。これではますます薄毛が進行してしまうことになります。 また、既存の髪に編み込んで使うカツラもありますが、これはたとえ頭がかゆくても指さえ入れづらく、頭をかくこともままなりません。これでは頭皮も蒸れて、雑菌が繁殖し てしまうのは当然です。ちなみに金具のピンで既存の髪に留めて使う部分カツラや、特に若い女性に人気のエクステ、先にご紹介した人工毛を結びつける増毛法では、健康な毛にも物理的な負担がかかってしまい、牽引性脱毛症の要因にもなります。そのため、元からあった毛までが傷んで、薄毛が進行してしまう恐れがあるのです。実際、私のクリニックへも、カツラやウィッグを使ったあげく、髪が傷んでますます薄くなってしまったという患者様が見えることがあります。薄毛を隠す目的だけでなく、ヘアスタイルを楽しむために始めたエクステであっても、「地毛が傷んだ」「毛が細くなってボロボロになった」と、私のクリニックへ駆け込んでくる女性も後を絶ちません。さらに、薄毛を隠すアイテムを使っていると、「バレたらどうしよう」という不安や恐怖がいつも心の中にあるものです。それがストレスとなるなどメンタル面のデメリットもあります。

カツラやウィッグのデメリット

女性がカツラやウィッグを使用する際のデメリットには以下のようなものがあります。

■元の髪への影響

長時間のカツラやウィッグの使用は、頭皮の健康に悪影響を与えます。通気性が悪いと頭皮が呼吸できず、皮膚にさまざまな問題を引き起こすことがあります。長時間帽子やヘルメットをするのと同様に、さまざまな皮膚炎の原因にもなり、薄毛の進行を加速させます。

■不快感や頭痛

特に長時間の使用や高温多湿の環境下では、カツラやウィッグが頭皮に圧迫感や熱をもたらすことがあります。これは不快感やかゆみを引き起こすことがあります。また、ウィッグの重みによる頭痛を感じる人もいます。

■熱さと汗

ウィッグを着用すると、特に暑い季節には頭部が熱くなりやすく、発汗を促すことがあります。これは不快感やかゆみを悪化させることもあります。

■スタイリングの制限

自然な髪の毛と比べて、カツラやウィッグはスタイリングの自由度が限られていることがあります。特に安価なものは、熱によるスタイリングが難しい場合があります。

■自然さの欠如

高品質のウィッグでも、自然な髪の毛と完全に同じ見た目や感触を再現することは難しいです。このため、ウィッグを着用していることが他人に気づかれる可能性があります。

■セキュリティの問題

強風や運動中など、ウィッグがずれたり、外れたりする可能性があります。これは特に公共の場で恥ずかしい経験になることがあります。

■自信の問題

ウィッグを頼りにすることで、自分の自然な髪の毛や外見に対する自信が低下する可能性があります。

■維持管理の手間

ウィッグは定期的な洗浄、スタイリング、そして保管が必要です。これらの手間は、特に忙しい日常を送っている人にとっては負担になることがあります。

まとめ

女性薄毛にカツラはよくない

この記事では、頭を被るアイテムである帽子、ヘルメット、カツラが引き起こす頭皮へのデメリットを中心に書きました。帽子、ヘルメットのデメリットを避けるためには、適切なサイズの帽子やヘルメットを選び、長時間の着用を避ける、定期的に洗うなどの対策が有効です。また、頭皮の健康を維持するために、帽子やヘルメットを外した際には頭皮を清潔に保つことが重要です。カツラやウィッグにおいては、元の髪へのダメージとコストの観点から、女性薄毛の専門にする医師からは全否定するアイテムです。カツラやウィッグを検討されるなら、是非元の髪を育てることを検討しましょう。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。これまで延べ5万以上の薄毛治療を行う。著書に「専門医が徹底解説!女性の薄毛解消読本」(元神賢太著 / 幻冬舎)。女性の薄毛治療のほか、エイジングケア治療、美肌治療を得意としている。

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2024/02/26

院長ブログトップ > 【女性がセックスでイク】オーガズムの全てを医学的に徹底解説!

【女性がセックスでイク】オーガズムの全てを医学的に徹底解説!

オーガズムで「いく」女性

「セックス中に女性が”イク”とは、一体どのような現象なのでしょうか?」この性的絶頂は一般に「オーガズム」と称されますが、この複雑な生理学的プロセスを医学的な観点から分かりやすく、かつ詳細に解説します。このブログを通じて、オーガズムの神秘を紐解き、皆様の健康的で充実したセックスライフの一助となればと考えています。

【オーガズムの複雑さ】生理学的、心理学的、社会的側面

性的興奮とオーガズムは、私たちの身体において非常に複雑かつ多面的な生物学的機能を果たしています。性的興奮とオーガズムは、皮膚の感覚から脳の反応に至るまで、身体のさまざまな部位に深い影響を及ぼします。特に興味深いのは、セックスにおいて「イク」ことに関して男女間で見られる様々な違いです。また、「セックスでイク」ことは、単に生物学的な現象に留まらず、男女間の親密な人間関係を映し出す社会的活動を示すこともあります。特に女性のオーガズムの全貌は、心理学的、生理学的、進化論的観点から見ても、まだ完全には解明されていないのが現状です。しかし、この女性の「セックスでイク」現象を深く理解しようと、研究者たちは長年にわたり継続的な努力を重ねてきました。

セックスにおける性的興奮の4段階

セックスでイク女性

セックスにおいて感じる性的興奮(sexual arousal)は、時間と共に変化する一連の段階を経て進行します。この過程には、興奮初期、プラトー期、オーガズム(性的絶頂)、そして解放期の4つの主要な段階が存在します。それぞれの段階は、身体的および心理的な変化を伴い、相互に影響を及ぼしながら性的な体験を形成していきます。

1.興奮初期(excitement)

この段階では、性的な刺激に対する身体の反応が始まります。心拍数の増加、血流の変化、性器の敏感化などが特徴です。

2.プラトー期(plateau)

興奮が高まり続けるこの期間には、身体的な反応がさらに増強します。性的な快感が高まり、オーガズムに向けて準備が進められます。

3.オーガズム(orgasm)

性的絶頂に達する段階で、男女とも「セックスでイク」ことで通常は強烈な身体的および心理的な満足感を伴います。男性は射精を意味しますが、女性の場合のこの性的絶頂は膣内性交による「中イキ」である必要はありません。

4.解放期(resolution)

オーガズムの後、身体は徐々に落ち着きを取り戻し、心拍数や呼吸が正常に戻る期間です。

※次からはこの4段階を順に説明します。これらの段階を理解することで、セックスにおける性的な反応の複雑さをより深く理解することできます。

参照元:

THE BIOLOGY OF THE ORGASM

性的興奮の1段階目:興奮初期(excitement)

性的興奮は、視覚的刺激、身体的刺激、心理的刺激など、多くの種類の刺激によって開始されます。これらの刺激により、骨盤神経に沿った副交感神経の活動が亢進します。多くの人は、心拍数が速くなり、皮膚が紅潮し、筋肉の緊張が高まります。

男性の場合、海綿体組織が勃起するのはこの段階です。陰茎の勃起は、神経末端から陰茎の動脈へのNO(一酸化窒素)の放出によって引き起こされます。NOは血管を弛緩させ、組織が血液で充満することを可能にします。また、この段階では、亀頭(陰茎の先端)がカウパー腺(膀胱尿道腺)からの分泌物(いわゆる我慢汁)で潤滑になり、陰嚢の皮膚が引き締まります。

女性の場合、クリトリスが勃起し、膣が潤滑になります。クリトリスがどのようにして血液で充満するのかについては議論の余地がありますが、クリトリス周囲の血管にもNOが発見されており、陰茎の勃起に似たメカニズムで勃起している可能性が高いとされています。

陰茎のカウパー腺とは異なり、現在では、膣は特定の分泌腺によって潤滑になることはないとされています。かつては、バルトリン腺の分泌物が膣の潤滑に果たす役割だとされていました。バルトリン腺は、膣口の左右にある2つの豆粒大の腺のことです。歴史的には、このバルトリン腺は膣を潤滑させる化合物を産生すると考えられていましたが、現在の研究では、バルトリン腺の分泌物は比較的微量である可能性が示されています。多くの研究者は、膣の潤滑の大部分は、血管から漏出した液状物質である滲出液と子宮頸管粘液の組み合わせであると考えています。また、このタイミングで乳房はより膨らみ、乳首が勃起することもあります。

男性でも女性でもこの興奮初期の減少はほんの数秒の間に無意識的に起こっています。

性的興奮の2段階目:プラトー期(plateau)

プラトー期は、性的興奮の中でも特に重要な時期であり、「興奮の高止まり:プラトー」と言えます。この段階では、興奮初期に始まった身体の変化が維持され、さらに強化されます。例えば、勃起や性器の潤滑液の分泌が続きますが、それに加えて、クリトリスは非常に敏感になり、過剰な刺激を避けるために包皮の下に引っ込むことがあります。男性では、睾丸が陰嚢内に引き上げられる現象も見られます。このプラトー期は、心拍数の上昇、血圧の上昇といった身体的な変化に加え、筋肉の緊張が高まることにより、手足や顔に筋肉の痙攣が起こることもあります。これらの変化は、オーガズムに向かって体が準備するための重要な過程であり、興奮のピークに近づくにつれてさらに強まります。プラトー期は、性的な体験の中で最も感覚が高まる時期の一つであり、オーガズムへの重要なステップとして機能します。また、この時期は感情的な親密さやパートナーとのつながりを深めるのにも適しており、セックスの体験をより豊かなものにするために重要な役割を果たします。

性的興奮の3段階目:オーガズム(orgasm)

オーガズム期は、性的興奮の4段階の中で最もドラマチックな段階です。この瞬間は、身体と心の両方で感じる極めて強い快感の性的絶頂として知られています。興奮初期とプラトー期を経て、いわゆる「セックスでイク」感覚を伴うオーガズムは多くの人々にとって性行為の主な目標となっています。通常、性的絶頂である「イク」感覚は数秒しか続かず、オーガズムは他の3段階と比較しても圧倒的に短いです。男性の場合、前立腺と精嚢腺の収縮によって分泌液が尿道に入り、精子と混ざって精液となります。射精は、陰茎の筋肉(特に海綿体と球海綿体)がリズミカルに収縮し始めることで起こります。女性の膣内性交による「中イキ」の場合、膣と子宮の筋肉も力強くリズミカルに収縮し、時には痙攣します。興奮初期とプラトー期に蓄積された筋肉の緊張を解き放たれるため、この膣と子宮の収縮と痙攣はオーガズム時の快感の源となっています。

性的興奮の4段階目:解放期(resolution)

解放期は、性的興奮のプロセスにおける最終段階で、オーガズム(性的絶頂)の後に訪れます。この時期では、心拍数、血圧、呼吸が正常な状態に戻ることが特徴です。多くの人々がこの時期にリラックスした感覚や疲労感を経験することがあります。男性においては、解放期には一般的に「賢者タイム」と呼ばれる性的興奮の減退が見られますが、女性の場合は、解放期でも興奮状態やオーガズムが維持されることがあります。

オーガズムに達した女性

男女がオーガズムに達する理由

性的興奮の4段階から分かるように、生理学的見地から見ると、性的興奮は身体の多くの部位に影響を及ぼす複雑で入り組んだ工程です。「どのようにオーガズムに達して性的絶頂を味わうのか」についての性的興奮の4段階の話も複雑でしたが、「なぜオーガズムに達するのか」はさらに複雑な話になります。進化の観点から見れば、男性のオーガズム、「男性がイク」ことを理解することは簡単です。「男性がイク」のは射精により生殖のために必要だからです。しかし、女性の場合は、「なぜオーガズムに達するのか」、「なぜ女性はセックスでイクのか?」という問題を解明するのは実に難しいことです。この答えは未だに明確には解明されておらず、諸説があります。

【副産物説】なぜ女性はセックスでイクのか?①

男性に何の機能も持たない乳首があるのと同様に、女性が「イク」のは、単に男性の射精に該当する発生学的な類似性の副産物なのだろうか?2011年に発表された論文「Genetic analysis of orgasmic function in twins and siblings does not support the by-product theory of female orgasm(双子と兄弟姉妹におけるオーガズム機能の遺伝学的分析は、女性のオーガズムの副産物説を支持しない)」がこの説に異議を唱えるまでは、これは広く信じられていた説であり、現在でもある程度信じられています。 この2011年の研究は、1万人以上の兄妹と姉弟を対象としたアンケートに基づくもので、女性と男性のオルガスム機能には顕著な遺伝的差異があるが、異性の兄妹・姉弟間には統計的に有意な相関関係はないことより、男性と女性のオルガスム機能には異なる遺伝的要因があると判明しました。もし副産物説が正しければ、似たような遺伝暗号を持つ異性の兄妹・姉弟は似たようなオーガズム機能を持つことになります。しかし、この2011年の研究では、異性の兄妹・姉弟間にオルガスム機能において有意な相関関係はないことが示され、この説は否定されたことになっています。しかしながら、この副産物説に関する議論は科学界で現在も続いています。

【精子吸い上げ説】なぜ女性はセックスでイクのか?②

1900年代初頭では、女性のオーガズムは受精に必要であると広く信じられていました。1950年代のある検証実験において、オーガズムの収縮によって精液が子宮内に吸い込まれるという「オーガズム時の精子吸い上げ」という仮説を、X線に映る放射線不透過性物質を混ぜた人工精液を子宮頸管に塗布し、女性にいわゆる「中イキ」でオーガズムを感じてもらうことで検証しました。その結果、精液が子宮内に吸い込まれた形跡は認められませんでした。

この検証実験により、「オーガズム時の精子吸い上げ」という学説はいったん消えましたが、オーガズム時に放出されるオキシトシンというホルモンが、女性のオーガズムの際に子宮収縮を刺激し、この子宮収縮が精液を卵管に向かって移動させる可能性があることが発見されたことで、この学説は、再び脚光を浴びました。この精子吸い上げ説は理にかなっていますが、女性はオーガズムの有無に関係なく妊娠できている事実がありますので、オキシトシンによる子宮の収縮が受精にどれほど大きな役割を果たすかについては議論の余地があります。

【縁結び説】なぜ女性はセックスでイクか?③

縁結び説は、ドーパミンやオキシトシンといった快感物質がオーガズム中に大量に放出される事実に基づいています。オキシトシンは、親密感や絆を深める役割を担うホルモンとされており、ドーパミンは脳の報酬中枢を刺激することで知られています。このような快感ホルモンの作用によって、ともに「セックスでイク」ことでオーガズムを共有した男女は強い絆を形成し、共同生活を送る傾向があるとされます。また、古代であれ、現代であれ、乳幼児の養育においてパートナーの存在が生活を支える重要な要素であることから、縁結び説は女性のオーガズムが進化的に種の存続に寄与していると主張しています。縁結び説では頻繁なオーガズムによって結ばれたカップルから生まれる子供は、両親が共同生活をすることから、生存の可能性が高いと考えられています。

女性が「セックスでイク」ことによる解明されている事実

「なぜ女性はセックスでイクか?」については、諸説が複数あることから分かるように明確には解明されていませんが、「セックスでイク」ことが女性に健康に寄与することはいくつかに事実から判明しています。女性は「セックスでイク」ことでストレスから解放されることが医学的に分かっています。これは、オーガズム中には「気分を良くするホルモン」とも呼ばれるドーパミンや「愛の薬」とも呼ばれるオキシトシンが放出され、これらのホルモンは幸福感や肯定的な感情を高め、ストレスホルモンであるコルチゾールを打ち消す効果があるからです。またこ研究によると、オーガズムは以下のような健康上の利点があるとされています。

・ストレスの軽減

・頭痛やその他の痛みの軽減

・心臓の健康の改善

・生理痛の軽減

・自信の向上

・睡眠の質の向上

出典元:

Orgasm(by Cleveland Clinc)]

「セックスでイク」ようになれる施術

美容外科では女性がオーガズムに達しやすくなるために治療があります。以下に簡単にご紹介します。

■Gスポットのヒアルロン酸注入

ヒアルロン酸注入でGスポットを隆起させ、膣内性交中にペニスがGスポットに当たりやすくさせ、性的な快感をアップさせる治療です。

■膣のヒアルロン酸注入

ヒアルロン酸注入で膣壁全体を隆起させ、膣圧を高めることでペニスの摩擦を膣内で感じ取りやすくなります。これによりオーガズムに達し易くなります。

■モナリザタッチ

モナリザタッチはフラクショナルレーザーを膣壁細かく照射する治療で、数回受けることで膣壁が厚くなり、また膣分泌液の分泌も多くなります。より潤いやすくなり、「中イク」しやすくなります。

■クリトリス包茎を治す手術

多くの女性がクリトリス包茎の状態ですが、クリトリスを覆っている余分な皮膚を切除することで、よりクリトリスにダイレクトに刺激が伝わり、オーガズムに達しやすくなります。

■膣縮小手術

物理的な膣の入口を小さくして、膣圧を高める手術です。膣のヒアルロン酸注入と同じく、性的な絶頂を感じやすくなります。

まとめ

この記事では、男女が性的絶頂である「セックスでイク」ことに至る生理学的および医学的な過程について詳しく解説しました。特に女性がセックス中にオーガズムに達する意義と、その健康上のメリットに焦点を当てて広範囲にわたる研究結果と学説を紹介しました。本記事が、読者の皆様にとって有益な情報源となり、より健康で充実したセックスライフをサポートする一助となることを願っています。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。また、女性器、男性器を問わず、多くの性器の美容外科手術を行っている。男性向けの性講座Youtube「元神チャンネル」は好評を博している。

【関連項目】

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2024/02/25

院長ブログトップ > 【背中のニキビの原因と治し方】ブツブツは普通のニキビではない

【背中のニキビの原因と治し方】ブツブツは普通のニキビではない

背中のブツブツやニキビで悩む女性

多くのかたが背中のニキビやブツブツに悩まされています。「長年皮膚科に通っても改善されない」と感じておられることは、私も診療を通じてしばしば耳にします。しかし、背中のニキビやブツブツは普通のニキビと異なることが多く、正しい診断とケアが必要とされます。それ故に、普通のニキビ治療法ではなかなか改善しないのです。本稿では、背中のニキビやブツブツがなかなか治らない原因と、それに対応する効果的な治療法を、美容専門医の視点から詳細にご紹介します。適切なケアと治療を行うことで、皆様が抱える皮膚の問題を解決に導く一助となれば幸いです。

背中のニキビは普通のニキビじゃないかも?

顔にできる一般的なニキビは医学用語では尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)と呼びます。「尋常性」とは普通という意味です。言わば、顔にできるニキビは「普通のニキビ」ということです。これに対して、背中にできるニキビやブツブツは多くの場合は「普通のニキビ」ではありません。顔と同じニキビとして治療すると、治りません。多くの皮膚科では背中も普通のニキビとして治療されています。これが背中のニキビがなかなか治らないと言われる原因なのです。

背中のニキビの原因とは

顔にできるいわゆる普通のニキビは、主に皮脂の過剰産生が毛穴を詰まらせ、その結果アクネ菌(にきび菌)の異常増殖が炎症を引き起こすことが主な原因です。しかし、背中のニキビやブツブツの多くは、アクネ菌よりもマラセチアという真菌(カビの一種)の異常増殖によるものです。この真菌(カビ)によって毛穴が塞がれ、炎症が生じた状態を「マラセチア毛包炎」と称します。この状態は、一般的な尋常性痤瘡(または細菌性痤瘡)とは異なり、「真菌性痤瘡」または「真菌性ニキビ」とも呼ばれます。注意点としては、マラセチア毛包炎と尋常性痤瘡が併発している場合もあり得ます。

マラセチア毛包炎とは

皮膚表面には、通常、様々な微生物が共存しており、これをフローラ(微生物叢または細菌叢)と呼びます。この微生物のコミュニティの中には、マラセチアという種類の真菌(カビ)も含まれています。通常、このマラセチアは皮膚上で穏やかに共生しており、皮膚の組織に害を及ぼしません。ただ、特定の条件下でマラセチアが異常増殖したり、毛穴が傷ついた状態になったりすると、マラセチアは毛穴を通じて毛包に侵入して、毛包がマラセチアに感染して炎症を引き起こします。これがマラセチア毛包炎です。この炎症により、背中はもちろん、顔、肩、胸といった主に上半身の皮膚に、かゆみを伴う吹き出物やニキビ様のブツブツの症状が現れます。マラセチア毛包炎は、普通のニキビとは異なる特性を持っており、マラセチア毛包炎に合った適切な治療が必要です。

背中のにきびであるマラセチア毛包炎

↑背中のブツブツ(にきび)のマラセチア毛包炎

マラセチア毛包炎になりやすい人の特徴

マラセチア毛包炎は、多くの場合、思春期の男女が罹患しやすいです。また、発汗量が多い人 (多汗症) や、高温多湿の地域に住んでいる人も罹患する可能性が高くなります。また、皮膚の表面のダメージで毛穴が損傷すると、罹患しやすくなります。次のような場合にもリスクが高まる可能性があります。

特定の条件や状態にある人はマラセチア毛包炎に罹患しやすいこと判明しています。具体的には、思春期の男女や若い男性は皮脂腺からの分泌が多く、マラセチア毛包炎にかかりやすいとされています。また、汗を多くかく人(多汗症)や、高温多湿の環境に生活している人も、マラセチア毛包炎のリスクが高まります。皮膚表面の摩擦で毛穴が損傷すると、マラセチア毛包炎の発生を促す要因となり得ます。以下のような状態や条件がある場合、マラセチア毛包炎に罹患するリスクが高まると考えられています。

■糖尿病

一般には末梢血管の循環が低下しており、皮膚の防御機能に影響を与えることがあります。

■脂性肌

皮脂の過剰分泌がマラセチアの増殖を促します。

■免疫系の疾患

免疫機能の低下はあらゆる感染症のリスクを高めます。

■脂漏性皮膚炎やフケ

脂漏性皮膚炎やフケがある場合はすでにマラセチアが増殖している環境を提供しています。

■過度の発汗

高温多湿の環境下でマラセチアは増殖します。

■抗生物質やステロイドの使用

抗生物質やステロイドは皮膚のフローラ(微生物叢)を変化させ、マラセチア毛包炎のリスクを高める可能性があります。

出典元:

Malassezia (Pityrosporum) Folliculitis (by Cleveland Clinc)

抗生物質や免疫抑制剤の使用時は特に注意

抗生物質や免疫抑制剤の使用は、真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)の発生リスクを特に高める可能性があります。これは、抗生物質が皮膚の自然なフローラ(微生物叢)のバランスを変え、善玉菌の量を減少させることにより、真菌の過剰な増殖を引き起こすためです。細菌と真菌は皮膚上で共存していますが、このバランスが崩れると真菌性座瘡のリスクが増加します。免疫抑制剤を使用している場合も同様で、体の自然な防御力が低下することで真菌の増殖を抑える能力が弱まります。これらの要因により、抗生物質や免疫抑制剤を使用している人は、特に真菌性ニキビに対して注意が必要です。真菌性ニキビのリスクを抑えるためには、皮膚の清潔を保つことや、適切なスキンケアを行うことが重要です。

マラセチア毛包炎の発生しやすい部位

背中のブツブツに悩む女性

マラセチア毛包炎、一般に「真菌性ニキビ」として知られるこの状態は、皮膚のどの部分にも発生する可能性がありますが、特に発汗が多い部位や衣服の摩擦が多い部位での発生が顕著です。以下のエリアは、マラセチア毛包炎が特に発生しやすい部位とされています。

■胸・デコルテ

バストの間などは発汗が多く、湿度が高まりやすいため、マラセチア毛包炎が形成されやすい環境となります。

■生え際・額・あご

額や生え際は顔の中でも特に汗をかきやすい部分です。また、男性の顎は髭剃りによる刺激で毛穴が傷つき、真菌の侵入がしやすくなります。

■首

首は頭部からの汗が流れやすく、襟元の摩擦も頻繁に生じるため、マラセチア毛包炎が発生しやすい部位です。

■二の腕・肩

二の腕や肩は服の密着による摩擦が多く、皮膚表面の微細な損傷がマラセチアの増殖に適した環境を提供します。

■背中上部

背中は体の中でも最も発汗が多い部位であり、かつか背中上部は常に衣類が密着しているため、高温多湿の状態になりやすく、真菌性ニキビの発生に最も適したエリアと言えます。

※これらの部位では、特に注意深いケアと適切な衣類選びが必要となります。また、真菌性ニキビの発生しやすい部位を理解することは、予防策を講じる上で非常に重要です。

真菌性ニキビに特徴的な症状と普通のニキビとの違い

真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)は、普通のニキビ(尋常性ざ層)とは異なる独特な特徴を持つ皮膚の炎症です。真菌性ニキビでは、皮膚上に突然発生する発疹のような隆起(ブツブツ)が特徴的であり、これらは毛穴周辺に現れます。これに対して、普通のニキビは毛穴ではなく皮脂腺に形成されることが多いです。

真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)による隆起は、通常、房状(クラスター上)に集まり、サイズや形が均一なブツブツとして現れます。また、1つ1つのブツブツの周囲には、しばしば赤みを帯びた境界線や輪が確認されることがあります。対照的に、普通のニキビ(尋常性ざ層)は大きさや形が不均一であることが多いのが特徴です。

さらに、真菌性ニキビは以下のような特有の症状を伴うことがあり、これらは普通のニキビには一般的ではありません:

・強いかゆみ:皮膚の刺激感が伴い、かゆみを引き起こします。

・皮膚の灼熱感:感染部位が熱を持ち、灼熱感を感じることがあります。

・疼痛:炎症により痛みを伴うことがあります。

背中のブツブツ、ニキビ治療

背中のニキビやブツブツの治療では、特に多くの場合、真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)が原因となっているため、薬物療法では真菌に対する治療が優先されます。さらに積極的な治療として、アグネスという方法が推奨されています。アグネス治療は、背中のニキビが真菌性であろうと普通のニキビであろうと、どちらにも効果的に対応できます。以下に、これらの治療方法について詳しく説明します。

■ 抗真菌薬による飲み薬と塗り薬

真菌性ニキビに対しては、経口の抗真菌薬や局所用の抗真菌クリームが用いられます。主に使用される経口抗真菌薬には、フルコナゾールやイトラコナゾールなどがあります。経口抗真菌薬には下痢、吐き気、胃痛、肝機能障害などの副作用が生じることがあります。局所治療としては、エコナゾールやケトコナゾール、二硫化セレンを含むシャンプー(フケの予防と治療にも用いられる)などの抗真菌クリーム(塗り薬)やシャンプーが利用されます。

■ アグネス治療

アグネス治療は、細菌や真菌による毛穴や皮脂腺の炎症に対し、効果を発揮する治療方法です。高周波を利用した熱で、感染している毛穴や皮脂腺を個々に治療し、治癒を促します。背中のニキビに対して、普通のニキビでも真菌性ニキビでも、アグネス治療は有効です。内服薬や外用薬では再発しやすい真菌性ニキビに対して、アグネス治療は再発のリスクがほとんどありません。したがって、背中のニキビ治療においては、アグネス治療の後に抗真菌薬を併用することが望ましいとされています。

背中のニキビ、真菌性ニキビの効果的な予防策

背中や胸に発生する真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)の予防は、日々の生活習慣の見直しで可能です。以下に、効果的な予防策を詳しくご紹介します。

■運動後の適切なケア

運動後はすぐにシャワーを浴び、汗を洗い流しましょう。汗や皮脂が毛穴を塞ぐと、真菌の増殖に適した環境が形成されるため、清潔な状態を保つことが重要です。少なくとも1日1回は肌をよく洗いましょう。

■毛の処理方法

剃毛や毛抜きなどの毛の処理を行う際は、皮膚を傷つけないように注意しましょう。損傷した皮膚は真菌の侵入口となり得ます。毛の処理が不要になるレーザー脱毛もおすすめです。

■スキンケア製品の選び方

脂分を多く含むスキンケア製品や日焼け止めは避けましょう。マラセチアは脂分で繁殖を促進されるためです。また、体を洗う際は、肌を優しく洗うことが大切です。強い摩擦は微細な傷を生じさせ、マラセチアの繁殖を助けることになります。

■水着の適切な扱い

水着は使用後、必ず洗濯し十分に乾燥させることが肝心です。湿った状態は真菌の繁殖に適した環境を作り出します。

■衣服の選択

特に暑い環境や運動時は、通気性の良いゆったりした服を選ぶことが望ましいです。タイトな服は肌を圧迫し、汗や熱がこもりやすくなるためです。

※これらの予防策を日々の生活に取り入れることで、真菌性ニキビの発生リスクを減らすことができます。

マラセチア毛包炎のよくあるご質問

Q:背中のニキビは人にうつりますか?

A:背中のニキビの主要な原因はマラセチア真菌の異常増殖ですが、マラセチアは常在菌であり、誰の皮膚にも存在します。したがって、ニキビ自体が他人に感染することはありません。

Q:背中のニキビは再発する可能性がありますか?

A:背中のニキビは再発の可能性を秘めています。局所的な抗真菌クリームや経口抗真菌薬の使用によって一度改善されたとしても、真菌性ニキビは再発することがあります。

Q:背中のニキビがひどくなった場合、どのような経過をたどるのが一般的ですか?

A:背中のニキビが悪化した場合の一般的な経過については、薬物治療を開始してから数週間以内に症状の改善が見込まれます。しかし、一時的に症状が改善された後でも、マラセチア毛包炎は何年にもわたって継続する可能性があります。加えて、多くの場合、薬の使用を中止すると再発することが一般的です。そのため、症状の再発を防ぐためには、抗真菌クリームや薬の継続的な使用が必要になります。これらのことを踏まえると、再発のリスクがほぼないとされるアグネス治療が、背中のニキビに対して最も効果的な治療法であると考えられます。アグネス治療は、感染した毛穴や皮脂腺を的確に治療し、長期的な改善を目指すものです。

Q:背中にニキビ(ブツブツ)ができる体質は?

A:男性や思春期の男女は脂性肌の場合が多く、脂性肌の体質の場合は、背中の皮膚にマラセチアが増殖しやすい環境になります。すなわち脂性肌の場合は、ニキビができやすい体質と言えます。

Q:胸と背中にニキビができやすいのはなぜですか?

A: 胸と背中はともに発汗が多い部位であるため、高温多湿となりすく、マラセチアという真菌(カビ)が増殖しやすい環境だからです。

Q:背中のぶつぶつはどうやって洗えばいいですか?

A:背中のブツブツの要因は多くの場合、マラセチア毛包炎です。ボディソープをよく泡立てて、優しく背中を洗ってください。決して、ゴシゴシ洗ってはいけません。逆効果で余計にニキビやブツブツができることになります。

Q:背中のニキビは触らない方がいいですか?

A: ニキビを洗うことは大切ですので、シャワー時には優しく洗ってください。ただ、ボディソープやシャンプーが残ることも毛穴が詰まってマラセチア毛包炎を悪化させる要因になりますので、注意が必要です。

まとめ

背中のニキビを治療した女性

背中のニキビ、特に真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)は、毛包の感染症であり、しばしば普通のニキビと誤解されがちです。この記事では背中ニキビやブツブツに対しての正しい対処方法について解説しました。マラセチア毛包炎では、皮膚に小さなかゆみを伴う赤い発疹が集団で現れることが特徴です。もし背中にかゆみを伴う吹き出物が改善されない場合は、専門クリニックでの早急な診察を推奨します。この記事が、皆様の皮膚トラブル解決のための有用な情報源となることを願っています。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。

【関連項目】

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【胸やデコルテのニキビ】原因と効果的な治療法の全貌

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2024/02/24

院長ブログトップ > 【胸やデコルテのニキビ】原因と効果的な治療法の全貌

【胸やデコルテのニキビ】原因と効果的な治療法の全貌

胸とデコルテのニキビに悩む女性

私たちの皮膚は、体の各部位で異なる特性を持っています。特に胸やデコルテのバスト周囲のエリアでは、赤みを帯びたブツブツが見られることがあり、これらは一般的に胸ニキビとして認識されます。しかしながら、胸のニキビは、顔にできるものとは病態が異なることが多いのです。顔のニキビと同じ治療法を適用したとしても、なかなか改善しないことが一般的です。そこで、この記事では、多くの方々が直面する胸やデコルテの赤いブツブツの要因となっているニキビに関して、正確な知識と効果的な治療法を深掘りしてご紹介いたします。

胸のブツブツはニキビ?

胸やデコルテなどのバスト周囲に見られるブツブツは、様々な要因により発生する可能性があります。当記事の主題であるニキビ以外にも、血管腫あせもなど、異なる皮膚の状態が原因であることがあります。多くの場合、胸のニキビでも顔のニキビと似た外見をしているため、一見してニキビと見分けることが可能です。しかしながら、外見が似ていても、胸やデコルテのニキビが顔のニキビとは異なる原因によるものであることが多く、その治療や経過にも違いがあります。したがって、胸のニキビは見た目だけでなく、発生原因や特徴を正確に理解し、適切なケアを行うことが重要です。

胸のニキビは実はニキビじゃない??

一般的にニキビとされる病態は、医学用語で尋常性痤瘡と呼ばれ、アクネ菌(ニキビ菌)という皮膚の常在菌が毛穴や皮脂腺で異常に増殖し、炎症を引き起こすことによって発生します。しかし、胸やデコルテに現れるニキビと見られる症状は、実は異なる原因による場合が多いのです。特に、胸やデコルテの部位に現れるニキビ様の症状は、従来のアクネ菌が原因ではなく、マラセチアという真菌、つまりカビの一種が原因で発生することが多いのです。この真菌によって引き起こされる炎症は、医学的にはマラセチア毛包炎、または真菌性ニキビ(真菌性座瘡)と呼ばれています。この事実は、胸やデコルテのニキビ治療において重要な意味を持ちます。一般的なニキビ治療法が効果を発揮しない場合、その原因は真菌性である可能性があり、適切な診断と治療法の選択が必要になります。

真菌性ニキビ:マラセチア毛包炎とは

胸のデコルテのニキビの正体とは

マラセチア毛包炎は、マラセチアという特定の真菌(カビ)が毛穴(毛包)に感染することで生じる皮膚の炎症状態です。この状態は、一般的なニキビ(座瘡)と見た目が似ており、しばしば混同されることがあります。マラセチア毛包炎、別名「真菌性ニキビ」とも呼ばれ、肌に小さな赤い隆起(丘疹)やかゆみを引き起こす特徴があります。この疾患は時に、膿を含んだ白ニキビのような状態(膿疱)へと進行することもあります。

出典元:

What leads to Breast Acne? Check Out the 8 Most Prominent Factors

胸の真菌性ニキビと通常のニキビの違い

胸やバスト、デコルテに発生する真菌性ニキビ(別名:真菌性座瘡、マラセチア毛包炎)は、見た目では通常のニキビ(別名:尋常性座瘡)と非常に似ており、容易に混同されがちです。「尋常性」という言葉は「普通」を意味し、この用語は一般的なニキビを指します。通常のニキビは、毛穴(毛包)が皮脂や古い角質(垢)で詰まり、その中でアクネ菌(ニキビ菌)が増殖することにより発生します。一方で、真菌性ニキビは毛穴内の真菌(カビ)の増殖によって発生する感染症です。この二つのニキビの最大の違いは、真菌性ニキビにはかゆみを伴う場合があるのに対し、通常のニキビ(尋常性座瘡)にはかゆみがないという点にあります。また、真菌性ニキビでは一般的なニキビではあまり起こらない、皮膚の灼熱感や疼痛も感じることがあります。

胸のニキビケアの鍵:正しい識別と対処法

胸・デコルテのニキビケアにおいて最も重要なのは、一般的なニキビと真菌性ニキビを正確に区別することです。この2つのニキビは薬が異なるため、適切な診断は治療の鍵となります。また特に重要なのは、胸のニキビにおいては、両方のタイプが同時に発生する可能性もあります。真菌性ニキビと一般的なニキビが同時に存在する場合、それぞれに効果的な薬と治療法を組み合わせることが必要になります。

胸の真菌性ニキビによるブツブツが発生しやすい人は?

真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)は、特定の条件や生活習慣を持つ人々において発生しやすい傾向があります。特に、脂性肌の人や思春期から青年期の男女に多く見られます。真菌(カビ)は、特に暖かく湿った環境や汗をかいた皮膚で急速に増殖することが知られています。胸の真菌性ニキビの発生のリスクファクターは以下の通りです。これらの要素は、真菌の増殖に最適な条件を作り出すため、真菌性ニキビのリスクを高める可能性があります。

・高温多湿な気候に住んでいる人

・免疫力が低下している人

・抗生物質や免疫抑制剤の使用者

・脂漏性皮膚炎や癜風など他の真菌感染症を持っている人

・過度に汗をかく傾向がある人(多汗症の人)

・オイルベースの保湿剤や日焼け止めを頻繁に使用する人

出典元:

Fungal Acne ( Cleveland Clinic)

真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)の発症メカニズム

マラセチア毛包炎、いわゆる真菌性ニキビは、私たちの皮膚に常在するマラセチアという真菌(カビ)によって引き起こされます。すべての人の皮膚に存在するこの真菌は、通常は無害ですが、特定の条件下で毛包(毛穴)に侵入すると、問題を引き起こすことがあります。毛包の損傷や閉塞は、以下のような状況により引き起こされ、その結果、真菌性ニキビが発症するリスクが高まります。

■皮膚の摩擦

過度の摩擦や圧迫によって、皮膚が刺激され、毛穴が損傷することがあります。

■湿度の高い環境

暑さや湿度によって皮膚が常に湿った状態になると、真菌の増殖に適した環境が形成されます。

■毛の処理

剃毛や毛抜きなどによる毛の処理は、毛穴の損傷や刺激を引き起こし得ます。

■皮膚への摩擦

手や物による頻繁な皮膚への接触や摩擦も、毛穴の損傷に繋がります。

■長時間の暑いお風呂

熱いお風呂に長時間浸かることも、皮膚のバリア機能を弱め、真菌の増殖を促進します。

■締め付ける衣服

タイトな服は皮膚の摩擦や圧迫を引き起こし、毛穴の閉塞や損傷を招きます。

※これらの要因が組み合わさることで、マラセチア毛包炎のリスクが高まります。したがって、真菌性ニキビの予防には、これらの要因を最小限に抑えることが重要です。

胸のブツブツ「真菌性にきび」の包括的な治療

胸、バスト、デコルテのニキビ治療

胸部の真菌性ニキビ(マラセチア毛包炎)の治療には、薬物療法と革新的なアグネス治療があります。以下に、これらの治療方法について詳しく解説します。

■抗真菌薬による飲み薬と塗り薬

真菌性ニキビの標準的な治療法として、経口または局所の抗真菌薬が用いられます。一般的に使用される経口抗真菌薬には、フルコナゾールやイトラコナゾールなどがあります。経口抗真菌薬には下痢、吐き気、胃痛、肝機能障害などの副作用が生じることがあります。局所治療としては、エコナゾールやケトコナゾール、二硫化セレンを含むシャンプー(フケの予防と治療にも用いられる)などの抗真菌クリーム(塗り薬)やシャンプーが利用されます。

■ アグネス治療

アグネス治療は、過剰な皮脂腺、細菌や真菌、過度な炎症など、ニキビの根本原因に対処する非侵襲的な施術です。高周波を利用して、感染している毛穴を一つ一つ治療して治癒させます。胸やデコルテ、バスト周囲のニキビに対して、一般的なニキビであれ真菌性ニキビであれ、アグネス治療は効果的です。内服薬や外用薬では真菌性ニキビが再発することが多い一方で、アグネス治療では再発のリスクがほとんどありません。筆者は胸のニキビが跡を残さないためにアグネスによる早めの積極的な治癒をおすすめします。胸・デコルテのニキビに対しては、アグネス治療の後に抗真菌薬を併用することが最善の治療方法となります。

出典元:

胸のニキビのよくあるご質問

Q:胸にニキビができる原因は何ですか?

A:主な原因は毛穴にマラセチアという真菌(カビ)の一種が増殖して、炎症を起こすことです。

Q:胸のニキビはどうやったら治りますか?

A:抗真菌薬による治療やアグネス治療で治ります。アグネス治療は高周波を利用して、感染している毛穴を一つ一つ治す治療です。

Q:胸ニキビの原因はストレスですか?

A:ストレスは体の免疫を低下させるため、ストレスによりニキビはできやすい状況になりますが、直接的な原因ではありません。根本的な原因は肌や毛穴がダメージを受けているところに真菌が増殖することです。

Q:胸のニキビは洗ってもいいですか?

A:洗うことが大切ですが、肌の表皮をダメージしないように優しく洗うことが大事です。過度な洗浄はかえって、摩擦で皮膚にダメージを与え、胸のニキビを悪化させる要因となります。

Q:胸のニキビはうつりますか?

A:胸のニキビは主にマラセチアという真菌(カビ)の異常増殖が要因ですが、マラセチアは常在菌であり、元々誰の皮膚にも存在するため、ニキビの発症が人に移ることはありません。

Q:胸に白いニキビのようなものが出来るのはなぜですか?

A:おそらくニキビが進行して、膿を貯めた嚢胞の状態になっています。マラセチア毛包炎では珍しい症状ではありません。

Q:胸はニキビができやすい部位ですか?

A:胸は汗腺が多い部位であり、かつ下着などにより通気性が悪い部位でもあるため、マラセチア毛包炎によるニキビができやすい環境になります。

Q:胸のニキビの洗い方は?

A:石鹸やボディソープをよく泡立てて、優しく手で洗ってください。決してスポンジなどで摩擦を作ってゴシゴシ洗ってはいけません。

Q:胸のニキビを予防するにはどうしたらいいですか?

A:汗をかいた際には速やかに柔らかい素材のタオルなどで拭くがよいです。また、体を清潔に保ち、汗を吸収した衣服は着用しないでください。

Q:胸ニキビはホルモンバランスが関係しますか?

A:ホルモンのバランスが崩れると、免疫機能が低下することもあるため、胸のニキビの遠因にはなり得ますが、直接的な原因にはなりません。胸ニキビの根本的な原因は肌や毛穴がダメージを受けているところにマラセチアという真菌(カビ)が増殖することです。

Q:胸にニキビができる原因は睡眠不足ですか?

A:睡眠が不足すると、疲労が蓄積し、免疫機能が低下することもあるため、胸のニキビの遠因にはなり得ますが、直接的な原因にはなりません。胸ニキビの根本的な原因は肌や毛穴がダメージを受けているところにマラセチアという真菌(カビ)が増殖することです。

Q:胸にできるニキビの病名は何ですか?

A:胸にできるニキビの病名はマラセチア毛包炎です。

まとめ

 胸のニキビやブツブツが解消して笑顔の女性

この記事を通して、胸やデコルテに現れるニキビが真菌(カビ)によるものである可能性が高いこと、そして顔のニキビとは異なる薬が必要であることを詳しく説明しました。特に、アグネス治療は真菌性であれ、細菌性であれ、あらゆるタイプのニキビに対して有効であり、特に胸やデコルテのニキビの瘢痕が目立ちやすいため、早期のアグネス治療を推奨します。胸やデコルテのニキビは、その発生原因が顔のニキビとは大きく異なるため、正しい知識と適切なケアが不可欠です。この記事が、多くの方々が直面する胸やデコルテのブツブツの要因であるニキビに関する悩みに対する解決策となることを願っています。正しい情報と治療法の理解により、皆さんが健やかで美しい肌を取り戻すお手伝いができれば幸いです。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。万能のニキビ治療機器アグネスを日本にいち早く導入し、これまでアグネスの治療は延べ1万人を超える。

【関連項目】

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2024/02/23

院長ブログトップ > 胸元にできるブツブツは何?あせも?原因と対策について

胸元にできるブツブツは何?あせも?原因と対策について

胸のあせもによるブツブツで悩む女性

胸元やデコルテに現れる小さなブツブツやポツポツ。これらは見た目にも美容上の悩みとなり、特に胸の谷間やアンダーバストにできる白い隆起やブツブツがかゆみを伴う場合、それらはしばしばあせも(汗疹)の可能性が高いです。女性にとっては特に気になるこれらの症状に対して、本記事では、胸周囲やデコルテに生じるあせもの原因を深掘りし、それに基づいた効果的な対策や治療方法を分かりやすくご紹介します。

胸のブツブツの正体とは

胸やデコルテに現れるブツブツ、その正体は一体何なのでしょうか。多くの方が経験するこの皮膚の変化には、にきび血管腫、そしてあせも(汗疹)などが考えられます。特に白く、無症状のブツブツは「あせも」の可能性が高いと言えます。また、注意が必要なのは、あせには種類があり、赤く痒みを伴う胸元のブツブツもあせもの可能性があります。一般的には子どもに多いとされるあせもですが、実は大人にも発生し、特に女性の胸元で見られることが少なくありません。

胸にブツブツ「あせも」ができる理由:女性のバストに多いその原因

あせもができてしまうメカニズム

あせも(英語では”heat rash”や”prickly heat”、医学用語でMiliariaとも呼ばれる)は、汗疹(かんしん)という医学的な名称でも知られています。この肌のトラブルは、大量の発汗が続く際によく起こります。その原因は、皮膚の表面につながる汗腺(エクリン汗腺)の管が、皮膚の角質、汚れ、またはほこりなどで詰まり、汗が適切に排出されなくなることにあります。その結果、汗は皮膚の表面で蒸発するのではなく、皮膚下に閉じ込められ、赤みやかゆみを伴う炎症や隆起を引き起こします。特に女性のバスト部分は、ブラジャーなどの下着に覆われているため、あせもが生じやすい環境になりがちです。加えて、胸の谷間は、他の皮膚部分と比べて体温が上昇しやすいとされており、発汗量も多くなるため、あせもが発生しやすい条件が整っています。

胸のブツブツ「あせも」の症状

あせもの症状は、小さな白い水疱から深い炎症を起こしたしこりまで多岐にわたります。あせもの中には非常にかゆみを伴うものもあります。あせもはその発生部位や臨床的特徴に基づいて、主に以下の水晶様汗疹、紅色汗疹、深在性汗疹の三つのタイプに分類されます。ただし、胸のブツブツとして現れるあせものタイプは水晶様汗疹もしくは紅色汗疹です。

■水晶様汗疹(Miliaria crystallina)

水晶様汗疹のあせも

(上記写真は水晶様汗疹)

水晶様汗疹は最も表層的なタイプで、汗腺の出口部近くの汗管が閉塞することにより生じます。特徴は、小さく透明な水疱が皮膚の表面に現れることです。通常、かゆみや痛みは伴わないため、他のタイプと比べて不快感は少ないと言えます。水晶様汗疹は、乳幼児によく見られるあせもですが、高熱を伴う場合など、大人にも現れることがあります。このタイプのあせもは、通常数日で水ぶくれが自然に破れて消えることが多く、比較的短期間で治癒します。

■紅色汗疹(Miliaria rubra)

紅色汗疹のあせも

(上記写真は紅色汗疹)

紅色汗疹は水晶様汗疹より深い皮膚層に発生するタイで、一般的な「あせも」として広く知られています。炎症を伴った水疱状の隆起が小さな塊として表れることが特徴で、しばしば激しいかゆみや痛みを引き起こします。このタイプのあせもは、成人においても特に汗を多くかく環境や活動後に発生しやすく、適切な衛生管理を行えば約1週間程度で自然に治癒します。しかし、強いかゆみに悩まされる場合には、炎症を抑える薬の使用が効果的です。ただし、かき壊してしまうと症状の悪化につながるため、注意が必要です。紅色汗疹では、炎症が進行し、隆起部分が膿を含むこともあり、この状態を嚢胞性汗疹と称します。

■深在性汗疹(Miliaria profunda)
深在性汗疹は、あせもの中でも特に重篤なタイプとして知られています。このタイプは、急激に広がる特性を持ち、時には強烈な燃焼感を伴うことがあります。深在性汗疹は、繰り返し紅色汗疹を経験した後に生じる合併症として一般的に見られます。この状態は、真皮内の汗腺の深部で障害が発生し、汗腺の分泌物が皮膚の表層と深層の間に漏れ出ることにより引き起こされます。深在性汗疹による発疹や症状は、発汗を促す活動の数時間内に現れるものの、発汗が止まれば数時間で消失する傾向があります。このタイプのあせもはかゆみを伴わず、皮膚の深部に位置する白っぽい丘疹が特徴的です。紅色汗疹に見られるような明確な赤みはなく、むしろ肉色の外観を呈します。さらに、深在性汗疹が存在する場合、熱射病のリスクが増加するため、注意が必要です。

参照元:

Heat rash : Overview by Mayo Clinic

あせもの合併症

あせもは通常、瘢痕(きずあと)を残すことなく自然治癒する場合が多いです。しかし、治癒過程において、一部のケースでは色素沈着が生じることがあります。この色素沈着は、数週間から数か月の間に徐々に薄れていくことが一般的です。ただし、重要なのは、あせもに伴うかゆみを我慢できずに患部を掻いてしまう行為には注意が必要であるという点です。掻き壊した部分から細菌が侵入すると、症状は重症化し、”とびひ”(伝染性膿痂疹)というより深刻な状態を引き起こすリスクがあります。従って、胸元やデコルテにできたブツブツがあせもであった場合は、早いうちに適切な対策をするのが大事です。

あせもができやすい部位

胸のブツブツ

成人において、あせもが発生しやすいのは、皮膚同士が密接に接触する部位や、衣類によって皮膚が擦れる箇所です。これらの部位には、熱や汗が蓄積しやすく、汗腺の詰まりが生じやすい環境が形成されるため、あせものリスクが高まります。特に胸の周囲でブツブツが発生しやすい部位としては、胸元の谷間やアンダーバスト(下乳)といった胸周辺のエリアが挙げられます。加えて、脇の下や肘の内側のしわ、股間などもあせもの発生が見られることが多い場所です。これらの部位は、普段の生活の中で摩擦や圧迫が加わりやすく、また汗が溜まりやすい特徴を持っています。

胸にあせもができやすい人

あせもは、特定の条件を持つ人においてより発生しやすい傾向があります。特に胸の周囲にあせもができやすいのは、バストが大きい方です。バストが大きい場合、特に胸の谷間の部分で皮膚が密接に接触し、そこに熱や汗が蓄積しやすくなります。また、バストが垂れた形状の方も、下乳、すなわちアンダーバストの部位で同様の理由からあせもが発生しやすいと言えます。肥満の方も、あせものリスクが高まります。皮下脂肪が多いことにより体内の熱が放出しにくくなり、結果として多量の汗をかきやすくなるためです。特にバスト、下腹部、脚の付け根、脇の下、首などの部位では、皮膚同士が重なり合って摩擦が生じやすく、汗腺が詰まりやすい状態になります。また、高齢者の中にはエアコンの使用を避ける傾向がありますが、これもあせものリスクを高める要因となります。さらに、病気や発熱でベッドに長時間横たわることが多い人も、背中などがベッドに密着することで、あせもが発生しやすい状態になります。

あせもの予防

あせもによる胸のブツブツを効果的に予防するためには、日常生活の中で以下のような対策を実践することが推奨されます。

■こまめな汗の拭き取り

あせもの最大の原因は汗です。肌を清潔に保つために、汗をかいたらすぐに拭き取ることが重要です。外出時やオフィスなどでは、タオルやハンカチ、汗拭き用のシートを活用しましょう。これらは皮膚に溜まった汗を効率的に除去し、あせもの発生リスクを低減します。特に、胸元のケアには、汗吸収パッドや専用の汗拭きシートの使用も効果的です。

■適切な服装の選択

あせも予防には、日常の服装選びにも気を配ることが重要です。暑い季節には特に、肌に触れる衣類が熱や湿気を閉じ込めないよう、通気性が良く、ゆったりとした軽量の服を選ぶことが推奨されます。理想的な服装は、汗を効果的に吸収し、迅速に乾燥する素材でできているものです。特に、通気性に優れた木綿などの天然素材の服は、肌に優しく、湿気を逃がすのに適しています。スポーツや運動を行う際にも、汗を素早く吸収し、すばやく乾燥する機能性の高いスポーツウェアの着用が効果的です。これらの服は、肌を清潔に保ち、あせもの発生を抑制するのに役立ちます。

■正しいシャワーの活用法

あせもを予防するためには、日々の身体の清潔を保つことが欠かせません。特に大量に汗をかいた後は、帰宅してすぐにシャワーを浴びることを心掛けましょう。シャワーで汗や汚れを洗い流すことは、あせも予防において非常に重要です。ただし、体を洗う際には、石けんを豊かに泡立て、肌に優しいタッチで洗いましょう。肌を強くこする行為は避けることが大切です。肌を強くこすり過ぎると、皮膚の天然の保護層であるバリア機能が損なわれ、あせもが発生しやすい状態を招いてしまいます。

■環境調整と活動制限

あせもの発生を最小限に抑えるためには、暑い季節の身体活動の調整と環境の工夫が重要です。屋外での活動を控え、日陰やエアコンが効いた涼しい建物内で過ごすことを心がけましょう。また、室内では扇風機を活用して空気の循環を促すことが効果的です。これにより、汗の蒸発を促し、皮膚の表面温度を下げることができます。睡眠中も、あせもの予防は重要です。睡眠エリアは適切な温度設定のエアコンやサーキュレーターを使用して、涼しくて換気の良い状態を保つようにしましょう。これにより、寝ている間に発生する汗が肌に留まり、あせもが発生するリスクを減らすことができます。

■効果的な肌ケアの重要性

あせもを防ぐためには、特に皮膚が乾燥しやすい方は、入浴後のスキンケアに特別な注意を払う必要があります。湯上りの肌は特に保湿が重要で、適切な保湿剤の使用はあせもを予防します。保湿剤を選ぶ際は、さらっとした使用感の乳液タイプが理想的です。これにより、皮膚を乾燥から守りながらも、汗腺の働きを妨げることなく、肌の健康を保つことができます。一方で、ワセリンのような脂分の多い製品は、肌にベタつきを与え、汗腺の出口を塞いでしまう恐れがあります。その結果、あせもの発生を促進する可能性があるため、使用は避けるべきです。

■ボトックス注射

胸元のあせも予防には、医療機関でのボトックス注射の活用が一つの有効な手段です。特に胸の谷間やアンダーバスト(下乳)での過剰な発汗に悩む方にとって、ボトックス注射は局所的な発汗を抑制し、あせもの発生を予防する効果的な治療法となり得ます。この治療は、ボツリヌス毒素を利用してエクリン汗腺を一時的に麻痺させ、発汗をコントロールします。治療の効果は約6ヶ月続きます。

胸元のブツブツ「あせも」の治療方法

胸の赤いブツブツに悩む女性

胸元にあせものブツブツが発生してしまった場合、適切な治療方法を取り入れることが重要です。あせもの治療には下記の方法あります。

■皮膚を清潔に保つ

あせもの基本的な治療方法として、こまめに入浴またはシャワーを浴び、汗や汚れを洗い流し、皮膚を清潔に保つことが推奨されます。軽症の場合、これにより、あせもは通常自然に治癒します。あせものある部分を洗う際は、肌を傷つける可能性がある硬いタオルやスポンジの使用は避けるべきです。このような洗浄グッズは、あせもを悪化させたり、伝染性膿痂疹を引き起こすリスクがあります。代わりに、泡立てネットを使用して作った豊かな泡を優しく手で肌にのせ、やさしく洗いましょう。入浴後の肌の拭き方にも注意が必要です。タオルで強くこすると皮膚に刺激を与える可能性があります。そっとタオルを体に押し当て、水分を吸収させるように優しく拭き取りましょう。

■あせもを冷却する

あせもによる不快なかゆみを迅速に抑えるためには、冷却が非常に有効な手段です。あせもができた部分を冷やすことで発汗が抑えられることにより、かゆみの感覚が速やかに和らぎ、肌への刺激が軽減されます。この方法は、特にあせもが原因で急なかゆみが生じた場合に、即座の一時的な緩和をもたらすことができます。冷却する際には、冷たい水で濡らした清潔な布やアイスパックを使用すると効果的です。

■薬による効果的なケア

あせもによるかゆみがある場合、掻き壊すと状態が悪化する恐れがあるため、早めに適切な薬の使用を検討することが重要です。市販のあせも薬には、かゆみや炎症を抑える成分に加え、皮膚の保護や修復を助ける成分が含まれています。製品には、さらっとした使用感のクリームやパウダー入りのもの、広範囲に使用しやすいスプレータイプ、患部をしっかり保護する軟膏タイプなど、様々な種類があります。症状の程度や使用感・好みに合わせて最適なものを選ぶとよいでしょう。さらに、あせもの症状が進行している場合には、医師による診断の下でステロイド薬の外用薬の使用が効果的です。

■ボトックス注射

あせもが繰り返し発生している場合は、ボトックス注射は効果的な治療方法の一つです。ボトックス注射は、過剰な発汗をコントロールし、結果としてあせもの発生を抑制します。ボトックスは汗腺の活動を一時的に抑えます。特に発汗が多いエリアに注射を施すことで、過剰な汗の分泌を抑制してあせもが改善します。特にボトックスは従来の治療法や予防策で改善が見られない場合に有効です。

胸の白いブツブツでよくあるご質問

Q:谷間が痒くなる原因は何ですか?

A:バストの谷間でかゆみが伴なう場合は、あせもの可能性が高いです。

Q:胸の谷間にブツブツができる原因は何ですか?

胸の谷間のブツブツとしては、にきび、あせも、血管腫の可能性が高いです。特にかゆみA:を伴う場合はあせもの可能性があります。

Q:胸にポツポツできる原因は何ですか?

A:胸でもできる部位によって原因が違うことがあります。谷間の場合はにきびやあせも、胸の周囲の場合は血管腫、アンダーバストの場合はあせもの可能性があります。

Q:胸に赤いぷつぷつができるのはなぜですか?

A:胸の赤いブツブツで痒みがある場合は、あせももしくはニキビの可能性が高いです。無症状の場合は血管腫の可能性が高いです。

Q:胸のあたりが痒い原因は何ですか?

A:あせもの可能性が高いです。胸周囲は汗腺が多く、また、下着などで風通しが悪いため、あせもができやすい部位となります。

Q:胸の周りにブツブツがあるのはなぜですか?

A:にきび、血管腫、あせもの可能性があります。白いブツブツはあせも、赤くて無症状のブツブツは血管腫、赤くて痒みがあるのはにきびもしくはあせもの可能性があります。

Q:胸が痒くなる病気は?

A:あせもやにきびはかゆみを伴うことがあります。

Q:胸の痒みを抑える方法はありますか?

A:病態によって異なりますが、かゆみが強い場合はかゆみを抑える塗り薬を使用するのが一般的です。

Q:胸のブツブツは病気ですか?

A:にきび、血管腫、あせもの可能性があります。白いブツブツはあせも、赤くて無症状のブツブツは血管腫、赤くて痒みがあるのはニキビもしくはあせも(汗疹)の可能性があります。

Q:胸がかゆいときはステロイドを塗りますか?

A:痒みが強い場合はステロイドを使用するときもあります。痒みの原因によって薬や治療方法が異なることがあります。

まとめ

胸のブツブツの予防方法と治療方法

この記事を通じて、胸元に現れるあせもの小さなブツブツへの効果的な対策と治療方法について、幅広くご紹介しました。特に頑固な胸元のあせもには、従来の方法に加えて、ボトックス注射という先進的な治療方法も検討する価値があります。あせもは適切なスキンケアを通じて、効果的に予防することが可能です。日々の生活の中でこれらの対策を実践し、健康な肌を維持することが重要です。胸元のブツブツの「あせも」の原因から予防策、さらには革新的な治療法に至るまで、この記事が皆さんの肌の健康をサポートするための実用的なガイドとなれば幸いです。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

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2024/02/22

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胸元の赤いブツブツは何?それは血管腫かも。原因と治療方法について

胸の赤いブツブツに悩む女性

胸元やデコルテに突然現れるブツブツ、これはただの肌のトラブルなのでしょうか?季節が変わり、肌の露出が増えるときに特に気になる胸周囲のブツブツやポツポツ。実はこれらには様々な原因があり、ニキビあせもだけでなく、血管腫である可能性も考えられます。特に赤みを帯びたブツブツは、「赤いイボ」とも形容され、血管腫の可能性が高いと言えます。通常、これらは30歳を超えた大人に多く見られますが、見た目に影響がある場合、美容医療として取り除くことも可能です。この記事では、特に胸元に現れる赤いブツブツ、つまり血管腫に焦点を当て、その原因から治療法までを詳細に解説していきます。

胸にできる血管腫とは

cherry angiomaさくらんぼ血管腫

胸部に現れる小さな赤い隆起、それは「赤いイボ」と形容されますが、医学的には「老人性血管腫」と呼ばれる皮膚病変の一つです。これらは通常、痒みを伴わず、赤いぽつぽつとした外見をしています。英語ではcherry angioma, cherry spot, ruby pointsとも表現され、その名の通り、さくらんぼのような美しい赤色をしていることからこの名が付けられました(英名のほうがセンスがよいネーミングですね)。老人性血管腫は、胸やデコルテだけでなく、背中、腕、顔にもよく見られる小さな、毛細血管の増殖によって形成される病変です。通常は1ミリメートルから5ミリメートルの大きさで、丸みを帯びた形状をしており、その色は明るい赤から濃い赤まで様々です。これらの血管腫は単発で現れることもあれば、多数が同じ部位に出現することもあり、人によって発生のパターンには大きな差があります。その房状の形状と色合いは、まさに「チェリー」の名のとおりの形状を持っています。

胸元の赤いブツブツの発生頻度について

老人性血管腫

胸元に現れる赤いブツブツ、通称「赤いイボ」の「老人性血管腫」は、30歳を過ぎると約50%の成人に何らかの形で見られる一般的な現象です。老人性血管腫は加齢とともに増加する傾向があり、特に75歳以上の人口では約75%の方々にその存在が確認されます。これは皮膚の自然な加齢現象の一つと考えられており、年齢を重ねるごとに見られることが一般的です。また、老人性血管腫は誰にでも発生する可能性があるため、既往歴の有無や人種、性別にかかわらず出現することが知られています。赤いイボは健康な人にも、過去に何らかの疾患を抱えていた人にも現れる可能性があるため、さまざまな年齢層の人々に影響を及ぼすことが分かります。

老人性血管腫の原因

老人性血管腫、しばしば「赤いイボ」と形容されるこの胸元の赤いブツブツの直接的な原因は、現在のところ明確には解明されていません。しかしながら、これまでの研究から、以下の要因が老人性血管腫の発生に関連している可能性が示唆されています。

■加齢

年齢を重ねるにつれて皮膚の変化が起こり、老人性血管腫が出現する可能性が高くなります。これは血管内皮細胞の増殖や血管の構造変化と関連があると考えられています。

■ホルモンの影響

妊娠などに伴うホルモンバランスの変化も、老人性血管腫の発生に影響を及ぼす可能性があります。特に女性ホルモンの変動は、皮膚の血管新生に影響を与えることが知られています。

■遺伝子の突然変異

遺伝的な要因も老人性血管腫の発生に関与している可能性があります。特定の遺伝子変異が血管の成長や発達に影響を与え、血管腫の形成を促すことがあります。

■化学物質への曝露

特定の化学物質への長期的な曝露も、皮膚の血管に影響を及ぼし、老人性血管腫の発生を引き起こす可能性があります。これには環境毒素や一部の薬剤が含まれることがあります。

出典元:

Cherry Angioma(Cleverland Clinic)

 

老人性血管腫の症状

老人性血管腫は、ほとんどの場合無症状で、かゆみを伴うことはありません。ただし、老人性血管腫に近い皮膚領域にかゆみを感じる場合は注意が必要です。その理由は、かゆみによる掻き壊しが血管腫を刺激し、出血を引き起こす可能性があるためです。したがって、老人性血管腫(赤いイボ)の周辺部分を掻かないよう心掛けることが重要です。さらに、胸部に出現するブツブツがかゆみを伴う場合、それはニキビやあせもなど他の皮膚病変である可能性があります。老人性血管腫とこれらの症状を区別することは、適切な治療法を選択するうえで重要です。また、老人性血管腫自体は治療を必要としないことが多いですが、見た目の問題や出血のリスクが気になる場合には、美容皮膚科または美容外科に相談することをお勧めします。

胸元に多発する赤いブツブツ

↑このように胸元に赤いブツブツが多発するこもあります。

出典元:

https://dermnetnz.org/topics/cherry-angioma-images

老人性血管腫の診断と検査

老人性血管腫の診断は、一般的には医師による視診で行われます。これらの血管腫はその特徴的な外観により、通常、特別な検査を必要とせずに診断が可能です。老人性血管腫は、小さな赤い隆起として皮膚に現れ、しばしば加齢と共に増加します。医師は診断の過程で、血管腫の大きさ、色、形状、そして発生している部位を観察し、ニキビや汗疹と鑑別します。また、老人性血管腫は良性の皮膚病変であるため、一般的に健康へのリスクはありません。しかし、診断の過程で、医師はもっと深刻な状態を示す可能性がある皮膚病変との鑑別診断も行います。

胸元の赤いブツブツの管理と治療

胸元に現れる赤いブツブツ、これらは老人性血管腫である可能性が高いです。老人性血管腫は、一般的に健康上のリスクを伴わないため、治療の必要性はありません。しかし、見た目に影響がある場合や、損傷により出血を繰り返す場合は、除去を検討したほうよいです。この赤いイボの除去方法にはいくつかの選択肢がありますが、中でも瘢痕を残しにくい炭酸ガスレーザーを用いた治療が特にお勧めです。他の選択肢としては、電気焼灼や液体窒素を用いた治療もありますが、これらの方法は痕跡が残りやすい可能性があります。

老人性血管腫のよくあるご質問

胸のブツブツ

Q:老人性血管腫の別名は何ですか?

A:さくらんぼ血管腫、チェリー血管腫またはキャンベル・ド・モルガン斑点とも呼ばれます。

Q:老人性血管腫を除去したら再発しますか?

A: 老人性血管腫は炭酸ガスレーザーを用いた方法であれば 通常は1回で除去されますが、稀に治療後に皮膚に再発することがあります。しかし再発したとしても、無害なので心配する必要はありません。

Q:老人性血管腫が皮膚に現れるのを防ぐにはどうすればよいですか?

A:老人性血管腫の直接の原因は不明であるため、100% 成功する予防法はありません。

Q:老人性血管腫は別の病状の兆候ですか?

A:老人性血管腫は危険でも有害でもありません。皮膚に新たな腫瘍ができるのは怖いかもしれませんが、老人性血管腫はがんの兆候ではありません。

Q:赤いイボは血管ですか?

A:血管の拡張によってできた血管腫と呼ばれる隆起性の病変です。通常は老人性血管腫と考えられます。

Q:妊娠中の女性はなぜ老人性血管腫のリスクが高いのでしょうか?

A:発生の理由は不明ですが、老人性血管腫は妊娠している人によく見られます。研究によると、妊娠中の女性ホルモンとプロラクチン(下垂体で作られるホルモン)の上昇が、老人性血管腫の発生に関与している可能性があります。多くの場合、老人性血管腫は出産後に退縮(サイズが縮小するか自然に消失)します。

Q:老人性血管腫に出血がある場合はどうすればよいですか?

A:老人性血管腫は皮膚に隆起した隆起であるため、傷がつきやすく、出血や感染症を引き起こす可能性があります。老人性血管腫から出血している場合は、皮膚のその部分を傷として扱い、洗浄し、抗菌性軟膏を塗布し、絆創膏で覆います。出血を繰り返す場合は除去をおすすめします。

Q:老人性血管腫は増えるものですか?

A:加齢により一般的には増える可能性が高いです。

Q:赤イボはなぜできるのですか?

A:赤いイボと呼ばれる老人性血管腫のはっきりとした原因は不明とされています。ただ、加齢のよる細胞の再生の能力の低下、ホルモンの影響、遺伝子の突然変異、特定の化学物質への曝露などが原因なのではないかと推測されています。

Q:赤いほくろは老化によるものですか?

A:はい、シワとたるみと同様に、加齢によるものできる一般的な皮膚変化によると考えられています。

Q:老人性血管腫がある場合、どのようなことが予想されますか?

A:老人性血管腫がある場合、非常に一般的で無害であるため、見通しは良好です。老人性血管腫が気にならない限り、治療する必要はありません。

Q:老人性血管腫はいつ医療機関で診てもらうべきですか?

A:老人性血管腫は無害なので、医療機関に行って治療を受ける必要はありません。老人性血管腫が気になる場合、または引っ搔くことによる頻繁な出血がある場合は、除去について医師に相談してください。

房状に見える老人性血管腫

↑老人性血管腫がこのように英名のごとくアメリカンチェリーにように見えることもあります。

まとめ

胸元に現れる赤いブツブツ、俗に「赤いイボ」と称される老人性血管腫は、加齢と共に生じる非常に一般的な皮膚の変化です。これらの血管腫は健康に害を及ぼすことはなく、加齢に伴う自然な現象の一部と考えることができます。新たな隆起が皮膚に現れたとき、心配に感じるかもしれませんが、老人性血管腫自体は健康上の問題を引き起こすものではありません。このため、見た目が気にならない限り、特別な治療や除去の必要はないといえるでしょう。もちろん、見た目に関する懸念や、稀に発生する出血などの問題がある場合は、除去を検討されてもよいと思います。通常は簡単な治療で済みますが、この場合でも経験豊富な美容外科専門医による治療をおすすめします。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。また、赤ら顔、そばかす、シミ、にきび、ニキビ跡に対しての肌治療も積極的にさまざまな治療機器を導入し、多角的に治療を行っている。

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2024/02/21

院長ブログトップ > 代償性発汗は必ず起こるのか?対策や治療法はあるのか?

代償性発汗は必ず起こるのか?対策や治療法はあるのか?

代償性発汗で悩む女性

ETS手術(内胸腔鏡下交感神経切断術)は、手掌多汗症や腋窩多汗症など、一部の慢性的な多汗症患者に対する治療法として知られています。この手術は、交感神経の特定の部分を切断し、過剰な手汗や脇汗、顔汗を軽減することを目的としています。しかし、ETS手術は必ずしも完璧な解決策ではありません。実際には、手術後に代償性発汗という新たな悩みに直面することがあります。代償性発汗とは、手術で発汗が抑制された部位以外、たとえば背中、腹部、足などで異常に発汗が生じる状態を指します。この現象は、多くの患者にとって予期せぬ副作用となり得るのです。本記事では、代償性発汗が発生する原理、その発生率、そして代償性発汗の対策や治療法について、詳細に解説していきます。

そもそもETS手術とは

内胸腔鏡下交感神経切断術(ETS)は、過剰な発汗を治療するための外科手術です。特に、手汗、脇汗、顔汗、頭汗の多汗症に対して行われます。この手術は、交感神経系が刺激されることによって生じる発汗を減少させることを目的としています。ETS手術の流れは以下の通りです

■全身麻酔と皮膚切開

患者は全身麻酔下に置かれ、背中やわき腹に小さな切開を数か所行います。ここよりカメラや器具を挿入して、胸腔内にアクセスできます。また、この際呼吸により肺の膨らみが手術の邪魔にならないように片側の肺だけに呼吸させる片肺換気による麻酔手術で行われます。

ETS手術患者姿勢

■交感神経の特定

カメラ(胸腔鏡)を通じて、交感神経を特定します。交感神経は背骨の側面に沿って走る神経束で、身体の様々な自律神経機能を制御しています。

■交感神経の切断またはクランプ

手術の目的に応じて、T2(胸椎2番)、T3(胸椎3番)などの特定のレベルの交感神経を切断またはクリップでクランプします。T2、T3というのは背骨の特定の部分(胸椎の2番目と3番目の椎骨)を指し、このレベルの神経を操作することで、手のひらや脇の下などの特定の部位の発汗をコントロールします。

■手術の完了

手術が終わると、切開部は閉じられ、患者は回復室へ移されます。ETS手術は通常、発汗のコントロールに効果的ですが、合併症のリスクがあります。最も一般的な合併症は代償性発汗で、これは手術した部位以外の身体の部分で過剰な発汗が生じる現象です。例えば、手のひらの発汗が減少すると、背中や腹部で発汗が増加することがあります。

代償性発汗はなぜ起こるのか?

代償性発汗の発生原因は、現在の医学ではまだ完全には解明されていません。ETS手術(内胸腔鏡下交感神経切断術)によって特定の交感神経が切断されると、体はこの変化に反応して残った神経の活動を過剰に高める可能性があります。この過剰な神経活動が、手術で発汗が抑制された部位以外の体の他の部分、例えば背中や腹部、足などで異常な発汗を引き起こすとされています。しかしながら、この現象に関する具体的な科学的証拠はまだ十分にはありません。

加えて、特にETS手術でT2レベル(胸椎の2番目の部分)の交感神経を操作することが、代償性発汗のリスクを高めるといわれています。T2レベルでの手術が行われると、体温調節に重要な役割を担う視床下部への神経のフィードバックが中断される可能性があり、これが代償性発汗のリスクを増加させると考えられています。

このように、代償性発汗の発生には複数の要因が関わっていると推測されており、それぞれの患者において異なる反応が生じる可能性があります。代償性発汗の理解を深めるためには、さらなる研究が必要ですが、現在のところ、これを完全に防ぐ方法は明確には確立されていません。患者と医師は、ETS手術のリスクと利益を慎重に評価し、個々の状況に最適な治療法を選択する必要があります。

出典元:

Surgical management of compensatory sweating: A systematic review

代償性発汗は回避が困難なETS手術の合併症

日本皮膚科学会による「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版」では、ETS手術(内胸腔鏡下交感神経切断術)後の代償性発汗を完全に防ぐ方法は確立されていないとされています。このため、手術を検討する際には、代償性発汗のリスクに関する十分なインフォームドコンセントが不可欠です。しかし、一部の研究では、手術の際に遮断する神経の部位を慎重に選択することで、重度の代償性発汗のリスクを軽減できる可能性が示唆されています。特に、T2領域(胸椎の2番目の部分)の遮断を避けることによって、代償性発汗のリスクを減少させることが可能です。手掌多汗症の治療では、T3領域(胸椎の3番目の部分)以下の遮断でも効果が期待できるため、T2領域の遮断は避けるべきとされています。一方で、頭部顔面多汗症の治療においては、T2領域の遮断が必要となるためこの場合は患者に代償性発汗のリスクに関する詳細な説明と同意を得た上で手術を行うべきとされています。

出典元:

原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版

代償性発汗の頻度

背中の汗が多いのは必然

代償性発汗の発生頻度は、過去数年間で変化が見られています。2006年頃から、この合併症の頻度は徐々に減少傾向にあるとされています。近年の医学論文では、交感神経の遮断をT3領域より下位で行うことにより、代償性発汗の頻度を低減しつつ、手掌多汗症に対する効果は以前と変わらないとする報告が増えています。これらの研究報告によると、代償性発汗の発生頻度は概ね20%以下であるとされていますが、客観的なデータの欠如が指摘されています。現在のところ、代償性発汗の実際の発生頻度の減少が事実なのか、発生頻度自体は変わらずに症状の程度が軽減されているのか、発汗部位や発汗過程が変化しているのかについては、明確には分かっていません。これらの情報は、主に患者の主観的な報告に基づいており、客観的な評価が求められています。

代償性発汗のジレンマ ;ETS手術の副作用への懸念

重度の手汗や頭汗に悩まされる患者の中には、最終手段としてETS手術(内胸腔鏡下交感神経切断術)を選択する方もいます。しかし、この手術の副作用として起こり得る代償性発汗は、頭汗の治療においてはほぼ100%の確率で、手汗の治療では約20%の確率で発生することが報告されています。この副作用の発生は予測不可能であり、ETS手術のリスクとして重要な問題点となっています。代償性発汗の最大の問題は、多汗症の原症状よりもさらに重度の発汗状態を引き起こすことがある点です。治療を受けた部位の多汗症が軽減される一方で、臀部、背中、胸など、他の部位の多汗症が深刻化することがあります。私は多くの患者が代償性発汗に苦しんでいるのを目の当たりにしてきました。これらの症例から、ETS手術が代償性発汗という副作用を起こさない方法に改良されない限り、この手術を推奨することはできません。

代償性発汗の治療

代償性発汗は、治療可能な症状です。現在、ボトックス、ビューホット、ミラドライといった治療法が提供されていますが、その中でもボトックスが特に効果的で推奨される治療方法です。

■ ボトックスによる治療

 ボトックスは、多くの医学論文でその有効性が証明されており、代償性発汗に対する治療法として広く認められています。治療を受けた患者の中で、ほぼ100%がボトックス治療に満足しているというデータが存在します。その確実性と手軽さから、私自身も代償性発汗治療の第一選択としてボトックスを推奨しています。

■ ビューホットまたはミラドライ

ビューホットは高周波を利用し、ミラドライはマイクロ波を利用した治療法で、どちらも多汗症に対して効果が期待できます。これらの方法は多汗症の症状を最大50%程度まで改善する可能性があります。しかし、代償性発汗による重篤な症状に対しては、50%の改善でも患者が十分な満足を得られるとは限りません。

ボトックスによる代償性発汗は起こらないのか?

ボトックスで胸汗、谷間の汗の対策

従来、ボトックス治療による代償性発汗の発生はほとんど報告されていませんでしたが、近年の研究により新たな知見が得られています。最新の研究では、原発性局所多汗症の患者89名のうち、ボトックス治療またはイオンフォトレーシスを受けた24名(約28%)が代償性発汗を体験したことが報告されています。このうち、16名(約75%)は軽症、7名(約21%)は中等度、1名(約4%)は重症の代償性発汗を経験しました。代償性発汗を発症したいずれの患者も症状は数か月で自然に改善され、これらの患者でも、ボトックス治療またはイオンフォトレーシスに対する満足度に大きな変化はなかったとされています。これらの結果から、ETS手術に比べてボトックス治療による代償性発汗は、もし発生しても一時的であり、長期的な多汗症の問題にはなりにくいと考えられます。ボトックス治療は、安全性が高く、多汗症の症状を効果的に管理できる選択肢として、引き続き患者に推奨される治療法と言えるでしょう。

出典元:

Compensatory Hyperhidrosis After Non-Surgical Treatment of Primary Focal Hyperhidrosis: Two-Year Single-Centered Prospective Study From Jordan. Jihan Muhaidat, Firas Al-qarqaz, and Diala Alshiyab 

ボトックス注射の長期効果;多汗症治療における新たな展望

私の経験に基づくと、多汗症治療におけるボトックス注射の効果は個人差がありますが、興味深い傾向が見られます。通常、ボトックスの効果は約6か月程度持続するとされています。しかし、定期的にボトックス注射を受け続けている患者の中には、その効果がより長期間にわたって持続するケースや、以前よりも多汗症の症状が改善されたと感じる方がいらっしゃいます。

この現象は、神経と汗腺の間に何らかの変化が起こっていることを示唆しているかもしれません。ボトックス注射を継続することにより、神経伝達物質の放出が抑制され、汗腺の反応性が時間とともに変化する可能性があります。この点に関しては、まだ明確な科学的根拠は限られていますが、患者の体験談や臨床経験から、ボトックス注射が長期的に多汗症の症状を改善する可能性があることが示唆されています。多汗症治療において、ボトックス注射は効果的な選択肢の一つであり、患者によっては長期的な持続的な効果がある可能性があることを念頭に置くことが重要です。

まとめ

ETS手術は多汗症治療において選択肢の一つですが、多くの患者が手術後に代償性発汗の問題に直面することがあります。そのため、私はETS手術を慎重に検討すべきと考えます。特に、ボトックス注射という非常に優れた治療法が存在する現在、手汗、足汗、顔汗・頭汗に対しては、ボトックス注射を第一の選択肢として推奨します。また、既にETS手術後の代償性発汗で苦しむ患者に対しても、ボトックス注射は有効な治療法です。

ボトックス注射は治療時の痛みは懸念事項ですが、筆者が推奨するマスク麻酔による完全無痛麻酔を用いることで、患者は痛みを全く感じることなく、寝ている間にボトックス注射を受けることができます。ボトックス注射は、多汗症や代償性発汗で悩む多くの患者にとって効果的かつ安全な治療法であり、多汗症の悩みを解消する手段として最も良い方法と考えます。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

【関連項目】

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2024/02/20

院長ブログトップ > 過度なパーマやカラーリングは要注意【女性薄毛対策ブログ第14回】

過度なパーマやカラーリングは要注意【女性薄毛対策ブログ第14回】

パーマは女性薄毛の悪化要因

(第13回「洗髪後のドライヤーとブラッシングの重要性」からの続き)

日常生活において、私たちが無意識のうちに行っているルーティンの一つが、シャワーを浴びた後の髪の手入れです。以前のブログでは、この習慣の中でも特にドライヤーの使用と髪のブラッシングの重要性に焦点を当て、その適切な方法について詳しくご説明しました。今回は、同じ日々の生活の中で、しばしば見過ごされがちながらも、実は髪の健康に大きな影響を与える要素であるパーマとカラーリングにスポットライトを当てます。これらの美容施術は、適切に行われた場合には魅力的な外見を演出する一方で、過度に行われると髪のダメージを引き起こす原因となり得るのです。そこで、今回はパーマとカラーリングが髪に与える影響を皆さんにお伝えします。

パーマの髪の毛への影響

薄毛が気になる女性は、パーマをかけて毛をふんわりと立たせ、薄毛を目立たなくしようとすることも多いものです。しかし、パーマの薬剤は強いので、過度にかけていると髪が傷み、脱毛してしまうこともあります。そのためパーマのかけすぎは禁物です。

パーマの毛根への影響

パーマは、髪の形状を変えるために使用される化学処理です。パーマ液には通常、チオグリコール酸塩が含まれており、これが髪のキューティクルを開き、髪の内部のケラチン結合を一時的に断ち切ります。この過程で髪は柔軟になり、望む形状に設定されます。その後、中和剤を使用して髪の結合を再形成し、新しい形状を固定します。しかし、より強い薬剤を使用すると、より強いカールやウェーブが得られますが、それに伴い髪へのダメージも大きくなります。

■パーマの毛根への間接的な影響

パーマ液が毛根に到達することはほとんどありませんが、もし漏れて毛根に接触した場合、刺激や炎症を引き起こす可能性があります。これは頭皮の健康に影響を与え、場合によっては脱毛の原因になることがあります。従って。パーマを行う際には、頭皮にパーマ液が直接触れないようにすることが重要です。また、施術者は適切な技術と知識を持っている必要があります。

■パーマの毛根への間接的なストレス

パーマによる髪のダメージは、髪の健康全体に影響を与え、間接的に毛根の健康にも影響を及ぼす可能性があります。髪が弱くなり、抜けやすくなることがあります。また、パーマ液に含まれる化学物質は、頭皮に刺激を与えることがあります。特に敏感肌の人やアレルギー体質の人は、かぶれや炎症を引き起こすリスクが高まります。

カラーリングも注意が必要

カラーリングも女性数毛には要注意

同じくカラーリングも薄毛に悩む人にはあまりおすすめできません。一般的なカラーリングで使用されているヘアダイは、髪のメラニン色素を分解し脱色したうえで、色素を入れます。このようなヘアダイの染毛剤は化学薬品や人工着色料などの成分でできており、 頭皮に刺激を与え、ときには炎症も引き起こします。そのため、特に20代前半の女性の場合は、ヘアダイが薄毛の大きな原因とも考えられいるのです。また一般的な白髪染めもヘアダイの一種のため、頭皮、毛根へのダメージは同様にあります。それでも、やはり髪の色でおしゃれを楽しみたい方、白髪が気になる方のカラーリングにはヘアマニキュアをおすすめします。

ヘアダイとヘアマニキュアの違い

ヘアダイとヘアマニキュアは、どちらも髪の色を変えるための製品ですが、使用方法や効果にいくつかの違いがあります。

ヘアダイの特徴

■染料の浸透方法

ヘアダイは永久染毛剤であり、アンモニアなどの化学物質を使用して。化学反応を利用して髪のキューティクルを開き、髪のメラニン色素を変化させ、色素を髪の内部に浸透させます。これにより、永久的または半永久的な色の変化が生じます。

■色持ちの期間

ヘアダイは 色持ちは長く、根本の成長によってのみ色が消えます。

■根本からのカラーチェンジ

白髪を覆ったり、髪の根本から色を変えるのに適しています。

■使用方法

ヘアダイは混合してから髪に塗布し、一定時間放置した後に洗い流します。色の持続性が高く、数週間から数ヶ月持続しますが、根本の再成長により定期的なリタッチが必要です。

■ダメージの度合い

キューティクルを開く化学反応により、髪へのダメージが大きいことがあります。

ヘアマニキュア の特徴

■染料の浸透方法

ヘアマニキュアは、髪の表面に色をコーティングすることで色を変えます。一時的な染毛剤で、色素が髪の表面にのみ付着します。髪の内部には浸透せず、表面に一時的な被膜を形成します。キューティクルを開かないため、髪へのダメージが少なく、洗うと徐々に色が落ちます。

■色持ちの期間

ヘアマニキュアは色持ちは比較的短く、数週間で色が薄れます。

■傷んだ髪への優しさ

髪の内部の構造に影響を与えないため、ダメージヘアにも使用しやすいです。

■使用方法

髪に直接塗布し、一定時間放置後に洗い流します。色の持続性はヘアダイより短く、数回のシャンプーで徐々に落ちていきます。

■カラーバリエーション

明るい色や特異な色の選択肢が豊富です。

■ダメージの度合い

ヘアマニキュアは、髪へのダメージが少ない傾向があります。

ヘアダイの薬液が毛根に及ぼす影響

ヘアダイに含まれる化学物質、特にアンモニアや過酸化水素は、髪だけでなく頭皮にも影響を与える可能性があります。これらの成分は次のような影響を及ぼす可能性があります

■頭皮への刺激

強い化学物質は頭皮に刺激を与えることがあり、かゆみ、赤み、または軽い炎症を引き起こすことがあります。

■アレルギー反応

染料成分に対してアレルギー反応を示すことがあります。これは時に重篤な症状を引き起こすこともあります。

■毛根への影響

長期間にわたる強い化学物質の使用は、毛根にダメージを与える可能性があります。これにより、髪の成長が遅くなったり、髪質が変わったりことがあります。

カラーリングはヘアマニキュアがおすすめ

カラーリングも女性数毛には要注意

要約すると、ヘアダイはより永久的な色の変更を目指す製品で、髪の構造に影響を与える可能性がありますが、ヘアマニキュアは一時的で、髪の表面のみに作用し、ダメージヘアにも優しい製品です。ヘアマニキュアは髪の内部ではなく、表面だけを染色する、半永久染毛料です。持続性は1カ月程度と短いのが欠点ですが、頭皮への影響 はあまりなく、薄毛の要因にはほとんどなりません。

まとめ

本記事では、私たちの美容ルーティンにおいて一般的かつ頻繁に行われるパーマとカラーリングのプロセスに焦点を当て、それらが髪に与える影響について詳しく探求しました。パーマやカラーリングは、適切に管理されれば美しさを演出する素晴らしい手段となりますが、過度に行うことは髪の健康を損なうリスクを伴います。したがって、パーマはなるべく控えめにし、カラーリングには髪に優しいヘアマニキュアを選択することが賢明です。日々の生活の中で、髪の健康を保ちながら美しさを追求するために、これらのポイントを意識することが重要です。常に髪を思いやり、適切なケアを行うことで、健康な髪と美しいスタイルの両立を目指しましょう。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。これまで延べ5万以上の薄毛治療を行う。著書に「専門医が徹底解説!女性の薄毛解消読本」(元神賢太著 / 幻冬舎)。女性の薄毛治療のほか、エイジングケア治療、美肌治療を得意としている。

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2024/02/19

院長ブログトップ > 脇汗が多い原因はストレス?すごいワキ汗の治療などについて

脇汗が多い原因はストレス?すごいワキ汗の治療などについて

脇汗の多汗症に悩む女性

私たちの日常生活において、脇汗(わきの汗)はしばしば大きな悩みの種となります。一般的に汗と言えば、暑さや運動による体温の上昇を想起しますが、実は脇汗の発生には、これらの要因以外にも深く関係する要素が存在します。市場には数多くの制汗剤やワキ汗パッドが溢れ、これらの製品の多様性と需要の高さからも、多くの人々がひどい脇汗の問題に直面していることが伺えます。本稿では、そんなワキ汗の原因として考えられるストレスやその他の要因を詳細に掘り下げ、また、効果的な治療方法や脇汗の止め方について、脇汗が多いことに悩む方々に役立つ情報を分かりやすくご紹介します。あなたの脇汗の悩みを解決するための一助となることを願いつつ、この記事をお届けいたします

ひどい脇汗で悩んでいるかたは意外と多い

脇の下の過剰な発汗、いわゆる腋窩多汗症は、日常生活における大きな悩みの一つです。近年のいくつかの調査結果からは、ワキ汗の悩みを抱える人々が予想以上に多いことが浮き彫りになっています。2013年の調査で、5807人の中で5.75%が腋窩多汗症を示していることがわかりました。さらに、2020年のより大規模な60,969人を対象にした調査では、この割合が5.9%に上ることが判明しました。しかし、驚くべきことに、腋窩多汗症を自覚している人の中で、医師の診察を受けているのはわずか4.4%にとどまっていることも2020年の調査で分かっています。これは、脇汗に関する多汗症の認識の低さや、医療機関への相談をためらう傾向があることを示しています。これらの調査結果から、脇汗に悩む人が実際には人口の約6%にも達している可能性があると考えられます。このことは、脇汗の問題が一部の人々のものではなく、意外に多くの人々が抱える共通の課題であることが分かります。

出典元:

Fujimoto T, Inose Y, Nakamura H, et al: Questionnaire based epidemiological survey of primary focal hyperhidrosis and survey on current medical management of primary axillary hyperhidrosis in Japan, Arch Dermatol Res, 2022.

脇汗の種類とその特徴:エクリン汗とアポクリン汗

エクリン汗腺とアポクリン汗腺の違い

私たちの脇には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類の汗腺が存在しています。エクリン汗腺から分泌される「エクリン汗」は、主に水分と塩分を含むため、ほぼ無臭です。この汗は体温調節のために重要な役割を果たし、熱い環境や運動中などに活発に分泌されます。一方、アポクリン汗腺から分泌される「アポクリン汗」は、水分に加えて脂質やフェロモン物質、そして多様な有機化合物を含んでいます。これらの成分が皮膚の常在菌と反応することで、特有のワキガ臭を発生させるのです。アポクリン汗は、ストレスや興奮などの感情的な反応によって特に分泌される傾向があります。このように、脇汗の特性は分泌される汗腺の種類によって大きく異なります。

脇汗が流れ落ちるほどすごい原因は?その驚くべきメカニズム

脇汗が気になる

私たちの体は驚異的なバランス感覚を持っており、ワキ汗の量が多いのもその一例です。脇汗が他の部位よりも顕著に多いのには、いくつかの興味深い理由があります。

1.脇の特異な発汗機能

脇汗が他の部位よりも多くなる主な理由は、脇の皮膚が他の部位と比べて発汗を始める体温の閾値が特に低いことにあります。私たちの体は、高温になると内臓や脳などの重要な器官が過度な熱によりダメージを受けるのを防ぐために発汗します。発汗は、汗が蒸発する際に生じる気化熱を利用して、その部位を冷却する役割を果たします。興味深いことに、脇の皮膚のすぐ下には腋窩動脈などの太い血管が通っています。この血管が皮膚からの冷却効果を受けることで、冷やされた血液が全身を循環し、結果的に体全体の温度調節に貢献します。つまり、脇の発汗メカニズムは、全身を効率的に冷却するための巧妙な仕組みなのです。この小さな部位が持つ生命の神秘に、改めて驚かされます。脇汗の量が多いのは、単なる不便ではなく、私たちの体が巧みに体温を調節しようとする生理学的な表れなのです。

2.脇は精神性発汗もする部位だから

脇汗が多いもう一つの大きな原因として、「精神性発汗」の存在が挙げられます。これは体の特定の部位、特に腋(わきの下)、手のひら、足の裏、頭、顔などで見られる発汗のタイプで、ストレス、不安、感情的な反応などの精神的な要因によって引き起こされます。例えば、「寒いのに脇汗をかく」のは緊張した状況下での「冷や汗」であり、この精神性発汗の一例です。このように脇は、体温調節のための発汗だけでなく、精神的な反応による発汗も起こりやすい部位です。そのため、脇汗が他の部位に比べて汗が多くなるのです。さらに、精神性発汗が異常に多い状態は「(原発性)多汗症」と呼ばれ、特に脇汗が多い場合は「原発性腋窩多汗症」と診断されます。この状態では、日常生活において感情の変化による脇汗が顕著になるため、多くの方々が日々の生活に支障を感じることがあります。このように、脇汗の多さは単なる体温調節以上の深い背景を持っているのです。

3.脇汗の量を増加させるアポクリン汗腺の役割

さらに脇汗が他の体部よりも多い理由にアポクリン汗腺の存在が挙げられます。脇の皮膚にはエクリン汗腺と共にアポクリン汗腺もあり、ここから分泌されるアポクリン汗により、脇は他の皮膚の部位に比べて汗の量が多くなる傾向があります。このアポクリン汗腺は脇だけでなく、陰部や乳輪周辺にも存在し、特有の臭いを生じさせることがあります。特に、腋の下でのアポクリン汗の発汗が多く、その臭いが強い場合は「ワキガ症」と呼ばれます。

脇汗は自律神経で制御されている

脇の下からの汗は、自律神経システムによって細かく制御されています。このシステムは、私たちが意識的にコントロールすることができない体の機能、例えば心臓の拍動や消化活動などを調節しています。自律神経は交感神経と副交感神経という二つの部分から成り立っており、これらは体の様々な状態に応じて異なる役割を果たします。交感神経は主にストレスや緊張、興奮などの状況下で活性化し、体を「戦闘または逃走」の準備状態にします。このとき心臓の拍動は速まり、筋肉への血液供給が増加し、脇を含む特定の部位で発汗が促進されます。この発汗は、体温調節のためではなく、ストレス反応の一部として生じる「精神性発汗」です。ストレス下では、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方が活性化するため、脇汗が多くなり、特有の臭いも発生する可能性があります。一方で、副交感神経はリラックスしている時や食事の消化を助ける時などに働きます。副交感神経が優位な状態では、体は休息や再生のためのエネルギーを消費します。脇汗の発生は主に交感神経の働きによるものであり、例えば緊張状態の面接中や試験前などには、この神経が活発になるため、脇汗が増える傾向にあります。また、暑い環境や運動中には体温が上昇し、これに反応して体を冷ますために汗をかくこともありますが、これも自律神経の影響です。つまり、脇汗は私たちの体が内部状態に応じて反応し、自律神経によって細かく制御される現象なのです。これにより、体は状況に応じて適切な反応を示すことができるのです。

脇汗の治療方法

わきボトックス

脇汗の治療方法には以下のようなものがあります

■脇汗専用の塗り薬

現在エクロックゲルとラピフォートワイプという2種類の塗り薬が保険適用されています。1日1回の使用で脇汗を抑えることができます。臨床試験では、約50%の人が1ヶ月の使用で汗の量を半減させた結果が得られています。ただし、使用を中止すると汗の量は徐々に元に戻ります。

■局所制汗剤(塩化アルミニウム製剤)

塩化アルミニウムの制汗剤は、は、汗腺を一時的に塞ぎ、汗の分泌を抑えます。使用者の約60%が症状の改善を経験しています。保険適用外の治療法です。

■ボトックス注射

ボトックスで胸汗、谷間の汗の対策

ボトックス注射は脇汗に非常に有効で、ボツリヌス毒素を使って汗腺を支配する神経を一時的に麻痺させ、発汗を減少させます。効果は約6ヶ月間持続し、副作用はほとんど報告されていません。ただし、重症の場合のみ保険適用があります。

■ビューホット治療

腋汗に対するこの治療法は、改善率が30~50%とされ、副作用として点状のカサブタが発生することがあります。効果は完全に実感するまでに1~3ヶ月かかる場合がありますが、一度改善されたらその効果は半永久的に持続するという利点があります。

脇汗のビューホットの原理

■その他の方法

内服薬や交感神経遮断術も脇汗治療に用いられることがありますが、上記の方法で十分な改善が見られることが多いため、現在ではあまり推奨されていません。

脇汗についてよくあるご質問

Q:脇汗を止める最強の坊法は?

A:ボトックス注射は脇汗の多汗症治療において最も高い効果を示す治療方法です。また、外用剤、制汗剤、と比較して、手間が少ないのもメリットです。実際にボトックスを受けた場合、1回の治療で汗がピタッと止まります。治療効果は数ヶ月間持続し、症状の重度に応じて繰り返し行うことが可能です。

Q:脇の多汗症を自力で治す方法は?

A:脇の多汗症、特に精神性発汗によるものを自力で治す方法について、ネット上には食事の改善や日常生活のストレス軽減など、様々な情報が溢れています。しかし、これらの方法が多汗症の改善に直接的に役立つという医学的エビデンス(根拠)は、現時点では存在していません。従って、多汗症を自力で治す方法はないと考えるべきです。

Q:脇汗をめっちゃかくのはなぜ?

A:脇汗が体の他の部位より多いのにはさまざまな理由がありますが、一番大きな理由としては、脇の皮膚は全身にある皮膚と比べ、発汗開始の体温閾値は最も低く,全身が発汗しない低体温でも発汗が生じる仕組みになっているからです。脇の下には体表面近くに太い血管が存在し,この点で他の部位と比べてと発汗することによる体温冷却が効率的に行うことができるため、このような仕組みになっていると考えられています。脇汗が多い理由はさらに、前述した体温調節性発汗以外にも精神性発汗という発汗形式があることや、他の部位にはあまりないアポクリン汗腺という汗腺もあるからです。。精神性発汗とは、主に腋の他に、手のひら、足の裏、頭、顔の特定の部位に見られ、ストレス、不安、感情的な反応などの精神的要因によって引き起こされる発汗です。また、アポクリン汗腺はワキガ臭という特有な臭いを発する汗(アポクリン汗)を出す汗腺で、主に脇と陰部、乳輪の皮膚にあります。このような様々な理由から脇の汗は他の部位より発汗が多いのです。

Q:脇汗が多いとワキガですか?

A:脇汗が多い多汗症と脇の汗が臭うワキガはそれぞれの別の病態で要因が違います。脇の多汗症は、交感神経系の過活動によって引き起こされ、正常な体温調節を超えた大量の汗をかくことが主な症状です。一方、腋臭症(ワキガ)は、アポクリン汗腺からの汗の分泌により、脇の下から不快な臭いが発生する状態です。

Q:脇汗はどうやって治すの?

A:多汗症による脇汗の場合、ボトックス注射またはビューホット治療が最もおすすめの治療です。ボトックス注射はでは汗がピタッと完全に止まった感覚が数か月得られます。持続性は個人差がありますが、6か月前後です。一方、ビューホット治療は汗が最大半分くらいに減ります。ビューホットによるこの効果は半永久的に持続します。

Q:脇汗多めの基準は?

A:脇汗など体の特定の部位から大量に汗が出現する原発性局所多汗症には明確な診断基準があります。原発性局所多汗症は過剰な発汗が明らかな原因がないまま 6 カ月以上認められ,、以下の6症状のうち2項目以上当てはまる場合に診断されます。

1)最初に症状がでるのが 25 歳以下であること

2)対称性に発汗がみられること

3)睡眠中は発汗が止まっていること

4)1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること

5)家族歴がみられること

6)それらによって日常生活に支障をきたすこと

出典元:

Hornberger J, Grimes K, Naumann M. et al: Recognition, diagnosis and treatment of primary focal hyperhidrosis, J Am Acad Dermatol, 2004; 51: 274―286

Q:暑くないのに、ひどい脇汗をかくのはどうしてですか?

A:それは精神性発汗による発汗です。精神性発汗は体の特定の部位、特に腋(わきの下)、手のひら、足の裏、頭、顔などで見られる発汗のタイプで、ストレス、不安、感情的な反応などの精神的な要因によって引き起こされます。例えば、「暑くないのに脇汗をかく」のは緊張した状況下での「冷や汗」であり、この精神性発汗の一例です。

まとめ

美容外科医専門医元神賢太医師

この記事を通じて、脇汗に関する多くの疑問に答えることができました。日本において脇汗で悩む人は推定で500万人以上にものぼりますが、実際に医療機関を受診する人は約20万人程度にとどまっています。多くの方が、脇汗が医学的に治療可能な疾患であるという事実を知らずに、日々の生活で深い悩みを抱えています。脇汗が原因で生じる日常生活の支障や精神的な苦痛は、適切な治療により軽減することが可能です。もしこの記事を読んで脇汗に関する問題を解決したいと思われた方がいれば、多汗症を専門とする医療機関を受診し、専門医の診察を受けることを強くお勧めします。正確な診断と治療法の提案は、あなたの脇汗の悩みを解消するための第一歩となるでしょう。この記事が、脇汗に悩む方々にとって、その問題を解決するための有益な情報となり、一助となれば幸いです。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

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2024/02/18

院長ブログトップ > 精神性発汗の特徴、原因、対処方法、治し方などについて

精神性発汗の特徴、原因、対処方法、治し方などについて

精神性発汗に悩む女性

私たちの中には、日々の生活において、手のひら、足の裏、顔からの過剰な発汗に苦しんでいる方がたくさんいます。このような発汗は、些細な緊張やストレスがかかった際に頻繁に見られる現象です。例えば、テスト中に手の汗で答案用紙が濡れてしまったり、プレゼンテーションで顔から汗が流れるなど、日常生活において大きな支障をきたすことがあります。このような精神的ストレスへの反応による大量の発汗は、精神性発汗の過剰反応と言えます。このブログでは、過剰な精神性発汗に悩む多くの方々に向けて、その原因や特徴を詳しく解説し、日常生活での対処法の有無や治療方法についてもご紹介いたします。

精神性発汗とは

精神性発汗は、英語ではPsychogenic sweatingと言いますが、ストレスや感情的な動揺が引き金となって生じる生理的な発汗現象です。私たちの体が本能的に反応して起こすこの反射的な発汗は、日常の体温調節の一環としての発汗とは根本的に異なります。通常量の精神性発汗は人間の誰しにも備わっている生理的な反応であり、ごく普通のことです。

精神性発汗の起こる機序

人間の自律神経は、体の無意識の活動を制御する神経系で、交感神経系副交感神経の二つの部分から成り立っています。交感神経系は「戦うか逃げるか」の反応を担当し、ストレスや危険があるときに活動します。心拍数を速め、血圧を上げ、筋肉に血液を送ることで、身体を危険に対処する準備状態にします。これに対し、副交感神経は「休息と消化」の反応を担当し、リラックスしているときに活動します。心拍数や呼吸を落ち着かせ、消化を促進し、体のエネルギーを保存する活動を支援します。自律神経は、このように心拍、呼吸、消化、発汗など、意識的にコントロールできない多くの重要な体の機能を自動的に調節します。精神性発汗は、この自律神経系の中でも特に交感神経の刺激に応じて起こり、ストレスや感情的な影響を受けた際にエクリン汗腺からの発汗を引き起こします。

精神性発汗が起こる主な部位

顔汗・頭の汗がすごいので悩んでいる女性

精神性発汗は、手のひら足の裏、脇の下、頭部、顔といった特定の部位に顕著に現れます。これらの部位は、感情やストレスに敏感に反応して発汗するという特性を持っております。一見、無意味に思えるこの精神性発汗は、実は人間の生理機能の一環であり、動物界全体に見られる反応の一部です。次の記事からは、これら各部位の精神性発汗がどのような生物学的な、生理的的な役割や意義があるのかを解説していきます。

手足の精神性発汗は肉球の名残

人間の手足における精神性発汗は、進化の過程で獲得された、動物の足裏にある肉球の機能を反映しています。犬や猫などの動物が、交感神経の刺激に応じて足裏で発汗する機序と同様のものと考えられています。これらの動物では、足裏の発汗が滑り止めとしての役割を果たし、逃走時や飛び移る際の安全性を高める効果があるとされています。

冷や汗は脳の防御機構としての役割

私たちの体において、脳は極めて重要かつ熱に敏感な器官です。緊張やストレスの瞬間に頭部や顔からの発汗が見られるのは、これが実は「脳冷却」の役割を果たしているからです。緊張時の脳の活動は熱を生み出すことがあり、この熱を効果的に放散するため、特に頭部や顔での発汗が起こります。このプロセスは、脳の温度を適切に保つために非常に重要であり、体温が上昇していない状況でも発生するため「冷や汗」として知られています。このように、冷や汗は脳を保護するための生理的な反応であり、私たちの体の賢い防御メカニズムの一つなのです。

脇汗が多い理由

脇下(腋窩)は全身の中で最も低い体温で発汗が始まる部位です。これは、脇に近い体表に大きな血管が存在し、発汗によって体表を冷却するのに特に効果的だからです。脳冷却が脳を優先的に守るために低体温でも顔や頭から発汗しやすく設計されているように、脇汗も体全体の冷却を最も効率的に行うために発汗しやすくなっています。ストレスや精神的負荷による精神性発汗が手のひら、足の裏、頭部・顔面に現れるように、脇からも発汗が起こります。脇のこの精神性発汗は、体温の上昇を未然に防ぎ、早期に体を冷却するための生理的な現象であり、大きな意義があるのです。

精神性発汗は生体の自然な反応

このように精神性発汗は、手のひら、足の裏、頭・顔、脇といった部位に見られる、生体が持つ自然な生理的な現象です。この現象は、ストレスや感情的な反応に応じた身体の自然な対応であり、正常範囲内であれば日常生活には影響を与えません。しかしながら、この発汗が過剰になると、日常の活動に支障をきたすことがあり、その場合は原発性局所多汗症と診断されることもあります。

原発性局所多汗症の診断

足汗がひどいことに悩む女性

異常な精神性発汗による原発性局所多汗症には明確な診断基準があります。原発性局所多汗症は過剰な発汗が明らかな原因がないまま 6 カ月以上認められ,、以下の6症状のうち2項目以上当てはまる場合に診断されます。

1)最初に症状がでるのが 25 歳以下であること

2)対称性に発汗がみられること

3)睡眠中は発汗が止まっていること

4)1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること

5)家族歴がみられること

6)それらによって日常生活に支障をきたすこと

出典元:

Hornberger J, Grimes K, Naumann M. et al: Recognition, diagnosis and treatment of primary focal hyperhidrosis, J Am Acad Dermatol, 2004; 51: 274―286

精神性発汗の誤った対策

インターネット上では、精神性発汗に関するさまざまな情報が氾濫しています。これには、医療機関から発信される情報でさえ、時には誤ったものや古くなってしまった内容が含まれることがあります。医学の世界は絶えず進歩しており、過去の情報が現代では不適切であることも少なくありません。特に、過剰な精神性発汗に対する対策に関しては、誤ったアプローチや真偽の不確かな情報が数多く存在します。下記から具体的にはどの点が誤っているのか指摘しましょう。

■「食生活の改善」という間違った対策

多くの情報源が、辛味や酸味、カフェインが交感神経を刺激し、結果として発汗を促進するため、精神性発汗の抑制のためにこれらを控えることを推奨しています。しかし、これらの食品や飲料を制限することが原発性局所多汗症の改善に直接効果があるかどうかについては、医学的な証拠は全くありません。また、一部の情報源では大豆製品やハーブ類、野菜などが発汗を抑制すると主張していますが、これらの主張に対する科学的根拠は現在のところ全く確立されていません。

■「生活習慣の改善」という間違った対策

精神性発汗に対する生活習慣の改善という対策に関する情報は多くありますが、生活習慣の改善が多汗症に直接的な影響を与えるという明確な医学的証拠も全くありません。アルコールやニコチンが原発性局所多汗症の増悪因子となる可能性についても、直接的な言及がある医学論文は見つかっていません。確かに、アルコールやタバコは自律神経に影響を及ぼし、発汗に影響を与える可能性がありますが、これらの摂取を控えることが多汗症の改善に直接的につながるという医学的な根拠も全くありません。また、規則正しい生活や十分な睡眠が多汗症を改善するという研究結果も現時点ではありません。

■「ストレスを軽減させるべき」という間違った対策

ストレスが交感神経を活性化させ、発汗を促すという考えは広く受け入れられていますが、リラクゼーションが原発性局所多汗症の改善に直接的に寄与するという明確な医学的証拠は全くありません。一般的なリラックス方法、例えばゆっくりとしたお風呂の時間やアロマセラピーなどは、一時的なストレス軽減には有効かもしれませんが、過剰な精神性発汗の根本的な改善につながるという科学的な裏付けは全く確立されていないため、注意が必要です。

精神性発汗に対する誤った対策が誤解を拡大させるリスク

手のひらの汗が多くて悩む女性

インターネット上には、ホルモンの不均衡や過剰なストレスが過剰な精神性発汗を引き起こすとする記述が散見されますが、これらは多汗症で悩んでいるかたに対する誤った前提に基づいています。このような記述は、過剰な精神性発汗による多汗症が生活習慣や社会生活の乱れが原因であるという誤った認識を広め、多汗症で悩んでいるかたにをさらに苦しめる可能性があります。実際には、過剰な精神性発汗を引き起こす過剰な交感神経の活動の原因は未だ明確にはされておらず、原発性局所多汗症への理解と配慮が求められます。例えば、花粉症に苦しむ人に対して「生活習慣の乱れが原因」と言うのは適切ではないのと同じように、過剰な精神性発汗で悩んでいる人に対する適切な理解とサポートが必要です。

精神性発汗のよくあるご質問

Q:精神性発汗の特徴は?

A:精神性発汗は、英ストレスや感情的な動揺が引き金となって生じる生理的な発汗現象です。通常量の精神性発汗は人間の誰しにも備わっている生理的な反応であり、ごく普通のことです。過剰な精神性発汗は原発性局所多汗症と診断されます。

Q:精神的ストレスで汗をかくのはなぜ?

A:汗をかくという生理的な現象は交感神経により制御されており、ストレスを感じると自然な生体反応の結果、交感神経の活動が高まるからです。交感神経の活動が高まると、それに連動して発汗も増えてしまうのです。

Q:精神性発汗を止める方法はありますか?

A:精神性発汗が生じている部位によってそれぞれ推奨される治療方法は異なりますが、すべての精神性発汗を止める方法として有効なのはボトックス注射です。

Q:精神性発汗は体温に影響しますか?

A:精神性発汗は体温に影響しません。精神性発汗の特徴が体温と関係なく発汗する点です。また、発汗量が増えても体温はほとんど下がることはありません。

異常な精神性発汗に対する治療方法

脇汗の多汗症に悩む女性

原発性局所多汗症と診断された場合、その部位に応じた最適な治療法を選択することが重要です。一つの有効な治療方法として、ボトックス注射が広く用いられています。ボトックスは多汗症の各種症状に対して効果を示し、特に手術によく見られる代償性発汗のリスクは全くないとされています。また、ボトックス治療は副作用が少ないという利点もあり、多汗症治療において推奨されています。

まとめ

この記事では、精神性発汗の生理的な機序とその意義を中心に解説し、それが原発性局所多汗症の要因となることを詳しく説明しました。読者の皆様に正しい知識を提供し、過剰な精神性発汗に苦しむ方々に少しでも役立てば幸いです。もし、この症状が日常生活に影響を及ぼしている場合は、医師に相談することを強くお勧めします。多汗症治療において経験豊富な皮膚科医や美容外科医なら、症状に合わせた適切なアドバイスや治療法を提供できるでしょう。

 

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

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2024/02/17

院長ブログトップ > ハーブドリームの脂肪吸引の死亡事故の確率とは?事故も分析

ハーブドリームの脂肪吸引の死亡事故の確率とは?事故も分析

ハーブドリームで死亡事故

2024年2月15日、私は船橋中央クリニックの美容外科医として大きな衝撃を受けました。その日、大阪にあるハーブドリーム美容外科で発生したとされる頬の脂肪吸引後の患者の死亡事故がヤフーニュースで報じられ、手術を担当した医師が業務上過失致死で書類送検されました。船橋中央クリニック院長のこのブログ記事では、この脂肪吸引後の死亡事故という衝撃的なニュースについて深く掘り下げ、なぜこのような悲劇が発生したのかを、脂肪吸引手術に精通する私、元神賢太が美容外科専門医の観点から分析します。また、脂肪吸引手術の死亡率と安全性についても考察を加えます。

2024年2月15日の脂肪吸引のよる死亡事故の報道内容

(以下、ヤフーニュースより一部転載)

大阪府警は、業務上過失致死の疑いで、東京・渋谷区に住む男性医師を書類送検しました。 医師は去年4月、大阪市内にある「HAAB DREAM BEAUTY CLINIC大阪梅田院」(ハーブビューティークリニック;東京青山の外苑前にある美容外科の系列)で、頬部の脂肪吸引を48歳の男性に実施。警察によりますと、その際医師は手術による出血で血液が湿潤してのどが狭窄し、窒息が生じるおそれがあることを知り得たのに、死亡事故を未然に防ぐ注意義務を怠り、的確な医療措置を受けるよう指示しなかった過失で、脂肪吸引の翌日に男性患者を窒息により死亡させた疑いがもたれています。患者の男性は施術を受けたあと九州の自宅に戻り、医師に腫れあがった顔写真を送るなどして、術後の異常を訴えるやりとりをしていたということですが、警察は脂肪吸引手術の担当医師が救急要請などを行わず業務上の注意義務を怠り、的確な医療措置を受けるよう指示しなかった過失があるとみています。一方、脂肪吸引手術の担当医師は容疑を否認しているということです。取り調べに対して、「顔写真を見て医療機関の受診をすすめた。遠方にいる立場として、できることは病院に行くよう促すことで、これ以上してあげられることはなかった」などと話しているということです。

死亡事故のニュースに対する世論の波紋

ハーブドリームビューティークリニックでの脂肪吸引で死亡

この死亡事故に関するヤフーニュースのコメント欄を見ると、担当医師への批判のみならず、脂肪吸引手術自体や、広く美容外科治療への疑問が多く挙がっています。この反響は、単なる一件の事故に留まらず、美容外科手術の安全性とリスクに関する大きな社会的な議論を呼び起こしています。では、本当に脂肪吸引手術は高い死亡率を持つのでしょうか?手術の危険性はどの程度なのでしょうか?以下では、これらの疑問に対して専門的な観点から解説を加えていきます。

脂肪吸引の死亡率とは

脂肪吸引手術に伴う死亡率は、様々な研究や報告から集めたデータに基づくと、約0.003%から0.03%の範囲であるとされています。この比率は、全ての脂肪吸引手術におけるもので、病院での入院治療や外来治療を含めたものです。パーセンテージ表記にすると非常に小さい数字ですが、このデータの最小の0.003%での死亡率で考えた場合、10万件につき3名の死亡率となります。これはすべての脂肪吸引を死亡率であり、特に顔や顎の脂肪吸引に特化した統計は見つかりませんでした。これらのデータは、脂肪吸引の安全性を考える上で重要な参考になります。

出典元:

Report: Liposuction Death Rate Statistics

Liposuction Death Rate

 

2009年にも死亡事故の報道

今回は1年前の2023年の頬の脂肪吸引のよる死亡事故の報道です。2009年にも品川美容外科のお腹の脂肪吸引による死亡事故があり、医師が逮捕された事故が報道されました。その事故では医師は業務上過失致死罪により禁錮1年6月、執行猶予3年の判決が確定しております。ただ、このようにニュースになるのは医師が業務上過失致死罪の疑いで逮捕または書類送検された場合だけです。明らかな医療ミスの疑いがあった場合のみ、警察の介入があり、報道されるのであって、脂肪吸引の死亡事故のたびに報道があるわけでは決してありません。実際にはるかに多くの脂肪吸引の死亡事故は起こっているのです。

脂肪吸引で1年で1人くらいの死亡事故発生率

では報道されない脂肪吸引による死亡事故はいったいどのくらいあるのでしょうか?本当の数字は実際には誰にも分かりません。これは、多くのクリニックがメディアへの報道を避けるために患者と示談交渉を行い、事故を収束させるためです。しかしながら、長年美容外科をやっていると業界の横のつながりで、どこかの美容外科で死亡事故があった、という話はすぐに耳に届きます。その数は決して少なくありません。1年1回くらいは脂肪吸引による死亡事故がある感覚です。そこで日本で1年にどのくらいの脂肪吸引手術が行われているか、を調べてみました。その実数が正確には分かりませんでしたが、日本美容外科学会(JSAPS)の2017年の調査データによると、その年の脂肪吸引手術件数は7,785件でした。このデータを基に、日本での年間脂肪吸引手術件数を約10,000件と推測すると、年間1名が死亡している場合の死亡率0.01%となります。この死亡率は海外の文献で示される脂肪吸引の死亡率0.003~0.03%の範囲内に収まることが分かります。これにより、日本では年間約1名の脂肪吸引による死亡事故が発生している可能性が高いと考えられます。

脂肪吸引は安全な治療なのか?医学的根拠は?

死亡事故の報道を受け、脂肪吸引が安全な治療法であるかどうかに疑問を抱くことは自然です。しかし、脂肪吸引は確固たる医学的根拠に基づいた安全で有益な治療として広く認識されています。信頼できる医学文献に加え、米国のメイヨークリニックやクリーブランドクリニックなどの権威ある医療機関も脂肪吸引の有益性を公にしています。それらの情報源は、脂肪吸引の安全性において医師の経験と技術が非常に重要であることを強調しています。したがって、脂肪吸引は適切に行われる場合には、信頼できる治療方法であると言えます。

出典元:

Overview of liposuction by Mayo Clinic

Liposuction by Cleveland  Clinic

頬・顎・首の脂肪吸引の安全性について

頬・顎・首の脂肪吸引手術では、最も重要なのは脂肪組織以外を傷つけないことです。特に首の領域では、頸動脈などの重要な血管が脂肪の下に位置しているため、手術中は細心の注意が必要です。経験豊富な手術者は、これらのリスクを常に念頭に置きながら慎重に手術を進めます。適切に手術が行われれば、頬・顎・首の脂肪吸引は非常に低リスクで、合併症の発生はほとんどありません。メイヨークリニックのホームページでは、顎と頬の脂肪吸引の効果と安全性に関する情報が提供されています。

頬と顎の脂肪吸引の効果

↑メイヨークリニックに掲載されている頬・顎の脂肪吸引の効果

出典元:

Overview of liposuction by Mayo Clinic

今回の死亡事故が起こった要因

頬の脂肪吸引で死亡原因は気道閉塞

今回の事故で報道を通じて現時点で判明していることは、頬部の脂肪吸引後に患部の腫れがひどかったことと、窒息死したことだけです。このことからおそらく術後の内出血により気管が圧迫されて窒息死したと考えられます。気管を圧迫するほどの内出血は通常の毛細血管だけからの出血では起こり得ないので、おそらく手術中に頸動静脈系の太い血管を傷つけたのではないか、と推測します。報道では頬部の脂肪吸引とありますが、おそらく首や顎周囲も一緒に脂肪吸引しております。これからはすべて推測で書きますが、首の脂肪吸引を行って、もし頸動静脈系の太い血管を傷つけた場合、これらの血管は筋膜(広頚筋膜)の下にあるため、脂肪吸引が行われた脂肪層には出血がほとんど現れない可能性があります。脂肪吸引後は、通常、術後の内出血を最小限にするため切開した創部(通常5mm程度)から脂肪層の毛細血管からしみ出た血液を絞り出します。もしこの時点で、異常な出血が創部からあればその時点で医師は気付き、圧迫止血など必要な処置を行います。ですが、今回の事故では出血が筋膜により密閉され、切開層からは出血がなかったために、気付かずに見過ごされた可能性があります。また、もしこのように出血がなかった場合でも、しっかり術後管理ができている体制があれば、または医師が注意深く観察していれば、その後に首が異常に腫れてきたことは気付けたはずですが、おそらくこのクリニックではそういう体制ではなかったと思われます。書類送検された医師は渋谷在住で、事故があったのは大阪のクリニックなので、アルバイトのドクターだった可能性が高いです。多くのアルバイトのドクターは手術だけ行い、終わったらさっさと帰るのが美容外科では常態化しています。

首の大きな血管

↑脂肪の下にある広頚筋の更に下にはこのように大事な太い血管が多くある。ここを損傷すると大出血が起こり得る(図内の青と青の管が血管です)

書類送検された医師がとるべきだった対応

医療行為におけるミスは避けられないこともありますが、今回の事故で書類送検された医師は、脂肪吸引に伴う頸動静脈損傷や内出血による気管閉塞のリスクを十分に認識していなかった可能性があります。もしこの知識が不足していたのであれば、この医師に非難されても仕方がないと考えられます。報道によれば、この医師は術後の患者の状態を写真で確認していました。もし十分な知識があれば、患者に近隣の病院での受診を強く促すことが可能であったでしょう。適切な対応が行われていれば、避けられたかもしれない事故です。

ハーブドリームビューティークリニック(HAAB DREAM BEAUTY CINIC)とは

ハーブドリームで死亡事故

この事故があったハーブドリームビューティークリニック(HAAB DREAM BEAUTY CLINIC)のホームページには院長の医師が掲載されていますが、この院長は経営者ではありません。ハーブビューティークリニックの経営者は医師ではなくいわゆるやり手の女性経営者です。この女性経営者は地下鉄外苑前駅にあるハーブドリームビューティークリニックの駅看板に登場してる桑田真澄さんの息子のマットさん等の芸能人やインスタのインフルエンサーとの幅広い関係を活用し、SNSを通じて効果的に集客しています。その結果短期間に店舗を拡大してきました。ハーブドリームビューティークリニックに勤務している医師はホームページを見れば分かるように美容外科年数の経験が浅いが、ルックスがよいドクターを集めています。そのルックスの良いドクターが果たして十分な技術を持っているのかは分かりません。

まとめ

美容外科医専門医元神賢太医師

このように脂肪吸引手術で死亡事故が起こり、それがメディアに晒されると、脂肪吸引手術が危険な美容外科手術のように誤解されます。もちろんどんな手術にもリスクはありますが、脂肪吸引手術は、一般的には危険ではないとされています。ただし、普通の医療行為と違って、確かにその安全性は大きく医師の技術に依存します。手術を検討する際には、医師の選択に細心の注意を払うことが重要です。高い技術と経験を持つ医師による適切な手術は、リスクを最小限に抑え、望む結果をもたらす可能性が高くなります。そのため、脂肪吸引を考えている方は、医師の資格、経験年数などを慎重に検討することが推奨されます。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。1999年慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医師会理事。美容外科医として20年以上のキャリアがある。

【関連項目】

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失敗しない美容外科医の選び方

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2024/02/16

院長ブログトップ > 背中の汗がすごい理由とその対策

背中の汗がすごい理由とその対策

背中の多汗症の理由と対策

日々の暮らしの中で、多くの人が感じる不快感の一つに、背中の汗が挙げられます。私の調査によると、わき、手足、顔、頭と並び、背中の汗は日本国民の大きな関心事となっています。ネット検索では「背中の汗 すごい なぜ」や「背中の汗 対策」といったキーワードが頻繁に見られることからも、この問題が日常生活における広範な関心を集めていることが明らかです。この記事では、背中の汗がなぜ多くなるのか、背中の多汗症の生理的な背景を詳しく掘り下げます。さらに、日常生活で実践できる簡単な対策方法もご紹介し、この悩みを抱える皆様が快適に過ごせるようなヒントを提供いたします。背中の汗が多いことは、多くの方にとって気になる事象ですが、適切な理解と対応で、その不快感は大いに軽減できるはずです。では、背中の多汗症の謎に迫り、日常生活で役立つ具体的な対策を見ていきましょう。

原因別による発汗の分類

背中の汗が多い理由

背中の汗の原因を探る前に、まずは人間がどのようなシチュエーションで汗をかくのか、それを医学的に明らかにしましょう。人間の発汗現象は、原因別に分類した場合。温熱性発汗,精神性発汗,味覚性発汗の 3 種類に分類されています。

■温熱性発汗

温熱性発汗は身体が熱を感じたときに起こる発汗です。運動や高温環境にさらされると、体温が上昇し、身体は汗をかいて冷却しようとします。このタイプの発汗は、体温調節の一部であり、全身にわたって発生することが一般的です。

■精神性発汗

精神性発汗はストレス、不安、恐怖などの精神的、感情的な反応によって引き起こされる発汗です。このタイプの発汗は、主に手のひら、足の裏、脇の下、顔・頭など特定の部位に集中します。いわゆる「冷や汗」はこの精神性発汗となります。

■味覚性発汗

甘味や酸味の食べ物や飲み物を摂取したとき一部の人に起こる発汗です。このタイプの発汗は、顔や頭部に集中することが多いです。

★背中の汗の場合、温熱性発汗でのみ起こります。つまり、背中の汗は主に身体が温度調節を行う過程で発生するものであり、精神性発汗によるものではないことを理解することが重要です。この知識は、背中の汗に対する効果的な対策を立てるうえで役立つでしょう

機能面による発汗の分類

発汗現象を機能面で分類した場合は、体温調節性発汗と非体温調節性発汗の2つに分類されます。

■体温調節性発汗

体温調節性発汗は、文字通り体温を適切に管理するために起こる発汗で、健康を維持するために不可欠です。私たちの身体は、体温が上昇すると発汗を始めます。これは、体内の熱を外部に放出し、体温を安定させるためです。例えば、運動をしたときや気温が高い日には、私たちの体はより多くの熱を生成します。このとき、体温調節性発汗が活発になり、汗をかいて体温の上昇を防ぎます。汗腺から放出される汗は、主に水分と少量の塩分で構成されています。汗が皮膚表面に現れ、蒸発することで、体から熱が奪われ、冷却効果が生じます。この冷却効果が、体温を正常な範囲に保つのに役立っています。

■非体温調節性発汗

冷や汗も顔汗
体温調節の一環としての発汗とは異なり、非体温調節性発汗は多様な内部および外部の刺激によって引き起こされます。これらの刺激には、身体の体温管理とは直接関連しないものが含まれます。非体温調節性発汗には、主に以下の三つの類型があります。

・感情的発汗

精神性発汗とほぼ同義になりますが、ストレスや不安、恐怖、緊張などの感情的な状況により生じる発汗で、特に手のひら、足の裏、脇の下、顔、頭などの特定の部位に現れます。このタイプの発汗は、自律神経系の反応として生じる「冷や汗」とも呼ばれます。

・味覚発汗

食物の摂取、特に辛い食べ物や強い味の刺激に反応して生じる発汗です。唐辛子などの辛み成分カプサイシンによる発汗や、甘みや酸味に反応する味覚性発汗がこれに含まれます。

・病的発汗

体内の医学的状態や疾患、例えば発熱、甲状腺機能亢進症、低血糖症などが原因で生じる全身的な発汗です。また、特定の薬物の副作用としても発汗が増加することがあります。

★機能面から考察した場合においても、背中の発汗は体温調節性発汗という生理的な機能を果たすために存在します。

実は背中が最も発汗する部位

真夏の暑い日中に太陽に照らされた後には誰しもが経験したことが背中のから大量の発汗が実は、身体の中で最も多く発汗する部位であることを確認した医学論文が存在します。特に、背中の中央部分と腰部分は、他の部位に比べて発汗量が顕著に多いとされています。日常生活の中で、特に暑い日や激しい運動をした際に、Tシャツの背中の真ん中部分が汗でびっしょりと濡れていることを多くの方が経験していることでしょう。この現象は、最近の医学研究によっても確認されているのです。

体の中で部位で最も発汗する背中

↑論文内で背中の中央と腰部分が最も発汗量が多いことを紹介したイラスト

出典元:

Regional sweat rates in humans

 

背中の汗が多いのは当然で必要不可欠な生理的現象

背中の汗が多いのは必然

体温調節性発汗は、私たちの身体が適切な体温を維持するための重要な生理的反応です。人間の体は、過熱を防ぐために汗を通じて熱を放出します。暑い環境にいる時や運動をしている時に体温が上がると、体はこの過熱を避けるために汗をかきます。特に、背中は発汗量が最も大きいことから体温調節において最も重要な役割を果たす部位です。背中には多くの汗腺があり、これらは活発に汗を分泌して体温を調節します。したがって、背中の汗が多いのは、身体が効果的に熱を放出しようとしているためであり、これは全く自然な現象です。汗をかくことで、体温が急激に上昇するのを防ぎ、身体が過度に暑くなるのを避けています。これは特に高温多湿の環境や激しい運動を行っている時に顕著です。背中の汗が多いことは、身体が熱による体温上昇に効果的に対処している証拠であり、正常な体温調節の一環です。このように、背中の汗は、身体が健康的に機能し、適切な体温を維持するための自然な反応です。日常生活において、背中の汗が多いことは決して異常なことではなく、むしろ身体が正常に作動している証拠なのです。

背中の汗が多いことはいいこと

特に、内科的な病気や肥満がなく、他の人より多く汗をかく場合、これは代謝が活発であることの現れとも考えられます。健康な身体は効率的に体温を調節し、適応力が高いため、積極的な代謝活動の一環として汗をかくことは、実は健康の良い兆候です。もちろん、汗の量が多いことで日常生活に不便や心理的なストレスを感じることはありますが、それは健康上の問題を意味するわけではありません。多汗の原因が生理的なものであれば、その状態を受け入れ、適切な対処法を見つけることが大切です。総じて、背中の汗は多くの場合、健康的な身体機能の表れであり、適切に対処することで日常生活を快適に過ごすことができます。汗は私たちの身体が正常に働いている証拠なのです。

背中の汗対策

背中の汗対策

背中の汗が健康的な生理的現象であるとの理解を踏まえ、それにもかかわらず背中の多汗症に悩む方々に向けて、日常生活で実践できる具体的な対策をご紹介します。

■服装の選択

背中の通気性を高めるためには、吸湿性に優れた天然素材の衣類が理想的です。特に綿製の服は、皮膚が呼吸しやすく、快適さを向上させる効果があります。こうすることで、発汗を促す熱の蓄積を防ぐことができます。

■冷房

体温が上昇し始めると、自然と体は冷却のために発汗します。このため、室内の温度を適切に調節することが有効です。冷房を適切に設定し、室温を快適な範囲に保つことで、背中の汗を減らすことが可能です。

■氷や冷却スプレーの使用

冷房が利用できない状況では、氷や冷却スプレーを使って直接体を冷やす方法が有効です。特に、首の後ろや脇の下、鼠径部などの血流が多い部位を冷やすと、発汗を抑制しやすくなります。これらの部位は体温調節に大きく関与しているため、冷却することで全体的な体温を下げ、発汗を減少させることができます。

背中の汗を抑える唯一の治療

ドレスの汗染み対策

背中の汗が持つ体温調節という生理的な役割は非常に重要であり、一般的な多汗症と同様に治療で抑制することは推奨されません。しかし、特別な日にドレスを着用するなど、特定のシチュエーションで背中の汗をコントロールして、背中の汗染みを防ぎたいというニーズに対応するための選択肢はあります。その唯一方法がボトックス注射です。ボトックス注射は、背中の汗腺の活動を一時的に抑制する効果があり、即効性があります。特に背中の中央部分など特定の部位に限定してボトックスを注射することで、その部位の発汗を効果的に抑えることが可能です。ボトックス注射の効果の持続期間は個人差がありますが、一般的には約6か月間とされています。

背中の汗に関してよくあるご質問

Q: 背中に汗をかくのはなぜですか?

A: 背中は人間の体で最も発汗が活発な部位だからです。これは最新の医学研究でも裏付けられています。背中からの発汗は、体温を適切に調節するための自然な生理反応であり、この過程は体温調節性発汗と呼ばれ、身体が適切な温度を維持するために重要な役割を果たしています。

Q: 背中の汗を止める方法はありますか?

A: 背中の汗を抑える最も効果的な方法は、体全体を冷やすことです。冷房が利用できる環境であれば、室温を下げて休むのが最善の選択です。また、外出時などでは、首の後ろや脇の下など、体温が高まりやすい部位を氷や冷却スプレーで冷やすことで、発汗を抑制できます。さらに、特定の場面で背中の汗を抑えたい場合は、背中の中央部分など限られた部位へのボトックス注射が一つの選択肢となり得ます。

まとめ

この記事では、背中の多汗症の原因と、それに対処する方法について詳しく解説しました。背中の汗が多いことは、体温調節のための自然で重要な生理的現象であり、その事実を理解するだけでも、多汗症によるストレスや不安を軽減する助けになるでしょう。また、背中の汗に対処するための具体的な方法もご紹介しました。これらの方法は、背中の汗による不快感を和らげ、より快適な日常を送るための一助となることでしょう。最後に、この記事が皆様の背中の汗に関する悩みを少しでも解消し、日々の生活において実用的な情報を提供できたことを願っています。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

【関連項目】

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首の後ろの汗は多汗症による?あせもの要因にも

顔汗・頭の汗がすごいのはなぜ?病態と止める方法について

鼻汗・口周りの汗がすごいのはなぜ?対策と止める方法について

 

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2024/02/15

院長ブログトップ > 谷間の汗、胸の汗が多い理由と対策について

谷間の汗、胸の汗が多い理由と対策について

胸汗、谷間の汗の悩み

女性が直面する特有の悩みの一つに、胸部、特にバストの谷間や下乳(胸の下部分のアンダーバスト)の汗が挙げられます。これらの部位は、体の他の部分と比べて汗をかきやすい傾向にあり、バストが豊満な方では、その悩みがより深刻になることも少なくありません。このような胸の汗は、ただ不快なだけでなく、「あせも」や湿疹痒みなどの皮膚トラブルを引き起こす原因となることもあります。そこで、この記事では、胸汗や谷間の汗が多くなる背景にある理由や、日々の生活でできる予防・対策方法、さらには医療機関で受けられる治療についても詳しくご紹介します。この情報が、皆さまの悩みを解決する一助となれば幸いです。

本当に胸の汗だけかをチェック

胸部や谷間の多汗症は、その原因を探る上で、汗が胸部に限定されているのか、それとも全身にわたる症状なのかを見極めることが極めて重要です。実は、全身にわたって発汗が多い状態、すなわち全身性多汗症を示す病態は意外に多く存在します。特に女性においては、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などの病気が原因で、高い割合で全身性多汗症を発症することが知られています。ですから、胸部だけでなく全身の汗の量が多い場合は、全身性多汗症の可能性を疑い、早急に医療機関での診察を受けることが推奨されます。さらに詳しく言及すると、続発性全身性多汗症を引き起こす疾患には、様々なものがあります。例えば、薬剤の影響、薬物の乱用、循環器系の疾患、呼吸不全、感染症、悪性腫瘍、内分泌・代謝疾患(甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、末端肥大症、カルチノイド腫瘍)、神経学的な疾患(パーキンソン病)などが含まれます。これらの病気は、胸部の多汗症だけでなく、全身に影響を及ぼすことがあり、それぞれに適切な診断と治療が必要です。

出典元:

原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版

谷間の汗、胸の汗、アンダーバストの汗が多くなる理由

谷間の汗が多くなる理由

谷間、胸部、アンダーバストの汗が全身性多汗症でなく、正常な生理的な範囲内での発汗の場合、その原因として考えられるのは、主に次のような医学的要因に基づいています。

■皮膚の密着による熱の蓄積

特にバストサイズが大きい場合や適切なサイズの下着を装着していない場合、胸の谷間や胸の下のアンダーバストと言われる部位において皮膚が密着し、熱が蓄積されることが多くなります。この密着が原因で、該当部位の温度が上昇し、結果として汗をかきやすくなります。

■衣服による湿度の蓄積

胸の谷間やアンダーバストの部分は、体の他の部位に比べて密閉されやすく、下着や衣服によって覆われがちです。その結果、熱と湿度がこもりやすくなり、汗を分泌しやすい環境が形成されます。

■汗腺の高い密度

胸の谷間の皮膚には、エクリン腺(汗腺の一種)が他の部位より多く存在するか、その活動が活発であると考えられています。現在までに、バストのエクリン汗腺について詳細に調査された医学論文は存在しませんが、胸の谷間が他の部位より高温になることは、医学的に確認されています。

胸の谷間は高温

↑胸の谷間部分だけ高温になることを確認した医学論文の中の図

出典元:

Regional sweat rates in humans

谷間の汗、胸の汗が「あせも」の原因に

女性の胸汗、特に谷間やアンダーバストの多汗症は、皮膚トラブルの一因となり得ます。この部位の過剰な汗は「あせも」(汗疹)の発症に繋がり、更には湿疹やかゆみを引き起こすことがあります。特に、胸部に湿疹ができた場合、適切な治療を行わないと、後々跡が残ることもあります。

胸、谷間、アンダーバストの汗の日常対策

胸汗、谷間の汗の対策

胸や谷間、アンダーバストの汗による肌トラブルを予防するための日常的な対策は、以下のような方法で行うことが効果的です。

1.通気性と吸湿性に優れた衣服の選択

綿、リネンなどの自然素材で作られた衣服は、通気性と吸湿性に優れており、肌に空気を通し、汗を効果的に吸収します。これにより、胸部周辺の湿疹やかぶれのリスクを減らすことができます。

2.適切なサイズのブラジャーの選択

サイズが合っていない小さ過ぎるブラジャーは、肌への摩擦や圧迫を引き起こし、汗の原因となり得ます。また大き過ぎるブラジャーは肌同士の密着防止機能としての役割を果たせません。適切なサイズと良いフィット感を持つブラジャーを選ぶことで、汗をかきやすい部位の圧迫を防ぎ、快適さを保つことができます。

3.通気性の良いブラジャーの選択

汗の原因となるブラジャー選びには、通気性が高いタイプを優先しましょう。穴あきメッシュ仕様のカップや裏地、吸水速乾タイプ、薄いレース生地を使用したブラジャーが理想的です。これらの設計は通気性を高め、着心地を良くします。また、汗を吸収しやすいコットン素材(綿素材)のブラジャーは、蒸れにくく汗対策に適しており、肌にも優しいので、敏感肌の方にも安心です。

4.ノンワイヤーブラジャーの選択

胸の下、特にワイヤー部分の汗が気になる場合、ノンワイヤーブラジャーがお勧めです。ワイヤーがないため、締め付けが少なく、肌にかかる圧力や汗をかきにくくなります。ただし、ノンワイヤーブラはワイヤーブラに比べてホールド力が低いため、フルカップタイプや、涼しい日はワイヤーブラを選ぶなど、バランスを取ることが大切です。

5.汗吸収パッドや汗拭きシートの活用

胸汗や谷間の汗を効果的に管理するために、汗吸収パッドや汗拭きシートの使用が有効です。汗吸収パッドをブラジャーの下や谷間に挟むことで、肌同士の直接的な接触を減らし、汗を吸収します。市場には様々な素材やサイズの製品があり、個々の肌質や胸のサイズに合ったものを選ぶことが重要です。また、汗拭きシートをパッドにかわりに使用することもできます。この場合は、汗拭きシートを谷間に挟み、適宜交換して使用します。

6.パウダーや制汗剤の適切な使用

無香料のベビーパウダーや制汗スプレー、ジェルの使用は、発汗を抑えると同時に肌の摩擦を減らす効果があります。これらの製品は、肌への優しさを考慮し、自分の肌質に合ったものを選ぶことが肝心です。パウダーや制汗剤を軽く塗ることで、肌の快適さを保ちつつ、汗による不快感を軽減することができます。ただし、過度な使用は肌に負担をかける可能性があるため、適量を心掛けることが重要です。

7.衣類の清潔の維持

汗を吸収した衣類は、肌に直接触れる部分のため、可能な限り清潔に保つことが肌トラブルを避ける鍵です。使用後の衣類は早めに洗濯し、清潔な状態を保ちましょう。

8.肌にやさしい洗剤の使用

肌に直接触れる衣類を洗濯する際は、肌にやさしい洗剤の使用が推奨されます。特に、敏感肌の方は、無添加や低刺激の洗剤を選ぶことが重要です。柔軟剤の使用も控えめにし、洗剤や柔軟剤の残りが肌に刺激を与えないように注意しましょう。

胸の汗、谷間の汗、アンダーバストの汗を止める方法

ボトックスで胸汗、谷間の汗の対策

日々の対策を講じても、胸の汗、谷間の汗、アンダーバストの汗が気になる場合、またはこれらの部位で「あせも」や湿疹が改善しない場合、医療の力を借りることを考慮すると良いでしょう。特に、ボトックス注射は局所的な発汗を抑制するための効果的な治療方法です。この治療は、ボツリヌス毒素を使用してエクリン汗腺を標的にし、神経を一時的に麻痺させることで発汗を制御します。ボトックス注射による治療の効果は約6ヶ月間持続し、症状の重症度に応じて治療を繰り返すことが一般的です。効果の持続期間には個人差があり、最長で1年程度続くケースも報告されています。副作用は通常限定的で、治療の安全性は高いとされています。この方法は、日常的な対策だけではコントロールできない程の多汗症に悩まされている方に特に推奨される治療方法です。

胸汗、谷間の汗、アンダーバストの汗でよくあるご質問

Q:胸や胸の下に汗をかく原因は何ですか?

A:バストサイズが大きい場合や適切なサイズの下着を装着していない場合、胸の谷間や胸の下のアンダーバストにおいて皮膚が密着し、熱が蓄積されやすくなることが主な原因です。また、谷間の皮膚は他の胸の皮膚と比較して発汗しやすい部位であることが医学的に確認されています。

Q:胸の汗を止める方法はありますか?

A:ボトックス注射が非常に有効な方法です。ボトックス注射による治療の効果は約6ヶ月間持続し、症状の重症度に応じて治療を繰り返すことが一般的です

Q:谷間に汗をかく原因は何ですか?

A:胸の谷間の皮膚には、エクリン腺(汗腺の一種)が他の部位より多く存在するか、その活動が活発であると考えられています。また、胸の谷間が他の部位より高温になることは、医学的に確認されています。

Q:胸汗が臭うのはなぜですか?

A:胸汗は通常エクリン汗腺からの汗を指します。エクリン汗は無臭とされていますが、大量に放出され、長時間放置された場合は空気中に雑菌により臭いを発生します。また、乳首からアポクリン汗が発汗することがあり、この場合は明確にワキガ臭が発生することもあります。

まとめ

本記事では、胸汗、特にバストの谷間や下乳部分に特有の多汗症、及びそれに伴う「あせも」の発生原因と対処法について詳細に解説しました。特に注目すべきは、ボトックスを用いた治療法の紹介です。この手軽で効果的な方法は、多汗症に悩む多くの方々に新たな選択肢を提供しています。最後に、この記事が胸汗や谷間の汗に関する悩みを抱える方々に対して、有益なガイドとなることを願っています。最適な解決策を見つけ、より快適な毎日を過ごしていただければ幸いです。

筆者:元神 賢太
船橋中央クリニック院長/青山セレスクリニック理事長。慶応義塾大学医学部卒。外科専門医(日本外科学会認定)。美容外科専門医(日本美容外科学会認定)。美容外科医として20年以上の経験がある。手掌、足底、顔面、頭部の原発性多汗症に対して、マスク麻酔を併用した無痛のボトックス注射を日本で初めて行っている。また、わきが多汗症の治療器のビューホットを日本にいち早く導入し、これまでワキガ、スソワキガ、多汗症の治療例はこれまで延べ1万人を超える。

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当院は開設20年以上の歴史を持つ医療法人社団セレスのグループクリニックです。
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